まさか「好き」とは思うまい

和泉臨音

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たぶん「好き」だと気付いてる

3.「じゃあ、再来週の土日でいい?」

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 次に各務くんとご飯を食べたのは土曜日の夜。
 俺が大学生の頃からあるラーメン屋で、店主の親父は俺が学生の時と変わらず不愛想だ。

各務かがみくん、旅行に行かない?」

 声をかけるとラーメンを食べる手を止めて俺を見る。

「……は?」
「温泉と美味しいもの食べに旅行に行きたいんだ」
「……いいけど、おれあんまり金ねぇよ」
「あ、宿泊費は俺が出すから安心して。さすがに勤労学生に無理は言わないって」

 この前の失言のお詫びもあるんだけど、社会人の余裕って言うか、半年前に休みなく働いて稼いだお金があるからね。
 普通よりちょっと豪華な食事つきの一泊二日くらいなら出資可能だ。

 各務くんが食事を再開しつつ、俺の真意を探るべく睨んでくる。

「土日だと俺がありがたいんだけど、いつがいいとかあるかな?」
「あんたに合わせるからいつでもいい」

 そっけなく言われたが、俺に合わせると即答してくれる。
 茶髪で両耳にはピアスがいっぱいあって睨んでくるし言葉も悪いけど、基本的にいい子なんだよな。

「じゃあ、再来週の土日でいい?」

 俺が言うとラーメンを食べつつ、一瞬思案してから各務くんが頷いた。

 温泉は部屋にもついているところがいいかな、食事は刺身が美味しいところがいいけど、各務くんは肉の方がいいのかな。
 肉を食べるなら海沿いではないけど……うーん、今回は近場の海沿いの温泉にしよう。

 俺はウキウキとしながら食事を再開した。
 
 初めて一緒に食事をした時もそうだったけど、各務くんとの約束は待ち遠しくて、その約束があるだけでそれまでの日々がとても充実したものになるから不思議だ。

 約束した土曜日の朝、特急列車に揺られつつ隣の各務くんは眠そうに欠伸をかみ殺している。

「一時間はかかるから、寝てていいよ」

 朝までコンビニでバイトをしていた彼は夜寝ていない。普段土曜の午前中は寝てると聞いた事があった。だから土曜日出かける時はいつも午後から約束している。

 それを知っていたから声をかけたんだが、ジトっと睨んできた。なんで睨むんだ?

「……ちゃんとついたら起こすよ。置いてかないから」
「当たり前だろ、んなの」
「じゃあなんで睨むの?」
「それは……寝てて欲しいのかって思って、むかついた」
「……えっと、どういうこと?」

 俺は言われた意味が解らずに首を傾げる。

「……話したくない、とか……そういう……」

 じっと見ていれば、正面に向き直ってぼそぼそと返事をしてくれる。俺はその回答に思わず吹き出して笑ってしまった。
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