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22.隠密行動するキモい僕
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昨日は美月から逃げ出してしまったり、泉くんの相談に付き合ったりしていたので、結局城戸さんの様子を確かめることができなかった。
今日こそは噂の状況を確かめたい。もし城戸さんが苦しんでいるのだとすれば、放置なんかできない。
城戸さんから直接聞くことも少し考えたけど、彼女を傷つけることになりかねないので控えてきた。松雪さんも踏み込みすぎるのはよくないと言っていたし。
だったら、こっそり様子を確かめるしかないだろう。
「……」
休み時間。極力存在感を薄れさせながら、廊下を歩く。
ここは一年の教室が並ぶ廊下だ。
二年の僕がうろついても、案外注目されたりしないようだ。存在感のなさが長所になった瞬間である。
授業の合間の休憩時間だ。あまり時間はない。急いで城戸さんが所属するクラスに向かった。
一年F組。ここに城戸さんがいるはずだ。
「F……か」
城戸さんの大きさはFでは収まり切らないだろう。未経験の僕でもそう思う。
って、何を考えているんだっ。頭を振って、こっそりと教室の中を確かめる。
「いた」
銀髪の長身美少女はよく目立っていた。窓際の席で本を読んで過ごしている姿は、とても幻想的な絵画のようだった。
城戸さんの周りは誰もいない。噂のことがなかったとしても、あれだけ存在感を放っていると近寄りがたいだろう。
「……」
いじめられている……という感じではないか?
いや、もしクラスメイトが示し合わせてみんなで彼女を無視しているのだとすれば、それは明らかないじめだ。
耳をそばだててはみるけど、城戸さんの話題は聞こえてこない。悪口でも言っていれば確信できるのだけど、これでは判断できないな。
「……」
こうやって探っていると、まるで僕が城戸さんがいじめられているのを望んでいるみたいで嫌になってくる。
今のところはただのぼっち少女。それだけなら、城戸さんの問題であって僕の出る幕ではない。
「っ」
ふと城戸さんが顔を上げて、こっちを向いた。
すぐに背を向けたけど、バレなかったか?
大丈夫。僕の影の薄さは隠密行動ができるレベル。廊下には他にも人がいたし、一瞬で僕を見つけるのは不可能なはずだ。
そろそろ授業が始まってしまう。僕は激しく鼓動する胸を押さえながら、自分の教室に戻った。
◇ ◇ ◇
昼休み。いつも通り購買でパンを買った。
「成果はなし、ですか」
「面目ない」
屋上に行く途中で松雪さんに会ったので、城戸さんの様子を見に行ったことを、彼女に報告した。
僕のキモい行動にツッコミが入るかもと身構えていたのだけど、松雪さんは気にした風でもなく、ほっと息を吐いていた。
「何もなかった、というのはいいことじゃないですか。少なくとも、噂を理由に紬さんを追い詰めてやろうという人はいないわけですよね」
「まだわからないよ。みんなが示し合わせて無視しているのかもしれないし」
僕の場合なら、いじめるくらいなら放っておいてくれと考えるんだけど……同じぼっちでも、城戸さんが同じとは限らない。
実は苦しんでいた、なんてよくある話だ。実際に悪い噂が流れている以上、軽いことだとは考えられなかった。
「こればかりは二年生の私たちでは情報に限界がありますからね。かといって強引に聞き出すのもよくないでしょう」
「だよねー……」
「でも、そうやって心配してもらえること自体が嬉しいと思いますよ」
松雪さんが微笑む。それは自然体の彼女を表しているように思えた。
「比呂くんに心配してもらえて、紬さんは幸せ者ですね」
「それは大げさすぎでは?」
「そんなことないですよ。心配してくれる人が一人もいない、という人だっていますから」
そっか。そういう人もいるのか。
なんだかんだで僕は美月に心配してもらえてきた。彼女に彼氏ができても、それは変わらなかった。
僕は恵まれていた。なら、今度はその分を城戸さんにも分けてあげたい。
今度は、僕が心配する側に回るんだ。
「初めて仲良くなった後輩だから……。僕は、城戸さんの味方でありたい」
だから、城戸さんの悪い噂がどうしようもなく落ち着かない。
恥ずかしがり屋で臆病で。なのに優しくて、僕を守ろうとしてくれた強さを持っている女の子。
そんな彼女を知っているから。噂の真偽がどうであれ、僕は城戸さんの味方になると決めたのだ。
「私たちに何ができるかはわかりませんが、傍にいてくれるだけで嬉しいことは確かですよ。あまり気負いすぎないようにしてくださいね」
松雪さんは歩き出す。屋上とは別の方向へ進む。
「私は図書委員の仕事がありますので、昼休みの紬さんのボディガードは任せましたよ」
「ボディガードって大げさな……」
松雪さんと別れる。昼休みは図書委員の仕事がちょくちょく入っているらしく、こうやって別々の時もあるのだ。
「って、今日に限って二人きりか……」
松雪さんがいないということは、今日の昼は城戸さんと二人きりということ。
休み時間に城戸さんの様子を見に行っていただけに、ちょっと気まずさがある。もしかしたらそれを見られたかもしれないし……。たぶんバレてない。大丈夫……だよね?
あまり深く考えても仕方がない。僕は気を取り直して屋上へと向かった。
屋上のドアを開けて、最初に目に入った光景に衝撃を受けた。
「ううぅ……ひっく……」
屋上で、泣いている城戸さんを目撃してしまったのだ。
友達の女の子が泣いている時にどうすればいいのか。未経験の僕の頭では、すぐに答えを出せなかったのであった。
今日こそは噂の状況を確かめたい。もし城戸さんが苦しんでいるのだとすれば、放置なんかできない。
城戸さんから直接聞くことも少し考えたけど、彼女を傷つけることになりかねないので控えてきた。松雪さんも踏み込みすぎるのはよくないと言っていたし。
だったら、こっそり様子を確かめるしかないだろう。
「……」
休み時間。極力存在感を薄れさせながら、廊下を歩く。
ここは一年の教室が並ぶ廊下だ。
二年の僕がうろついても、案外注目されたりしないようだ。存在感のなさが長所になった瞬間である。
授業の合間の休憩時間だ。あまり時間はない。急いで城戸さんが所属するクラスに向かった。
一年F組。ここに城戸さんがいるはずだ。
「F……か」
城戸さんの大きさはFでは収まり切らないだろう。未経験の僕でもそう思う。
って、何を考えているんだっ。頭を振って、こっそりと教室の中を確かめる。
「いた」
銀髪の長身美少女はよく目立っていた。窓際の席で本を読んで過ごしている姿は、とても幻想的な絵画のようだった。
城戸さんの周りは誰もいない。噂のことがなかったとしても、あれだけ存在感を放っていると近寄りがたいだろう。
「……」
いじめられている……という感じではないか?
いや、もしクラスメイトが示し合わせてみんなで彼女を無視しているのだとすれば、それは明らかないじめだ。
耳をそばだててはみるけど、城戸さんの話題は聞こえてこない。悪口でも言っていれば確信できるのだけど、これでは判断できないな。
「……」
こうやって探っていると、まるで僕が城戸さんがいじめられているのを望んでいるみたいで嫌になってくる。
今のところはただのぼっち少女。それだけなら、城戸さんの問題であって僕の出る幕ではない。
「っ」
ふと城戸さんが顔を上げて、こっちを向いた。
すぐに背を向けたけど、バレなかったか?
大丈夫。僕の影の薄さは隠密行動ができるレベル。廊下には他にも人がいたし、一瞬で僕を見つけるのは不可能なはずだ。
そろそろ授業が始まってしまう。僕は激しく鼓動する胸を押さえながら、自分の教室に戻った。
◇ ◇ ◇
昼休み。いつも通り購買でパンを買った。
「成果はなし、ですか」
「面目ない」
屋上に行く途中で松雪さんに会ったので、城戸さんの様子を見に行ったことを、彼女に報告した。
僕のキモい行動にツッコミが入るかもと身構えていたのだけど、松雪さんは気にした風でもなく、ほっと息を吐いていた。
「何もなかった、というのはいいことじゃないですか。少なくとも、噂を理由に紬さんを追い詰めてやろうという人はいないわけですよね」
「まだわからないよ。みんなが示し合わせて無視しているのかもしれないし」
僕の場合なら、いじめるくらいなら放っておいてくれと考えるんだけど……同じぼっちでも、城戸さんが同じとは限らない。
実は苦しんでいた、なんてよくある話だ。実際に悪い噂が流れている以上、軽いことだとは考えられなかった。
「こればかりは二年生の私たちでは情報に限界がありますからね。かといって強引に聞き出すのもよくないでしょう」
「だよねー……」
「でも、そうやって心配してもらえること自体が嬉しいと思いますよ」
松雪さんが微笑む。それは自然体の彼女を表しているように思えた。
「比呂くんに心配してもらえて、紬さんは幸せ者ですね」
「それは大げさすぎでは?」
「そんなことないですよ。心配してくれる人が一人もいない、という人だっていますから」
そっか。そういう人もいるのか。
なんだかんだで僕は美月に心配してもらえてきた。彼女に彼氏ができても、それは変わらなかった。
僕は恵まれていた。なら、今度はその分を城戸さんにも分けてあげたい。
今度は、僕が心配する側に回るんだ。
「初めて仲良くなった後輩だから……。僕は、城戸さんの味方でありたい」
だから、城戸さんの悪い噂がどうしようもなく落ち着かない。
恥ずかしがり屋で臆病で。なのに優しくて、僕を守ろうとしてくれた強さを持っている女の子。
そんな彼女を知っているから。噂の真偽がどうであれ、僕は城戸さんの味方になると決めたのだ。
「私たちに何ができるかはわかりませんが、傍にいてくれるだけで嬉しいことは確かですよ。あまり気負いすぎないようにしてくださいね」
松雪さんは歩き出す。屋上とは別の方向へ進む。
「私は図書委員の仕事がありますので、昼休みの紬さんのボディガードは任せましたよ」
「ボディガードって大げさな……」
松雪さんと別れる。昼休みは図書委員の仕事がちょくちょく入っているらしく、こうやって別々の時もあるのだ。
「って、今日に限って二人きりか……」
松雪さんがいないということは、今日の昼は城戸さんと二人きりということ。
休み時間に城戸さんの様子を見に行っていただけに、ちょっと気まずさがある。もしかしたらそれを見られたかもしれないし……。たぶんバレてない。大丈夫……だよね?
あまり深く考えても仕方がない。僕は気を取り直して屋上へと向かった。
屋上のドアを開けて、最初に目に入った光景に衝撃を受けた。
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