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4話
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私はマリアと一緒に生徒会長室から脱出した。外に居た見張りには気付かれずに行くのが大変だったけれど。マリアが気を惹いている内に私はその後ろをそっと通って……生きた心地がしなかった。
完全に濡れ衣だとはいえ、第6王子が行ったことに逆らった私。さらに脱出までしている……これの罪ってどのくらいなのかしら? 見つかったら地下牢行きでは済まない気がする。
「どこに行くんですか?」
「とりあえずお父様のところに行きましょう。お父様なら味方になってくれるはずだし」
マリアのお父さんか……確かウィンドル様のはず。ウィンドル様は侯爵様だけあって流石に有名なお方だ。深く知っているわけではないけれど、確かに味方になってくれるのは間違いないだろう。あとはウィンドル様を通して国王陛下に話を通すことが出来れば完璧なのだけれど。
そうなれば第6王子の権限では最早、どうしようもないはず。それどころかビスタに罰が下るレベルだ。
「待ってもらおうか」
「あっ……ビスタ……!」
でもそんな風に上手く流れるわけはなくて……私とマリアは簡単にビスタに見つかってしまった。もうすぐで玄関に行けるところだったのに。
「念のため出入口付近の警備を強化しておいて正解だったな。生徒会長室の見張りだけに任せておかなくて正解だった」
ビスタの周りには護衛の兵士達の姿がある。出入口の強化をしていたというのは本当らしい。しまった……生徒会長室の見張りを突破できたから安心していたわ。
「どうしてマリアまで一緒にいるんだ? と問いたいところではあるけれど、そうか、君は納得していないのか」
「ビスタ……あなたの計画の邪魔をするかは悩んだのよ、これでも」
「でも、君は私の想いとは逆の方を選んだというわけだ」
マリアの表情は険しくなっている。幼馴染のビスタに問い詰められて悩んでしまっているようだ。これを見るとビスタのことが好きみたいね。意外だけれど相思相愛だった、ということかしら?
「非常に残念だよ、マリア。君は私の運命の人だと思っていたのに。だからこそ、この計画についても話したんだ」
「ビスタの私への想いは素直に嬉しいと思うわ。でも、その為に一つの貴族の令嬢に罪を着せるなんて駄目よ」
「君と一緒になる為に必要なことだよ。王家の今後の発展の為にテレーズには犠牲になってもらうだけだ」
「……」
改めて聞くとなんて酷い話なんだと思えてしまう。どうして私がビスタとマリアの幸せの為に悪者にならないといけないんだろうか? その為に家系に傷を付けて私は地下牢に閉じ込められて……そしてきっと裁判によって私は罪を償わないといけなくなる。そんなバカな話があってたまるか。
でも、マリアが味方になってくれたのは心強かった。いくらビスタでもこの状況では強引に責めることはできないだろうから。マリアに傷を負わせることはしないだろう。
「衛兵、テレーズを捕らえるんだ」
「?」
あれ、ビスタから意外な発言が出て来た気がする。私を捕らえる……?
「し、しかし……マリア様のご意志は……」
「王子である私の言うことが聞けないのか?」
「いえ、そういうわけではありません。ですが、この状況ではマリア様に怪我を負わせる可能性が」
「仕方ないよ、マリアが選んだ結果だ。行け」
「は、はい……畏まりました」
びっくりしてしまった。まさか、私だけでなく、愛しているはずのマリアの怪我まで容認するなんて。信じられないことだった。
兵士達が私達に近づいて来る……それぞれには武器が持たれており、怪我をさせてもよいという意思表示にも見えた。嘘でしょ……仮にも貴族令嬢である私達にそんなこと。いくら王子であるビスタでも許されることではない。私はともかくマリアは有力貴族であるウィンドル様の娘なんだから。怪我をさせたら大変なことに……。
「いい加減にしなさい!!」
そんな時だった。冷静だったマリアからとてつもない怒号が飛び込んで来たのは。
「私を誰だと思っているのですか! 有力侯爵ウィンドル・フォーミルの娘、マリアよ? そのことを分かった上での行為なのかしら!?」
迫って来ていた兵士達は一気に後退し始めた。とても迫力があるけれど……あれ? マリアってこんなキャラだっけ?
完全に濡れ衣だとはいえ、第6王子が行ったことに逆らった私。さらに脱出までしている……これの罪ってどのくらいなのかしら? 見つかったら地下牢行きでは済まない気がする。
「どこに行くんですか?」
「とりあえずお父様のところに行きましょう。お父様なら味方になってくれるはずだし」
マリアのお父さんか……確かウィンドル様のはず。ウィンドル様は侯爵様だけあって流石に有名なお方だ。深く知っているわけではないけれど、確かに味方になってくれるのは間違いないだろう。あとはウィンドル様を通して国王陛下に話を通すことが出来れば完璧なのだけれど。
そうなれば第6王子の権限では最早、どうしようもないはず。それどころかビスタに罰が下るレベルだ。
「待ってもらおうか」
「あっ……ビスタ……!」
でもそんな風に上手く流れるわけはなくて……私とマリアは簡単にビスタに見つかってしまった。もうすぐで玄関に行けるところだったのに。
「念のため出入口付近の警備を強化しておいて正解だったな。生徒会長室の見張りだけに任せておかなくて正解だった」
ビスタの周りには護衛の兵士達の姿がある。出入口の強化をしていたというのは本当らしい。しまった……生徒会長室の見張りを突破できたから安心していたわ。
「どうしてマリアまで一緒にいるんだ? と問いたいところではあるけれど、そうか、君は納得していないのか」
「ビスタ……あなたの計画の邪魔をするかは悩んだのよ、これでも」
「でも、君は私の想いとは逆の方を選んだというわけだ」
マリアの表情は険しくなっている。幼馴染のビスタに問い詰められて悩んでしまっているようだ。これを見るとビスタのことが好きみたいね。意外だけれど相思相愛だった、ということかしら?
「非常に残念だよ、マリア。君は私の運命の人だと思っていたのに。だからこそ、この計画についても話したんだ」
「ビスタの私への想いは素直に嬉しいと思うわ。でも、その為に一つの貴族の令嬢に罪を着せるなんて駄目よ」
「君と一緒になる為に必要なことだよ。王家の今後の発展の為にテレーズには犠牲になってもらうだけだ」
「……」
改めて聞くとなんて酷い話なんだと思えてしまう。どうして私がビスタとマリアの幸せの為に悪者にならないといけないんだろうか? その為に家系に傷を付けて私は地下牢に閉じ込められて……そしてきっと裁判によって私は罪を償わないといけなくなる。そんなバカな話があってたまるか。
でも、マリアが味方になってくれたのは心強かった。いくらビスタでもこの状況では強引に責めることはできないだろうから。マリアに傷を負わせることはしないだろう。
「衛兵、テレーズを捕らえるんだ」
「?」
あれ、ビスタから意外な発言が出て来た気がする。私を捕らえる……?
「し、しかし……マリア様のご意志は……」
「王子である私の言うことが聞けないのか?」
「いえ、そういうわけではありません。ですが、この状況ではマリア様に怪我を負わせる可能性が」
「仕方ないよ、マリアが選んだ結果だ。行け」
「は、はい……畏まりました」
びっくりしてしまった。まさか、私だけでなく、愛しているはずのマリアの怪我まで容認するなんて。信じられないことだった。
兵士達が私達に近づいて来る……それぞれには武器が持たれており、怪我をさせてもよいという意思表示にも見えた。嘘でしょ……仮にも貴族令嬢である私達にそんなこと。いくら王子であるビスタでも許されることではない。私はともかくマリアは有力貴族であるウィンドル様の娘なんだから。怪我をさせたら大変なことに……。
「いい加減にしなさい!!」
そんな時だった。冷静だったマリアからとてつもない怒号が飛び込んで来たのは。
「私を誰だと思っているのですか! 有力侯爵ウィンドル・フォーミルの娘、マリアよ? そのことを分かった上での行為なのかしら!?」
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