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8 シルビア視点
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※シルビア視点
女という生き物が苦手だ。
大勢で群れ、腹の底で探り合う。本音を上手く隠しながら正直に生きられないそんなものに、まさか自分も同じ生物だと思うと反吐が出る。
小さい頃から私と仲良くしようとしてきた令嬢は、みんな幼馴染に近づこうとして寄ってきた奴らばかり。彼女たちは私を利用して、侯爵家の嫡男であるアイツらとお近づきになろうとしたんだ。
だから私は誰よりもカッコいい女になる。
利用されない、私は利用する側になればいい。
(私にはミハエルとケイン、そしてアッシュがいれば問題ないんだから)
仏頂面の幼馴染を思い出す。
アッシュは他の二人と比べて口数は少ない。でも私は知ってる、アイツは誰よりも優しくて良いやつだ。
そんなの好きになるに決まってる。
だから……私は彼女を許さない。
絵に描いたような品行方正なご令嬢。女学校でも評判が良くて、家は有名な伯爵家。
完璧な貴女から一つくらい奪っても問題ないだろ?
*****
「父さん!母さん!」
学校が終わり帰宅する。父さんと母さんがいるリビングへと飛び込めば二人は目を丸くさせていた。
「まぁまぁシル、どうしたの?」
「一体どうしたんだい?」
「聞いてっ!ミハエルの結婚披露パーティー、私も行けるようになったんだ!」
二人の側にあるソファーへどかっと座る。
「そうなの?招待状にシルの名前は書いてなかったのだけれど……」
「ああ。参加者が多いから男爵家である私たちは夫婦だけの参加するようにと侯爵様は仰っていたんだがな」
「きっと書き忘れただけだったんだよ!ほら、ミハエルのやつそそっかしいからさ」
「「それならば良いけど」」
二人はいまいち納得していないらしい。
「アッシュもケインも呼ばれてるのに私が呼ばれない訳ないじゃないか!とにかく、今さっきミハエル本人に確認したから大丈夫!」
「んー……そうか」
「それよりタキシードを新調しなくちゃ!大事な友人の結婚パーティーだ、気合い入れていかないと」
「……ねぇシル、タキシードじゃなくてドレスはどうかしら?」
母さんの言葉にピタッと動きが止まる。
二人とも私の顔色を伺いながら話し出す。
「ほらっ貴女ももういい歳でしょ?可愛くおしゃれして素敵な結婚相手を探した方が良いと思うの!」
「あ、ああそうだな!シルは背が高いからきっとスレンダーなドレスが似合う!披露パーティーでも絶対注目されるぞ」
また始まった。
何度目かの不毛な会話に大きなため息をついた。
「ねぇ父さん母さん」
「「な、何?」」
「私ドレスなんか着ないよ。それに結婚相手も見つけないから」
フンと鼻を鳴らせば二人とも肩を落とす。
(ドレス?結婚相手?バカバカしい!そんな媚びを売るような真似、絶対にしたくない!)
この国での令嬢の結婚適齢期は割と早い。
女学校を卒業して3年までに結婚が決まっていなければ、妻に先立たれた老人貴族か訳ありの3流貴族の元に嫁ぐしかない。
だから両親はまだ若くて綺麗なうちに私に婚約者を作ってあげたいんだろうけど……。
(私にはアッシュがいる!)
アッシュなら私を迎え入れてくれるはず。
今はグラシャ嬢がいるから本心を打ち明けられないだろうがアイツが私を見捨てる訳がないんだ。
それに侯爵家の嫡男であるアッシュと結婚すれば私の肩書は男爵令嬢から侯爵夫人に変わる、両親にとっても悪い話じゃないはずだ。
「とにかく!私はドレスなんか着ないし結婚相手は自分で決めるから。父さんも母さんも余計なことしないでね」
「……分かったよ」
「シルを信じてるわ」
二人は根負けしたように笑っていた。
(全てはミハエルの結婚披露パーティーにかかってる)
本当は挙式にも参加したかったけどミハエル曰く身内だけのこじんまりとした式らしい。どうせなら沢山の人が参加するパーティーでアッシュに告白しよう。
(そしたらそのまま結婚発表とかアリだな!)
ふふふと笑いが込み上げてくる。
あの二人が不仲なのは知っている。まぁ最近はちょくちょくデートをしてるみたいだが、それも周りの目を誤魔化すためだろう。そもそもあんな子、アッシュのタイプじゃないしな。
私の取り巻き達もパーティーに参加するだろう。私とアッシュの仲を軽く匂わせていて良かった、きっといい仕事をしてくれるはずだ。
「さーて!どんなタキシードにしようかな」
女という生き物が苦手だ。
大勢で群れ、腹の底で探り合う。本音を上手く隠しながら正直に生きられないそんなものに、まさか自分も同じ生物だと思うと反吐が出る。
小さい頃から私と仲良くしようとしてきた令嬢は、みんな幼馴染に近づこうとして寄ってきた奴らばかり。彼女たちは私を利用して、侯爵家の嫡男であるアイツらとお近づきになろうとしたんだ。
だから私は誰よりもカッコいい女になる。
利用されない、私は利用する側になればいい。
(私にはミハエルとケイン、そしてアッシュがいれば問題ないんだから)
仏頂面の幼馴染を思い出す。
アッシュは他の二人と比べて口数は少ない。でも私は知ってる、アイツは誰よりも優しくて良いやつだ。
そんなの好きになるに決まってる。
だから……私は彼女を許さない。
絵に描いたような品行方正なご令嬢。女学校でも評判が良くて、家は有名な伯爵家。
完璧な貴女から一つくらい奪っても問題ないだろ?
*****
「父さん!母さん!」
学校が終わり帰宅する。父さんと母さんがいるリビングへと飛び込めば二人は目を丸くさせていた。
「まぁまぁシル、どうしたの?」
「一体どうしたんだい?」
「聞いてっ!ミハエルの結婚披露パーティー、私も行けるようになったんだ!」
二人の側にあるソファーへどかっと座る。
「そうなの?招待状にシルの名前は書いてなかったのだけれど……」
「ああ。参加者が多いから男爵家である私たちは夫婦だけの参加するようにと侯爵様は仰っていたんだがな」
「きっと書き忘れただけだったんだよ!ほら、ミハエルのやつそそっかしいからさ」
「「それならば良いけど」」
二人はいまいち納得していないらしい。
「アッシュもケインも呼ばれてるのに私が呼ばれない訳ないじゃないか!とにかく、今さっきミハエル本人に確認したから大丈夫!」
「んー……そうか」
「それよりタキシードを新調しなくちゃ!大事な友人の結婚パーティーだ、気合い入れていかないと」
「……ねぇシル、タキシードじゃなくてドレスはどうかしら?」
母さんの言葉にピタッと動きが止まる。
二人とも私の顔色を伺いながら話し出す。
「ほらっ貴女ももういい歳でしょ?可愛くおしゃれして素敵な結婚相手を探した方が良いと思うの!」
「あ、ああそうだな!シルは背が高いからきっとスレンダーなドレスが似合う!披露パーティーでも絶対注目されるぞ」
また始まった。
何度目かの不毛な会話に大きなため息をついた。
「ねぇ父さん母さん」
「「な、何?」」
「私ドレスなんか着ないよ。それに結婚相手も見つけないから」
フンと鼻を鳴らせば二人とも肩を落とす。
(ドレス?結婚相手?バカバカしい!そんな媚びを売るような真似、絶対にしたくない!)
この国での令嬢の結婚適齢期は割と早い。
女学校を卒業して3年までに結婚が決まっていなければ、妻に先立たれた老人貴族か訳ありの3流貴族の元に嫁ぐしかない。
だから両親はまだ若くて綺麗なうちに私に婚約者を作ってあげたいんだろうけど……。
(私にはアッシュがいる!)
アッシュなら私を迎え入れてくれるはず。
今はグラシャ嬢がいるから本心を打ち明けられないだろうがアイツが私を見捨てる訳がないんだ。
それに侯爵家の嫡男であるアッシュと結婚すれば私の肩書は男爵令嬢から侯爵夫人に変わる、両親にとっても悪い話じゃないはずだ。
「とにかく!私はドレスなんか着ないし結婚相手は自分で決めるから。父さんも母さんも余計なことしないでね」
「……分かったよ」
「シルを信じてるわ」
二人は根負けしたように笑っていた。
(全てはミハエルの結婚披露パーティーにかかってる)
本当は挙式にも参加したかったけどミハエル曰く身内だけのこじんまりとした式らしい。どうせなら沢山の人が参加するパーティーでアッシュに告白しよう。
(そしたらそのまま結婚発表とかアリだな!)
ふふふと笑いが込み上げてくる。
あの二人が不仲なのは知っている。まぁ最近はちょくちょくデートをしてるみたいだが、それも周りの目を誤魔化すためだろう。そもそもあんな子、アッシュのタイプじゃないしな。
私の取り巻き達もパーティーに参加するだろう。私とアッシュの仲を軽く匂わせていて良かった、きっといい仕事をしてくれるはずだ。
「さーて!どんなタキシードにしようかな」
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