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5話
しおりを挟む「ま、マリア……?」
いきなり飛び出たマリアの怒号に驚いたのは私だけではなかったようだ。ビスタも驚いたのか他の兵士と一緒に後退していた。ビスタが驚いているということは、本来の彼女からはあり得ない行動だったということかしらね。
「マリア? じゃないでしょう、ビスタ。私に対してどうしてこんなことができるのかしら? 聞かせてもらえる?」
「い、いや何を言っているんだ……私は別にマリアを捕まえろとは言っていないぞ?」
「私が怪我をすることを容認していたでしょう? あれはどういうつもりなの?」
「そ、それは……そのだな。まあ、なんというか……その」
「……」
マリアの突然の怒号……気のせいかビスタの態度が一変しているように見受けられた。どういうことかしら、これは。
「ウィンドルお父様に言っても問題ないわよね。今回のことは非常に重要な問題だし。そもそもの計画も全て話すわよ」
「ウィンドルに話すだと? ちょっと待ってくれ、マリア。それはしないという約束だっただろう?」
「私に怪我をさせることをしている人が何を言っているのよ。そんな約束は反故するに決まっているでしょ」
「ま、待ってくれ。それは話が違う……悪かったよ、マリア。運命の相手である君に言うべきことではなかった」
マリアとビスタの関係性が分かったような気がする。ビスタは私に対しては高圧的な態度を取っていたけれど、どうやらマリアに対してはそうではなかったようね。マリアに対する主従関係は……どうやら王子の方が下のようだ。
しかも話を聞いている限りではマリアのお父様のウィンドル様の権限は想像以上に強いみたいで。
「どうするんですか、ビスタ様? なんとかしてくださいよ、第6王子殿下でしょう?」
「待て! 落ち着けお前達!」
「本当にお願いしますよ! 私達をこんな無茶な計画に付き合わせているんですから! 絶対に大丈夫だと言っていたじゃないですか!」
怒っているマリアを懐柔できないビスタに痺れを切らしたのか、護衛の兵士たちから不満が漏れ出した。まあ、当然でしょうね、この状況なら。加えてビスタへの忠誠心の無さも露呈されているような。やっぱり無茶な計画だとはわかっていたようね周りも……でも、王子殿下には逆らえなかったということかしら。自業自得とはいえちょっと可哀想かな。
「くそっ、どうしてこんなことに……テレーズ! 全ては逃げ出したお前の責任だからな! 許さないぞ!」
「な、なにを言ってるんですか? ビスタ」
呆れて物も言えない……どうやらビスタは責任を私に押し付ける気のようだ。マリアには敵わないと判断したからこその行動だろうか? 婚約破棄の為に私を虐めの加害者に仕立て上げて、それで国王陛下を納得させようという無茶な計画。幼馴染のマリアには裏切られて、協力者の兵士達には不満を言われて……本当に大変ね。
その後は私が悪いみたいにするつもりなんだろうけれど、そんなことできるはずないでしょう。素直に謝罪した方がいいと思うけどね。どこまでも諦めの悪いビスタだった。
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