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2話 パーティーへ その1

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 私は自分の屋敷であるオルセイト伯爵家に帰ってから、自分の部屋で一日中泣きはらした。親友だと思っていたグランとローザ……昔から色々な遊びや習い事を一緒に行っていた仲だったのに。

 実際に親友だと思っていたのは私だけ……なんという滑稽な話だろうか。


「ふふ、こんなことがあるなんてね。人に裏切られるなんて一瞬ということかしら?」


 絶対に裏切られないと思っていた親友にいとも簡単に裏切られた。ローザは私の婚約者を奪い、婚約者のグランは婚約破棄をしたのだ。そして、私は傷物令嬢になってしまった。このタイダル王国では傷物令嬢への風当たりは周辺国家に比べて強いと思う。

 噂が一人歩きすることが多いのがその理由だ。言うなれば、それくらい噂好きの貴族が多いということだけれど。ああ、私は何を考えているんだろうか。色々なことがあり過ぎて混乱しているわ。


「ごめんなさい、少し散歩してくるわ」

「お嬢様、それでしたら私もご一緒いたします」

「ありがとう、シルファ。お願いするわね」

「はい、お任せください」


 メイドの一人であるシルファは私の専属の護衛も兼ねている。10代のころは冒険者をしていたらしく強さは相当なもののようだ。私にとっては頼りになるお姉さんといったところかしら?


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「おお、アイシャ……大丈夫なのか?」

「お父様、ご心配お掛けしております。少し落ち着きましたので、庭を散歩してきますわ」

「う、うむ。気を付けてな」

「はい」


 私は玄関先で会ったお父様に挨拶をしてシルファと共に庭へと出た。オルセイト家は伯爵の地位を持っているだけあってそれなりに広い庭園を有している。2つも噴水が用意されており、ところどころに休憩の場としての建物もあるのだ。私は片方の噴水のところまで歩いた。


「はあ、私はこれからどうなるのかしら。貴族の間では、傷物令嬢というレッテルが貼られているでしょうね」

「そうですね、お嬢様。そういった噂は広まってしまいますので……」


 シルファも噂が広まることについては否定はしなかった。事実だからだ。グランとローザの二人が裏切った……一方的な婚約破棄ではあったのだけれど、きっとあの二人は良いように話を捻じ曲げるはずだ。私が何かを言ったとしてもそれは変わらないだろう。

 同じ伯爵という地位ではあるけれど、グランやローザの家の方が権力的には上になっている。そして、伯爵とという中堅以上の地位であるからこそ、噂が広まるのも早いのだ。これが公爵家とかだったら逆に広まらないのだろうけれど……広まったとしても、表立って批判はできないだろうし。

「お嬢様、予定では明日、パーティがありますが……いかがいたしますか?」

「出ないわけにはいかないでしょう? これでも一応は伯爵の娘なんだし」

「左様でございますか、畏まりました。私も同席させていただいてもよろしいですか?」

 これはシルファなりの優しさだろうか? 私と一緒にいてくれるという……。


「ええ、お願いするわ。どのみち護衛役は必要だしね。それならシルファに同行してもらいたいわ」

「ありがとうございます、お嬢様」


 冷静に彼女は会釈した。

 それにしても、パーティーか……婚約破棄があった直後なのに。正直に言うと、とても出席できる気分ではない。しかし、私の立場上、出席しないわけにはいかない。出席しなければそれこそどんな噂を立てられるか分かったものではないから。

 憂鬱だけれど、シルファが一緒にいてくれるなら、少しは紛れるかな?
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