銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第13話:新たなる脅威

#19

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 ミディルツの返答を聞いたハートスティンガーは、“そうこなくっちゃなぁ”という眼で、ニタリと笑みを大きくする。

 その直後、偵察に出していた駆逐艦から、ミディルツのもとへ連絡が入る。これを聞いたミディルツは、司令官達のホログラム像に告げた。

「敵が動きだした。我が軍もこれより迎撃行動に移る」

 その言葉に対し司令官達のホログラム像は、頷きながら消え去る。ミディルツは一つ息をついて、艦隊参謀に指示を出した。

「全艦針路変更。敵艦隊の前面に向かえ」



 ウォーダ側の動きは当然ながら、三人衆も掴んでいる。ただ各惑星の公転軌道上に、一個艦隊ずつを配置すると見られる動きは、彼等の予想とはズレだものであった。彼等の予想では全艦隊が一丸となって、迎撃に向かって来ると思っていたのである。

「どういう事だ…これでは各個撃破して下さいと、言っているようなものだ」

 偵察情報から得たウォーダ軍各艦隊の動きを、戦術状況ホログラムが映し出しているのを見詰め、ソーン=ミョルジは眉をひそめた。これにトゥールス=イヴァーネルが応じる。

「ああ。だが初戦で巧みな動きを見せたアルケティの事だ。我々の予想とは、何か別の思惑があるのだろう」

 ここに来て三人衆は、敵将ミディルツ・ヒュウム=アルケティの将才に、着目せざるを得なくなっていた。思えば昨年、前星帥皇テルーザを弑逆し、その弟で現星帥皇のジョシュアも葬ろうとした際、逃亡を手助けしたのもミディルツと、フジッガであったのだ。因縁の相手とはこの事であろう。ソーンが煩わしげに言う。

「アルケティめ…ここでも立ち塞がるとは、忌々しい奴」

「ともかくこちらは、迎撃に出て来た者から、全戦力で圧し潰していくだけだ。会敵予想地点を算出し、戦闘に備えよう」

 三人衆筆頭のナーガスがそう言うと、ソーンとトゥールスは口元を引き締めて頷いた。

 やがておよそ三時間後、ミディルツ率いる第1防衛艦隊は、前哨駆逐艦から敵艦隊発見の報告を受ける。旗艦『アルバルドル』に乗るミディルツは、指揮下の将兵に即時命令を発した。

「全艦戦闘態勢。砲雷撃戦用意、艦載機発進準備」

 ここが踏ん張りどころ!…と内心での決意は硬いが、命令する口調は落ち着いたものである。昨日の戦闘で艦隊戦力は、七十パーセント程度にまで落ちていた。実は当初、三人衆が想定したように残存部隊を一つにまとめて、迎撃に向かう事も考えたのだが、それをすると全部隊の損耗の割合が、容易く知られてしまうため、分散多重防御陣を選択したのだ。
 
「全艦攻撃開始」

 敵艦隊との間合いを見て、ミディルツは戦いの火蓋を切る。

「攻撃開始!」

「撃ちーかたーはじーめ!」

「対艦誘導弾、ぅてーーー!!」

 ミディルツ艦隊は戦艦、重巡、軽巡、駆逐艦の順で縦三段に並び、“三人衆軍”艦隊を高速で横切りながら、ありったけの火力を放ち始めた。いくつもの閃光がハイスピード撮影の花の開花のように輝き、艦の乗員を死の花畑へ誘おうとする。
 三人衆側の駆逐艦が艦の前方を砕かれ、艦隊行動から脱落を始めると、艦腹を大きく抉られた軽巡航艦が、破孔から焔を噴き出す。
 さらに重巡航艦以上の大型艦には、ミディルツ艦隊の軽巡や駆逐艦から宇宙魚雷が一斉に放たれた。

 ただやはりミディルツ直卒の一個艦隊と、“ミョルジ三人衆”の九個艦隊では、数が違い過ぎる。自律思考AIを搭載し、敵からの迎撃への対抗能力を持った宇宙魚雷も、数の力で大半が撃破され、戦艦三隻と重巡航艦四隻に、一発ずつが命中しただけに留まる。

 しかしそれでも、元来大型艦を仕留めるための宇宙魚雷であるから、被弾した艦のダメージは大きなものとなった。そして戦艦や重巡航艦は、艦隊の中核を成すものだ。その艦隊の中核部分が揺らぐと、影響は全体へと伝播する。各艦への損害はそれほどではなくとも艦列が乱れ、全部隊の行き足が遅れる要因となった。

 無論、九個艦隊から集中攻撃を受けた、ミディルツ艦隊の損害も大きい。ミディルツの旗艦『アルバルドル』にも、敵の戦艦部隊からの主砲射撃が集中し、六枚展開していたアクティブシールドは全て喪失。艦を直接覆うエネルギーシールドも破られて、三発の直撃弾を喰らっている。
 その他の戦艦も大小損害を受け、重巡二隻と駆逐艦六隻を失ったが、ミディルツ以下総員の戦意は衰えていない。敵艦隊の前方を横断し、そのまま離脱したミディルツ艦隊だが、“三人衆軍”部隊の行き足が乱れたのを確認し、次の攻撃を開始する。

「BSI部隊、発艦せよ」

 ミディルツからの命令を受け、砲雷撃戦には参加せず、待機していた空母部隊から、艦載機が飛び出し始める。“三人衆軍”の進軍速度が低下するのを待っての出撃であり、ミディルツ艦隊の少々強引な敵前横断作戦は、その進軍速度を低下させるためのものであったのだ。

 この状況に三人衆のナーガス=ミョルジは、眉間に深い皺を刻んだ。迎撃のために自軍もBSI部隊を発進させてしまうと、さらに進軍速度が落ちてしまうからである。ここでもミディルツの思惑に嵌められたと言っていい。




▶#20につづく
 
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