銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第13話:新たなる脅威

#18

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 ミディルツのBSI部隊による電子戦の影響は、“ミョルジ三人衆”の本隊も知るところとなった。派遣した宙雷戦隊との連絡が途切れ途切れになり、戦術状況ホログラムも、伝えて来る情報がひどく減少し始めたからだ。総旗艦『シンヨウ』の艦橋で、ノイズだらけの戦術状況ホログラムを睨んだナーガス=ミョルジが、表情を強張らせて問う。

「状況は!? どうなっている!?」

「状況不明! 強力なジャミングフィールドに、取り込まれた模様!」

 オペレーターからの不安しか与えない報告に、ナーガスは声を荒げた。

「何でもいい! 何か分かる事は無いのか!?」

 それに応じて情報参謀と通信参謀が、オペレーター席へ歩を急ぐ。コントロールパネルを自ら操作し、オペレーターと何事かを確認し合うとナーガスに告げた。

「断片的ですが長距離センサーの反応と、受信及び傍受した超空間量子通信から、我が方の宙雷戦隊は、敵BSI部隊の襲撃を受けて、被害甚大と思われます」

「!!」

 これを聞いてナーガスだけでなく、その両側にいるソーン=ミョルジと、トゥールス=イヴァーネルのホログラムまでもが、身をすくめる。そして三人の中では一番、戦術的センスに優れたトゥールスは、司令官席から身を乗り出して意見を述べた。

「これはマズい! 動ける艦を動員して、救援に向かうべきだ!」

「本気で言っているのか、トゥールス?」

 戸惑った反応を見せたのはソーンである。第八惑星の裏側に集結した自軍が、ようやく立て直せそうな状況にあるのだから、無理もないと言える。

「無論、本気だ―――」と言ったトゥールスは続ける。

「ウォーダ軍の目的は、この集結地じゃない。宙雷戦隊を釣り出して叩き、相対戦力を漸減する事だ。これ以上、皇都攻略の戦力を減らされるわけにはいかん」

「な、なるほど。だがまだ、応急修理中の艦はどうする?」

 ソーンの問いに、トゥールスは少し思案顔をして応じた。

「第九惑星まで、自力で後退させよう。キヨウからさらに離れる事になるが、敵の別動隊が狙って来る可能性がある」

 結果的にトゥールスのこの読みは正しかった。実はこの第八惑星裏側の艦隊集結地に向かって、フジッガが指揮する別動隊が接近中だったからだ。
 だがフジッガ艦隊からの襲撃は回避したものの、ミディルツのBSI部隊に狙われた三人衆側の宙雷戦隊は、戦力を半減させるほど大きな被害を、受ける事となったのであった。
 
 戦力をさらに削られた“三人衆軍”は、第九惑星のクジョンまで後退し、これを背後において防御陣を構築する。戦力的にはまだこちらの方が数は多く、背面に第九惑星を置いて、後方からの襲撃にも備えたこの陣形には、数的不利のウォーダ側は流石に簡単に手は出せない。だが戦略的には、皇都襲撃の足止めに成功していると言っていい。

 ただウォーダ軍も、数的不利な状態で二度も戦いを挑んだため、第九惑星クジョンまで三人衆を追撃する事は出来なかった。こちらも一旦、第五惑星公転軌道上へ戻り、両軍とも本格的な部隊の立て直しに入って、侵攻一日目は終了する。

 そして二日目。“ミョルジ三人衆”は合議で戦術方針を変更、ウォーダ側の迎撃態勢の如何に関わらず、九個艦隊全戦力で皇都惑星キヨウを目指す事とした。つまりキヨウ攻略部隊を温存せず、ウォーダ側の迎撃艦隊が出てくれば、優勢な戦力差で圧し潰す、正攻法で行こうというのである。
 それならば最初からそうしておけ…と思わなくもないが、艦隊の数だけを見て、武将としての認知度がまだ少ないミディルツとフジッガの、艦隊指揮能力の高さを知りえなかったのであるから、致し方ない面もあった。

 対するウォーダ側は、タクンダール家の残存部隊を除き、停泊地の第五惑星ゴージョの公転軌道から出動。第七惑星ナジョン公転軌道上にミディルツ艦隊、第六惑星ロックージョ公転軌道上にフジッガ艦隊。さらにキヨウの直掩についていたマスクート・コロック=ハートスティンガーの、第3防衛艦隊が第四惑星シージョー公転軌道上まで進出。キヨウ直掩を星系防衛艦隊に任せる、五段構えの防御陣を展開した。


「今日一日だ―――」


 フジッガ・ユーサ=ホルソミカとマスクート・コロック=ハートスティンガー、そしてタクンダール家の司令官二人のホログラムに、そう呼び掛けたのは第1防衛艦隊旗艦『アルバルドル』に乗るミディルツだ。

「今日一日、踏み止まれば、周辺宙域から援軍が来る」

 その言葉に四人の司令官は、力強く頷いた。トゥールス=イヴァーネルに作戦の一部を見抜かれたとは言え、ここまではほぼ想定通りだ。

「本当は無傷の俺達が、第一防衛線を張るべきなんだがな」

 野武士的風貌のハートスティンガーのホログラムが、黒い顎髭を指でゴリゴリと撫でながら、攻撃的な笑みで言う。ハートスティンガーの第3防衛艦隊は、ここまでキヨウ直掩任務に割り当てられており、戦闘には参加していない。これを聞いてミディルツも、口許を歪めて返答した。

「ご心配なく。次はハートスティンガー殿にも、存分に働いて頂きますので」




▶#19につづく
 
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