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3章 依存国ツィーシャ
繰り返し (リュカオンside)
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「悪いけど、今日はお開きにしよう。僕はルレーヌと話があるから、みんなは早く帰って」
「あ、あぁ……」
集まってきていたみんなは、僕の言葉で少し気にしながらも帰って行った。
『ちびっ子』も家に帰した。
僕は目の前にいるへたり込む女性を睨みつけた。
彼女──ルレーヌは、闘技場近くに居を構えていて、娘を病気で亡くしてからはイベントがあるとパンを売って稼ぎを得ているだけの、魔法も使えない無害な女性だったはず。
それなのに、今彼女からは『誰か』の魔力がまとわりついて見える。
首元に集中してその魔力が見える。
そうして、ルレーヌがよろよろと立ち上がるときに、ちゃり、と音がして首にかかるロザリオが現れた。ルレーヌは僕に虚ろな目を向ける。
「───誰の所属だ」
目があってすぐ、間髪を容れずに僕が問いかける。何度も見たことのあるロザリオだった。
ルレーヌは虚ろな目のままに首を傾げる。
「所属ってのは……なんだい?私はただ、あのお嬢ちゃんが気になっただけだよ」
「はぐらかそうとしても無駄だ。
お前の首にかかっているものは、誰にもらった?」
へらりとしてはぐらかそうとするルレーヌに僕は少し強くあたってみる。
本当はこんなことしたくないけど、『誰か』を知りたい。
あのロザリオが偽物であってくれればいい。
予想が外れてくれれば、これ以上危害は加えなくて済む。
だから、頼む。
祈りのような僕の問いかけに、ルレーヌは視線を落として、首に下げているものを見て納得したような顔をした。
「これかい?これは……………………親切な『魔法使い』にもらったんだよ。これさえつけていれば、娘が戻ってくるとね」
「………その魔法使い、黒髪にサファイアのピアスを片耳にしていなかったか?」
これが最後の希望だった。
ただの魔法使いだったら、変な稼ぎごとに巻き込まれただけになる。
でも、もし合ってたら、僕はルレーヌを………。
僕はまたも祈るようにルレーヌを見ると、彼女は驚いた顔をしてから、また笑った。
「よくわかったねえ!その通りだよ!
『全知全能』を謳っているみたいで、娘が戻るならってもらっちゃったよ!」
希望は届かなかった。
彼女は大魔協の『駒』になった。
所属は本当にわからないという顔をしていたから、きっと、ロザリオを通して操るための捨て駒扱いをされている。
僕はルレーヌを憐れむように見てから、ロザリオに向かって口を開いた。
「悪いけど、あの子のことを詮索するのは許さないし、『君たち』に渡すつもりもない」
僕の言葉でロザリオから魔力がもっと出ているのがわかる。
正体に気づかれたことに動揺しているのかもしれない。
増大していく魔力は、次第にルレーヌを覆っていく。一体何をしようとしているのか。
僕がただ見守っていると、突然、ルレーヌが高笑いをし出した。
いや、正確にはロザリオから出る魔力がそうしているのだろう。
天を仰いで高笑いをしたルレーヌは、不気味な笑みを浮かべて僕を見た。
「ハハハ………!今日は収穫ばっかりだ!無詠唱で複数属性の子供と、正体に気づける子供!日頃の行いをオメルタ様もガイア様も認めてくださったんだ………!!
欲しい………!欲しい!!」
子供ではないが、何も言わないでおこう。
欲に塗れた瞳で僕を捉えたヤツは、どうやら僕が誰なのかまではわからないようだ。
もう民間人にまで手を伸ばしてきていると思うと、早く対処しないと本当にツィーシャはあの国の二の舞になる。
それに、『ちびっ子』に目をつけられたのもまずい。
せっかく『ちびっ子』があの日から歩み出したのに、それを踏みにじるようなことはできない。
きっと、血眼になって探される。
捕まれば、大魔協は非人道的なことしかしないだろう。
そんなところにあの子を連れ去られてはいけない。
それを許したら、死んで会ったときに『クレア』からしこたま怒られる。
僕は目の前で高笑いを続けるルレーヌを見た。
もはや彼女の意識はないだろう。
ロザリオから溢れてくるおぞましい黒い魔力が体中を覆って、まるで肌が変色したように見える。
そこまで考えて気づいた。
やっぱり、ルレーヌは捨て駒扱いをされている。
その気づきとほぼ同じくらいに、ロザリオから流れる魔力がまた増大したのを感じた。
そして、突然、地面に両膝をつき、手の甲にもう一方の手を重ね、体の前で四角を作るように腕を突き出した。
このポーズは、何度も見たことがある。
『クレア』とやらされたことだってある。
完全に黒だ。
僕が久しぶりに見たポーズに固まっていると、ルレーヌは不敵な笑みを浮かべて、叫ぶように声を上げた。
「オメルタ様もガイア様も認めてくださったんだ!!
あと少し………!!次は手に入れてやるからな!!
ハハハハハハ!!主よ!見守りたまえ!
必ずや私はあなたの望みを叶え…………っ!ぐふっ…………ごほっ」
途中で瘴気が完全に回ったのか、ルレーヌは血を吐いて息絶えた。
逃げられたというのが正しいかもしれない。
ルレーヌの元へ寄ると、全身が変色して、炭のようになっている。
死んだら、戻ってくることはないのに。
ルレーヌはそこにつけいられて、死んだ。
僕も『クレア』もそうだった。
大事な人のためにという気持ちにつけいられた。
それで、反抗して。
『クレア』は死んで、僕は指名手配されている。
『ちびっ子』も目をつけられた。
「国の次は大魔協か………」
僕は小さく呟いてルレーヌの側に杖を置いた。
『В поп б вы кэитфйон』
巻き込んでしまった、せめてもの償いとして、僕は闇魔法でルレーヌを悼んだ。
向こうで娘と会えたらいいけど。
ルレーヌの体を包み込んだ闇は、小さな欠片となって空へ飲み込まれて行った。
それを見届けて、僕はすぐに『ちびっ子』のもとへ帰った。
「あ、あぁ……」
集まってきていたみんなは、僕の言葉で少し気にしながらも帰って行った。
『ちびっ子』も家に帰した。
僕は目の前にいるへたり込む女性を睨みつけた。
彼女──ルレーヌは、闘技場近くに居を構えていて、娘を病気で亡くしてからはイベントがあるとパンを売って稼ぎを得ているだけの、魔法も使えない無害な女性だったはず。
それなのに、今彼女からは『誰か』の魔力がまとわりついて見える。
首元に集中してその魔力が見える。
そうして、ルレーヌがよろよろと立ち上がるときに、ちゃり、と音がして首にかかるロザリオが現れた。ルレーヌは僕に虚ろな目を向ける。
「───誰の所属だ」
目があってすぐ、間髪を容れずに僕が問いかける。何度も見たことのあるロザリオだった。
ルレーヌは虚ろな目のままに首を傾げる。
「所属ってのは……なんだい?私はただ、あのお嬢ちゃんが気になっただけだよ」
「はぐらかそうとしても無駄だ。
お前の首にかかっているものは、誰にもらった?」
へらりとしてはぐらかそうとするルレーヌに僕は少し強くあたってみる。
本当はこんなことしたくないけど、『誰か』を知りたい。
あのロザリオが偽物であってくれればいい。
予想が外れてくれれば、これ以上危害は加えなくて済む。
だから、頼む。
祈りのような僕の問いかけに、ルレーヌは視線を落として、首に下げているものを見て納得したような顔をした。
「これかい?これは……………………親切な『魔法使い』にもらったんだよ。これさえつけていれば、娘が戻ってくるとね」
「………その魔法使い、黒髪にサファイアのピアスを片耳にしていなかったか?」
これが最後の希望だった。
ただの魔法使いだったら、変な稼ぎごとに巻き込まれただけになる。
でも、もし合ってたら、僕はルレーヌを………。
僕はまたも祈るようにルレーヌを見ると、彼女は驚いた顔をしてから、また笑った。
「よくわかったねえ!その通りだよ!
『全知全能』を謳っているみたいで、娘が戻るならってもらっちゃったよ!」
希望は届かなかった。
彼女は大魔協の『駒』になった。
所属は本当にわからないという顔をしていたから、きっと、ロザリオを通して操るための捨て駒扱いをされている。
僕はルレーヌを憐れむように見てから、ロザリオに向かって口を開いた。
「悪いけど、あの子のことを詮索するのは許さないし、『君たち』に渡すつもりもない」
僕の言葉でロザリオから魔力がもっと出ているのがわかる。
正体に気づかれたことに動揺しているのかもしれない。
増大していく魔力は、次第にルレーヌを覆っていく。一体何をしようとしているのか。
僕がただ見守っていると、突然、ルレーヌが高笑いをし出した。
いや、正確にはロザリオから出る魔力がそうしているのだろう。
天を仰いで高笑いをしたルレーヌは、不気味な笑みを浮かべて僕を見た。
「ハハハ………!今日は収穫ばっかりだ!無詠唱で複数属性の子供と、正体に気づける子供!日頃の行いをオメルタ様もガイア様も認めてくださったんだ………!!
欲しい………!欲しい!!」
子供ではないが、何も言わないでおこう。
欲に塗れた瞳で僕を捉えたヤツは、どうやら僕が誰なのかまではわからないようだ。
もう民間人にまで手を伸ばしてきていると思うと、早く対処しないと本当にツィーシャはあの国の二の舞になる。
それに、『ちびっ子』に目をつけられたのもまずい。
せっかく『ちびっ子』があの日から歩み出したのに、それを踏みにじるようなことはできない。
きっと、血眼になって探される。
捕まれば、大魔協は非人道的なことしかしないだろう。
そんなところにあの子を連れ去られてはいけない。
それを許したら、死んで会ったときに『クレア』からしこたま怒られる。
僕は目の前で高笑いを続けるルレーヌを見た。
もはや彼女の意識はないだろう。
ロザリオから溢れてくるおぞましい黒い魔力が体中を覆って、まるで肌が変色したように見える。
そこまで考えて気づいた。
やっぱり、ルレーヌは捨て駒扱いをされている。
その気づきとほぼ同じくらいに、ロザリオから流れる魔力がまた増大したのを感じた。
そして、突然、地面に両膝をつき、手の甲にもう一方の手を重ね、体の前で四角を作るように腕を突き出した。
このポーズは、何度も見たことがある。
『クレア』とやらされたことだってある。
完全に黒だ。
僕が久しぶりに見たポーズに固まっていると、ルレーヌは不敵な笑みを浮かべて、叫ぶように声を上げた。
「オメルタ様もガイア様も認めてくださったんだ!!
あと少し………!!次は手に入れてやるからな!!
ハハハハハハ!!主よ!見守りたまえ!
必ずや私はあなたの望みを叶え…………っ!ぐふっ…………ごほっ」
途中で瘴気が完全に回ったのか、ルレーヌは血を吐いて息絶えた。
逃げられたというのが正しいかもしれない。
ルレーヌの元へ寄ると、全身が変色して、炭のようになっている。
死んだら、戻ってくることはないのに。
ルレーヌはそこにつけいられて、死んだ。
僕も『クレア』もそうだった。
大事な人のためにという気持ちにつけいられた。
それで、反抗して。
『クレア』は死んで、僕は指名手配されている。
『ちびっ子』も目をつけられた。
「国の次は大魔協か………」
僕は小さく呟いてルレーヌの側に杖を置いた。
『В поп б вы кэитфйон』
巻き込んでしまった、せめてもの償いとして、僕は闇魔法でルレーヌを悼んだ。
向こうで娘と会えたらいいけど。
ルレーヌの体を包み込んだ闇は、小さな欠片となって空へ飲み込まれて行った。
それを見届けて、僕はすぐに『ちびっ子』のもとへ帰った。
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