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第五章 俺の扱い雑すぎませんか??
第九話*side衛
しおりを挟む目が覚めたら全裸の少尉に抱き締められて眠っていた。
ちなみに俺も裸のままだ。
驚きで思わず身体がこわばる。
事後のあともう一度二人でシャワーを浴びて、そこでもイチャイチャして、そのまま眠ってしまったのでこの状態は驚くべきことではないかもしれない。
だけど今までは俺が目覚めれば身支度を完璧に整えた少尉が居て、こんな風に裸で寝ていたことなどなかった。
心臓が物凄くうるさい。
この状況をどう捉えるべきなのか?
俺なんかと違って完璧な少尉の考えが、俺に判るわけがない。
だけど普段絶対に、他人には見せないだろう一条寺少尉の姿に、思わず顔がニヤけてしまった。
俺だから気を許してくれたってことだろうか?
それなら、すごく……嬉しい。
ニヤニヤしながら眠る少尉を思わずじっと見つめる。
普段もたまに魅入ってしまってはいるが、こんな近くで見つめる機会なんてそうそうない。あったとしても見つめ返されたら恥ずかしくて、俺のほうが耐えられないだろう。
なのでこれ幸いとばかりに思う存分見つめることにする。
眠る少尉の顔はそれはもう綺麗だ。瞳を閉じていると少しだけ幼く見える。
昨日はあんなに男らしかったのに……と、うっかりとご褒美を思い出してしまい、お腹がムズムズしてしまった。
俺は朝から何を考えているんだ……。でも、ご褒美は本当に凄かった。
やってる内容はいつものお仕置きと変わらずセックスなんだけど、お仕置きとご褒美は全然違った。
とにかく少尉が甘かった。
イってるから止まってとお願いすればちゃんと聞いてくれて、俺が落ち着くまで待ってくれる。
俺のお願いを叶えてくれるからと、思い出すと小さな子どものように駄々をこねた、気がする。
しかも腹の中にずっと居てくれなどと……かなり卑猥なお願いもした。
それだけでも羞恥で死ねる。
さらにいつものように気持ち良すぎて訳が分からなくなることもなくて、口走ったあれやこれやや、やった体位などを思い出すと、変な動悸がする。
トキメキというよりやらかしてしまった後のドキドキ感に近い。
なんであんな大胆になれたのかと言えば、少尉が俺を甘やかしてくれたからに他ならない。
少尉がいなければ俺は自己嫌悪に沈み、今頃どこかに逃げていただろう。
やらかした気がして変な動悸はするけれど、それ以上に幸せで、俺の顔は緩みっぱなしで。
こんな風に温かい気持ちでいられるのは、間違いなく一条寺少尉が俺を認めて、褒めて、大切にしてくれるからだ。
それが判るからこそ、俺ばかりが施されるのではなく、ちゃんと少尉と向き合いたい。少尉の役に立ちたい。
そして、もっと少尉の恋人として、少尉以外にも認められるようになりたい。
そのためには頑張りたいという気持ちだけでは駄目だ。ちゃんと考えて行動する必要がある。
具体的な案として階級をあげるのはどうだろう?
せめて曹長クラスに成れれば……、だけど、孤児の俺にはなかなか難しい道のように思える。
月光隊の階級は身分と直結する。平民の殆どは軍曹止まりだ。
はぁーっと思わず大きなため息をついたら、少尉を起こしてしまったようだ。
ふるりと長いまつ毛が揺れて、ゆっくりと涼やかな水色の瞳が俺を見つめる。
本当に綺麗で、完璧な人だ。
キューッと胸に先程とは違う痛みが走る。これはトキメキだ。
好きで好きで大好きで、絶対に離れたくない。俺のものだと大声で叫びたい。
俺はこの人に愛されて、愛しているのだ。
「衛……おはよう。よく眠れたかい?」
「……はい、おはようございます」
だからこそ、やっぱり今のままでは駄目だ。
少し前の俺ならモブだからと簡単に諦めていた。
辛い思いまでして頑張る必要が無いと思った。
割り切ってしまえばどんな事にも傷つかないと思った。
だけど、俺はもう諦めない。
「少尉。俺……もっと軍功をあげて、少尉と共に居るに相応しい存在になります」
俺の決意をしっかりと少尉に伝えれば、少尉は少し驚いたように目を見開いて何度か瞬きをした。
「朝から唐突だね……」
「すみません」
た、確かに。
恋人と裸で抱き合って迎えた朝に、する会話ではなかったかもしれない。
雰囲気違いな決意表明が物凄く恥ずかしい。
「ふふ、いいよ。すごく衛らしくて、可愛いね」
少尉は楽しそうに笑うと俺を抱き寄せる。
俺はされるがままに少尉の胸に体を寄せた。
「僕としては隊員が活躍するのは大歓迎だ。軍功か……そうだね、まず衛は戦果を他人に譲らず自分でトドメを刺す事。それから自分を盾にしない事。この二つを確実にこなそうか」
こめかみや頬にチュッチュッとキスされながら聞く内容ではない気がしたが、俺は出来るだけ神妙な顔で少尉のアドバイスを聞く。
他人に譲っているつもりはなかったけど……そうか援護に徹している時は、結果としてとどめを刺していなかったのかもしれない。目からウロコだ。
まあ、自分を犠牲にしがちなことは気付いてたけど、それはモブだし孤児だと思えば仕方がない選択だ。
「衛、僕としてはすぐにでも後者の方を改善してほしい」
「ぜ、善処します……」
俺の思考が読まれたのか、仕方ないと思ったのが顔に出たのか。
そっと頬を両手で包まれ、真面目な視線に射抜かれれば息を呑む。
やっぱり至近距離で見る少尉はとても美しくて、心臓がうるさく鳴り響く。
俺がドギマギとしていれば、真面目な顔から少尉はふいに優しい笑顔になって俺の頭を雑に撫で回した。
「???? あ、あの?」
「ふふふっ、この間と違って前向きな言葉が聞けて嬉しいんだ」
フフフッと楽しそうに肩を揺らしながら笑い、少尉はぐしゃぐしゃになった俺の髪を丁寧に直してくれる。
「勿論、僕も全力で君を守るけど、君自身も僕の大切な衛を守っておくれ。君はこの世に二人といない、僕の大切な想い人で、可愛い恋人なのだから」
息が止まりそうなほど麗しい顔に、それはもう本当に幸せだと判るほどうっとりした笑顔を浮かべ、少尉は俺の目をしっかりと見つめてくる。
文句なくかっこよくて、かっこいいからこそ許される口説き文句で。
ああ、もう、この人に相応しい人間になるなんて、ちょっと高望みし過ぎなんじゃないかなって、本気で思ってしまうけど。
だけど。
「頑張ります」
少尉と一緒なら、俺はモブでもその他大勢でもなく、日凪衛という一人の人間として、しっかりこの世界で生きられるのではないかと思った。
「………?!?! しょ、少尉????」
「ん? 難しい話は終わっただろう?」
「そ、そうですけど、なんで、大きく??」
「これは朝立ちといって自然現象だよ。ほら、衛のも大きく硬くなってきただろう?」
「て、わっ、少尉、まって、俺の、さわっ、ふぁっ」
「ふふ、可愛い。そうだ衛はお尻をぐちゅぐちゅしないとイけないんだったね」
「!? なっ、朝から、なにを! 待って、少尉っ! ヒギャア!!」
「……衛、こういう時は僕のこと、なんて呼ぶんだっけ?」
「はるまっ、陽真さまっ!! 待ってダメ、駄目ぇ!! おっきぃ、のっ、いきなり、はぃりゃっ! あぁアァァ――ッ!!」
ご褒美の羞恥や、モブから名前のある一人の人間になれるんじゃないかという希望。
朝から精力的過ぎる一条寺少尉の愛に、俺のトラウマなどすっかり頭の中から飛んでいってしまったのだった。
「愛してるよ、僕のかわいいかわいいかわいい衛」
「あっ、ぁんっ、あっ、まっ、おく、も、むぃ、おな、いっぱぁっ、んぁア、ア――――ッッ!!!!」
□ 俺の扱い雑すぎませんか??(完)□
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