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第五章 俺の扱い雑すぎませんか??
第五話*side衛
しおりを挟む「ふっ……んぅっ……」
手を引かれ少尉の部屋へたどり着けば、すぐさま抱き締められて唇を奪われた。
有無を言わさず唇を割り開き、舌が入り込んでくる。
呼吸も唾液も奪われるようなキスに朦朧としていれば、服を脱がされシャワー室へと連れて行かれた。
月光隊の寮は一般兵と士官で間取りが異なっている。
一条寺少尉が使っている下士官用の部屋は、応接室兼書斎と寝室の二間のほか、シャワー室とトイレが完備されていた。
ちなみに一般兵はそもそも個室も稀で、トイレと大浴場も共用である。
口付けながらいつの間にか少尉も全裸になっており、もつれるように狭いシャワー室へ足を踏み入れる。
「少尉の匂いがする」
ぶわりと濃い甘い香りは嗅ぎ慣れた少尉の香りだ。
思わず呟いた俺に、少尉は小さく笑う。
「ああ、これか。石鹸の香りだと思うよ」
少尉が壁のコックをひねれば、備え付けのシャワーからお湯が降り注ぐ。
狭いシャワー室は男二人でぎりぎり立てるくらいで、俺は狭いから仕方ないよなと心の中で言い訳しつつ、少尉にピッタリとくっついたまま離れずにいた。
少尉から離れたくない。
離れたからといって何かが変わるわけではないと頭では解っているけど、ぬくもりを感じていたかった。
少尉は執拗にくっつく俺など気にすることなく、石鹸を手に取り泡立てるとその泡で俺を洗い始めた。
優しく優しく撫でるように洗われて、なんだかムズムズする。
「いい香りだろう?」
「……はい。少尉のいい匂いです」
夢見心地で素直に答えたら、少尉がクスクスと笑う声が聞こえた。
なにか俺、おかしなことを言っただろうか?
「それじゃまるで、僕の香りだからいい匂いだと言ってるように聞こえるよ」
「……? そのつもりで言ってますが?」
たしかに甘い匂いはいい香りだけど、少尉のまとう香りだから俺は大好きなのだ。
俺の言葉に少尉が濡れた前髪をかきあげながら天を仰ぐ。
「まったく君って子は……こんな時に煽るなんて」
「あの、俺変なこと……言いましたか?」
「いや、素直で大変よろしい」
ふうっと大きく息を吐いた少尉が俺の頭を撫でてくれる。そのまま頬を撫でられればすり寄るように優しい手に顔を寄せた。
シャワーの水圧はとても弱くて小雨の中にいるようで気持ちいい。
少尉に時間をかけて優しく全身を洗ってもらい心も体も温めてもらった後、ピカピカになった俺はバスローブを借りて応接ソファーで寛いでいる。
つい先程の乱闘や過去の記憶が夢だったのではないかと思うほどの落差で、今はふわふわした幸せに包まれていた。
やっぱり一条寺少尉は凄い人だ。
「うん、だいぶ顔色も良くなったね。落ち着いたかい?」
少尉は持ってきた水の入ったコップを俺に手渡しながら隣りに腰掛けた。
ふわりと甘い良い匂いが漂う。
俺からも甘い香りはするのだが、少尉から香る匂いの方が数倍良い香りだと思う。
「はい。……お手数をお掛けしました」
「このくらい構わないさ。むしろ僕の方こそ助けに行くのが遅くなってすまなかった」
少尉は眉を寄せると辛そうな表情で俺に頭を下げる。
「やめてください、少尉が頭を下げる必要はないです!」
一条寺少尉は全く悪くない。むしろ巻き込まれた被害者だろう。
「けれど、僕は君を守れなかった。今までの君ならもっと上手く回避しただろうし、彼女に目をつけられたのも元はと言えば僕のせいだろう」
たしかに、それはそうかも知れないけど……。
「違います。俺はちゃんと少尉に守ってもらいました。少尉が俺を救ってくれたから……化け物にならないですんだんです!」
「化け物?」
「あ、えっと、その……」
ついうっかり言ってしまった!
せっかく「良くやった」と褒めてもらったのに。
俺の中のバケモノの話をしたら軽蔑されてしまうかもしれない。
黙ってた方がいいんじゃないか?
そう思ったのに、少尉のアイスブルーの瞳にまっすぐ見つめられれば、心の中を見透かされてる気がして、俺は黙秘が出来なかった。
「……俺はあの時、土御門曹長を殺そうとしました」
「…………」
ああ、やはり軽蔑されるんだろう。
沈黙が怖くて、俺は思わず俯いてしまう。
「だけど少尉が来てくれて、俺から彼女を助けてくれたんです。だから俺は人殺しに、バケモノにならないで済みました。少尉のおかげです……、すみません。良くやったと褒めていただいたのに、俺は私情で人を殺めようとしました」
そう、俺は少尉に救われた。
少尉が来てくれたから醜いバケモノにならないですんだし、今もこうして温かい場所に居られる。
全部、一条寺少尉のお陰なのだ。
「衛」
少尉の手が俺の肩に触れる。
思わず後ずされば、逃すまいとする少尉に抱きしめられた。
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