強制ハーレムな世界で元囚人の彼は今日もマイペースです。

きゅりおす

文字の大きさ
50 / 135
2nd フェーズ 集

No.50 施設長の顔は四度まで

しおりを挟む

キビとコウノ、そしてユキチカまでも戦闘不能に追い込まれてしまう。残されたジーナとシャーロットは知恵を振り絞り抵抗する。

隙を突き、ジーナが一撃を食らわせる。
しかし、倒れたのはジーナの方だった。

「え……なんで……?」
「頭部を狙ってくるなんて分かりきった話だ」

ナイフを刺され、痛みで動きが止まったカイ、そこを狙ってジーナは黒鉄を撃ち込んだ。しかしカイは、瞬時に体内へ鎮痛剤を投与することでナイフで刺された痛みから復活したのだ。

そしてジーナの黒鉄を左手で防ぎ、代わりに右拳をカウンターでジーナの腹部にめり込ませたのだ。

「あんな怪我だ、本調子ではなかったのだろう、私が痛みに囚われた意識を戻す方が速かった。あのイカれた殺し屋を相手にした後で、よくあそこまで動けたものだ。非常に興味深い子だったよ」 

「そんな……!!」

地面に座り込んでしまうシャーロット。

「ふん、あとは非力な君だけだ。しかし君は頭が良いみたいだ、どうだ、私の下で働かないか?そうしたらあのお友達は助けてやろう。あの身体能力はこの身体をアップグレードするのにいい参考資料になりそうだ」

ゆっくりと歩きシャーロットに近づくカイ。
すると自身の刺さったナイフの柄にワイヤーがついていることに気づく。

「うん?なんだこれは?」
ワイヤーはシャーロットの手元に伸びていた。

「くらえ!」
シャーロットはポケットから取り出したスタンガンをワイヤーに押し付ける。

スタンガンはもちろん改造済み。
人間どころか中型動物にすら一発気絶の電気ショックが放たれた。

電流はワイヤーを伝ってカイを襲う。

「グアアアッ!!!……なんてな」
「え!?」
全く効いていない様子のカイに驚くシャーロット。

「この施設に耐えるための身体に、こんなのが通用するわけないだろう」

カイはそう言ってワイヤーを手に取る。

「今から君の元に行くよ、シャーロット。さて、もう一度聞こう、私の元で働かないか?もしYesなら君たち二人を歓迎しよう。もしNoならこのワイヤーで……」

両手に持ったワイヤーをピンと張るカイ。

「君の首を絞めて殺す」

シャーロットはカイに背を向け逃げ出す、しかし床に倒れているアンドロイドに足を引っかけてしまい転げてしまう。

それをゆっくりと追いかけるカイ。

「何をそんなに嫌がることがあるんだ?そうか、条件の詳細を聞いていないからか。君はちゃんとしているな、契約の内容は大事だからね」

カイが話す間も必死で地面を這いながら逃げるシャーロット。

「そうだな、君がここで働くとなれば施設長の助手だ、給料は手厚く出すぞ、危険手当とか付けられるものは諸々つけてあげよう。食事だって毎日三食しっかり出すぞ、君が小食なら勿論食事の回数や量は調整する、その際は3食分の時間は休憩として自由に過ごすと良い。ここでの仕事は非常にクリエイティブさを求められるものだ、手さえ動けばいい単純作業じゃない、思考力を高く保つためお昼寝の時間もつくろうじゃないか」

シャーロットは手あたり次第にものを投げる、しかし当然そんなものカイには通用しない。

「ちょっとお行儀が悪いな、ものを投げるなんて。まあ君は育った環境からみてマナーなどを学べなかったんだろう。でも大丈夫、私が教えてあげよう。こう見えても私は施設で働く前は業界では有名でね、ティーパーティーなんかにもよく呼ばれたものさ。テーブルマナーだって一通り教えてあげられるよ」

一切動じずにカイはシャーロットに向かって進む。

「そうだティータイムもしようか?仕事を抜きにしたお話でもしよう、私は君たちに興味があるんだ。お菓子は何がいい?私はあまり甘い物は好みじゃないが、君たちぐらいの年齢なら好きだろう?それとも健康志向でフルーツの方が良いかな?カラ・ジーナは何が好きかな、それも後で聞かないとね」

カイはシャーロットを壁際まで追い詰めた。

「ふぅーふぅー」
息を荒くするシャーロット。

「ふふふ、君のその息遣い、演技か?それとも本心か?」
カイの言葉に目を見開くシャーロット。

「君は本当に賢いな。この場所に私を誘い込んだのだろう?」
そう言って天井を指さすカイ。

「施設のセキュリティシステム、奪ったんだろう?それを私に使う気なんだろう?今まで使わなかったのは倒れたお友達たちを巻き込んでしまう可能性があるから。でもここまで距離を離したら、その心配もない」

「その通りだよ!」
シャーロットがセキュリティシステムを起動させる。

しかし何も起こらない。

「ここは私の施設なんだよ。奪われたコントロール権を取り戻すなんて訳ない。さてまた一つだ、そろそろ策は尽きたんじゃないか?」
カイはそう言ってうっすらと笑う。


「日本には“仏の顔も三度まで”という言葉があるみたいじゃないか、アメリカにも三振法というものがある。不思議な事に3という数字にこだわるんだ。それでいくと先のカラ・ジーナにナイフ刺された事で1アウト、電気ショックで2アウト、そして今ので3アウトだ」

カイはシャーロットの目前で屈む。

「ふっふっふ、側で観るとこんなに華奢なんだな。ワイヤーなんて使う必要が無いくらいだ。この手で充分だな」
ワイヤーを手放して、カイは右手をシャーロットの首に伸ばす。

シャーロットは抵抗するが、簡単に首を掴まれてしまった。

「だが安心してくれ、私は寛大だ。もう一回、4度目のチャンスをやろう。今からゆっくりと、この首を掴んだ手の力を強めていく、その間に返答してくれ。私と共にここで過ごさないか?」

首を掴まれ持ち上げられ、立つシャーロット。

「ま、まって」
「ん?」
シャーロットはカイに向かって声を絞り出した。

「まって……その前に、あなたはここで何をしようとしてるの?エデンズゲートプロジェクトって何?」

シャーロットは質問した。

「そうか、そうか……いやすまない。私としたことが、はははっ共に過ごそうと言っておきながら肝心な部分を忘れていた」

首を掴んだままカイはシャーロットを引き寄せる。

「いいだろう、見せてあげよう。君ならよく分かるはずだろうし」
そういって彼女は歩き出す。

すると部屋の壁が動きはじめ、部屋の奥に更に広い空間が現れた。

その奥には巨大な機械の柱が二本立っており、それに無数のケーブルやパイプなどが接続されている。

カイはシャーロットの首を掴んだまま後ろに回り込む。

「あれこそが幸福への門だ」
後ろからシャーロットの耳元で囁くカイ。

「さっきの話覚えているかな?【後悔】の話だ。【後悔】の対象である過去を変える事は出来ない、しかし、別の過去を持つ世界を選ぶことが出来るんだ。その世界では死別した者であったとしても生きている。その者が死んだという過去は存在しない世界だ。その世界では君のお友達はこんな怪我をしなくて済んだかもしれない、もしかしたら君は素敵な両親の元で暮らしている世界があるかもしれない」

そう言ってカイは一つの映像をシャーロットに見せる。

「これは別の世界の私だ。幸せそのものと言った顔をしているだろう?なのに私をみてみろ、まるで別人のような人相だろ?」

カイは再びシャーロットと向き合う。

「この世は残酷だ、誰かが得れば誰かが失う。だから得る側にまわりたい!それは人間の根源的欲求だ。得るにはどうしたら良いと思う?奪えばいい、もっとも手っ取り早い方法さ」

シャーロットに正面から顔を近づけるカイ。

「あの女が家族を失おうが知ったことか!それがあの女が進む道の末だっただけだ!もうそれもすぐそこだ!最終調整さえすれば、あの世界へ波長を合わせる事が出来れば完成なんだ!」

そう話すカイの表情は狂気そのものだった

「さあ、もうお話はいいだろう! 答えを聞かせて貰おうか?どちらだ?!奪うか奪われるか!!」

シャーロットの首を掴む手に力を込め始める。

「私は……それを幸福とは思えない」
「……そうか、残念だ……。ならば後悔して死んでいけッ!!」
首を絞める力が強まっていく。

カイの腕を掴むシャーロット。

「っ!後悔……するのは……アンタの方だッ!!」
シャーロットはカイを睨みつけた。

次の瞬間シャーロットの首を掴んでいたカイの腕の装甲が展開し始める。
首を掴んでいた手も開き、シャーロットは解放された。

「なにッ!?」
カイは自身の腕を掴むシャーロットの手に目を向けた。

彼女の指先がカイの上腕内側に伸びていた。

「キサマッッ!」
「これでもくらえッ!!」
ポケットから先ほど使用した改造スタンガンを取り出すシャーロット。

スタンガンの先端には鋭利な針のようなものが複数突出していた。
彼女はそれを展開され内部が露出したカイの腕に突き刺す。

「これが本来の使用用途ッ!」
目がくらむ程の光を放つ電流がカイの腕に送られる。

「くっ!!これを狙って!?」

「その身体はこの施設内で生きる上では心臓そのもの、少しでも不調があればすぐにメンテナンスをしたいはず。となれば特殊な工具や機材でしか展開出来ないようにはしないでしょ、だって緊急時に対応出来なきゃ困るもんね」

シャーロットの言う通りカイは身体のメンテナンスには何よりも気を使っていた。その為体の重要な部分はすぐに展開して見れるようにメンテナンスモードに切り替えるスイッチが取り付けられていた。シャーロットはそれを見つけ作動させたのだ。

「君は少々賢すぎるみたいだなッ!」
カイが睨みつけ凄んだ。

「もう君の命を奪うしかなくなったぞ!シャーロットォッッ!!」
カイは左手で大型拳銃を取り出す。

「本当、大人って身勝手。バカだと怒るし賢くても怒る」

「腕一本程度で良い気になるなよッ!この銃で、その小賢しい脳みそごと頭を吹っ飛ばしてやる!」

シャーロットに銃を向けたその瞬間、横から強烈な光が。
「な……に?!」

そして一瞬にしてカイの持つその銃と左手を蒸発させた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界で農業を -異世界編-

半道海豚
SF
地球温暖化が進んだ近未来のお話しです。世界は食糧難に陥っていますが、日本はどうにか食糧の確保に成功しています。しかし、その裏で、食糧マフィアが暗躍。誰もが食費の高騰に悩み、危機に陥っています。 そんな世界で自給自足で乗り越えようとした男性がいました。彼は農地を作るため、祖先が残した管理されていない荒れた山に戻ります。そして、異世界への通路を発見するのです。異常気象の元世界ではなく、気候が安定した異世界での農業に活路を見出そうとしますが、異世界は理不尽な封建制社会でした。

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

蒼穹の裏方

Flight_kj
SF
日本海軍のエンジンを中心とする航空技術開発のやり直し 未来の知識を有する主人公が、海軍機の開発のメッカ、空技廠でエンジンを中心として、武装や防弾にも口出しして航空機の開発をやり直す。性能の良いエンジンができれば、必然的に航空機も優れた機体となる。加えて、日本が遅れていた電子機器も知識を生かして開発を加速してゆく。それらを利用して如何に海軍は戦ってゆくのか?未来の知識を基にして、どのような戦いが可能になるのか?航空機に関連する開発を中心とした物語。カクヨムにも投稿しています。

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

異世界亜人熟女ハーレム製作者

†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です 【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

処理中です...