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第19話:旅の夜と呪いの真実
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盗賊を撃退した後、私たちは再び王都へと馬車を進めた。
しかし、先ほどの出来事が、馬車の中の空気を重くしていた。
私は、アレクシス様に聞きたいことが山ほどあった。
でも、何から聞けばいいのかわからない。
彼の纏う空気が、それを許さないようでもあった。
しばらく、重い沈黙が続いた。
それを破ったのは、アレクシス様の方だった。
「……驚いたか」
ポツリと、彼が呟いた。
「え……?」
「俺の、あの力を見て」
彼は、窓の外の闇を見つめながら言った。
「……はい。とても、驚きました。アレクシス様が、あんなに強いなんて、知りませんでしたから」
正直にそう答えると、彼は自嘲するように、フッと息を吐いた。
「あれは、呪いの副作用のようなものだ」
「……え?」
思いがけない言葉に、私は耳を疑った。
副作用? どういうこと?
「俺にかけられた呪いは、ただ醜い痣を作るだけのものではない。俺の中に眠る、膨大な魔力を暴走させるためのものだった」
アレクシス様は、静かに語り始めた。
それは、彼が今まで誰にも明かさなかった、秘密の告白だった。
「魔力が暴走すれば、俺は理性を失い、この国を破壊し尽くす化け物と化す。……それを防ぐために、王家の秘術によって、魔力そのものが抑え込まれている。この顔の痣は、そのための『枷』の役割を果たしているんだ」
「枷……」
「そうだ。だが、抑えきれなかった魔力の一部が、身体能力を異常なまでに強化した。それが、さっきのお前が見た力だ」
衝撃的な、事実だった。
彼の顔の痣は、ただの醜い呪いの証ではなかった。
彼自身と、この国を守るための、苦渋の封印だったのだ。
「……だから、あなたは」
だから、あなたはいつも人との関わりを避け、孤独でいたのですね。
そう言いかけて、私は言葉を飲み込んだ。
「俺は、いつ暴走するかわからない、危険な存在だ。だから、誰も寄せ付けないようにしてきた。……その方が、誰も傷つけずに済むからな」
彼の声は、ひどく寂しげだった。
ずっと、一人で、そんな重い宿命を背負ってきたのか。
“呪われ王子”と蔑まれながらも、その陰で、国を守るために耐え続けてきたのか。
胸が、締め付けられるように痛んだ。
「……でも、その呪い、解くことはできないんですか?」
「……方法が、ないわけではない」
アレクシス様は、少し間を置いてから言った。
「王家の禁書庫の最奥に眠る、**『真実の月の涙』**という魔法の秘宝。それを使えば、呪いを解くことができると、古文書には記されている」
「真実の月の涙……!」
「だが、禁書庫の最奥は、王族の中でも限られた者しか入ることを許されない聖域だ。第一王子である兄上や、その婚約者であるイザベラが、俺がそこへ行くのを黙って見ているはずがない」
イザベラ様。そして、その婚約者である第一王子。
彼らが、アレクシス様を陥れようとしている。
その理由は、おそらく、王位継承権だろう。
全てのピースが、繋がった気がした。
私は、アレクシス様の顔をまっすぐに見つめた。
そして、固い決意を込めて、言った。
「――私が、手に入れてみせます。その、『真実の月の涙』を」
「……何?」
アレクシス様が、驚いたように目を見開く。
「アレクシス様は、一人じゃありません。私と、ギルさんがいます。いえ、私たちが築き上げてきた、アシュリー商会の力もあります。力を合わせれば、きっと……!」
「……馬鹿なことを言うな。お前を、危険な目に遭わせるわけにはいかない」
「いいえ! これは、私がやりたいから、やるんです!」
私は、彼の言葉を遮った。
「あなたは、私の石鹸の価値を信じて、私を助けてくれました。今度は、私があなたを助ける番です!」
私の目を見て、アレクシス様は言葉を失っていた。
彼の赤い瞳が、小さく揺れている。
「だから……約束してください。諦めないと」
私は、彼の手に、そっと自分の手を重ねた。
彼の大きな手は、少し冷たかった。
しばらくの沈黙の後。
アレクシス様は、ゆっくりと、私の手を握り返した。
その力は、とても強くて、優しかった。
「……わかった。約束する」
その瞬間、私たちの間にあった最後の壁が、崩れ去ったような気がした。
ただのビジネスパートナーでも、友人でもない。
もっと、深くて、強い絆。
運命共同体としての、私たちの本当の戦いが、この夜、静かに幕を開けた。
しかし、先ほどの出来事が、馬車の中の空気を重くしていた。
私は、アレクシス様に聞きたいことが山ほどあった。
でも、何から聞けばいいのかわからない。
彼の纏う空気が、それを許さないようでもあった。
しばらく、重い沈黙が続いた。
それを破ったのは、アレクシス様の方だった。
「……驚いたか」
ポツリと、彼が呟いた。
「え……?」
「俺の、あの力を見て」
彼は、窓の外の闇を見つめながら言った。
「……はい。とても、驚きました。アレクシス様が、あんなに強いなんて、知りませんでしたから」
正直にそう答えると、彼は自嘲するように、フッと息を吐いた。
「あれは、呪いの副作用のようなものだ」
「……え?」
思いがけない言葉に、私は耳を疑った。
副作用? どういうこと?
「俺にかけられた呪いは、ただ醜い痣を作るだけのものではない。俺の中に眠る、膨大な魔力を暴走させるためのものだった」
アレクシス様は、静かに語り始めた。
それは、彼が今まで誰にも明かさなかった、秘密の告白だった。
「魔力が暴走すれば、俺は理性を失い、この国を破壊し尽くす化け物と化す。……それを防ぐために、王家の秘術によって、魔力そのものが抑え込まれている。この顔の痣は、そのための『枷』の役割を果たしているんだ」
「枷……」
「そうだ。だが、抑えきれなかった魔力の一部が、身体能力を異常なまでに強化した。それが、さっきのお前が見た力だ」
衝撃的な、事実だった。
彼の顔の痣は、ただの醜い呪いの証ではなかった。
彼自身と、この国を守るための、苦渋の封印だったのだ。
「……だから、あなたは」
だから、あなたはいつも人との関わりを避け、孤独でいたのですね。
そう言いかけて、私は言葉を飲み込んだ。
「俺は、いつ暴走するかわからない、危険な存在だ。だから、誰も寄せ付けないようにしてきた。……その方が、誰も傷つけずに済むからな」
彼の声は、ひどく寂しげだった。
ずっと、一人で、そんな重い宿命を背負ってきたのか。
“呪われ王子”と蔑まれながらも、その陰で、国を守るために耐え続けてきたのか。
胸が、締め付けられるように痛んだ。
「……でも、その呪い、解くことはできないんですか?」
「……方法が、ないわけではない」
アレクシス様は、少し間を置いてから言った。
「王家の禁書庫の最奥に眠る、**『真実の月の涙』**という魔法の秘宝。それを使えば、呪いを解くことができると、古文書には記されている」
「真実の月の涙……!」
「だが、禁書庫の最奥は、王族の中でも限られた者しか入ることを許されない聖域だ。第一王子である兄上や、その婚約者であるイザベラが、俺がそこへ行くのを黙って見ているはずがない」
イザベラ様。そして、その婚約者である第一王子。
彼らが、アレクシス様を陥れようとしている。
その理由は、おそらく、王位継承権だろう。
全てのピースが、繋がった気がした。
私は、アレクシス様の顔をまっすぐに見つめた。
そして、固い決意を込めて、言った。
「――私が、手に入れてみせます。その、『真実の月の涙』を」
「……何?」
アレクシス様が、驚いたように目を見開く。
「アレクシス様は、一人じゃありません。私と、ギルさんがいます。いえ、私たちが築き上げてきた、アシュリー商会の力もあります。力を合わせれば、きっと……!」
「……馬鹿なことを言うな。お前を、危険な目に遭わせるわけにはいかない」
「いいえ! これは、私がやりたいから、やるんです!」
私は、彼の言葉を遮った。
「あなたは、私の石鹸の価値を信じて、私を助けてくれました。今度は、私があなたを助ける番です!」
私の目を見て、アレクシス様は言葉を失っていた。
彼の赤い瞳が、小さく揺れている。
「だから……約束してください。諦めないと」
私は、彼の手に、そっと自分の手を重ねた。
彼の大きな手は、少し冷たかった。
しばらくの沈黙の後。
アレクシス様は、ゆっくりと、私の手を握り返した。
その力は、とても強くて、優しかった。
「……わかった。約束する」
その瞬間、私たちの間にあった最後の壁が、崩れ去ったような気がした。
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