少女漫画の当て馬キャラと恋人になったけどキャラ変激しすぎませんか??

和泉臨音

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第四章 百鬼夜行殲滅作戦

第五話*side衛

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「あはは、熱烈な歓迎は嬉しいけど大丈夫だよ、僕は無事だ。衛も平気そうだね」

 くすぐったそうに笑いながら、一条寺少尉は俺を抱きしめながらゆっくり体を起こす。

「ねつれ、つ?」
「衛から抱きしめてくるのも、積極的に触ってくるのも、前後不覚になって求めてくれる時だけだからね」
「ひィっ!」

 少尉はそう言うと俺の耳にふーっと息を吹きかける。
 思わず変な声を上げてしまい離れようとしたが、がっちり少尉につかまってしまった。
 でもこれだけ腕に力が入るということは大きな怪我はないのだろう。
 そこは少しだけ、いやかなり、安心した。

 安心したからか、じわじわと視界が波打ってくる。

「……ご無事、で良かった」

 本当に、本当に良かった。
 俺が少尉を守るって心に誓ったのに、俺のせいで少尉が怪我をするところだった。

「まったく、衞が怪我をするのではと肝を冷やしたというのに、これじゃあ僕が心配をかけたみたいじゃないか」
「……すみません」
「君の正義感と真面目さは美徳だと思うし、咄嗟とっさの判断力も素晴らしい。だけどこれからは自分のことも大事にしておくれ」
「……すみません」

 俺は勝手に零れ落ちてくる涙が情けないし居たたまれなくて、嗚咽おえつをこらえながら謝罪の言葉をどうにか口にした。

「まったく君って子は。そこは謝罪でなく了解の言葉が欲しいところだけど、まあ急に思考は変えられないからそこはおいおいとして、とにかく泣き止んでおくれ。そんな可愛い顔されたら堪らない……」

 一条寺少尉の長い指が俺の頬に触れ、涙を拭ってくれる。
 雰囲気に流されて、俺が吸い寄せられるように少尉に顔を寄せたところで盛大な咳払いが背後から聞こえた。

「そういうことは二人の時にやってもらえるかな。陽真、日凪」

 背後から聞こえる冷気をはらむような百園曹長の声に俺の心臓がギュッと縮む。

 え? あれ? 俺は今何をしようとしてた?? 
 何って完全に流されて、キスしようとしてたよ!! 

 なんてことだ、危なかった。
 ダラダラと心のなかで冷や汗を流しながら、正気に戻してくれた百園曹長に感謝する。

「チッ、初めて衞からシラフの時に口付けしてもらえるチャンスだったというのに……。何か用か? 薫子」
「何って撤収だ。いつまでここにいる気だ」

 少尉の呟きは聞こえなかったが明らかな舌打ちと、今までとは違う低く恨みが籠もったような声に少尉の不機嫌さを感じ取り、俺は慌てて立ち上がろうとした。
 が、これまた少尉の腕が強くて動くことが出来なかった。仕方無しに大人しく抱きしめられておくことにする。

「あの、五木先輩は?」

 俺は無礼だと思いつつも、地面に座り込み少尉に抱きしめられたまま顔だけを百園曹長へ向ける。

「無事だ。腰を抜かしたまんまだけどな。三枝に運ばれてる」
「良かった」

 三枝先輩の救援が間に合ったのだろう。
 そういえば、と動かせる範囲で頭を動かし周りを見回す。
 馬車の姿は見当たらない。
 あのまま走り去ったんだろうか? 月光隊員を、いや一般人であったとしても、人をひきかけたのだし、あの様子なら停車しそうだったけど……。

「馬車には逃げられたが、ほらよ。欲しいだろうと思って切っといてやったぞ」

 呆れたような声音の百園曹長の声とともに何やら木片が落ちてきて、少尉がそれを受け取る。

「あの、それは……」

 じっと手の中の木片を見つめる一条寺少尉の瞳がとても楽しそうに輝いた。

「ああ、馬車がみたいだ。ね」

 落とした? でもさっき百園曹長は切ったって……。

「えっと」
「日凪。世の中には知らない方が幸せなこともある。この件は陽真に任せておけ」
「あ……はい」

 物凄く良い笑顔の少尉の圧と百園曹長のアドバイスにより、俺はその木片について深く追求しないことにした。

 
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