銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第13話:新たなる脅威

#26

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 その本心が奈辺にあるかは不明だが、セッツァーの説得がジョシュアの“暴走”を防いだのは幸いだった。本当に戦場に出て来られると、指揮系統に混乱をきたすのは必至だったからだ。

 一方、皇都攻防戦の戦況の方は、“ミョルジ三人衆”の軍勢が数の優位を活かせないまま、膠着状態に陥りつつある。
 ミディルツ・ヒュウム=アルケティとフジッガ・ユーサ=ホルソミカ、マスクート・コロック=ハートスティンガーの三個艦隊と、タクンダール家から派遣されていた二個艦隊、そしていち早く急行して来たヨゼフ・サキュダウ=ミョルジの艦隊による、決死の防御戦闘が繰り返された結果、これの突破に手間取り、皇国側の新たな増援部隊の到着を許してしまったのだ。

 新たな増援は隣接するセッツー宙域の独立管領、イ・クーダ家とイ・ターミ家から派遣された各一個艦隊。この二個艦隊の出現に気付いた三人衆は、部隊の右舷側やや下方、第六惑星ロックージョと第七惑星ナナージョの公転軌道の中間に存在する、小惑星帯カトーラ・ガーヴァの中へ退避した。後方から挟撃されるのを恐れての行動である。

 ただ、この退避行動で皇都惑星キヨウの攻略が、さらに困難となったのは否めない。最も警戒すべきオウ・ルミル宙域のウォーダ軍は、今回の侵攻で連携をとっているロッガ家の残存部隊が、牽制行動を行って引き付けているため、増援には来られないはずだが、タンバール宙域のハーティノ家やアッカーイード家といった中立の独立管領達が、漁夫の利を得ようと敵に回って動く可能性もある。

「戦力差から言えば、まだ我々に勝ち目はある」

 総旗艦『シンヨウ』の艦橋内で、トゥールス=イヴァーネルが通信ホログラムを通じて告げると、実体のナーガス=ミョルジと、ソーン=ミョルジをはじめとする各艦隊司令のホログラムは頷いた。さらに続けるトゥールス。

「ガヴァラ殿とその戦力を失ったのは痛いが、ヨゼフ様の艦隊も含み、当初からいた敵の戦力は、もはや個々に作戦行動をとれるだけの数はない。新たに現れた二個艦隊を加えても、敵戦力は四個程度…こちらの半分だ。この小惑星帯に引き込めば充分勝てる」

 “三人衆軍”が軽巡航艦や駆逐艦といった補助戦力を狙われ、機動戦能力が低下して来ているのは、これまでの戦闘を見た通りである。そこでトゥールスは戦場を小惑星帯内に設定する事で、敵側の軽巡と駆逐艦の動きを鈍らせ、低下した自分達の機動戦能力を補おうと考えたのだった。
 
 対するウォーダ軍は各部隊を再々度立て直すと、“三人衆軍”が逃げ込んだ小惑星帯カトーラ・ガーヴァへ向けて発進した。そして約五時間が経ち、部隊の進行方向には大小無数の小惑星が、視界の横方向の端から端までに、帯状に広がっているのが見えている。

 トゥールス=イヴァーネルが予測した通り、元からいたウォーダ軍の防衛艦隊は戦力をすり減らされ、実働二個戦力にも届かない状況だ。しかしそれでも士気は高く、戦意は旺盛である。
 ただ今度の先陣は、新たにセッツー宙域から急行して来た、イ・クーダ家とイ・ターミ家の艦隊が務めている。これはそれぞれ艦隊を率いて来た、イ・クーダ家当主カトラスと・イ・ターミ家当主ティーカウォックが、ミディルツらに対して“ここは自分達が先陣を!”と、強く訴えたからであった。ナーグ・ヨッグが当主だった頃に、ミョルジ家に従属していた両家は、これを星帥皇室への忠誠の証とするつもりなのだろう。



 やがてミディルツの旗艦『アルバルドル』に、イ・ターミ家の艦隊から敵発見の報告が入った。セッツー宙域から来たイ・ターミ家とイ・クーダ家の両艦隊は、ミディルツらのウォーダ軍防衛部隊から見て、右前方に位置している。そしてその間にはヨゼフ・サキュダウ=ミョルジの艦隊がおり、さらに左側にはタクンダール家の二個艦隊がいた。ミディルツはタクンダール家の二人の司令官との、通信回線を開いた。

「ガルダー殿、ウノン殿」

 二枚の通信ホログラムスクリーンに映る、タクンダールの司令官は声を合わせて返答する。

「はい」

「お二人の艦隊は我等の、やや後方につけて頂きたい」

「それはッ!?」

 ミディルツの意図を察し、まなじりを開く二人。奮戦を続けて大きな損害を受けていたタクンダール家の増援部隊を、これ以上戦わせまいという意図だ。

「我々はまだ戦えますぞ!」

「そうだ。見くびらないで頂きたい!」

 抗議の声を上げる二人に、ミディルツは諭すように告げる。

「お二方と率いられた兵の皆様には、充分に働いて頂きました。これ以上の損害を出させては、わたくしどもがノヴァルナ公よりお叱りを受けまする。ここでお下がり頂いても、大いに感謝こそすれ不満に思う者はウォーダにはおりません」

 これを聞いて「むう…」と声を漏らした二人は、渋々といった様子を見せながら説得に応じた。

「分かり申した」

「しかし機を得れば、再度参戦させて頂く事は、ご承知おき頂きたい」

 頷いたミディルツは「承知致しました」と返答する。その直後前方の小惑星帯で閃光が起き始めた。先陣部隊が戦闘を開始したのである。




▶#27につづく
 
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