銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第19話:ノヴァルナ包囲網

#20

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 セークモートン星系に展開したウォーダ軍の、第6、第33、第35の三個宇宙艦隊は、アーザイル/アザン・グラン連合軍の第二次攻勢に対し、積極的防御で必死に支えていた。

 アーザイル/アザン・グラン連合軍に残された時間はあと三時間。これを過ぎると本当の標的である、ヤヴァルト宙域内を撤退中のノヴァルナ艦隊を、捕捉するタイミングが失われてしまう。三時間以内にサンザーの軍を突破して、この星系を抜き、さらにサンザーの領地ウーサルマ星系を縦断。そこから最短距離でDFドライヴを繰り返す事で、“ミョルジ三人衆”の追撃を受けているノヴァルナの部隊を、挟撃できるのだ。逆に言えばサンザー達は、ここであと三時間持ち応えれば、戦略的には勝利を得られるという事である。

「敵BSI部隊、第二波。来ます」

 前衛に出た第33艦隊のBSI部隊から通信が入る。BSIなどの機動兵器は、『レイメイFS』に乗るサンザーが全て直接指揮を執っており、第6と第33艦隊は、第一回戦で消耗した第33艦隊のスーゲット=アーチに任せていた。

「続いて敵艦隊接近。左舷方向258マイナス06と、右舷方向030マイナス04。左はアーザイル軍、右はアザン・グラン軍!」

 第6艦隊旗艦の宇宙空母『バンガーヴェルダ』からも、敵艦隊発見の報告。『レイメイFS』の戦術状況ホログラムにも、旗艦からのデータリンクが更新されて、左右から分かれて接近する、敵部隊が表示された。

“第一波はBSI部隊のみ。第二波で艦隊との連携…ナギ殿の作戦か”

 内心でそう呟いたサンザーは、口元を引き締める。敵のアーザイル軍を指揮しているのが、現当主ナギ・マーサス=アーザイルである事は分かっていた。おそらくナギは、ウォーダ軍BSI部隊総監であるサンザーが、機動兵器戦の指揮を執っている事を考慮し、第一波ではBSI部隊のみを投入。ウォーダ軍のBSI部隊を疲弊させておいて、宇宙艦隊とBSI部隊の総合戦を企図したのだろう。となると敵は、ノヴァルナ部隊との決戦に温存しておいた戦力も、参加させているはずだ。

 前回の第一回戦では、敵連合軍はほとんどアーザイル軍だけが戦っており、アザン・グラン軍は消極的な遠距離砲撃を行うに留まっていた。しかしその結果、敵の作戦は失敗し、時間的余裕は無くなって来ている。このままでは目的を果たせないと判断したアザン・グラン軍は、ようやく重い腰を上げたという事だろう。
 
 サンザーが考えているうちに、コクピットの全周囲モニターに、急速接近して来る敵の反応が、赤いマーカーで無数に映し出される。まずはこれを撃破しないことには、全ては始まらない。全てのBSI部隊に交戦開始を指示し、自らも『レイメイFS』の重力子スロットルを開いていく。

「行くぞ。敵編隊の一番密度の高い箇所を目指す!」

 十文字ポジトロンランスを大きくひと振りして、一気に加速を始める『レイメイFS』。ここまでの死闘で九機まで減った、“ハンター中隊”の『シデン・カイXS』がまず従い、さらに周辺のBSIユニットやASGULの中隊が続く。

 一方でスーゲット=アーチが指揮する第6と、第33艦隊は、右方向から接近して来るアザン・グラン軍へ舵を切った。サンザーはこれに、BSI部隊の半数以上を随伴させる。
 そして左方向から接近するアーザイル軍には、ここまで戦力を温存させていた、ヴェルージ=ウォーダの第35艦隊が向かっている。ウォーダ側の数的不利は変わらないが、その差を少しでも埋めようという、サンザーの意図だった。

“我ながら、このような下策をとるとはな…”

 操縦桿を握りながら、サンザーは苦笑いを浮かべる。自分が行った戦力配置のその裏にあるのは、それぞれの将兵の命懸けの覚悟…つまり精神論で、戦力差を縮める事を期待したものだからだ。
 自らが『レイメイFS』で戦場にある時は、“鬼のサンザー”とも呼ばれて恐れられる、カーナル・サンザー=フォレスタであるが、普段の指揮官としての戦術思考は、極めて論理的であった。そんな男が将兵の忠誠心と、覚悟を戦力の底上げに期待しなけれなならないのは、それだけサンザーとしても、切迫した状況だという事を示している。

 目前に迫るは、アザン・グラン軍のBSI部隊。指揮官機と思われる、先頭の親衛隊仕様『ハヤテGC』が、超電磁ライフルの銃口を向けて来た。ヘルメット内に鳴るロックオン警報。その時にはすでに、サンザーは操縦桿を一気に倒し、機体を九十度ダイブに入れている。

「ASGUL隊は援護射撃。BSI隊は近接戦闘でかかれ!」

 サンザーは自分に撃ち掛けられる、複数の銃弾を悉く回避しながら命令を発し、敵編隊の只中に突入する。瞬時に間合いを詰めた敵の『ハヤテ』に鑓を一閃、十文字に形成された穂先が、機体を真っ二つにする。

「カーナル・サンザー=フォレスタここにあり! 我こそはと思いし者は挑んで参るがいい!!」

 敵の爆発光を背後に、全周波数帯で名乗りを上げるサンザーであった。




▶#21につづく
 
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