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13 side モニカ
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※ ここからは側室モニカの視点になります。
『いいかモニカ。今後、絶対に魔力を使うな。誰にもお前に力があることを知られてはならないぞ』
成人を目の前に控えていた私を、父は泣きながら抱きしめてそう言った。
近々隣国へ魔導師となるべく留学を控えていた私にとって父が何故急にそんなことを言い出したのか分からなかった。でも、その理由はすぐに知らされる。
魔導師として王宮で働いていた母が、王太子に殺されたからだ。
魔力を持たないボンクラ王子。この国じゃある意味有名人な彼はそう呼ばれていた。別に力のないことで差別する訳じゃない、でも憐れな生い立ちの彼を王家の大人たちが甘やかしすぎたせいで彼は手の付けられない化け物に育ってしまった。
王宮で働く父も母も、彼の愚かな行動に頭を痛める日々を送っていた。そしてそれは、私たちティネッタ家にとって取り返しのつかない事態となる。
反乱を起こせばいい?
そんなの、出来たらとっくに誰かがやっている。
そんな勇気のあること誰も出来ないのよ。長年続いた王家による独裁政権の前じゃ一部の人間だけが甘い蜜を吸い、力ある貴族たちは謀反を起こさぬように圧力をかけられる。
決定的なのは、先導者がいないこと。
ぬるま湯に浸かり切った人間では新しい風を吹かせることが出来なかった。
私は瞬時に理解した。せざるを得なかった。
ああ……私はこのまま一生、母の無念を晴らすことなくこの国に食い潰されていくんだと。
ならばいっそ、自分で終わりを決めようとした。
誰にも気付かれないように深い森の中、鈍く光るナイフを喉元に突き付けたときだった。
『どうせ死ぬその命、私に預けてくれませんか?』
突如現れたその声に振り向く。木漏れ日が照らしたその人は穏やかな顔で小さく微笑んでいた。
*****
「はぁ……んぐぅっ、ぅう」
私の目の前でギルバートが力なく唸っていた。
自分の罪深さをようやく知り、更にはひた隠しにされてきた出生の秘密も打ち明けられた彼は、もうさっきまでの意気揚々とした元気は無くしていた。
今ここで、息の根を止めてやろうかしら。
私の圧力操作の力なら、直接手を下すことなく彼の身体を押し潰すことが可能。まぁ実際に人を殺めたことはないけど!今なら簡単に……
「モニカ」
それは突然呼ばれた私の名前。
ハッとして顔を上げれば、私だけを真っ直ぐ見つめるサリファ様の目が合う。
「ギルバート=ルスダンの処遇はみんなで決めましたよね?」
「……もちろん分かってますわ」
「そうですか。ならば良いのです」
サリファ様にはお見通しだったのね。
私が抜け駆けしてアイツに報復しようとしたの。その察しの良さに思わず苦笑してしまった。
ギルバートを殺したい人間は山ほどいる。それだけ彼は敵を作りすぎてしまった。皆の怒りをまとめ上げたサリファ様は公平に報いを晴らせるようにして下さった。それは死ぬことよりも辛い、地獄のような選択だ。
「では、彼を例の場所に連れて行って下さい」
「「仰せのままに、王妃殿下」」
「……もう離縁したから妃殿下ではないのですけど」
「そうだよぉ!サリファ様はもうあーんなクズの妻じゃないんだから!次からはちゃんと、サリファ様って呼ぼうねぇ」
「「は、はいっ!サリファ様っ!」」
衛兵たちは圧力をかけてくるセリーヌに怯えながら言い直した。
「こら、セリーヌ。困らせないの」
「えぇー、だって本当のことでしょ?」
ぶぅと頬を膨らませるセリーヌにため息を漏らした。誰よりもサリファ様に忠実なセリーヌを、宥めて落ち着かせるのが最年長である私の役目。年が離れている分、妹が出来たって感覚に近い。
「セリーヌは私を気遣ってくれたんですね」
「はいっ!もちろんですサリファ様っ!」
そう言ってサリファ様はセリーヌの頭を優しく撫でる。……いいなぁ、私もよしよしされたい。
「では予定通り、セリーヌは彼らに付いていって下さい。そして全ての手筈を整え、そのまま報復を開始して下さい」
「はぁーい!」
頭を撫でられご満悦のセリーヌはニコッと微笑み、運ばれていくギルバートの後ろをついていく。
あの子だけ直接手を下せるのは羨ましいけど……まぁこの報復は、セリーヌの力がないと実現しない。私の力でもアズミの力でも役には立たないから。
「サリファ様」
「ん?どうしました、アズミ」
「ひとまず失礼しても宜しいでしょうか。その、……一刻も早く、国の者たちに全てが終わったことを報告したいのです」
「そうですね、それが良いでしょう。早く安心させてやりなさい」
「はいっ!」
アズミはペコリと頭を下げ、赤ん坊を抱きながら部屋を出て行く。
残されたのは私とサリファ様、そして数人の官僚たちだけとなる。
「さて、モニカ」
「はい」
「久しぶりに女同士でお茶でもしましょうか」
『いいかモニカ。今後、絶対に魔力を使うな。誰にもお前に力があることを知られてはならないぞ』
成人を目の前に控えていた私を、父は泣きながら抱きしめてそう言った。
近々隣国へ魔導師となるべく留学を控えていた私にとって父が何故急にそんなことを言い出したのか分からなかった。でも、その理由はすぐに知らされる。
魔導師として王宮で働いていた母が、王太子に殺されたからだ。
魔力を持たないボンクラ王子。この国じゃある意味有名人な彼はそう呼ばれていた。別に力のないことで差別する訳じゃない、でも憐れな生い立ちの彼を王家の大人たちが甘やかしすぎたせいで彼は手の付けられない化け物に育ってしまった。
王宮で働く父も母も、彼の愚かな行動に頭を痛める日々を送っていた。そしてそれは、私たちティネッタ家にとって取り返しのつかない事態となる。
反乱を起こせばいい?
そんなの、出来たらとっくに誰かがやっている。
そんな勇気のあること誰も出来ないのよ。長年続いた王家による独裁政権の前じゃ一部の人間だけが甘い蜜を吸い、力ある貴族たちは謀反を起こさぬように圧力をかけられる。
決定的なのは、先導者がいないこと。
ぬるま湯に浸かり切った人間では新しい風を吹かせることが出来なかった。
私は瞬時に理解した。せざるを得なかった。
ああ……私はこのまま一生、母の無念を晴らすことなくこの国に食い潰されていくんだと。
ならばいっそ、自分で終わりを決めようとした。
誰にも気付かれないように深い森の中、鈍く光るナイフを喉元に突き付けたときだった。
『どうせ死ぬその命、私に預けてくれませんか?』
突如現れたその声に振り向く。木漏れ日が照らしたその人は穏やかな顔で小さく微笑んでいた。
*****
「はぁ……んぐぅっ、ぅう」
私の目の前でギルバートが力なく唸っていた。
自分の罪深さをようやく知り、更にはひた隠しにされてきた出生の秘密も打ち明けられた彼は、もうさっきまでの意気揚々とした元気は無くしていた。
今ここで、息の根を止めてやろうかしら。
私の圧力操作の力なら、直接手を下すことなく彼の身体を押し潰すことが可能。まぁ実際に人を殺めたことはないけど!今なら簡単に……
「モニカ」
それは突然呼ばれた私の名前。
ハッとして顔を上げれば、私だけを真っ直ぐ見つめるサリファ様の目が合う。
「ギルバート=ルスダンの処遇はみんなで決めましたよね?」
「……もちろん分かってますわ」
「そうですか。ならば良いのです」
サリファ様にはお見通しだったのね。
私が抜け駆けしてアイツに報復しようとしたの。その察しの良さに思わず苦笑してしまった。
ギルバートを殺したい人間は山ほどいる。それだけ彼は敵を作りすぎてしまった。皆の怒りをまとめ上げたサリファ様は公平に報いを晴らせるようにして下さった。それは死ぬことよりも辛い、地獄のような選択だ。
「では、彼を例の場所に連れて行って下さい」
「「仰せのままに、王妃殿下」」
「……もう離縁したから妃殿下ではないのですけど」
「そうだよぉ!サリファ様はもうあーんなクズの妻じゃないんだから!次からはちゃんと、サリファ様って呼ぼうねぇ」
「「は、はいっ!サリファ様っ!」」
衛兵たちは圧力をかけてくるセリーヌに怯えながら言い直した。
「こら、セリーヌ。困らせないの」
「えぇー、だって本当のことでしょ?」
ぶぅと頬を膨らませるセリーヌにため息を漏らした。誰よりもサリファ様に忠実なセリーヌを、宥めて落ち着かせるのが最年長である私の役目。年が離れている分、妹が出来たって感覚に近い。
「セリーヌは私を気遣ってくれたんですね」
「はいっ!もちろんですサリファ様っ!」
そう言ってサリファ様はセリーヌの頭を優しく撫でる。……いいなぁ、私もよしよしされたい。
「では予定通り、セリーヌは彼らに付いていって下さい。そして全ての手筈を整え、そのまま報復を開始して下さい」
「はぁーい!」
頭を撫でられご満悦のセリーヌはニコッと微笑み、運ばれていくギルバートの後ろをついていく。
あの子だけ直接手を下せるのは羨ましいけど……まぁこの報復は、セリーヌの力がないと実現しない。私の力でもアズミの力でも役には立たないから。
「サリファ様」
「ん?どうしました、アズミ」
「ひとまず失礼しても宜しいでしょうか。その、……一刻も早く、国の者たちに全てが終わったことを報告したいのです」
「そうですね、それが良いでしょう。早く安心させてやりなさい」
「はいっ!」
アズミはペコリと頭を下げ、赤ん坊を抱きながら部屋を出て行く。
残されたのは私とサリファ様、そして数人の官僚たちだけとなる。
「さて、モニカ」
「はい」
「久しぶりに女同士でお茶でもしましょうか」
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