20 / 31
第二十話 婚姻無効?無理です。だって私たち、契約のプロですから
しおりを挟む
王都大法廷は、まさにハチの巣をつついたような騒ぎになっていた。
ヴァルガス公爵が去り際に投下した『法的爆弾』。 ――王太子の婚約破棄は洗脳下での行為ゆえ無効。よってリディアは依然として王太子の婚約者であり、宰相との結婚は重婚で無効である。
この屁理屈とも言える、しかし法的には無視できない主張に、傍聴席の貴族たちや教会関係者がざわめき立っていた。
「そ、そうだ! 公爵の言う通りだ!」
息を吹き返したのは、先ほどまで青ざめていた教会の神官たちだった。 彼らはここぞとばかりに声を張り上げた。
「教義において、重婚は最大の罪! 神聖なる婚姻の冒涜だ!」 「宰相閣下といえど、法の抜け穴を通ることは許されん!」 「直ちに婚姻を無効とし、リディア嬢を王太子殿下の元へ返還せよ!」
勢いづく神官たち。 彼らにとって、これは起死回生の一手なのだ。私とアシュ様の結婚さえ潰せれば、教会の権威を取り戻せると思っているのだろう。
壇上で、私はアシュ様を見上げた。 彼は眉間に深い皺を寄せ、腕組みをして沈黙している。 ……まずい。 さすがの「契約のプロ」も、この展開は想定外だったのか?
「……アシュ様」
私が不安げに声をかけると、彼はハッと顔を上げた。 そして、私に向かって小さく、しかし力強く頷いた。
「大丈夫だ。……計算は終了した」
アシュ様は眼鏡の位置をクイッと直し、冷徹な光を宿した瞳で神官たちを見下ろした。
「静粛に」
その一言には、魔力が込められていたわけではない。 けれど、彼の放つ圧倒的な「支配者」のオーラに、騒いでいた神官たちがピタリと口を閉ざした。
「重婚による婚姻無効、か。……なるほど、教会法第百三条に基づく主張だな?」
アシュ様は懐から六法全書を取り出し――いや、取り出すまでもなく、空中に条文を投影魔法で表示させた。
「確かに、教会法では『既存の婚約関係にある者の、他者との婚姻』を禁じている。だが……」
アシュ様はニヤリと笑った。 それは獲物を追い詰めた肉食獣の笑みだった。
「貴殿らは一つ、致命的な勘違いをしている」
「な、なんだと?」 「勘違いだと?」
「そもそも、私とリディアの結婚は『教会法』に基づくものではない」
アシュ様が指を鳴らすと、空中の条文が切り替わった。 表示されたのは、『ルミナリア王国特別行政契約法』。 なんともお堅い、そして誰も読まないようなマニアックな法律だ。
「我々の婚姻は、私が宰相権限で制定した『特別行政契約』に基づく『国法婚』だ。これは教会の管轄外であり、教会法の制約を受けない」
「なっ、馬鹿な! そんな勝手な法律が……!」
「勝手? いいや、正規の手続きを経て三ヶ月前に施行されている。……もっとも、官報の隅に小さく載せただけだから、貴殿らのような怠惰な者たちは見落としたのだろうが」
アシュ様は涼しい顔で言い放った。 ……えっ、アシュ様? 三ヶ月前って、私たちが結婚するずっと前ですわよね? まさか、その頃から「教会の干渉を受けずに結婚するルート」を準備していたの? だとしたら、用意周到すぎて怖いですわ!
「さらに」
アシュ様は畳み掛ける。
「仮に王太子の婚約破棄が無効だとしても、現状において王太子は『有責』だ。洗脳下とはいえ、リディアに対し公衆の面前で侮辱を与え、信頼関係を完全に破壊した。……民法第七百九条『修復不可能な婚姻関係の破綻』が適用される」
アシュ様は私の方を向き、優しく問いかけた。
「リディア・エルヴァイン。君に、レオンハルト王太子との関係を修復する意志はあるか?」
私は即座に、全力で首を横に振った。
「ありません! 一ミリも、一ミクロンも、未来永劫ありません!」
私の薬指の『真実の誓約印』が、ピカーッ!と強烈な光を放つ。 完全なる真実証明だ。
「……だ、そうだ」
アシュ様は神官たちに向き直った。
「当事者の一方が完全な拒絶を示し、かつ正当な理由がある場合、過去の婚約はいかなる事情があろうと『自然消滅』とみなされる。……これが王国の法だ。教会の古い教義など、最新の判例の前では無力だ」
ぐうの音も出ない論破。 神官たちはパクパクと口を開閉させ、顔を真っ赤にして震えている。
「そ、それでも! 教会の権威にかけて、このような異端の結婚は認めん! 神が許さない!」 「そうだ! 王太子殿下も望んでおられるはずだ!」
彼らは最後の頼みの綱として、うなだれているレオンハルト殿下に縋り付いた。
「殿下! 言ってやってください! リディア嬢を取り戻したいと! 洗脳が解けた今こそ、真実の愛を!」
会場の視線が、再び殿下に集まる。 殿下はゆっくりと顔を上げた。 その目は赤く腫れ、憑き物が落ちたように澄んでいたが、同時に深い後悔の色に沈んでいた。
「……いや」
殿下は力なく首を振った。
「私は……リディアを愛する資格などない」
「で、殿下!?」
「公爵に操られていたとはいえ、私は彼女を傷つけた。罵倒し、切り捨て、他の女性に現を抜かした。……その事実は消えない」
殿下は私を見た。 その瞳に、かつてのような傲慢さはなかった。
「リディア。すまなかった。……そして、アシュ宰相。彼女を幸せにしてやってくれ。私にはできなかったことを、あなたならできるはずだ」
それは、レオンハルト王太子が初めて見せた、王族としての矜持だったのかもしれない。 彼なりの、精一杯の幕引き。
神官たちは梯子を外され、呆然と立ち尽くすしかなかった。 アシュ様は静かに頷き、殿下に一礼した。
「承知した。……その言葉、契約として受理する」
そして、アシュ様は私に向き直り、手を差し出した。
「行こう、リディア。これでもう、我々を阻むものは何もない」
私は彼の手を取り、ニッコリと微笑んだ。
「はい、旦那様。……完全勝利ですわね!」
裁判長の木槌が鳴り、閉廷が宣言される。 私たちは割れんばかりの拍手と歓声の中、堂々と法廷を後にした。 教会の面目は丸つぶれ、公爵は逮捕、そして私たちの結婚は鉄壁の法的保護の下で確定した。 ざまぁ、とはまさにこのことだ。 胸がすくような大逆転劇だった。
◇
帰りの馬車の中。 興奮が冷めやらない私は、アシュ様に抱きつかんばかりの勢いで話しかけていた。
「凄かったですわ、アシュ様! あの『特別行政契約』って何ですの? いつの間にあんな法律を?」
「……ああ。あれか」
アシュ様は窓の外を見ながら、少し気まずそうに目を逸らした。
「実は、あれを作ったのは君が婚約破棄される三ヶ月前ではない。……もっと前だ」
「へ?」
「一年前。……君が王太子との婚約に悩み、ため息をついているのを夜会で見かけた時だ」
一年前? 私がまだ、殿下の浮気性や取り巻きのいじめに一人で耐えていた頃だ。 アシュ様は、そんな時から私を見ていたの?
「君のような有能な人間が、旧態依然とした制度に縛られて疲弊しているのは、国家的損失だと思った。だから……もし君が望むなら、いつでも教会を介さずに逃げ込める『法的避難所(シェルター)』を作っておこうと」
アシュ様はボソボソと語る。
「まさか、それを私自身が使うことになるとは思わなかったがな」
……えっ。 それって、つまり。 アシュ様はずっと前から、私のことを気にかけてくれていたということ? ただの「有能な人材」として? それとも……?
ドクン、と心臓が跳ねる。
「アシュ様。それ、本当ですの?」
「契約上、私は嘘をつけない。事実だ」
彼は私の方を向き、真剣な眼差しで見つめてきた。 夕日が差し込む車内で、その青い瞳が宝石のように輝いている。
「リディア。今日、法廷で公爵に『重婚だ』と言われた時……私は焦った」
「……ええ、そうでしょうね。私も驚きました」
「違う。法的リスクに焦ったのではない」
アシュ様の手が、私の頬に触れた。 冷たいはずの指先が、今は熱い。
「君を失うかもしれないという可能性に、思考が停止したんだ」
「え……」
「君がいない未来をシミュレートしようとしたが、エラーが出た。真っ暗で、何も見えなかった」
アシュ様は、自分の胸を押さえるようにして言った。
「君を失うのは非合理だ。……いや、訂正する。君を失いたくない。たとえ世界中の法を敵に回しても、私は君を手放さない」
!!! 時が止まった。 これ、もう愛の告白ですよね? 『愛さない契約』はどうなったんですか? でも、『嘘がつけない契約』がある以上、これが彼の一点の曇りもない本音なのだ。 彼は合理性の仮面の下で、こんなにも熱烈に、私を求めてくれている。
胸の奥が、キュンと音を立てて締め付けられる。 今までの「ドキドキ」とは違う。もっと深くて、甘くて、切ない痛み。
……あ。 私、気づいちゃったかもしれない。
この『契約結婚』。 もうとっくに、私にとってもただの契約じゃなくなっているってことに。
「……アシュ様」
私は潤んだ瞳で彼を見上げた。 何か言わなきゃ。 でも、なんて言えばいいの? 『私もです』なんて言ったら、契約違反になっちゃう?
その時、馬車がガタリと揺れた。 私たちはハッとして体を離した。
「……と、とりあえず、屋敷に戻って祝杯だ」
アシュ様が慌てて咳払いをする。 耳が茹でダコみたいに赤い。
「そ、そうですね! 今日は最高級のワインを開けましょう!」
私も顔を扇ぎながら同意した。
ヴァルガス公爵が去り際に投下した『法的爆弾』。 ――王太子の婚約破棄は洗脳下での行為ゆえ無効。よってリディアは依然として王太子の婚約者であり、宰相との結婚は重婚で無効である。
この屁理屈とも言える、しかし法的には無視できない主張に、傍聴席の貴族たちや教会関係者がざわめき立っていた。
「そ、そうだ! 公爵の言う通りだ!」
息を吹き返したのは、先ほどまで青ざめていた教会の神官たちだった。 彼らはここぞとばかりに声を張り上げた。
「教義において、重婚は最大の罪! 神聖なる婚姻の冒涜だ!」 「宰相閣下といえど、法の抜け穴を通ることは許されん!」 「直ちに婚姻を無効とし、リディア嬢を王太子殿下の元へ返還せよ!」
勢いづく神官たち。 彼らにとって、これは起死回生の一手なのだ。私とアシュ様の結婚さえ潰せれば、教会の権威を取り戻せると思っているのだろう。
壇上で、私はアシュ様を見上げた。 彼は眉間に深い皺を寄せ、腕組みをして沈黙している。 ……まずい。 さすがの「契約のプロ」も、この展開は想定外だったのか?
「……アシュ様」
私が不安げに声をかけると、彼はハッと顔を上げた。 そして、私に向かって小さく、しかし力強く頷いた。
「大丈夫だ。……計算は終了した」
アシュ様は眼鏡の位置をクイッと直し、冷徹な光を宿した瞳で神官たちを見下ろした。
「静粛に」
その一言には、魔力が込められていたわけではない。 けれど、彼の放つ圧倒的な「支配者」のオーラに、騒いでいた神官たちがピタリと口を閉ざした。
「重婚による婚姻無効、か。……なるほど、教会法第百三条に基づく主張だな?」
アシュ様は懐から六法全書を取り出し――いや、取り出すまでもなく、空中に条文を投影魔法で表示させた。
「確かに、教会法では『既存の婚約関係にある者の、他者との婚姻』を禁じている。だが……」
アシュ様はニヤリと笑った。 それは獲物を追い詰めた肉食獣の笑みだった。
「貴殿らは一つ、致命的な勘違いをしている」
「な、なんだと?」 「勘違いだと?」
「そもそも、私とリディアの結婚は『教会法』に基づくものではない」
アシュ様が指を鳴らすと、空中の条文が切り替わった。 表示されたのは、『ルミナリア王国特別行政契約法』。 なんともお堅い、そして誰も読まないようなマニアックな法律だ。
「我々の婚姻は、私が宰相権限で制定した『特別行政契約』に基づく『国法婚』だ。これは教会の管轄外であり、教会法の制約を受けない」
「なっ、馬鹿な! そんな勝手な法律が……!」
「勝手? いいや、正規の手続きを経て三ヶ月前に施行されている。……もっとも、官報の隅に小さく載せただけだから、貴殿らのような怠惰な者たちは見落としたのだろうが」
アシュ様は涼しい顔で言い放った。 ……えっ、アシュ様? 三ヶ月前って、私たちが結婚するずっと前ですわよね? まさか、その頃から「教会の干渉を受けずに結婚するルート」を準備していたの? だとしたら、用意周到すぎて怖いですわ!
「さらに」
アシュ様は畳み掛ける。
「仮に王太子の婚約破棄が無効だとしても、現状において王太子は『有責』だ。洗脳下とはいえ、リディアに対し公衆の面前で侮辱を与え、信頼関係を完全に破壊した。……民法第七百九条『修復不可能な婚姻関係の破綻』が適用される」
アシュ様は私の方を向き、優しく問いかけた。
「リディア・エルヴァイン。君に、レオンハルト王太子との関係を修復する意志はあるか?」
私は即座に、全力で首を横に振った。
「ありません! 一ミリも、一ミクロンも、未来永劫ありません!」
私の薬指の『真実の誓約印』が、ピカーッ!と強烈な光を放つ。 完全なる真実証明だ。
「……だ、そうだ」
アシュ様は神官たちに向き直った。
「当事者の一方が完全な拒絶を示し、かつ正当な理由がある場合、過去の婚約はいかなる事情があろうと『自然消滅』とみなされる。……これが王国の法だ。教会の古い教義など、最新の判例の前では無力だ」
ぐうの音も出ない論破。 神官たちはパクパクと口を開閉させ、顔を真っ赤にして震えている。
「そ、それでも! 教会の権威にかけて、このような異端の結婚は認めん! 神が許さない!」 「そうだ! 王太子殿下も望んでおられるはずだ!」
彼らは最後の頼みの綱として、うなだれているレオンハルト殿下に縋り付いた。
「殿下! 言ってやってください! リディア嬢を取り戻したいと! 洗脳が解けた今こそ、真実の愛を!」
会場の視線が、再び殿下に集まる。 殿下はゆっくりと顔を上げた。 その目は赤く腫れ、憑き物が落ちたように澄んでいたが、同時に深い後悔の色に沈んでいた。
「……いや」
殿下は力なく首を振った。
「私は……リディアを愛する資格などない」
「で、殿下!?」
「公爵に操られていたとはいえ、私は彼女を傷つけた。罵倒し、切り捨て、他の女性に現を抜かした。……その事実は消えない」
殿下は私を見た。 その瞳に、かつてのような傲慢さはなかった。
「リディア。すまなかった。……そして、アシュ宰相。彼女を幸せにしてやってくれ。私にはできなかったことを、あなたならできるはずだ」
それは、レオンハルト王太子が初めて見せた、王族としての矜持だったのかもしれない。 彼なりの、精一杯の幕引き。
神官たちは梯子を外され、呆然と立ち尽くすしかなかった。 アシュ様は静かに頷き、殿下に一礼した。
「承知した。……その言葉、契約として受理する」
そして、アシュ様は私に向き直り、手を差し出した。
「行こう、リディア。これでもう、我々を阻むものは何もない」
私は彼の手を取り、ニッコリと微笑んだ。
「はい、旦那様。……完全勝利ですわね!」
裁判長の木槌が鳴り、閉廷が宣言される。 私たちは割れんばかりの拍手と歓声の中、堂々と法廷を後にした。 教会の面目は丸つぶれ、公爵は逮捕、そして私たちの結婚は鉄壁の法的保護の下で確定した。 ざまぁ、とはまさにこのことだ。 胸がすくような大逆転劇だった。
◇
帰りの馬車の中。 興奮が冷めやらない私は、アシュ様に抱きつかんばかりの勢いで話しかけていた。
「凄かったですわ、アシュ様! あの『特別行政契約』って何ですの? いつの間にあんな法律を?」
「……ああ。あれか」
アシュ様は窓の外を見ながら、少し気まずそうに目を逸らした。
「実は、あれを作ったのは君が婚約破棄される三ヶ月前ではない。……もっと前だ」
「へ?」
「一年前。……君が王太子との婚約に悩み、ため息をついているのを夜会で見かけた時だ」
一年前? 私がまだ、殿下の浮気性や取り巻きのいじめに一人で耐えていた頃だ。 アシュ様は、そんな時から私を見ていたの?
「君のような有能な人間が、旧態依然とした制度に縛られて疲弊しているのは、国家的損失だと思った。だから……もし君が望むなら、いつでも教会を介さずに逃げ込める『法的避難所(シェルター)』を作っておこうと」
アシュ様はボソボソと語る。
「まさか、それを私自身が使うことになるとは思わなかったがな」
……えっ。 それって、つまり。 アシュ様はずっと前から、私のことを気にかけてくれていたということ? ただの「有能な人材」として? それとも……?
ドクン、と心臓が跳ねる。
「アシュ様。それ、本当ですの?」
「契約上、私は嘘をつけない。事実だ」
彼は私の方を向き、真剣な眼差しで見つめてきた。 夕日が差し込む車内で、その青い瞳が宝石のように輝いている。
「リディア。今日、法廷で公爵に『重婚だ』と言われた時……私は焦った」
「……ええ、そうでしょうね。私も驚きました」
「違う。法的リスクに焦ったのではない」
アシュ様の手が、私の頬に触れた。 冷たいはずの指先が、今は熱い。
「君を失うかもしれないという可能性に、思考が停止したんだ」
「え……」
「君がいない未来をシミュレートしようとしたが、エラーが出た。真っ暗で、何も見えなかった」
アシュ様は、自分の胸を押さえるようにして言った。
「君を失うのは非合理だ。……いや、訂正する。君を失いたくない。たとえ世界中の法を敵に回しても、私は君を手放さない」
!!! 時が止まった。 これ、もう愛の告白ですよね? 『愛さない契約』はどうなったんですか? でも、『嘘がつけない契約』がある以上、これが彼の一点の曇りもない本音なのだ。 彼は合理性の仮面の下で、こんなにも熱烈に、私を求めてくれている。
胸の奥が、キュンと音を立てて締め付けられる。 今までの「ドキドキ」とは違う。もっと深くて、甘くて、切ない痛み。
……あ。 私、気づいちゃったかもしれない。
この『契約結婚』。 もうとっくに、私にとってもただの契約じゃなくなっているってことに。
「……アシュ様」
私は潤んだ瞳で彼を見上げた。 何か言わなきゃ。 でも、なんて言えばいいの? 『私もです』なんて言ったら、契約違反になっちゃう?
その時、馬車がガタリと揺れた。 私たちはハッとして体を離した。
「……と、とりあえず、屋敷に戻って祝杯だ」
アシュ様が慌てて咳払いをする。 耳が茹でダコみたいに赤い。
「そ、そうですね! 今日は最高級のワインを開けましょう!」
私も顔を扇ぎながら同意した。
10
あなたにおすすめの小説
家が没落した時私を見放した幼馴染が今更すり寄ってきた
今川幸乃
恋愛
名門貴族ターナー公爵家のベティには、アレクという幼馴染がいた。
二人は互いに「将来結婚したい」と言うほどの仲良しだったが、ある時ターナー家は陰謀により潰されてしまう。
ベティはアレクに助けを求めたが「罪人とは仲良く出来ない」とあしらわれてしまった。
その後大貴族スコット家の養女になったベティはようやく幸せな暮らしを手に入れた。
が、彼女の前に再びアレクが現れる。
どうやらアレクには困りごとがあるらしかったが…
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
おかしくなったのは、彼女が我が家にやってきてからでした。
ましゅぺちーの
恋愛
公爵家の令嬢であるリリスは家族と婚約者に愛されて幸せの中にいた。
そんな時、リリスの父の弟夫婦が不慮の事故で亡くなり、その娘を我が家で引き取ることになった。
娘の名前はシルビア。天使のように可愛らしく愛嬌のある彼女はすぐに一家に馴染んでいった。
それに対してリリスは次第に家で孤立していき、シルビアに嫌がらせをしているとの噂までたち始めた。
婚約者もシルビアに奪われ、父からは勘当を言い渡される。
リリスは平民として第二の人生を歩み始める。
全8話。完結まで執筆済みです。
この作品は小説家になろう様にも掲載しています。
【完結】貴方が好きなのはあくまでも私のお姉様
すだもみぢ
恋愛
伯爵令嬢であるカリンは、隣の辺境伯の息子であるデュークが苦手だった。
彼の悪戯にひどく泣かされたことがあったから。
そんな彼が成長し、年の離れたカリンの姉、ヨーランダと付き合い始めてから彼は変わっていく。
ヨーランダは世紀の淑女と呼ばれた女性。
彼女の元でどんどんと洗練され、魅力に満ちていくデュークをカリンは傍らから見ていることしかできなかった。
しかしヨーランダはデュークではなく他の人を選び、結婚してしまう。
それからしばらくして、カリンの元にデュークから結婚の申し込みが届く。
私はお姉さまの代わりでしょうか。
貴方が私に優しくすればするほど悲しくなるし、みじめな気持ちになるのに……。
そう思いつつも、彼を思う気持ちは抑えられなくなっていく。
8/21 MAGI様より表紙イラストを、9/24にはMAGI様の作曲された
この小説のイメージソング「意味のない空」をいただきました。
https://www.youtube.com/watch?v=L6C92gMQ_gE
MAGI様、ありがとうございます!
イメージが広がりますので聞きながらお話を読んでくださると嬉しいです。
婚約者が選んだのは私から魔力を盗んだ妹でした
今川幸乃
恋愛
バートン伯爵家のミアの婚約者、パーシーはいつも「魔法が使える人がいい」とばかり言っていた。
実はミアは幼いころに水の精霊と親しくなり、魔法も得意だった。
妹のリリーが怪我した時に母親に「リリーが可哀想だから魔法ぐらい譲ってあげなさい」と言われ、精霊を譲っていたのだった。
リリーはとっくに怪我が治っているというのにずっと仮病を使っていて一向に精霊を返すつもりはない。
それでもミアはずっと我慢していたが、ある日パーシーとリリーが仲良くしているのを見かける。
パーシーによると「怪我しているのに頑張っていてすごい」ということらしく、リリーも満更ではなさそうだった。
そのためミアはついに彼女から精霊を取り戻すことを決意する。
〈完結〉姉と母の本当の思いを知った時、私達は父を捨てて旅に出ることを決めました。
江戸川ばた散歩
恋愛
「私」男爵令嬢ベリンダには三人のきょうだいがいる。だが母は年の離れた一番上の姉ローズにだけ冷たい。
幼いながらもそれに気付いていた私は、誕生日の晩、両親の言い争いを聞く。
しばらくして、ローズは誕生日によばれた菓子職人と駆け落ちしてしまう。
それから全寮制の学校に通うこともあり、家族はあまり集わなくなる。
母は離れで暮らす様になり、気鬱にもなる。
そしてローズが出ていった歳にベリンダがなった頃、突然ローズから手紙が来る。
そこにはベリンダがずっと持っていた疑問の答えがあった。
【完結】ドアマットに気付かない系夫の謝罪は死んだ妻には届かない
堀 和三盆
恋愛
一年にわたる長期出張から戻ると、愛する妻のシェルタが帰らぬ人になっていた。流行病に罹ったらしく、感染を避けるためにと火葬をされて骨になった妻は墓の下。
信じられなかった。
母を責め使用人を責めて暴れ回って、僕は自らの身に降りかかった突然の不幸を嘆いた。まだ、結婚して3年もたっていないというのに……。
そんな中。僕は遺品の整理中に隠すようにして仕舞われていた妻の日記帳を見つけてしまう。愛する妻が最後に何を考えていたのかを知る手段になるかもしれない。そんな軽い気持ちで日記を開いて戦慄した。
日記には妻がこの家に嫁いでから病に倒れるまでの――母や使用人からの壮絶な嫌がらせの数々が綴られていたのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる