幼馴染に裏切られた私は辺境伯に愛された

マルローネ

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3話 パーティーへ その2

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「シルファ……緊張してしまうわ」


 次の日、私は緊張しながらパーティー会場へ向かった。主催はハインリヒ侯爵だ。ご子息の誕生日ということでささやかなパーティーを催したと聞いている。ささやかと言っても、侯爵様の規模なのでそれなりに大規模にはなっているけれど。

「お嬢様、大丈夫でございますか? 辛いのでしたら、やはり今日は帰ることも可能ですが」

「会場の前に来て何もせずに帰るわけには行かないわ。大丈夫よ、行きましょうシルファ」

「畏まりました」


 私はシルファと一緒にパーティー会場の中へと入った。


「わあ……!」

「広いですね……それに貴族の方がたくさんいます」


 流石はハインリヒ侯爵の催し物といったところだろうか。既に数々の貴族やその令嬢、令息の姿があった。彼らの護衛の数も含めると相当な規模になっている。また、食事などを運ぶ執事やメイド達も大勢いるので、本当に大規模なパーティーなどなと思い知らされた。

 しまった……本日は祝い事ではあるけれど、正直、ここまでの規模だとは予想していなかった。少し……いや、かなり肩身の狭い思いを感じてしまう。シルファも私の感情に敏感に反応してくれているのか、心配そうにこっちを見ていた。

「大丈夫ですか、お嬢様?」

「ええ、大丈夫よ。心配いらないわ」


 私はシルファを前に強がってみせた。本当は大丈夫ではないが、強がるしかなかったからだ。そして予想通りと言うべきか……なにやら私への視線が感じられた。


「見られておりますね……」

「そうね」


 シルファは元冒険者だけにそういう気配を感じ取るのはお手の物だろう。なんなら、私よりも先に気付いたくらいだ。私はグランに婚約破棄をされ、ローザに婚約者を奪われた存在。こういうパーティー会場でも、そういう噂は格好のネタになるのだ。

「……」


 というより、傷物令嬢に関わりを持ちたくないと思う人が多いのかもしれない。関わることで自分の家の価値が下がるとでも考えているのだろうか。貴族と言うのは体面を気にするものだけれど……滑稽な話だ。

「彼女は……」

「ええ、彼女がアイシャ・オルセイト伯爵令嬢ですわ」

「……」


 早速、噂されている……嫌な気分だ。見たところ、私と同じ伯爵家の人達みたいだけれど……本当に気分が悪い。


「確か捨てられたとか……」

「あら、そんなに悪い人なの?」

「そうなんじゃないかしら?」


 あからさまに私を見下している人の声が聞こえて来た。流石にシルファも顔を硬直させる。


「お嬢様、今の者達は……」

「騒ぎを大きくするわけにはいかないわ」

「わかりました」


 シルファは注意をしに行こうと考えたみたいだけれど、後に来るお父様の為にもトラブルは避けたいところだ。お父様の顔に泥を塗るわけにもいかないし。でも、あからさまに変な噂が流れているような気がする。それを鵜呑みにしている人達もいるというわけか。そうなると、その噂の出どころは……グランとローザ?

 そして案の定、私に話しかける人はいない……こんなことは今までなかったくらいだ。今、私は悪い意味で有名人になっているわけで。と、そんな時だった。

「お嬢様、あの……」

「えっ?」


 私の前に立つ男性の姿が目線が私に合っている。この方は……。

「突然、すみません。あの……アイシャ・オルセイト伯爵令嬢ではないですか?」

「は、はい……そうですが……」


 まさか今の状態の私に話しかけて来る人がいるなんて。私はびっくりしてしまい、しばらくその方の名前を忘れてしまった。
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