強制ハーレムな世界で元囚人の彼は今日もマイペースです。

きゅりおす

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2nd フェーズ 集

No.28 チザキ・アキナとシャーロット

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ある部屋、真っ白な壁、床、天井に囲まれた場所。私はそこに座っていた。

私はその部屋に呼び出されていた。
どうやら紹介したい人がいるとの事だ。

少しばかり待っているとそこに1人の職員がやってきた。
若い職員だ、こんな人もここで働いてるのか。

この施設は働いている人間すらその全体を把握できない程に巨大な規模、当然知らない人もいる訳だが。この人は何をしているんだろうか、私達のように白衣を着ていない所をみると研究員ではないだろうけど。

「チザキさん、うちに新しい人が入ったの。ほら、入ってきて」

その職員が呼ぶと小さな女の子が入ってくる。
私は少しばかり驚いた。

その少女は自分と同じような白金色の髪、まるで物語から出て来たお姫様のように可愛らしい少女だった。

いや、そもそもこんな場所に子どもが来るなんて……

「どうも初めまして」

とりあえず私は彼女の前まで行き、しゃがんで挨拶をしてみた。

「……」
その子は部屋の入り口の影に隠れる。

「シャーロットちゃんです。まあ、人見知りな子ですが非常に優秀なので。仲良くしてあげてください」

「え、いやそれだけですか?なんでここに?どこから来たんですか?それとフルネームは?」

質問をしたがもうその場に職員はおらず、私とこのシャーロットという少女だけが部屋にいた。

こうして私達は出会ったのだった。

私はこの施設で微生物を研究していた。
この施設では他にも色いろな研究が行われている。それらで得たデータを元にナノマシンの開発するらしい。憧れのナノマシンに自分の研究が関われるのは光栄なことだ。

ピンポーン
部屋のインターホンが鳴る。

部屋を開けるとアンドロイドが立っていた。
その隣には食事が乗せてあるカートが。

「チザキ・アキナ様、昼食をお持ちしました。サンドイッチと野菜のスープでございます」
「はい、ありがと」

トレイに乗せられた食事を受け取る。

ここで行われている研究は極秘な為、私達研究員は他プロジェクトの人間と関わることを禁止されている。食堂もなく、食事は自分の部屋に頼んだものが届くだけ。

サンドイッチはここの人気メニューらしい、アンドロイドがそう言っていた。

恐らく私みたいに研究の片手間にパクつける物が好ましいと思う者が多いんだろう。

「ん?どうしたの、もういいよ行って。食事受け取ったし」
まだ部屋の外に立っていた。

「はい、こちらをシャーロット様に」
アンドロイドがもう一つのトレイを渡してきた。
そこには番号が書いてあった部屋の番号だ。

「え、私が?部屋にもってくの?」
「それではよろしくお願いします」
軽く会釈してアンドロイドが次の部屋に配膳するために行ってしまう。

「はぁ、まいっか」
一緒に食事でもして打ち解けろって事だろう。

だけど珍しい、確かにこの施設には事前に予約しておけば各種研究チームで集って食事をしたりすることは許可されている。

「こうやって部屋に行くの初めてだなー」
シャーロットの部屋の前に立ちインターホンに手を伸ばす。

すると私がインターホンを鳴らす前に部屋の扉が開く。

「……」
部屋の奥でこちらをじっと見つめている。

(やっぱ綺麗な子。スゴイ警戒されてるけど)
「ご飯持ってきたよー。一緒に食べよ」

私はテーブルに彼女のランチのトレーを乗せ、近くにあった椅子を借りて彼女の隣、少しだけ距離を置いて座った。

「ほら、サンドイッチとスープ!きゅうりとハムそれとチーズの奴だね、私も同じの頼んだんだー。あ、スープはコーンポタージュにしたんだ美味しいよねー!」

彼女の警戒を少しでも和らげる為に話しかける。

この業界はコミュニケーション取りづらい人がいるが、その時は自分から話しかけるのが大事。相手に流されてこちらも黙ると非常に気まずい沈黙だけが生れて何も進展しない。

「ん……」
彼女はトレイを手に取る。

すると彼女はそれをミキサーにかけた。
「ええッ?!」

思わず大きな声を出した私にビクッと驚くシャーロットちゃん。
「ああ、ごめん。大きな声だしちゃって」

彼女はミキサーにストローをさして飲む。

「スゴイ効率的だね。あー、その味はどう?」
私に向けたその顔はかなり微妙そうなものだった。

「ははは、だよねー。でもどんな感じか一口貰っていい?」

私は新しいストローを貰い飲んでみた。

うん、想像通り。
パン、ハム、きゅうり、チーズ、それとコーンポタージュをミキサーにかけた奴だ。

所々シャキッシャキときゅうりの食感がある。

「いつもご飯はこんな感じなの?まあ、食事を最適化したい気持ちは分かるよ。でももう少し加減してみたら?はい、1ついかが?」

私が差し出したサンドイッチを手にとり、シャーロットは食べ始めた。

「咀嚼して食べるのも悪くないでしょ?このサンドイッチは人気なんだよー。まあ皆食べながら作業出来るようにって感じだろうけど。それでもミキサーにかけちゃうと咀嚼出来ないし、血糖値も急に上がるからオススメしないよー」

「……うん、おいしい」

シャーロットちゃんはそう小さい声でつぶやく。

「そっか、それは良かった。あ!そういえばどうして私が部屋に来るの分かったの?もしかして施設のカメラ?」

「……うん、監視カメラ。簡単に入れた。それとこれとか」
彼女がいくつかの画面を見せてくれた。

監視カメラの映像だけじゃない。
私の経歴などの情報も表示されている。

「すっご、ここって色んな人がいるからこういう事を簡単に出来ないようにしてるって話なのに。スゴイよ!あなたがいれば研究が……」

私は画面に向けていた顔を彼女に向ける。
すると彼女はどこか嫌そうな顔をする。

「どうしたの?」
「私は使える?」

私は彼女の言葉にゾッとした。
そうだ、ここは子どもが望んで来られるような場所ではない。もしそうだとしたら彼女はもっと喜んでいる筈だ。こんな暗い、怯えた様子にはならない筈だ。

「その言葉を誰も正してくれなかったの?」

気付いたら私は彼女を抱きしめていた。

「大丈夫。無理しないで良いんだよ、私と楽しく研究しよ。あなたは道具じゃないのだから、疲れたら休んでいいし、嫌になったらやめて良いんだよ。好きな事をトコトンやろう!」

「え……好きな事?」

シャーロットちゃんは困った顔をする。
こういう言葉をかけてくれる人もいなかったのだろう。

「これからよろしくね」
私は彼女に微笑んでいた。

「え……う、うん、よろしく」
彼女も私の顔を見て真似てくれたのだろうか、少しぎこちないが花のような子が見せた初めての笑顔だった。


それからシャーロットちゃんは少しずつ打ち解け、気付けばお互いの部屋を気軽に行き来するようになっていた。

「これは?」
「ああ、それはラジオって言ってね。私の親が持っててね、一人暮らしする時に貰ったの。まあ今時はもう殆ど使えないけどね。これで送信して、これで受信するの」

私は彼女にラジオをもたせ、彼女の部屋に向かわせた。
そろそろ部屋に戻ったであろうタイミングで送信機をつけ、私はお気に入りの音楽を流した。

「どう?ラジオから聴ける音楽も中々いいでしょ?」

「音楽、ちょっと途切れてた……」
部屋に戻って来た彼女はラジオを手に持ってそう言った。

「え!あれ~故障かな~?私あんまり機械類得意じゃなくてさー。これも普段はインテリアで置いてて。あ!そうだ!シャーロットちゃん機械得意だよね!これ修理できたりする?」

「え……うん、出来ると思う。うん、出来る」

シャーロットちゃんはジッとラジオをみてそう言った。

「暇な時でも修理してもらえないでしょうか!もちろんお礼はするよ!」
私は拝むように彼女にそう言った。

「べ、別にそこまでしなくても。良いよ、それじゃあ借りるね」



ラジオ、彼女はまだ持ってるだろうか。
何でだろうか、こんな事を思い出すのは。
こんな古びたもの、彼女はもう持ってないだろうに。

あれ、彼女はなんて名前だっけ。

ああ、そうそう、シャーロット、シャーロットちゃん。
確か私と同じ真っ白な髪で、あれ、私って髪白かったんだっけ?

とりあえず、このラジオをつけないと。
それで助けを呼ばないと。

……私は、一体どうなるの?


「……おーい、おーい!」
誰かが私を呼んでいる。

「やっと起きたか。まったくの寝坊助だな」

「ダ……レ?」
あれ、口がうまく動かない。

「お前を捕まえたおまわりさんだ。まあ色々とこれから調べるが。その前にほら」

おまわりさんは箱をくれた。

ちいさい物がはいっていた。
何だろう、これは。

「シャーロットがお前に返すってよ」

「シャー……ロット」
あれ、よくみえない……涙が止まらない。

これがなにか、おもいだせない……けどとても大事な物
大事な人との何か、大切なものだったような。

「何度も修理や改造してたらそうなっちまったとさ。もし必要なら元の状態に戻すってよ。そんじゃあな、大人しくしてるんだぞ」

私はその物を胸に抱き寄せ泣き続けていた。
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