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第16話:アネス・カンヴァーの戦い
#24
しおりを挟む超空間狙撃への対策は、四年前の“フォルクェ=ザマの戦い”で、すでにウォーダ軍の武将ナルガヒルデ=ニーワスが示している。狙われた艦を小刻みな針路変更で高速機動させ、銃弾の転移位置を逸らせるのだ。確実な方法ではないが、有効なはずではあった。ナギはすぐさま各艦隊旗艦に、高速機動による回避行動を行うよう命じた。この辺りの迅速さは、ナギの将才を表している。
これに従い、アーザイル軍の艦隊旗艦は全て、高速機動を開始する。右へ左へ、上へ下へと小刻みな動きを行う様子は、距離感が掴みにくい宇宙空間ではまるで、嵐の海を行く小舟のようであった。
ところが、である。高速機動を始めたにも関わらず、アーザイル艦隊旗艦への直撃は続いた。“フォルクェ=ザマの戦い”の時に比べて着弾までの間隔が短く、高速機動を行っても、回避が出来なかったのだ。
超空間狙撃砲『ディメンション・ストライカー』を、簡易仕様に改造した『センクウ・カイFX』用の『サモンジ』を構え、トリガーを引くノヴァルナ。
青白い光を放つ銃身の内部で、超空間転移を行った銃弾が、エネルギーシールドを掻い潜り、敵の艦隊旗艦に襲い掛かる。次に直撃を喰らったのは、アーザイル軍第8艦隊旗艦だ。
ズシン!…と大きな震動に包まれる旗艦の中で、司令官のダルキュス=エトゥズが、肥満気味の体を司令官席にしがみつかせる。
「右舷重力子整流室付近に、実体弾直撃! 損害不明!」
オペレーターの報告に戸惑うダルキュス。
「む、むう…どういう事だ!?」
「わかりません!」
すると立て続けに、二発目、三発目の着弾があり、ダルキュスの旗艦はさらに損害を拡大させた。航行に障害が生じて、通信機能も低下。“アネス・カンヴァー星雲”の星間ガスの影響もあり、アーザイル第8艦隊の指揮統一システムが、一時的に麻痺状態となる。総旗艦『ヒテン』を発進したノヴァルナが戦場の真ん中に居座り、漏斗陣形を組みつつあったアーザイル軍の、各艦隊旗艦を次々に『サモンジ』で狙撃。指揮系統を混乱に陥れていたのである。
無論、戦場の真ん中にいれば、敵にも発見され易い。ノヴァルナを斃して一気に決着をつけようと、アーザイル軍のBSI部隊が群がって来る。だがそれを、ノヴァルナの親衛隊『ホロウシュ』が寄せ付けない。そして今回はさらにその外側を、『レイメイFS』に乗ったカーナル・サンザー=フォレスタ率いる、第6艦隊BSI部隊が固めている。
そしてノヴァルナの『センクウ・カイFX』が狙撃に使用しているのは、『サモンジ』だけではなかった。『サモンジ』をさらに簡易化した、量産型ディメンション・ストライカーを一丁ずつ、左右やや斜め後方に控えた、二機の『シデン・カイ✕S』―――ラン・マリュウ=フォレスタと、ジョルジュ・ヘルザー=フォークゼムが持ち、単発弾倉付きエネルギーパックの着脱を行っている。
ノヴァルナの『センクウ・カイFX』が照準・射撃し、フォークゼムがそれを受け取って、空になった単発弾倉付きエネルギーパックを外す。さらにそれをランが受け取り、新たな単発弾倉付きエネルギーパックを装着して、ノヴァルナに渡すという連携作業で、D-ストライカーの発射間隔を縮めていたのだ。
これは約一カ月の“カノン・ガルザック撤退戦”の際に、ヒルザード・ダーン・ジョウ=マツァルナルガの方便を聞いたノヴァルナが、それをヒントにして構想した、BSIユニット三機一組による、D-ストライカー発射間隔の改善策だった。
今やるべき事をやる―――それがノヴァルナの行動指針であるから、試作品の簡易型D-ストライカーを二丁、この戦いの前に技研から回させて、試し撃ちを行ったのである。
「どうぞ、ノヴァルナ様」
「おう」
ランの『シデン・カイXS』が差し出す簡易型D-ストライカーを、ノヴァルナは片手で受け取り、即座に構えてトリガーを引く。照準センサーは常にダルキュスの第8艦隊旗艦を、ロックオンしたままだ。受け取った時点でオートモードにしており、機体が自動で撃つ事が可能となっている。
ノヴァルナの思考の卓越したところは、新しい技術や理論に対し、それが行き詰まった場合、発想のベクトルを百八十度変えて、いま存在するものの中から、新たな可能性を考える点であった。
星系間を繋ぐ超空間ゲートのシステム的・組織的限界を感じると、DFドライヴブースターの大量生産という手法を考え出し、今またD-ストライカーの次弾装填と、エネルギーチャージ時間の遅滞に対し、三機一組の三段構え射撃を考え出したのである。
しかもノヴァルナはアーザイル第8艦隊旗艦が、大ダメージを受けていく状況を確認し、その効果を認めると共にさらに考えを進める。
“なるほど、コイツは使えそうだ。てゆーか…もっと分割簡略化して、ASGULに大量に持たせるのもアリだな”
ここでもノヴァルナは逆転の発想を行った。高度な兵器はBHSOや、親衛隊仕様BSIユニットが装備するべきという、当たり前のような考え方を否定し、旧来の風潮からの脱却を思いついたのだ。
▶#25につづく
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