せっかく傾国級の美人に生まれたのですから、ホントにやらなきゃ損ですよ?

志波 連

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42 完璧です

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それからというもの、ほぼ毎日のように進捗報告が届きます。
 ミッションは着実に進んでおり、ここに滞在して一か月も経たないうちに、ノースがサウザンドに宣戦布告したという情報が入りました。

「早すぎない?」

「バカですからね」

 久しぶりに戻ってきたリリさんと、お気に入りのテラスで女子会をしています。
 ノヴァさんのお陰なのか、女王がホントにバカなのか予定より早い進捗で、ニューアリジゴクの内装工事は突貫状態だそうです。

 計画当初は一年程度の作戦期間でしたが、この進み具合なら半年くらいで決着するかもしれません。
 そろそろ戻りたいと思っていた時、お義母様からお手紙が届きました。

『ルシアちゃん
 
 少しはゆっくりできたかしら?
 リリと女子トークしてると聞いてとても安心しました。
 そろそろ帰りたいなんて考えてない?
 もしそうなら、どこに帰りたいと思ったのかしら?
 ジュリアちゃんのいるご実家かしら?
 ルイスのいるエルランドかしら?
 それとも別のどこかかしら?

 焦る必要はないので、ゆっくり考えてね。
 ニューアリジゴクは完璧よ。
 進捗が早すぎるけど悪いことではないから、そのまま進めますね。

                              ノバリス』

 私の帰りたい場所は……
 パッと浮かんだのはエルランド家タウンハウスです。
 
「そうか、私はもうエルランドの人なんだ」

 やっと決心がつきました。
 私はルシア・エルランドとして生きていきたいです。
 もしもこの先、ルイス様に本当に好きな人ができたらって考えると、正直怖いです。
 でも、やらぬ後悔よりやった後悔の方が私には納得できます。
 もしかしたらルイス様も同じではないでしょうか。
 
「リリさん!帰りましょう!私はルイス様の妻です!」

「吹っ切れましたね!お姉さま」

 お姉さま?
 今リリさんは私をお姉さまと呼びましたよね?
 ジュリア・・・
 帰ったら作戦の進捗状況より先に確認することができてしまいましたね。

 先に報告に向かうというリリさんを見送り、私は荷造りを始めました。
 かなり長期滞在だったので、仲良くなったスタッフのみなさんがお別れ会をしてくれるそうです。
 明後日には出発という夜、思いがけない出来事がありました。

「ルシア!迎えに来たよ!」

 ルイス様です!

「ルイス様!どうされたのですか?わざわざ来ていただけるなんて」

「そりゃ愛する妻がやっと戻ってくる決心をしてくれたんだ!途中で気が変わらない様に迎えに来るのは当然だろう?」

「会えて嬉しいです。長い間留守にして申し訳ございませんでした」

「そんなことないよ。ルシアも辛かっただろうけど、私も頑張ったんだよ?たくさん褒めて欲しいな」

「はい、たくさん褒めますよ。私の大事な旦那様」

「今日は泊まろうね。今日は気を失わないでね。私の初陣は今夜だ」

「初陣!今夜!」

「そうだよ。今回のミッションが終わったら結婚式をあげようね。みんなを呼んでお披露目をしよう。ちょっとフライングだけどもうこれ以上は待てない。ルシア愛してる」

「ルイス様?」

「ルイスって呼んで」

「ルイス?」

「ああ…君に呼ばれるとこんなにうれしいんだね。うれしいよルシア」

「私も嬉しいで…」

 言い終わらないうちに私の唇は塞がれていました。
 ルイス様からの初めてのキスは、私の人生で初めてのキスです。
 ファーストキスというものは学園の裏庭や、花壇の茂みでするものだと思っていましたが、そんな機会もなくこの年まで来た私は、何の罰ゲームか人がたくさんいるホテルのロビーで経験することになってしまいました。

「ルイス様、恥ずかしいです」

「なにが?」

「キスが」

「慣れるまでしようか?」

「部屋に行きましょう」

 もしかしたら私から誘ったのでしょうか。
 目が覚めたときはもうお昼前でした。
 初陣を見事な勝利で飾ったルイス様は、誇らしそうな顔でまだ眠っています。

 私はそっとベッドを抜け出して鏡台の前に座りました。
 昨日と同じ私なのに、昨日とは違う私が戸惑った顔で映っています。
 夢中だった私たちは窓を閉め忘れたのでしょうね。
 体中に虫刺されの赤い痕がついていました。
 かゆくないので不思議です。
 体を清めて部屋のテラスに出ると、隣の部屋のテラスからリリさんの声です。

「おはようございます、奥様。お体は大丈夫ですか?」

「うん、なんだか少し歩くのが辛いけど大丈夫」

「あら?あれほど我慢に我慢を重ねていたから野獣襲来だと思ったのに、やっぱりヘタレはヘタレですね」

 リリさんの毒舌!強烈ですね。
 彼女が義妹に?あれ?ジュリアって彼女がいるような事を言ってたような?
 また確認しなくてはいけないことが増えましたね。

「お姉さま、心配しなくてもジュリア様は浮気者ではありませんよ?彼女にはきっちり振られてますから。私が確認しています。そして傷心につけ込んだ私の勝利です」

 帰っても確認する必要は無くなったようです。

「ルシア?」

 ルイス様がお目覚めの様です。
 リリさんの姿はもうありませんでした。

「おはようございます。ルイス」

「おはようルシア。体は大丈夫?」

「はい、少しギシギシしてる感じですが大丈夫です。お腹すきませんか?」

「ああ、そう言えばお腹空いたかな。食堂に行く?それともここに運ばせようか?」

「ではここで」

 その時部屋のドアがノックされました。
 私をテラスに隠してから、ルイス様がガウンを羽織ってドアを開けました。
 カーテンの隙間から覗くと、ルイス様がワゴンを押しています。
 
「なぜか食事が来たよ」

 絶対覗いてますよね!リリさん!
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