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第五章 俺の扱い雑すぎませんか??
第二話*side衛
しおりを挟む少女漫画『月光乙女は帝都に舞う』の主人公おとめが幼馴染の二階堂への思いを自覚しモダモダし始めた頃、自称一条寺少尉の婚約者、土御門さくらによる拉致監禁暴行未遂事件が起きた。
街に出かけたおとめが拉致られ、ボロ屋敷に監禁される。
そこへさくらが現れ「一条寺少尉にあなたは相応しくなくってよ!」等々、糾弾するのだ。
だがそもそもおとめにとって少尉はただの尊敬する上官である。それを伝えてもさくらは勿論聞く耳を持たない。
そうこうするうちにさくらが取り巻きの男共に命じる。
「この子が二度と減らず口を叩けないよう、懲らしめておやりなさい」と。
あわや乱暴されそうになったおとめを助けたのが我らが一条寺少尉……ではなく、二階堂である。
まあ、二階堂とおとめのラブストーリーなので当然の流れだ。
颯爽と現れた二階堂は暴漢たちを打ち負かし、おとめを助け、さくらを捕える。
さくらはその後、おとめの他にも暴行をしていた事が判明し、それに手を貸していた親衛隊ともども御用となり、伯爵家からも勘当され尼僧になった。
さくらの起こした事件のせいで一条寺少尉は「僕のせいで君を危険な目に合わせてしまった」と責任を感じ、おとめへの恋慕を完全に諦めてしまうのだ。
話の流れで仕方ないとは思うんだが、よくよく考えるとおとめが二階堂とくっつくために、一条寺少尉は貧乏くじを引きすぎである。
さくらの事だって、少尉は全く悪くない。
だというのに……思い出したらなんか、腹が立ってきた。
「やっと来たわね。愚図でのろまな化け物」
仁王立ちで待ち構えていたさくらが見下すような視線を向けてくる。
ぞわりと嫌な感覚が体を駆け抜ける。化け物……と呼ばれて思わず顔をしかめてしまった。
背中を強く押されて足を踏み入れた場所は、第弐部隊が良く使う会議室だった。
本部基地には様々な施設がある。会議室もその一つだ。
夜蝶部隊は待機場所兼事務室で会議も行うが、人数の多い部隊は複数の部屋を使用する。
会議室も幾つがあり、部隊によってだいたい使う部屋は決まっていた。
第弐部隊が良く使うここは、調度品やカーペットもなんだか豪華である。
何故か部屋の端には横になって眠れそうな大きなソファーが幾つもあった。
昼寝場所なんだろう。
そう、昼寝だ、それ以上のことはないと思いたいのに、やたら隣に立つ男の鼻息が荒くて怖い。
「それで、土御門曹長ともあろうお方が俺になんのご用なんですか?」
パタリと扉が閉まる音を背中に感じて、そっとため息をつく。
本当に俺の扱いが雑である。
おとめのように外の廃屋へ拉致しろとは言わないが、衆目の中俺を連行し、月光隊内部にてことを起こそうとしている。
バレてもいいという腹積もりなのだろう。
女と男の違い……というよりは、おとめは華族ではないが良い家庭の出で、俺は孤児だという違いなのだろうか。
いや、俺なんて使い捨てても問題ない。
この世界も、目の前にいるコイツらも、そう思っているのだろう。
そうだな。確かに俺みたいなその他大勢のモブキャラは、そんな扱いでいいのかもしれない。
……今までの俺なら、間違いなくそう思った。
「あなたが夜蝶部隊に居ることが許せません。即刻出ていきなさい」
「嫌です」
「そう、言うことを素直に聞くのなら……は? なんですって?」
「だから、嫌だと申し上げています」
だけど俺は、一条寺少尉の恋人なのだ。
あの人に愛され、選ばれた存在だ。
「巫山戯ないで頂戴! あなたなんてなんの実力もないくせにっ!」
「では……実力を示せばよろしいんですね?」
それにもしここで俺がびびって言いなりになったり、それこそ襲われたりでもしたら、優しい一条寺少尉が気に病むだろう。
それこそ漫画のように、身を引かれてしまうかもしれない。
それだけは絶対に嫌だ!!
少尉が俺に飽きてしまって、捨てられるなら俺だってちゃんと諦める。
だけどだけどだけど、関係ない奴らのせいで引き裂かれるのなんて耐えられない。
「~~~っ! お前たちっ! この男が二度と減らず口を叩けないよう、懲らしめてやりなさい!!」
「はいっ! さくら様っ!!」
「喜んでっ!!」
さくらの号令で親衛隊が一斉に動き出す。
まさか、本当にそういう意味で襲って来ることはないと思ったのに、後ろから羽交い締めにされたかと思えば、目の前の男がナイフを取り出し俺の服を切り裂いた。
「おーほほほほほっ! それ、自慢の実力とやらをお見せなさいな。男に媚びることしかできない雌犬がっ!! 偉そうな口聞いてんじゃないわよっ!」
何度もいうが俺の扱いが雑である。
おとめにはもう少し優しかったよ土御門曹長……。
ビリビリに隊服を破かれ、ベルトも切り裂かれた。
さて、そろそろいいだろう。
「……では、俺が夜蝶部隊に居るに相応しい実力か、とくとご覧くださいっ!」
「グァッ!」
俺は勢いをつけてナイフを持つ男の顎に蹴りを入れ、そのままそいつの腹を蹴り、羽交い締めした男の顎に頭突きを入れる。
「おいっ、取り抑えろっ!」
本当は目潰しくらいしてやりたいが、やり過ぎると後で何を言われるかわからない。
見える怪我は少ないほうが絶対に良いはずだ。
ざっくり室内を見回す。
親衛隊は倒れた二人を含めて八人。
さくらを入れたら九人だが、彼女は無視でいいだろう。
俺は宙空から拳銃を取り出す。
これだけの人数を殴るのは大変なので、鈍器として使うのだ。
撃つのは出来れば避けたいが……。
「お望み通り、全員相手してやるよ」
俺はとりあえず手近な相手に殴りかかった。
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