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第4話:ミノネリラ騒乱
#33
しおりを挟むだがノヴァルナは甘くない。トモスの第2艦隊が戦力の立て直しではなく、本格的に撤退を開始したと察知するや否や、『センクウ・カイFX』を『クォルガルード』へ帰還させ、『ホロウシュ』と残りの艦を置いたまま、トミック星系の第五惑星ドボラへと引き返した。トモスの艦隊を足止めしただけでなく、ドボラ城攻略にも加わるためである。
ノヴァルナがドボラ城付近へ到着したのは翌11月15日。城の攻防戦もたけなわとなっている時だった。戦場をやや離れた位置からノヴァルナは、『センクウ・カイFX』を発艦させる。
戦況は激戦模様で、ナルガヒルデの第1艦隊が、ヨヴェ=カージェスの第12宙雷戦隊を使って、ドボラ城の一部を機能停止に陥れたものの、敵のBSI部隊が思いのほか強兵で、一進一退を繰り広げているらしい。というのも敵将ブルティカ・ガルキウ=キーシャとその妻ヘイリア、そして嫡男ブルザは三名ともBSHOのパイロット能力を有し、それぞれが専用機で出撃を繰り返しては、ウォーダ軍に多大なダメージを与えているからだ。
「敵にBSHO乗りが三人もいるんなら、俺も加わらねぇ話はねーだろ」
単身出撃すると聞いて止めに入ったナルガヒルデに対する、ノヴァルナのあっけらかんとした返答がこれである。「絶対におやめ下さい」という言葉の代わりに、はぁ…とため息をついたナルガヒルデは、言い出したら聞かない主君に告げた。
「第1戦隊の直掩隊を、殿下の護衛に回します。これだけは私も譲れませんので、必ずお守りください」
「わかった。わりィな」
苦笑いと共にノヴァルナは、不機嫌そうなナルガヒルデに詫びの言葉を返す。ノヴァルナの『センクウ・カイFX』、カーナル・サンザー=フォレスタの『レイメイFS』、そしてトゥ・シェイ=マーディンの『テンライGT』、これでBSHOが三機となった事になる。
やがてノヴァルナの座るコクピットの全周囲モニターに、黄緑色に光る二十四個のマーカーが接近して来るのは表示された。ナルガヒルデが派遣した第1戦隊の直掩隊だ。彼等は『ホロウシュ』がノヴァルナと共に第1特務艦隊で行動する際に、代わりに第1戦隊の直掩を行う部隊で、全員が親衛隊仕様の『シデン・カイXS』を与えられたエリート集団だ。先方からノヴァルナの元へコールが入る。
「ウイザードゼロワン。応答願います」
「おうよ」と、ぶっきらぼうなノヴァルナ。
「こちらスレイヤー中隊。これよりそちらの指揮下に入ります」
「おう。宜しく頼まぁ」
ノヴァルナのBSHO出現は、当然ながら敵将ブルティカ・ガルキウ=キーシャと、その軍の知るところとなる。この時ブルティカは妻のヘイリアと共に、カーナル・サンザー=フォレスタと戦っていた。百戦錬磨のサンザーも、夫婦の連携で攻め込んで来る二機のBSHO相手には分が悪く、防戦の時間が圧倒的に長くなっている。
正面から打ち込んで来るヘイリアのBSHO、『ギンショウTD』のポジトロンパイクを、『レイメイFS』に乗るサンザーは、左手一本で握った大型ポジトロンランスの柄で防ぐと同時に機体を右方向へ半回転、右手に握るクァンタムブレードを横に大きく薙ぎ払った。バチン!…と火花が飛び散ったのは、後方に回り込んだブルティカのBSHO『キンショウWS』が、ポジトロンパイクを突き出して来ていたからだ。
すると二機の敵BSHOはさらに、二撃、三檄を繰り出して来る。その悉くを鑓と刀で打ち払って、『レイメイFS』は機体を加速、間合いを取った。サンザーと対峙したヘイリアは、機体を並べている夫のブルティカへ通信を入れる。
「あなた。ここは私に任せて、あなたはノヴァルナ殿を!」
ヘイリアは四十代半ばで、黒いライオンヘアの女丈夫。ギルターツ=イースキーの親衛隊員を務めていた事もある、元エースパイロットだ。
「わかった。必ずやノヴァルナ殿を仕留めて来る!」
そう応じるブルティカは五十代前半の、筋肉質な大男。見るからに剛勇な印象を与える。機体を翻して飛び去る『キンショウWS』。
残った『ギンショウTD』のヘイリアに、サンザーは『レイメイFS』が右手に握っていたQブレードを鞘に戻すと、攻撃的な笑みを浮かべて呼び掛けた。
「夫のために我を足止め。いや、武辺の奥方の鏡ですなぁ」
それに対するヘイリアの返答が小気味いい。
「勘違いなさらないように。私が残ったは足止めなどではなく、名高き“鬼のサンザー”ことカーナル・サンザー=フォレスタを討ち取り、功名を挙げるため!」
この言葉を聞いたサンザーは「ハッハッハッ!…」と笑い声を発し、操縦桿を握り締めながら、攻撃的な笑みをさらに大きくした。
「これは失礼した。ならば“鬼のサンザー”の二つ名の通り、女とて容赦はしませんぞ!」
そしてタイミングを合わせたのように、『レイメイFS』と『ギンショウTD』は、対峙していた位置から急加速。ドボラ宇宙城を背景に、激しく得物を打ち付け合った………
▶#34につづく
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