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2nd フェーズ 集
No.49 一枚上手
しおりを挟むキリサメとの戦闘を終えたジーナたち、そんな彼女達の目の前にカイ・ザイクが現れた。応戦しようとするも、身体を大部分を機械化している彼女により、キビとコウノが一瞬で戦闘不能にされてしまう。
「さて、残るは子ども、いや……ここまでこられるような者達だ、あの殺し屋を退けた者達だ。侵入者の子どもと判別するのはやめておこう。シンプルに捉えよう、物事はシンプルな方が早く済む」
カイはキビとコウノから奪った銃を、ユキチカとジーナそしてシャーロットに向ける。
「君たちは私の道を塞ぐ障害物だ。障害物は撤去しないとね」
彼女が引き金を引くよりも早くジーナが動き出す。
ジーナはシャーロットを連れて物陰に向かって走り出す。
それを追いかけるように2丁の拳銃を交互に放つカイ。
「ダメ!」
ユキチカが背後から飛びかかる。
「そう来るだろうね」
カイは迫ってきたユキチカを飛び越え、彼の後方に着地。
着地後、彼女は足から銃を取り出した。
それは警官二人が持っている物よりも一回り大きい拳銃だった。
彼女は振り向き、ユキチカに一発、二発と撃ち込む。
そのうちの一発がユキチカの胴体、左脇腹部分を大きく抉った。
「どうだね?流石にその身体でも耐えきれまい!」
倒れそうになるユキチカ、しかしギリギリの所で踏みこらえて前進する。
「ふん、いい的だぞ!」
下がりながら、再び大型拳銃を構え発砲するカイ。
「アサルトアーマー!」
ユキチカは右腕を身体の前で盾のように構える。
するとその右腕から半透明の盾のようなものが展開される。
「まだおもちゃを隠していたか!」
右腕の盾を構えながら距離を詰めるユキチカ。
彼はカイが持っている大型拳銃を掴んだ。
「銃に気を取られ過ぎだ」
カイは片腕を光線を放ったあの機械に接続していた。
彼女はこの装置を回収するために下がっていたのだ。
「私のが一枚上手のようだ」
ユキチカの腹部に装置を押し付け、光線を放つカイ。
光線はユキチカの腹部を貫いた。
彼は後方に吹き飛ぶ、同時に彼の腹部から下の部分も別の方向に飛んでいった。
この一撃でユキチカは上半身と下半身が離れ離れになってしまったのだ。
「ありゃま」
地面に転がったユキチカがそういった。
「そんな状態でも話せるのか。本当に体の殆どを機械化しているようだな。逆にどこが機械じゃないんだ?」
カイは振り向く。
「さて、あとは君達だな。偉いじゃないか、てっきり彼のやられっぷりを見て激情し突っ込んでくるかと思ったぞ。そこでバンバンと2発撃てば終わりだったのに」
その話を部屋の奥にある物陰に隠れながら聞いているジーナ達。
ジーナはこめかみ付近に血管が浮き出るほど歯を食いしばっている。シャーロットもその目つきは鋭く息も荒くなっていた。
「今出たらダメ、相手は拳銃を持ってる。それにユキチカと同じように身体を機械化してる。正面からでは不利……落ち着いて、感情的になったダメ」
シャロとそして何より自分を落ち着かせる為、そう言い聞かせるジーナ。
「まだ出てこないのかい?まあ安心しなさい、彼は殺さないよ。そう言われているからね。しかしどうだろうな、あと腕を取るぐらいはしても良いかもなぁ?」
この言葉にあてられ、ジーナが動こうとする。
「だめ!ジーナ」
「分かってる!けど」
シャーロットが彼女を止める。
「これ使って」
そう言ってシャーロットが震えた手でナイフとワイヤーを渡して来た。
これは先ほどの戦いでジーナがキリサメから奪ったものだ。
「相手の身体的スペックは並外れてる。でもあの身体は、あくまでこの施設で活動するために改造されたものであって、戦闘用じゃない。相手は戦いのプロじゃなくて研究者なんだから。実際ユキチカを狙って撃った時も、2発撃って命中したのは1発。もし自動照準機能とかがあれば、あの距離なら2発命中してるはず」
シャーロットはユキチカが撃たれるところを目撃していた、その時の様子から相手の能力を分析していたのだ。
「もしこの仮説が正しければまだ勝ち目はあるよ。でもそれには私一人じゃダメ、ジーナ達がいないと」
シャーロットはジーナの腕を掴んでそういった。
その手はもう震えてはいない。
「わかった、どうすればいい?」
カイは周囲を見渡しながら銃をクルクルと回している。
「ああ、あの時こうしておけば良かった。そう【後悔】する事は無いか?もし過去に戻れるなら別の選択をしていたのに、それが出来たら今は違っただろうにと」
余裕たっぷりの様子で大型拳銃を手元で遊ばせるカイ。
「ああ、まさに今か、君たちはこんな場所に来るんじゃなかった、捜査協力なんてでしゃばりをみせなければ、と思っているのではないかな?そうすれば皆死なずに済み、ユキチカ君とももう少しは長く一緒に日常を楽しめたのにと」
彼女が話しているとジーナ達が物陰から飛び出す。
その音に反応し、カイはすぐに振り向く。
そしてキビとコウノから奪った二丁の銃を発砲する。
ジーナとシャーロットは障害物を利用して移動していく、どうやら扉側に向かっているようだ。
「人が話している最中に逃げる気かな?それは見過ごせないな」
カイは再び腕を光線を放つ装置に接続する。
「高エネルギー反応、ジーナ!!」
「分かった!」
圧縮されたエネルギーが装置の先端から放たれた。
光線は射線上の壁などを蒸発させる。
この光線から二人はギリギリの所で逃れた。
「はぁ、はぁ、大丈夫シャロ?」
「うん、さっきから心臓バクバクだけどね」
「ちっ、外したか」
カイは装置と右腕の接続を解除する。
床に落ちた装置は、高熱により発射口付近が赤くなり、一部は溶けていた。
「もうご自慢のレーザー砲も使えないでしょ!あんなエネルギー量を放つ装置、そう連続して扱える訳ない。装置の内部が溶けちゃったんじゃない?」
「私達にのせられて、まんまと撃ちきっちゃったね!」
シャーロットとジーナが身を隠しながらカイを挑発する。
「それがどうした。こんなもの無くても君たちの対処程度、容易くできるぞ」
カイがそういうと彼女の右腕からは手のひらサイズの筒状の物が放出される。
(バッテリーを使い切ったか)
床に落ちたバッテリーをみてカイはズボンのポケットに手を入れる。
(ん?バッテリーを切らしていたか、あと一つくらい残っていると思ったが。まあいい今日はイレギュラーな事が多いからな、この二丁も弾ぎれか)
彼女は弾が切れた二丁の拳銃を捨てる。
カイは再びジーナとシャーロットに話しかける。
「君たちは優秀だ、どうだ、私の元で働かないかな?先ほどは排除すると言ったが、やはり子どもにそれは余りにも酷だと思ってね」
彼女は二人を勧誘し始める。
「思い上がったのだろう?少しばかり事件を解決したから”自分達はなんでもできる”と若さゆえの過信だ。私が反省し改善するチャンスを与えよう。手を挙げて出て来なさい。そして私の前で膝をつき一言”ごめんなさい”と謝れたら許してあげよう」
そう言いながら彼女は大型拳銃に弾を補充している。
すると何かが物陰から飛び出す。
カイはそれに瞬時に反応し大型拳銃を向けた。
「ッ!?これは」
飛び出して来たのは機能停止したアンドロイドだった。
これにカイが気を取られた一瞬、この機を逃すまいとジーナが別の物陰から現れた。
駆け寄るジーナは何かを構えていた。
ナイフだ、先ほどシャーロットから渡されたナイフと共にジーナはカイに突撃する。
「知恵が回るな!しかし生身の人間が近づいた所で何が出来る!!」
カイが振り向き様に銃でジーナを殴りつけようとする。
しかしここではジーナに軍配が上がった。
殴りつける攻撃を見切っていたジーナは身をかがめ、これを回避。
「なにっ!?」
「そこだァッ!!!」
ジーナが地面に水平に構えたナイフを肋骨右側のすぐ下に刺した。
「ガハッッ……!!」
「あんたがベラベラ喋ってくれたから隙を見つけられたよ」
ナイフを刺されたカイは血を吐き出し、動きが固まる。
(コイツ、私の装甲が薄いところを的確に狙って!なんという痛みだッ!すぐに鎮痛剤を投与!)
「まだまだぁッ!」
ジーナは深く構える。
「黒鉄ッッ!!」
彼女の放った拳が相手の顔面目掛け飛んで行く。
打撃音が部屋に響く。
「やった!」
シャーロットが喜び、物陰から姿を現す。
しかしその喜びの表情は一瞬で凍りついた。
地面で倒れていたのは、なぜかジーナの方だったのだ。
「え……なんで……?」
「ふぅ、ここでも一枚私の方が上手だったようだ」
カイは髪をかきあげ、シャーロットを鋭い視線を向ける。
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