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4話 チェスター・ドリス辺境伯 その1
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「あ、あの……チェスター・ドリス辺境伯」
「どうかしましたか? アイシャ様」
「あ、いえ……」
私に声を掛けてくれた人の名前はチェスター・ドリス辺境伯だった。王国内の北の国境線の防衛を任されている人物であり、非常に地位の高い人物だ。チェスター様は確か私と同じくらいの歳だったと思うけれど、若くして辺境伯になっている。
「ええと、なんと申し上げれば良いのか……」
「以前にも挨拶をさせていただいたことがありましたね。しかし、あの時はあまり話す機会がなかったものですから。よろしければこの機会に少し話しませんか?」
「チェスター様……」
私はとても驚いてしまった。隣に立っているシルファも同じ気持ちだと思う。まさかチェスター様にだけ噂の話が向かっていないなんてことはないはずだし。噂は知らなくてもこのパーティー会場の空気は分かるはずだ。それでも話しかけてくれた。私はそれが信じられなかった。
「わかりました。光栄でございますわ、チェスター様。あちらでお話ししませんか?」
「喜んで、アイシャ様。私の方こそ光栄ですよ」
周囲は少しざわついていたけれど、チェスター様は特に気にする様子もなく歩き出した。私もそれについて言ったけれど、自然と冷静な気分でいられた。チェスター様の態度のおかげだろうか。
------------------------------
私達は会場の端に陣取る形で立つことになった。この場所ならば、話し声も特に問題にならないし何よりも先ほどの所と比べて目立たない。チェスター様にとっても有意義な場所のはずだ。
「はは、こうして話すのは初めてになりますね」
「そうですね、チェスター様」
私達は軽く挨拶を再度行った。さてと……何を話そうかしら? あ、その前に断っておかないといけないわね。
「ええと、チェスター様。私はその……」
「はい、なんでしょうか?」
「既にご存知かと思われますが、私はその……グラン・コーデル伯爵令息と婚約破棄になっておりまして」
「ああ、存じておりますが」
「ええと……あの、その噂が悪い流れで出回っているようです。そんな私と話しても問題ないですか?」
そこまで話し終えて彼の目線が気になった。なんだか突き刺さりそうな視線だったからだ。
「そんなこと気にしないでください。私は全く気にしていませんので」
「そうですか! 良かったです」
チェスター様ははっきりとおっしゃってくれた。これだけでも彼がとても良い人なのだろうと確信できるかもしれない。私はなんだか、先ほどまでの緊張が和らいでいくのを感じた。
「良かったですね、お嬢様」
「ええ、本当に」
シルファも笑顔を向けてくれている。私達はしばらくの間、楽しい会話に弾んだ。お互い出会ったばかりみたいだし、共通の会話というところでは苦労したけれどね。
「どうかしましたか? アイシャ様」
「あ、いえ……」
私に声を掛けてくれた人の名前はチェスター・ドリス辺境伯だった。王国内の北の国境線の防衛を任されている人物であり、非常に地位の高い人物だ。チェスター様は確か私と同じくらいの歳だったと思うけれど、若くして辺境伯になっている。
「ええと、なんと申し上げれば良いのか……」
「以前にも挨拶をさせていただいたことがありましたね。しかし、あの時はあまり話す機会がなかったものですから。よろしければこの機会に少し話しませんか?」
「チェスター様……」
私はとても驚いてしまった。隣に立っているシルファも同じ気持ちだと思う。まさかチェスター様にだけ噂の話が向かっていないなんてことはないはずだし。噂は知らなくてもこのパーティー会場の空気は分かるはずだ。それでも話しかけてくれた。私はそれが信じられなかった。
「わかりました。光栄でございますわ、チェスター様。あちらでお話ししませんか?」
「喜んで、アイシャ様。私の方こそ光栄ですよ」
周囲は少しざわついていたけれど、チェスター様は特に気にする様子もなく歩き出した。私もそれについて言ったけれど、自然と冷静な気分でいられた。チェスター様の態度のおかげだろうか。
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私達は会場の端に陣取る形で立つことになった。この場所ならば、話し声も特に問題にならないし何よりも先ほどの所と比べて目立たない。チェスター様にとっても有意義な場所のはずだ。
「はは、こうして話すのは初めてになりますね」
「そうですね、チェスター様」
私達は軽く挨拶を再度行った。さてと……何を話そうかしら? あ、その前に断っておかないといけないわね。
「ええと、チェスター様。私はその……」
「はい、なんでしょうか?」
「既にご存知かと思われますが、私はその……グラン・コーデル伯爵令息と婚約破棄になっておりまして」
「ああ、存じておりますが」
「ええと……あの、その噂が悪い流れで出回っているようです。そんな私と話しても問題ないですか?」
そこまで話し終えて彼の目線が気になった。なんだか突き刺さりそうな視線だったからだ。
「そんなこと気にしないでください。私は全く気にしていませんので」
「そうですか! 良かったです」
チェスター様ははっきりとおっしゃってくれた。これだけでも彼がとても良い人なのだろうと確信できるかもしれない。私はなんだか、先ほどまでの緊張が和らいでいくのを感じた。
「良かったですね、お嬢様」
「ええ、本当に」
シルファも笑顔を向けてくれている。私達はしばらくの間、楽しい会話に弾んだ。お互い出会ったばかりみたいだし、共通の会話というところでは苦労したけれどね。
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