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第54話 雪の夜の襲撃
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(視点:リディア)
白灯祭の前夜。
雪は激しさを増し、視界は白一色に染まっていた。
村は静まり返っているが、それは嵐の前の静けさだ。
私は屋敷の屋根裏部屋にある監視窓から、村へと続く一本道を見下ろしていた。
レージは外の見回りに出ている。
屋敷と村の間には、自警団と協力して即席の「結界」を張ってある。
結界といっても、魔法的なものではない。
私が糸環紋(しかんもん)の応用で作った、細い糸の罠だ。
「……来た」
雪の中に、違和感があった。
風の音に混じって、雪を踏みしめる音が不規則に響く。
獣ではない。
足音を消そうとしている人間の気配だ。
数は……五人、いや六人。
彼らは村の倉庫――白銀晶が保管されている場所へ向かっている。
祭りの準備で人が出払っている隙を狙ったのだろう。
甘いわ。
そこは、私が一番警戒して網を張った場所よ。
私は窓を開け、冷気を吸い込んだ。
手袋を外し、素手を外気に晒す。
かじかむ指先に意識を集中させる。
「繋げ……!」
私の指から、視認できないほど細い魔力の糸が伸びる。
それは雪の下に埋めておいた、無数の鈴と、起爆用の小さな火薬玉に繋がっている。
侵入者たちが倉庫の扉に手をかけた瞬間。
私は指を弾いた。
チリン。
鈴の音が鳴ると同時に、私が張り巡らせた糸が一斉に収縮する。
侵入者たちの足首に糸が絡みつき、彼らの体勢を崩す。
「なっ、何だ!?」
「罠か!」
男たちの狼狽(うろた)える声。
私は間髪入れずに、次の糸を引いた。
「ドガァァン!!」
雪の中で、赤い閃光が走った。
威嚇用の火薬が炸裂し、雪煙が舞い上がる。
殺傷能力はないが、視界と聴覚を奪うには十分だ。
キーンという耳鳴りが、遠く離れた私の耳にも届くほどの衝撃音。
「うわぁぁっ!」
パニックになった男たちが、雪の中を逃げ惑う。
そこに、待ち構えていた村の自警団と、闇に紛れたレージが襲いかかった。
影が交錯し、すぐに勝負はついた。
プロの暗殺者ではない。ただの金に目がくらんだ密輸団の残党だ。準備万端のこちらが負けるはずがない。
「……ふぅ」
私は窓枠にもたれかかった。
指先が冷え切って、感覚がない。
糸を操るには神経を研ぎ澄ませる必要があり、その反動で指が痺れて動かなくなるのだ。
以前なら、怖くて震えていただろう。
でも今は、この痺れが「守りきった」証のように思えて、誇らしかった。
その時、眼下の雪道に、逃走する小さな影が見えた。
一人だけ、包囲網を抜けて森へ向かう影。
ボロボロのローブを引きずり、裸足のように見える足取り。
(……ミレイユ?)
直感的にそう思った。
あの後ろ姿には、かつての輝きはなく、ただ何かに追われる獣のような必死さだけがあった。
私は急いで階段を駆け下りた。
レージに任せるべきかもしれない。
でも、彼女との因縁には、私が自分で幕を引かなければならない気がした。
白灯祭の前夜。
雪は激しさを増し、視界は白一色に染まっていた。
村は静まり返っているが、それは嵐の前の静けさだ。
私は屋敷の屋根裏部屋にある監視窓から、村へと続く一本道を見下ろしていた。
レージは外の見回りに出ている。
屋敷と村の間には、自警団と協力して即席の「結界」を張ってある。
結界といっても、魔法的なものではない。
私が糸環紋(しかんもん)の応用で作った、細い糸の罠だ。
「……来た」
雪の中に、違和感があった。
風の音に混じって、雪を踏みしめる音が不規則に響く。
獣ではない。
足音を消そうとしている人間の気配だ。
数は……五人、いや六人。
彼らは村の倉庫――白銀晶が保管されている場所へ向かっている。
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甘いわ。
そこは、私が一番警戒して網を張った場所よ。
私は窓を開け、冷気を吸い込んだ。
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かじかむ指先に意識を集中させる。
「繋げ……!」
私の指から、視認できないほど細い魔力の糸が伸びる。
それは雪の下に埋めておいた、無数の鈴と、起爆用の小さな火薬玉に繋がっている。
侵入者たちが倉庫の扉に手をかけた瞬間。
私は指を弾いた。
チリン。
鈴の音が鳴ると同時に、私が張り巡らせた糸が一斉に収縮する。
侵入者たちの足首に糸が絡みつき、彼らの体勢を崩す。
「なっ、何だ!?」
「罠か!」
男たちの狼狽(うろた)える声。
私は間髪入れずに、次の糸を引いた。
「ドガァァン!!」
雪の中で、赤い閃光が走った。
威嚇用の火薬が炸裂し、雪煙が舞い上がる。
殺傷能力はないが、視界と聴覚を奪うには十分だ。
キーンという耳鳴りが、遠く離れた私の耳にも届くほどの衝撃音。
「うわぁぁっ!」
パニックになった男たちが、雪の中を逃げ惑う。
そこに、待ち構えていた村の自警団と、闇に紛れたレージが襲いかかった。
影が交錯し、すぐに勝負はついた。
プロの暗殺者ではない。ただの金に目がくらんだ密輸団の残党だ。準備万端のこちらが負けるはずがない。
「……ふぅ」
私は窓枠にもたれかかった。
指先が冷え切って、感覚がない。
糸を操るには神経を研ぎ澄ませる必要があり、その反動で指が痺れて動かなくなるのだ。
以前なら、怖くて震えていただろう。
でも今は、この痺れが「守りきった」証のように思えて、誇らしかった。
その時、眼下の雪道に、逃走する小さな影が見えた。
一人だけ、包囲網を抜けて森へ向かう影。
ボロボロのローブを引きずり、裸足のように見える足取り。
(……ミレイユ?)
直感的にそう思った。
あの後ろ姿には、かつての輝きはなく、ただ何かに追われる獣のような必死さだけがあった。
私は急いで階段を駆け下りた。
レージに任せるべきかもしれない。
でも、彼女との因縁には、私が自分で幕を引かなければならない気がした。
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