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41 やりたいこと
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山越えの道を使って入国した私たちは、市場でノース国の村娘の衣装を購入して王都に向かいました。
王都に向かう道すがらで感じたことは、ノース国は想像していたよりもずっと貧しいという事です。
市場にはあまり商品が並んでおらず、人通りもまばらです。
それは王都に入ってからも同じでした。
公園らしき広場でリリさんが買ってきてくれたサンドイッチを食べていたら、お腹を空かせた子供たちが寄ってきました。
みんな薄汚れた服を着ていて、とても瘦せています。
「リリさん。どうすればいいのでしょうか」
「そうですね、奥様のお考えは手に取るように分かりますが、いまはどうしようもありません。下手な情けは仇となります。さっさと口に放り込んで逃げましょう」
「そうですよね……」
私はリリさんの言う通りにしましたが心が千切れるような思いがしました。
夕方になり、リリさんが用意してくれていた黒いピタッと体に張り付くような服に着替え、城に潜入することになりました。
リリさんが先に進み、安全を確認してから私に合図を送ります。
その合図で私は走ってリリさんのところまで行くのですが、これがなかなか楽しのです。
「大丈夫ですか?奥様」
「ええ、なんだか楽しいです」
「それにしてもザルのような警備体制ですね」
「そうなんですか?」
「だって奥様がここまで来れているじゃないですか」
「なるほど」
そんな話をしていたら、後ろでガサッと音がしました。
リリさんが咄嗟に身構えましたが、すぐに緊張を解きました。
奇麗なピンクのリボンをした黒猫が震えています。
「この子は王子が飼っている猫です。丁度いいので人質にしましょう」
「猫でも人質っていうのですか?」
「そうですね……猫質?」
リリさんは素早い動きで黒猫を捕まえて、どこからか出した袋に入れました。
「奥様、行きますよ。クライマックスの王城潜入です」
庭の木々の間を抜けてリリさんは音もなく走ります。
私は必死で後を追いました。
「入りましょう」
リリさんは躊躇なく進みます。
どこからか音楽が聞こえてくるので、夜会でも開催されているのでしょうか。
「王太子の部屋に行きましょう」
柱の影に身をひそめながら進みますが、誰とも出会わないのでそれほど盛り上がらないうちに王太子の部屋についてしまいました。
リリさんがノックをすると、中から子供の声がしました。
「誰かな?」
リリさんは少しだけ扉を開けて猫を中に入れました。
「ベル!帰ってきたんだね」
そっと扉をしめたリリさんは、私に小さく頷きそこを離れました。
王城を出るまで口を利かず、そのまま宿に戻りました。
部屋に入って湯あみの準備をしながら、リリさんは私に言いました。
「どうでしたか?初日は冒険コースにしてみましたが」
「もうドキドキでした!貴重な経験をありがとうございました」
「いえいえ。でもかなり緊張したので、明日からはピクニックコースにしましょう」
「ピクニックですか?おう王城には行かないのですか?」
「明日はもう女王の誕生日パーティーですからね、邪魔になるといけないので。後はメンバーを信じて待つだけです。エルランド家領地に湖があるのはご存じですか?」
「はい、アレンさんに習いました。素敵な古城があって宿泊施設になっているとか」
「そうです。奥様にはそこで暫し滞在していただきます。私はいろいろ仕事があるので不在にしますが、一人でゆっくり休んでください」
「わかりました。でも寂しいので早く帰ってくださいね」
「できるだけ急ぎます。明日は早く出発しますので、食事をしたらお風呂に入って寝てください」
「は~い」
ワクワクしたとはいえ、人生で初めての潜入体験でしたから、相当気を張っていたのでしょう。
ベッドにもぐりこむとすぐに眠ってしまいました。
翌朝私たちは、まだ少し暗いうちに宿を出ました。
今度は大きな通りを抜けて、正規ルートで国境を超えました。
通行証をふと見ると、私の名前はルーア・ランドで職業は金融業でした。
もう少しひねって欲しかったと思いましたが、口には出しませんでした。
来た時と同じように、幼少の頃の思い出話や学生時代の思い出などを話しながら、私たちは馬を進めました。
リリさんはしきりとジュリアのことを聞きたがります。
面白いので、七歳までおねしょをしたことや、乳歯が抜けたとき半日泣き止まなかったことなどをお話ししました。
領地の湖にある古城は、思わず感嘆の声を上げてしまうほど素敵です。
チェックインの手続きをしたリリさんは、すぐに出発しました。
早くて一週間だと言っていましたので、その間は私は一人です。
部屋で少し仮眠をとった後、着替えて食堂に向かいました。
新婚旅行だと一目でわかるようなカップルも数組いて、一人だということが少し寂しく感じます。
考えてみると、こうやって一人だけで何もすることが無く過ごすのは初めてです。
食事を終えた私は、湖を一望にするテラスで紅茶をいただきながらボーッとしました。
奇麗に並んだクッキーを手に取って、食べずにじっと見てしまいます。
このクッキーがあれば、あの子供たちのお腹を満たせるのではないか…
そうすれば子供たちがお腹を空かせなくてすむのか…
「帰ったらすぐにルイス様に相談しよっと」
私はそう口に出して、ふとルイス様に会いたいと思いました。
湖を見ると、さっきまでまん丸だった夕日は残照を残すだけで最後の輝きを放ち、この世とは思えない美しさを見せつけています。
「きれいね」
一人きりでいると、思ったことを口に出してしまうようです。
王都に向かう道すがらで感じたことは、ノース国は想像していたよりもずっと貧しいという事です。
市場にはあまり商品が並んでおらず、人通りもまばらです。
それは王都に入ってからも同じでした。
公園らしき広場でリリさんが買ってきてくれたサンドイッチを食べていたら、お腹を空かせた子供たちが寄ってきました。
みんな薄汚れた服を着ていて、とても瘦せています。
「リリさん。どうすればいいのでしょうか」
「そうですね、奥様のお考えは手に取るように分かりますが、いまはどうしようもありません。下手な情けは仇となります。さっさと口に放り込んで逃げましょう」
「そうですよね……」
私はリリさんの言う通りにしましたが心が千切れるような思いがしました。
夕方になり、リリさんが用意してくれていた黒いピタッと体に張り付くような服に着替え、城に潜入することになりました。
リリさんが先に進み、安全を確認してから私に合図を送ります。
その合図で私は走ってリリさんのところまで行くのですが、これがなかなか楽しのです。
「大丈夫ですか?奥様」
「ええ、なんだか楽しいです」
「それにしてもザルのような警備体制ですね」
「そうなんですか?」
「だって奥様がここまで来れているじゃないですか」
「なるほど」
そんな話をしていたら、後ろでガサッと音がしました。
リリさんが咄嗟に身構えましたが、すぐに緊張を解きました。
奇麗なピンクのリボンをした黒猫が震えています。
「この子は王子が飼っている猫です。丁度いいので人質にしましょう」
「猫でも人質っていうのですか?」
「そうですね……猫質?」
リリさんは素早い動きで黒猫を捕まえて、どこからか出した袋に入れました。
「奥様、行きますよ。クライマックスの王城潜入です」
庭の木々の間を抜けてリリさんは音もなく走ります。
私は必死で後を追いました。
「入りましょう」
リリさんは躊躇なく進みます。
どこからか音楽が聞こえてくるので、夜会でも開催されているのでしょうか。
「王太子の部屋に行きましょう」
柱の影に身をひそめながら進みますが、誰とも出会わないのでそれほど盛り上がらないうちに王太子の部屋についてしまいました。
リリさんがノックをすると、中から子供の声がしました。
「誰かな?」
リリさんは少しだけ扉を開けて猫を中に入れました。
「ベル!帰ってきたんだね」
そっと扉をしめたリリさんは、私に小さく頷きそこを離れました。
王城を出るまで口を利かず、そのまま宿に戻りました。
部屋に入って湯あみの準備をしながら、リリさんは私に言いました。
「どうでしたか?初日は冒険コースにしてみましたが」
「もうドキドキでした!貴重な経験をありがとうございました」
「いえいえ。でもかなり緊張したので、明日からはピクニックコースにしましょう」
「ピクニックですか?おう王城には行かないのですか?」
「明日はもう女王の誕生日パーティーですからね、邪魔になるといけないので。後はメンバーを信じて待つだけです。エルランド家領地に湖があるのはご存じですか?」
「はい、アレンさんに習いました。素敵な古城があって宿泊施設になっているとか」
「そうです。奥様にはそこで暫し滞在していただきます。私はいろいろ仕事があるので不在にしますが、一人でゆっくり休んでください」
「わかりました。でも寂しいので早く帰ってくださいね」
「できるだけ急ぎます。明日は早く出発しますので、食事をしたらお風呂に入って寝てください」
「は~い」
ワクワクしたとはいえ、人生で初めての潜入体験でしたから、相当気を張っていたのでしょう。
ベッドにもぐりこむとすぐに眠ってしまいました。
翌朝私たちは、まだ少し暗いうちに宿を出ました。
今度は大きな通りを抜けて、正規ルートで国境を超えました。
通行証をふと見ると、私の名前はルーア・ランドで職業は金融業でした。
もう少しひねって欲しかったと思いましたが、口には出しませんでした。
来た時と同じように、幼少の頃の思い出話や学生時代の思い出などを話しながら、私たちは馬を進めました。
リリさんはしきりとジュリアのことを聞きたがります。
面白いので、七歳までおねしょをしたことや、乳歯が抜けたとき半日泣き止まなかったことなどをお話ししました。
領地の湖にある古城は、思わず感嘆の声を上げてしまうほど素敵です。
チェックインの手続きをしたリリさんは、すぐに出発しました。
早くて一週間だと言っていましたので、その間は私は一人です。
部屋で少し仮眠をとった後、着替えて食堂に向かいました。
新婚旅行だと一目でわかるようなカップルも数組いて、一人だということが少し寂しく感じます。
考えてみると、こうやって一人だけで何もすることが無く過ごすのは初めてです。
食事を終えた私は、湖を一望にするテラスで紅茶をいただきながらボーッとしました。
奇麗に並んだクッキーを手に取って、食べずにじっと見てしまいます。
このクッキーがあれば、あの子供たちのお腹を満たせるのではないか…
そうすれば子供たちがお腹を空かせなくてすむのか…
「帰ったらすぐにルイス様に相談しよっと」
私はそう口に出して、ふとルイス様に会いたいと思いました。
湖を見ると、さっきまでまん丸だった夕日は残照を残すだけで最後の輝きを放ち、この世とは思えない美しさを見せつけています。
「きれいね」
一人きりでいると、思ったことを口に出してしまうようです。
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