少女漫画の当て馬キャラと恋人になったけどキャラ変激しすぎませんか??

和泉臨音

文字の大きさ
45 / 48
第五章 俺の扱い雑すぎませんか??

第九話*side衛

しおりを挟む
 
 目が覚めたら全裸の少尉に抱き締められて眠っていた。
 ちなみに俺も裸のままだ。

 驚きで思わず身体がこわばる。

 事後のあともう一度二人でシャワーを浴びて、そこでもイチャイチャして、そのまま眠ってしまったのでこの状態は驚くべきことではないかもしれない。
 だけど今までは俺が目覚めれば身支度を完璧に整えた少尉が居て、こんな風に裸で寝ていたことなどなかった。

 心臓が物凄くうるさい。
 この状況をどう捉えるべきなのか?
 俺なんかと違って完璧な少尉の考えが、俺に判るわけがない。

 だけど普段絶対に、他人には見せないだろう一条寺少尉の姿に、思わず顔がニヤけてしまった。
 俺だから気を許してくれたってことだろうか?
 それなら、すごく……嬉しい。
 ニヤニヤしながら眠る少尉を思わずじっと見つめる。

 普段もたまに魅入ってしまってはいるが、こんな近くで見つめる機会なんてそうそうない。あったとしても見つめ返されたら恥ずかしくて、俺のほうが耐えられないだろう。
 なのでこれ幸いとばかりに思う存分見つめることにする。

 眠る少尉の顔はそれはもう綺麗だ。瞳を閉じていると少しだけ幼く見える。
 昨日はあんなに男らしかったのに……と、うっかりとご褒美を思い出してしまい、お腹がムズムズしてしまった。

 俺は朝から何を考えているんだ……。でも、ご褒美は本当に凄かった。

 やってる内容はいつものお仕置きと変わらずセックスなんだけど、お仕置きとご褒美は全然違った。

 とにかく少尉が甘かった。

 イってるから止まってとお願いすればちゃんと聞いてくれて、俺が落ち着くまで待ってくれる。
 俺のお願いを叶えてくれるからと、思い出すと小さな子どものように駄々をこねた、気がする。
 しかも腹の中にずっと居てくれなどと……かなり卑猥なお願いもした。
 それだけでも羞恥で死ねる。
 さらにいつものように気持ち良すぎて訳が分からなくなることもなくて、口走ったあれやこれやや、やった体位などを思い出すと、変な動悸がする。

 トキメキというよりやらかしてしまった後のドキドキ感に近い。

 なんであんな大胆になれたのかと言えば、少尉が俺を甘やかしてくれたからに他ならない。
 少尉がいなければ俺は自己嫌悪に沈み、今頃どこかに逃げていただろう。

 やらかした気がして変な動悸はするけれど、それ以上に幸せで、俺の顔は緩みっぱなしで。

 こんな風に温かい気持ちでいられるのは、間違いなく一条寺少尉が俺を認めて、褒めて、大切にしてくれるからだ。
 それが判るからこそ、俺ばかりがほどこされるのではなく、ちゃんと少尉と向き合いたい。少尉の役に立ちたい。
 そして、もっと少尉の恋人として、少尉以外にも認められるようになりたい。

 そのためには頑張りたいという気持ちだけでは駄目だ。ちゃんと考えて行動する必要がある。

 具体的な案として階級をあげるのはどうだろう? 
 せめて曹長クラスに成れれば……、だけど、孤児の俺にはなかなか難しい道のように思える。
 月光隊の階級は身分と直結する。平民の殆どは軍曹止まりだ。

 はぁーっと思わず大きなため息をついたら、少尉を起こしてしまったようだ。

 ふるりと長いまつ毛が揺れて、ゆっくりと涼やかな水色の瞳が俺を見つめる。
 本当に綺麗で、完璧な人だ。

 キューッと胸に先程とは違う痛みが走る。これはトキメキだ。
 好きで好きで大好きで、絶対に離れたくない。俺のものだと大声で叫びたい。

 俺はこの人に愛されて、愛しているのだ。

「衛……おはよう。よく眠れたかい?」
「……はい、おはようございます」

 だからこそ、やっぱり今のままでは駄目だ。

 少し前の俺ならモブだからと簡単に諦めていた。
 辛い思いまでして頑張る必要が無いと思った。
 割り切ってしまえばどんな事にも傷つかないと思った。

 だけど、俺はもう諦めない。

「少尉。俺……もっと軍功をあげて、少尉と共に居るに相応しい存在になります」

 俺の決意をしっかりと少尉に伝えれば、少尉は少し驚いたように目を見開いて何度か瞬きをした。

「朝から唐突だね……」
「すみません」

 た、確かに。
 恋人と裸で抱き合って迎えた朝に、する会話ではなかったかもしれない。

 雰囲気違いな決意表明が物凄く恥ずかしい。

「ふふ、いいよ。すごく衛らしくて、可愛いね」

 少尉は楽しそうに笑うと俺を抱き寄せる。
 俺はされるがままに少尉の胸に体を寄せた。

「僕としては隊員が活躍するのは大歓迎だ。軍功か……そうだね、まず衛は戦果を他人に譲らず自分でトドメを刺す事。それから自分を盾にしない事。この二つを確実にこなそうか」

 こめかみや頬にチュッチュッとキスされながら聞く内容ではない気がしたが、俺は出来るだけ神妙な顔で少尉のアドバイスを聞く。

 他人に譲っているつもりはなかったけど……そうか援護に徹している時は、結果としてとどめを刺していなかったのかもしれない。目からウロコだ。
 まあ、自分を犠牲にしがちなことは気付いてたけど、それはモブだし孤児だと思えば仕方がない選択だ。

「衛、僕としてはすぐにでも後者の方を改善してほしい」
「ぜ、善処します……」

 俺の思考が読まれたのか、仕方ないと思ったのが顔に出たのか。
 そっと頬を両手で包まれ、真面目な視線に射抜かれれば息を呑む。

 やっぱり至近距離で見る少尉はとても美しくて、心臓がうるさく鳴り響く。
 
 俺がドギマギとしていれば、真面目な顔から少尉はふいに優しい笑顔になって俺の頭を雑に撫で回した。

「???? あ、あの?」
「ふふふっ、この間と違って前向きな言葉が聞けて嬉しいんだ」

 フフフッと楽しそうに肩を揺らしながら笑い、少尉はぐしゃぐしゃになった俺の髪を丁寧に直してくれる。

「勿論、僕も全力で君を守るけど、君自身も僕の大切な衛を守っておくれ。君はこの世に二人といない、僕の大切な想い人で、可愛い恋人なのだから」

 息が止まりそうなほど麗しい顔に、それはもう本当に幸せだと判るほどうっとりした笑顔を浮かべ、少尉は俺の目をしっかりと見つめてくる。

 文句なくかっこよくて、かっこいいからこそ許される口説き文句で。

 ああ、もう、この人に相応しい人間になるなんて、ちょっと高望みし過ぎなんじゃないかなって、本気で思ってしまうけど。

 だけど。

「頑張ります」

 少尉と一緒なら、俺はモブでもその他大勢でもなく、日凪ひなぎまもるという一人の人間として、しっかりこの世界で生きられるのではないかと思った。



「………?!?! しょ、少尉????」
「ん? 難しい話は終わっただろう?」
「そ、そうですけど、なんで、大きく??」
「これは朝立ちといって自然現象だよ。ほら、衛のも大きく硬くなってきただろう?」
「て、わっ、少尉、まって、俺の、さわっ、ふぁっ」
「ふふ、可愛い。そうだ衛はお尻をぐちゅぐちゅしないとイけないんだったね」
「!? なっ、朝から、なにを! 待って、少尉っ! ヒギャア!!」
「……衛、こういう時は僕のこと、なんて呼ぶんだっけ?」
「はるまっ、陽真さまっ!! 待ってダメ、駄目ぇ!! おっきぃ、のっ、いきなり、はぃりゃっ! あぁアァァ――ッ!!」


 ご褒美の羞恥や、モブから名前のある一人の人間になれるんじゃないかという希望。
 朝から精力的過ぎる一条寺少尉の愛に、俺のトラウマなどすっかり頭の中から飛んでいってしまったのだった。


「愛してるよ、僕のかわいいかわいいかわいい衛」
「あっ、ぁんっ、あっ、まっ、おく、も、むぃ、おな、いっぱぁっ、んぁア、ア――――ッッ!!!!」

 □ 俺の扱い雑すぎませんか??(完)□

 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ぼくが風になるまえに――

まめ
BL
「フロル、君との婚約を解消したいっ! 俺が真に愛する人は、たったひとりなんだっ!」 学園祭の夜、愛する婚約者ダレンに、突然別れを告げられた少年フロル。 ――ああ、来るべき時が来た。講堂での婚約解消宣言!異世界テンプレ来ちゃったよ。 精霊の血をひく一族に生まれ、やがては故郷の風と消える宿命を抱えたフロルの前世は、ラノベ好きのおとなしい青年だった。 「ダレンが急に変わったのは、魅了魔法ってやつのせいじゃないかな?」 異世界チートはできないけど、好きだった人の目を覚ますくらいはできたらいいな。 切なさと希望が交錯する、ただフロルがかわいそかわいいだけのお話。ハピエンです。 ダレン×フロル どうぞよろしくお願いいたします。

【本編完結】転生先で断罪された僕は冷酷な騎士団長に囚われる

ゆうきぼし/優輝星
BL
断罪された直後に前世の記憶がよみがえった主人公が、世界を無双するお話。 ・冤罪で断罪された元侯爵子息のルーン・ヴァルトゼーレは、処刑直前に、前世が日本のゲームプログラマーだった相沢唯人(あいざわゆいと)だったことを思い出す。ルーンは魔力を持たない「ノンコード」として家族や貴族社会から虐げられてきた。実は彼の魔力は覚醒前の「コードゼロ」で、世界を書き換えるほどの潜在能力を持つが、転生前の記憶が封印されていたため発現してなかったのだ。 ・間一髪のところで魔力を発動させ騎士団長に救い出される。実は騎士団長は呪われた第三王子だった。ルーンは冤罪を晴らし、騎士団長の呪いを解くために奮闘することを決める。 ・惹かれあう二人。互いの魔力の相性が良いことがわかり、抱き合う事で魔力が循環し活性化されることがわかるが……。

追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」 身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。 死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。 カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。 「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」 献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。 これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。

勇者になるのを断ったらなぜか敵国の騎士団長に溺愛されました

BL
「勇者様!この国を勝利にお導きください!」 え?勇者って誰のこと? 突如勇者として召喚された俺。 いや、でも勇者ってチート能力持ってるやつのことでしょう? 俺、女神様からそんな能力もらってませんよ?人違いじゃないですか?

魔力ゼロの無能オメガのはずが嫁ぎ先の氷狼騎士団長に執着溺愛されて逃げられません!

松原硝子
BL
これは魔法とバース性のある異世界でのおはなし――。 15歳の魔力&バース判定で、神官から「魔力のほとんどないオメガ」と言い渡されたエリス・ラムズデール。 その途端、それまで可愛がってくれた両親や兄弟から「無能」「家の恥」と罵られて使用人のように扱われ、虐げられる生活を送ることに。 そんな中、エリスが21歳を迎える年に隣国の軍事大国ベリンガム帝国のヴァンダービルト公爵家の令息とアイルズベリー王国のラムズデール家の婚姻の話が持ち上がる。 だがヴァンダービルト公爵家の令息レヴィはベリンガム帝国の軍事のトップにしてその冷酷さと恐ろしいほどの頭脳から常勝の氷の狼と恐れられる騎士団長。しかもレヴィは戦場や公的な場でも常に顔をマスクで覆っているため、「傷で顔が崩れている」「二目と見ることができないほど醜い」という恐ろしい噂の持ち主だった。 そんな恐ろしい相手に子どもを嫁がせるわけにはいかない。ラムズデール公爵夫妻は無能のオメガであるエリスを差し出すことに決める。 「自分の使い道があるなら嬉しい」と考え、婚姻を大人しく受け入れたエリスだが、ベリンガム帝国へ嫁ぐ1週間前に階段から転げ落ち、前世――23年前に大陸の大戦で命を落とした帝国の第五王子、アラン・ベリンガムとしての記憶――を取り戻す。 前世では戦いに明け暮れ、今世では虐げられて生きてきたエリスは前世の祖国で平和でのんびりした幸せな人生を手に入れることを目標にする。 だが結婚相手のレヴィには驚きの秘密があった――!? 「きみとの結婚は数年で解消する。俺には心に決めた人がいるから」 初めて顔を合わせた日にレヴィにそう言い渡されたエリスは彼の「心に決めた人」を知り、自分の正体を知られてはいけないと誓うのだが……!? 銀髪×碧眼(33歳)の超絶美形の執着騎士団長に気が強いけど鈍感なピンク髪×蜂蜜色の目(20歳)が執着されて溺愛されるお話です。

婚約破棄されるなり5秒で王子にプロポーズされて溺愛されてます!?

野良猫のらん
BL
侯爵家次男のヴァン・ミストラルは貴族界で出来損ない扱いされている。 なぜならば精霊の国エスプリヒ王国では、貴族は多くの精霊からの加護を得ているのが普通だからだ。 ところが、ヴァンは風の精霊の加護しか持っていない。 とうとうそれを理由にヴァンは婚約破棄されてしまった。 だがその場で王太子ギュスターヴが現れ、なんとヴァンに婚約を申し出たのだった。 なんで!? 初対面なんですけど!?!?

異世界転生した双子は今世でも双子で勇者側と悪魔側にわかれました

陽花紫
BL
異世界転生をした双子の兄弟は、今世でも双子であった。 しかし運命は二人を引き離し、一人は教会、もう一人は森へと捨てられた。 それぞれの場所で育った男たちは、やがて知ることとなる。 ここはBLゲームの中の世界であるのだということを。再会した双子は、どのようなエンディングを迎えるのであろうか。 小説家になろうにも掲載中です。

処理中です...