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第16話:アネス・カンヴァーの戦い
#25
しおりを挟むかつてギィゲルト・ジヴ=イマーガラが使用していた頃の、オリジナルのD-ストライカーは、惑星間距離で狙撃を行うため、エネルギーも大量に必要であった。
そのためチャージにも時間が掛かる、測的用の観測機を攻撃目標の近くに置く必要がある、銃身の寿命が射撃十五回分しかないなど、威力は強大だが使用条件が、非常に限定されていた。
その後、ギィゲルトが“フォルクェ=ザマの戦い”で討ち死にし、D-ストライカーをウォーダ軍が鹵獲すると、ノヴァルナは量産化を前提に、『センクウ・カイFX』でもこれを使用できるよう大幅に改修する。
射程と威力を半分以下にする事で、銃身の寿命を延ばし、着脱式エネルギーパックを使用できるようにしたのである。
これをさらに簡略化して量産体制を整えれば、コストを大きく下げる事も可能で、ASGULに使用させる事が出来るなら、戦争の仕方自体が大きく変わる事になるであろう。
「ノヴァルナ様。銃弾はあと十発です」
そう言いながら簡易型D-ストライカーを手渡すランに、ノヴァルナは「おう。わかった」と応じ、ここまでオートモードでロックしていた、アーザイル第8艦隊旗艦への照準を解除した。
ここまでは試し撃ち的なものだったが、最後の十発はナギの乗る総旗艦、『ソウリュウ』を狙って航行不能にし、降伏を迫るつもりだったノヴァルナである。ただナギの『ソウリュウ』は、敵陣の一番奥に位置し、『センクウ・カイFX』の照準センサーでは、精密射撃出来ない距離にある。
「場所を変える。ついて来い」
ノヴァルナはランとフォークゼムに告げ、『センクウ・カイFX』を発進する。そしてさらに、『ホロウシュ』と、カーナル・サンザー=フォレスタにも、移動を伝えた。すると前方にアーザイル軍の、大規模なBSI部隊が現れる。新手だ。
「サンザー。露払いを頼まぁ!」
主君の言葉に、サンザーは「御意!」と強く応答し、機体を加速。右手に握る大型十文字ポジトロンランスを、二回、三回と大きく回転させると、そのまま敵編隊の中へ突入した。アーザイル軍の主力BSIユニット、『ST-418イカズチ』が複数機、超電磁ライフルを放って来る。しかしサンザーの『レイメイFS』には、掠りもしない。一気に間合いを詰めてすれ違いざま、素早くポジトロンランスを振ると、二機の『イカズチ』が瞬く間に機体を両断される。そこから振り返りざま、超電磁ライフルを一連射。もう二機の『イカズチ』が砕け散る。
サンザーの吶喊に従う、彼の配下のBSI部隊も、アーザイル軍BSI部隊を蹴散らし、その余波はウォーダ軍全ての攻勢へ、相乗効果をもたらした。勢いづいた各艦隊が、高めた士気を火力に乗せて相手に叩きつける。
対するアーザイル軍は、D-ストライカーによる各艦隊旗艦への狙撃で生じた、指揮系統の混乱が立て直せないままであり、損害ばかりが積まれてゆく。先ほどまでのアーザイル側の優勢が、まるで嘘のようだ。
そんな中、ノヴァルナはサンザーの部隊に後続し、ナギの総旗艦『ソウリュウ』を、照準センサーに捕捉できる位置まで進んで来る。そして『ホロウシュ』達へ通信回線を開いた。
「“ウイザード04”。中隊を率いて周辺の敵機を排除。射点を確保しろ」
これを聞いて「かしこまりました」と応じたのは、“ウイザード04”の符牒を得ている、ナガート=ヤーグマーである。先代の“04”だったヨヴェ=カージェスが、宙雷戦隊司令官を経て艦隊司令官に昇格し、その後釜として事実上、『ホロウシュ』のリーダーとなっていた。ヤーグマーは中隊用の回線を開いて、各機に指示を出す。
「全機散開。相互支援の連携で、敵を排除!」
これを聞いて、『ホロウシュ』の親衛隊仕様『シデン・カイXS』十八機は、二機ずつのペアで扇状に散開した。サンザーのBSI部隊を掻い潜って来た、敵機の数はそう多くはない。ほぼ残敵掃討のような状況で『ホロウシュ』達は難なく、ノヴァルナのD-ストライカーの射点を確保した。
周囲で両軍のBSI部隊が、ドッグファイトを繰り広げているのをよそに、ランとフォークゼムを従えたノヴァルナは、『センクウ・カイFX』に超空間狙撃砲D-ストライカー『サモンジ』を構えさせる。その照準センサーは最大射程で、アーザイル軍総旗艦『ショウカク』を捕捉していた。
『センクウ・カイFX』が先代機の『センクウNX』と違う点の一つが、この照準センサーの刷新である。オリジナルよりかなり射程を短くしたとは言え、『サモンジ』の射程は通常の超電磁ライフルより遥かに長い。そのため『センクウ・カイFX』にはD-ストライカー用の、超長射程照準射撃モードが設定され、センサー自体も従来のBSIユニット用のものではなく、艦艇用の照準センサーを流用している。
「ラン、フォークゼム。これよりアーザイルの総旗艦に狙撃を仕掛ける。用意はいいか?」
ノヴァルナの問いに、ランとフォークゼムは声を揃えて、「御意」と返答する。これを聞き、ノヴァルナは『サモンジ』のトリガーを引いた。
▶#26につづく
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