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第6章
第28話
しおりを挟む地獄のダンジョンを入ってから数日が経った。持ち帰ってしまった頭蓋骨は、レインに連絡して聞いた、名もなき冒険者用の共同墓地があるとかで聞いた場所で埋葬し、供養してもらった。 そこからは少々忙しく、学園都市の用務員としての仕事や、他のダンジョンである海底ダンジョン、天空のダンジョンに覗くだけでもという考えで行ってみたのだった。
海底は文字通り、ダンジョンの入口が海底にあり、水中でも息が出来て尚且つ、普通に戦えないといけないところなのだが、それは普通に近くの店でスキルが高額だが売ってあった。
水中で息するだけのスキルが三億Pで水中でも地上と同様に動けるスキルが五億Pとなっていた。俺の手持ちのPは確認してもらったところ、一億ちょいとのこと。 これは、元の世界でのお金と同等の額でもあるため、スキルの値段に驚く。
今の俺には息するだけのスキルすらも買えないものの、幸い俺には想像魔法と高いステータスに加えて石板で多くのスキルや魔法があるため、これらのスキルは不要であるが、一々想像して使う魔法より、水中で息するスキルは持って置きたい願望はあった。
海底ダンジョンでは転移した場所が入口付近ではなく、地上のちょい外れた人通りがないところに転移したのだが、それはちゃんと意味があるようで、地獄ダンジョンと違って、海底ダンジョンの地上は高ランクであろう冒険者たちで賑わっていたのだった。
彼らは魔導車や、魔導列車で来ているようで、俺みたいに魔法陣で来ている者が一人も居なかったから、ギルマスもちょい外れに転移陣を作ったのだろうと推測する。
海底ダンジョン入口は船でしか行けなく、入口がある海の上で停船して海に入るというのが一般的であるようだ。海岸からも歩いては行けるようだが、途中で巨大なクレバスに阻まれて、それを超えないと行くことが出来ないように出来ているそうだ。
海底のダンジョンは入口だけ見ようと思って、乗り合わせの船に乗って海底入口付近に行ったら、水中でも数点の店が立ち並んでいた。
船は決められた時間に停船するため、ダンジョンから出ても安心できるというものらしい。
ここは直接、入口付近に転移しようと場所を記憶して、人が少ない時にでもまた来ようと思い、次の天空のダンジョンに行ってみたら、海底に比べて明らかに冒険者の数が少ないものの、此処もスキル屋があった。
売っているスキルを見てみようと入ろうとしたら、仮面を被ってない状態のミツルギでは入店する冒険者のランクが足りないとかで入ることが出来なかった。
天空ダンジョンはこれも文字通り巨大な浮遊する島で、学園都市の更に上空にある浮遊する大地である。此処に正規のルートで来る場合は、魔法陣か飛空挺と呼ばれる空を飛ぶ船でしか来る事が出来ないみたいだ。
学園都市での空気は普通に呼吸できるが、天空の浮島では随分と苦しいところ、スキル屋では呼吸系のスキルを売っていると推測する。
天空ダンジョンというからには、城や豪勢な建造物を想像していたが、実際は小さめの岩山に洞窟がぽっかり空いているだけの場所だった。しかも、此処では門番らしき魔物が入口に鎮座していた。
初見の冒険者は、これを倒さなければ中に入ることが出来ないようになっているようで、既に倒したことのある冒険者は、スルーしてダンジョンに入ることが出来る仕様のようす。
魔物は何度も戦って倒したことがあるグリフォンで、それが地上に二体、空に二体の合計四体に加えて、蝙蝠の翼を生やしたオーガが五体入口を守っている。
俺はそのグリフォンとオーガを見ながら余裕そうだと思って、その様子を観察していたら、浮遊島に初めて来たという男女二人組の冒険者に声を掛けられた。
「やあ、君は見たところ一人のようだけど、良かったら一緒にどうだい?
それとも待ち合わせしているだけとか?」
「やだ。連れて行くの止めとこうよ。
この人Bランクだよ、荷物持ちくらいしかならないって」
「うわっ、本当だ。きっと、年も年だし、格好も戦闘要員には見えないね。よく見たら武器一つも持ってないし、全然戦えそうなタイプじゃないね。やっぱり今の話は無し無し」
俺のギルド証は先程、スキル屋で入ろうとした時に服から出したままにしていたことから、こちらが答える前に勝手に俺のギルド証を見て見下して「無いわ~」っと、離れた所でも俺に聴こえるように言う彼らは、他の少人数の冒険者たちに声を掛けているところをみると、二人では四体のグリフォンとオーガは倒せない実力のようだ。
彼ら以外で初めて此処に来た冒険者たちは、既に魔物らを倒していたようで、次々に中に入って行って、残ったのは俺とベテラン風の冒険者パーティ数組に彼らだけになったことで、今回は諦めて仲間を集めて来ようという話し声が聴こえ、彼らは浮遊島の桟橋のような場所に停まったままの飛空挺で帰って行った。
彼らが帰ったことで、俺はグリフォンとオーガと戦って置こうと入口に近づくと、ベテラン冒険者たちが背後から俺の肩を掴んだ。
「おっさん、止めとけよ。おっさんは仲間が来なかったのか?だとしたら、さっき帰ったアイツらみたいに再度仲間たちと戦えばいいだろ。今回は止めとけ」
「そうそう、うちのリーダーの言う通りだよ。
あのダンジョンの中は、あんなグリフォンなんか、雑魚だと思えるくらい強い魔物がウジャウジャいるんだぜ。古代竜もいるって噂で聞いたこともあるんだぜ」
ベテラン冒険者パーティのリーダーともう一人が俺を説得する。彼らのパーティは他に、男性一人に女性が三人がいるが、他の仲間たちも「止めな」と言ってくるのに対して、俺も頭を下げてありがとうと返した。
「でも、心配はご無用。あれくらいなら余裕だよ。前に同じ物を数百体を相手に戦ったことあるし、大丈夫だよ」
そう俺が言うと、パーティのリーダー以外の皆が一斉に笑った。
「ヒーヒー、い、息が出来ない。
こんなに笑ったのは久しぶりだぜ。
リーダー、おっさんがこう言うんだし、勝手にさせちゃえばいんじゃね?」
「うむ、じゃあ。俺たちはアンタの戦いを観させてもらう。危険だと判断したら、アンタを引きずってでも助けるからな」
このパーティのリーダーは、かなりのお人好しのようだ。
「それで良いけど、一瞬で終わるよ」
「ぶわっはっはっは!まだ言ってんよー。
おっさんが一瞬で殺されるの間違いじゃねえの?」
まだ苦しそうに笑う彼をよそにグリフォンに近付き、想像魔法でグリフォンに降り掛かる重力を数万倍にする想像をしたら、グリフォンとオーガはまとめて一瞬でミンチになった。
ミンチになって倒したグリフォンとオーガは地面に吸い込まれるように消え、消えた場所が光って新たな四体が現れる仕組みになっているようだが、重力の効果が長く続いてしまい、復活し続ける魔物らが復活した途端に潰れて消えるというのがしばらく続いた。
流石にやり過ぎたことに気が付いて、重力の効果を消したら、倒したグリフォンの翼や爪にクチバシに加えてオーガの素材の多くが山盛りになって現れて、新たに現れたグリフォンは入口の脇に追いやられていた。そんな出来事を先ほどから、俺の心配をしてくれていた彼らの様子がどうだろうと振り向くと、アゴでも外れるのではないかというくらいに口が開いている彼らの顔があった。
新たに来て何故か遠巻きで観ていた他の冒険者たちも、開いた口が塞がらないといった感じで、意識を取り戻すも、口を元に戻すのに苦労してそうだった。
「さ、先程は済まない。貴方が低ランクで実力もないと思って失礼な態度を取ってしまった。
まさか重力魔法とは、中々珍しい魔法を見せてもらった」
「先程の?って、ああ良いよ良いよ。あれが一番手っ取り早いってだけで、本来なら剣で真っ二つにするか、殴り倒すからね」
「はーっはっはっは、流石にそんな冗談は通用しないぞ。っと、そろそろ遅れてきたメンバーが揃ったから失礼する。今度会う時は敵同士でないことを祈るばかりだ」
彼は自身のチームを引き連れてダンジョンの中に入って行った。
残った俺は遠巻きで見ていた冒険者たちに勧誘されるも、既に所属パーティがあるからと断ったら、何処のなんて名前のパーティだと凄い剣幕で言われたことで、別に隠すことがないことなので『ミーツと愉快な仲間たち』を口にしたら、気まずそうな表情をしだし、今の勧誘は聞かなかったことにしてくれと懇願された。
理由としては、あの決闘で闘技場で戦った恐ろしいリーダーと戦う自分の姿を想像したら怖いとのことと、あんな屈辱的な名前の変更をされることを考えたら、もう冒険者を続けられないとのこと。
後で知ったのだが、密かに高ランク冒険者たちの間で《あのパーティには手を出すな!》が暗黙のルールになっているようだ。
まだそのことを知らなかった俺は苦笑いしながら、頭を何度も下げる彼らを見送ったのだった。
こうして、海底と天空のダンジョンの中には入ってないものの、外からでも地獄とえらい違いだと思いながらも、最後に神の塔と呼ばれる最古で最難易度のダンジョンを見に行った。
神の塔の場所は事前に調べており、その場所は学園都市ではなく、ヤマト皇都のギルド本部から遠く離れた所にあるそびえ立つ塔が神の塔と呼ばれる。どのダンジョンよりも古く、神が自ら建てたとしか考えられない自然に出来た物ではない塔のことである。
入った者は容易に出る事が叶わず、中で滞在している時間と外の時間が著しく違うらしく、中に入って何年探索しても外だと数秒、もしくは、一秒も経っていないことがあるらしい。
そんなだから、外の世界で一分経って出て来なければ死亡扱いされるみたいだ。
神の塔はヤマトの観光名所にもなっていて、連日多くの人で賑わっているという。
超最高難易度なのだが、稀に無謀な冒険者が挑戦しに行くも、神の塔は他のダンジョンと違ってランクの制限がなく、誰でも入る事が出来るというものらしい。
だが、子供やふざけた輩が間違って入っては行けないとのことで、神の塔の入口は常に魔導人形の門番が待機し守っている。
昔は門番にゴーレムや躾がちゃんとされた使い魔の魔物がやっていたらしいが、人間の予期せぬ行動に対応ができないとのことで、門番は見た目も人間そっくりで、行動も特別製の魔導人形がやっているそうだ。
昔はギルドの職員が交代でやっていたこともあったそうだが、人間ってこともあってか、サボる人もいれば居眠りをする人もいて、これの改善策は、魔導人形ってことになった。
これも最初は色々と大変だったみたいだったものの、そこは皇宮の魔導具、魔導人形制作チームが頑張ったお陰らしい。
これらの説明は、神の塔の近くで無料で貰えるパンフレットに書いてあった。
俺は神の塔について少し知識を入れて、神の塔を間近で見てみると、先端が見えないほど高い塔だった。これだけ高いと遠くからでも分かりそうだが、ここは近くに来ないと見えないように出来ているのだとか。
近くの店々は神の塔スイーツ店や、神の塔レストラン、神の塔武具屋などがあって、こういうのは何処行ってもあるんだなっという印象である。スイーツ店の店頭には食品サンプルがあり、それを見るからに神の塔カヌレ、神の塔パフェなどただ神の塔がプリントされて生クリームをたっぷりと盛っただけのカヌレに、神の塔に似せたアイスのパフェなだけの、なんともいえない陳腐で残念な物になっているのに行列ができていた。
武具店もそうだろうと覗くと、チラホラ客らしき人がいたものの、武具は意外としっかりした作りの物がチラホラあった。
ただ、此処でも神の塔をプリントされただけのTシャツや防具、神の塔に似せた槍が売ってあった。
俺は神の塔がどのような感じで、いずれは挑戦しなければならないと思ってきたのだが、周りからしてみれば俺も観光していると見られているのだろう。何故なら、呼び込みで頻繁に声を掛けられるからだった。
自分の服装を見るからに、武装しているわけではないから仕方ないことだ。
呼び込みは、ある程度あしらって帰路につこうとしたが、その他にも学園都市にあるダンジョン街と呼ばれるダンジョンが集まっている場所があると聞き、いずれは転移するかも知れないと思って、場所の把握のために向かった。
ダンジョン街はヤマト国内にも数ヶ所あるようだが、それはまた別の機会にでも行こうと思って、先に学園都市のダンジョン街の街並みを軽く散策して帰路についた。
ここまでが地獄ダンジョンから、帰って数日の出来事だった。
今日は、また用務員としての仕事で、数日前からとあるリストと時間指定で呼び出しされて、早朝の日が昇ったばかりくらいの時間に出勤させられ、何事かと集合場所まで行くと、まだ俺しか居なくて待つ事二時間。
まばらに欠伸をしながら見たことある人や、見たことない人たちが数百人ほど集まった。
「あー、本日、こんな朝早くから集まってもらったのは、数年に一度のダンジョン探索で、今回は各学園が一斉に行うことになった。
それにより、この学園都市にある人工ダンジョンの調査、及び破壊を行うことを学園の総責任者が決定した。
それにより、我ら用務員が手分けして数日前から渡していたリストのダンジョンの調査及び破壊をする。実力や構想がある者は作り替えてもよいとの許可が降りている。破壊の対象は赤い文字で書かれているやつだが、別のダンジョンで魔物がいなかったり、ダンジョンの核であるダンジョンコアが限界だったりした所は破壊してもよいとされている。
尚、作り替えたダンジョンについては、後日にでも学園都市にある冒険者ギルドに届出を出すように」
用務員のNo.0が集まった人たちの顔ぶれを見て、用務員専用の通信機を使用してこの場にいる用務員皆んなにのみ聴こえるようにそう説明した。
彼は最後に、二人一組で調査するようにと付け加えた。
数日前に受け取ったリストはこれだったのかと、通信機に入っているリストを見るも、何処が何処だか分からないで首を傾げていたら、俺と組む用務員がやってきて、そのリストを触ったら何処に行けば良いか分かることを教えてくれた。 彼は用務員のNo.10で、下位ナンバーと上位ナンバーとで組むことになっているとのこと。俺はまだ仮用務員なため、ナンバーで呼ばれることがないため、彼からは名前で呼ばれることになった。
「何年かに一度とはいえ、面倒です」
リストのダンジョンを回る際、歩きながら彼はそう呟いた。彼は眼鏡を掛けたインテリ風で、言葉遣いは丁寧な言葉を使っている。
俺は年齢では上でも仕事場では下であるから、言葉を崩しても話しても良いと言うも、彼は普段から使っているそうで、こういう喋り方しか話せないらしい。
「そうなんですか?学園都市の人工ダンジョンなんて、どんなのがあるか興味はありますけど」
正直、人工ダンジョンなんて、黄金のダンジョンとポチがいたダンジョンくらいなもので、他はどのような感じだろうと本当に興味があった。ここのところ、まともに入ったダンジョンは長い時間を掛けて底に辿り着いた地獄ダンジョンと、入口のみ確認した海底と天空のダンジョンのみだったからだ。後は、時間があまり取れなくて行くだけでも面倒だったダンジョン街の外を軽く散策したくらいなものだった。
「普通の実力がある者が作ったダンジョンなら、楽しめるでしょうけど、学生が授業の一環で作ったところや、卒業記念で作った所が多いのですよ。だから全く期待できないですし、壊せるところは、さっさと壊して回りましょう。
人工ダンジョンは自然に出来た所と違って、核を中で壊しても閉じ込められることがないですから、先に破壊予定の所から回りましょうか。学園都市のダンジョン街は場所が遠いですから、これから早めに向かいましょう」
彼はそう言うと、学園都市のダンジョン街行きの魔導車のバスの列に並びだした。
他の上位のナンバーの用務員は、自分用の魔導車に乗って来ていたため、相方と一緒にダンジョン街に向かって行った。
「あの俺、ダンジョン街なら最近、散策したばかりなので、これに並ばなくても行けますよ」
そうNo.10に提案した。そうしたら彼は、この魔導車か、自家用魔導車でないと、かなり遠いと呆れたように言うものだから、並んでいる皆んなには悪いが、彼と一緒にダンジョン街に転移した。
「はあ?な、な、なんだこりゃあああ!
なんなんだアンタ、何したんだよ!
どんなに飛ばしても最低でも三時間はかかるのに、どうやって来たんだよ!」
彼は驚いた拍子に口調が変わっていて、少しおかしかったものの、普通に転移で来たことを伝えたら、学園都市のダンジョン街は普通の転移では来られないことを驚いたままの口調で捲し立てられた。
最近は想像魔法による転移をし過ぎて、普通の瞬間転移は地獄で一度使ったくらいでほぼ、使うことがなかったことでやっちまったと思ったが、ここは自分の転移は特別だと誤魔化した。
「ゴホン、少々取り乱しました。気を取り直してリストの所を回りましょう」
俺の誤魔化しは少々無理があったものの、彼は納得してない表情のまま、咳払いをしたあと自分を取り戻して俺にも見えるリストと地図を宙に出してダンジョンに向かって歩き出す。
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