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第25話 青い鱗の友達
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朝の優しい陽光が牧場に降り注ぐ中、悠真は納屋の掃除に取り掛かっていた。昨日のドラゴンとの出会いから一夜明け、まだその現実味のなさに頭を整理できずにいる。
「まさかドラゴンと契約を結ぶことになるなんて、この世界に来てからも驚くことばかりだな」
悠真は手の甲に浮かぶ青い龍の印を見つめながら呟いた。あの印は消えることなく、かすかに光を放っている。
納屋の掃除を終え、悠真が道具を片付けていると、突然、背後から大きな風が吹き抜けた。
「なんだ?」
振り返ると、そこには小さな青いドラゴンが、はためく翼を懸命に動かしながら降り立とうとしていた。昨日見かけた子ドラゴンだ。
「おはよう」
悠真が挨拶すると、子ドラゴンは興奮したように「キュイ!」と鳴いた。青みがかった鱗が朝日に輝き、キラキラと虹色の光を反射している。
「もしかして、遊びに来たのか?」
子ドラゴンは嬉しそうに首を縦に振り、悠真の周りをクルクルと飛び回り始めた。その姿はまるで空中で踊っているようで、悠真は思わず微笑んだ。
「そういえば、名前を聞いていなかったな」
悠真が困った表情を浮かべていると、ふと手の甲の印が光った。昨日の巨大なドラゴンの声が頭の中に響く。
『おはようございます。息子が早速お邪魔しているようですね』
「あ、はい。おはようございます」
悠真は慌てて空を見上げたが、大人のドラゴンの姿はどこにも見えない。
『安心してください。私はまだ山におります。その契約の印があれば、こちらからでも会話ができますから』
「なるほど、便利ですね。それで、あの、まだお名前をまだ伺っていなかったことに今、気づきまして。あ、俺は白石悠真です」
『そういえばそうでしたね。私はシギュラと申します。そして息子はアズールです』
「シギュラさんとアズール、ですね。改めて、よろしくお願いします」
『こちらこそ。すみませんがアズールのこと、お願いします。もしいたずらなどをしたら、すぐにお知らせください』
「はい、わかりました」
テレパシーが途切れ、悠真はアズールに向き直った。
「アズールっていうんだな。よろしく」
アズールは嬉しそうに「キュイッ!」と鳴き、悠真の肩に軽く止まった。意外と軽い体重に、悠真は驚く。
「そうだ、リーフィアに紹介しよう。彼女もきっと喜ぶよ」
悠真はアズールを肩に乗せたまま、牧場の家へと向かった。
――――――
「リーフィア、ちょっといいかな?特別なお客さんがいるんだ」
悠真が居間に入ると、朝食の準備をしていたリーフィアが振り向いた。銀色の髪が朝日に輝き、碧眼が優しく微笑んでいる。
「お客さんですか?どなた――」
リーフィアの言葉は途中で止まった。悠真の肩に乗るアズールを見て、彼女の目が驚きで見開かれる。
「ドラゴン……?」
「うん。昨日、森で出会ったんだ。実は――」
悠真は昨日の出来事をリーフィアに説明した。予想外の訪問者、テレパシーによる会話、そして結んだ契約について。リーフィアは静かに、しかし目を輝かせながら聞いていた。
「信じられないですね。以前に読んだ本では高貴な存在とされているが、実際に目にする人はほとんどいないと書いてあった気がします……」
リーフィアの言葉に、アズールは威厳たっぷりに胸を張った。あまりに得意げな仕草に、悠真とリーフィアは思わず笑ってしまう。
「彼の名前はアズール。まだ子供なんだ。仲良くしてやってくれ」
リーフィアは丁寧に頭を下げた。
「はじめまして、アズール。私はリーフィアです。この牧場で働いています」
アズールも小さな頭を下げ、「キュイ」と返事をした。
「さて、アズール。大事な話がある」
悠真はアズールと目線を合わせ、真剣な顔をした。
「この牧場の食べ物を勝手に食べるのはダメだ。欲しい時は必ず許可を取ってくれ。約束できるか?」
アズールは少し恥ずかしそうに頭を下げ、小さく「キュ……」と鳴いた。
「よし、大丈夫だな。なら、他の仲間たちにも紹介しよう」
――――――
牧場の動物たちは朝の食事中だった。悠真とリーフィア、そしてアズールが近づくと、彼らは好奇心いっぱいの目で振り返る。
「みんな、新しい友達を紹介するよ。彼の名前はアズール。近くの山に住むドラゴンの子だ」
ヘラクレスは角を低く下げ、興味深そうにアズールを観察した。フレアは尻尾を振りながら近づき、アズールの周りをくるくると回る。サクラは少し離れた場所から、穏やかに見守っている。
「大丈夫だよ、みんな。アズールは友達だ」
悠真の言葉に、動物たちは少しずつリラックスしていった。唯一、トレジャーだけが高い木の枝に止まったまま、警戒した目でアズールを見つめている。
「トレジャーはまだ昨日のことを覚えているみたいだな」
悠真が笑いながら言うと、アズールは木の方へゆっくりと近づいた。トレジャーは更に枝の奥へと後ずさりする。アズールはその場に止まると、丁寧に頭を下げた。
「ほら、謝っているみたいだぞ?トレジャー」
カラスは首を傾げ、慎重にアズールを観察した。数秒の間があり、やがてトレジャーはゆっくりと枝を降り、アズールの前に着地した。二匹は互いに見つめ合い、何かの意思疎通をしているようだ。
「良かった、仲良くなれそうですね」
リーフィアの言葉通り、トレジャーは小さく「カァ」と鳴き、アズールも「キュイ」と返した。緊張は解け、それぞれが元の活動に戻り始めた。
「さて、朝ご飯の準備ができていますよ。アズールも何か食べていきますか?」
リーフィアの問いかけに、アズールは目を輝かせて頷いた。
――――――
朝食後、悠真とリーフィアは日常の作業に戻った。アズールは好奇心旺盛に牧場の隅々まで探検している。時折、空に舞い上がっては、牧場全体を見渡している様子だ。
昼頃、悠真が水やりを終えると、アズールが興奮した様子で近づいてきた。
「どうした、アズール?何か見つけたのか?」
アズールは「キュイキュイ」と鳴き、悠真の腕を引っ張るように促した。
「何か見せたいのかな?」
アズールは頷き、少し離れた場所へと飛んでいった。悠真はリーフィアに声をかけ、二人でアズールを追いかけた。
牧場の端にある池の前で、アズールは立ち止まった。
「ここで何を……」
悠真の言葉が途中で止まる。アズールが深呼吸をして、小さな口を開けると、薄い青い光が放たれた。光は池の表面に当たり、瞬時に水面が凍り始める。みるみるうちに、池全体が透明な氷で覆われた。
「すごい!氷の魔法が使えるのか!」
悠真は感嘆の声を上げた。リーフィアも目を輝かせている。
「氷のドラゴンなのですね」
アズールは得意げに胸を張り、次に氷の表面に向かって再び息を吹きかけた。すると、氷の表面が少しずつ変形し、美しい模様が浮かび上がる。まるで職人が彫刻を作るかのような精密さで、アズールは花のような模様を氷の上に描いていった。
「まるで芸術作品のようですね……」
リーフィアの言葉に、アズールは喜んで空中でクルクルと回った。
次に、アズールは悠真とリーフィアを促すように、氷の上を滑り始めた。その姿はまるでダンスのように優雅だ。
「あ、スケートをしろってことか?でもこの靴じゃなぁ……」
悠真が躊躇していると、アズールは再び息を吹きかけ、二人の靴の裏に薄い氷の膜のようなものを作り出した。
「お?もしかしてこれなら氷の上でも大丈夫なのか?」
悠真は恐る恐る氷の上に足を踏み出した。少しフラついたが、すぐにバランスを取れるようになる。リーフィアも慎重に歩み出し、やがて二人は氷の上を滑り始めた。
「おぉ、これは便利だな。ありがとう、アズール」
「楽しいですね!」
リーフィアの笑顔が眩しい。悠真も久しぶりの開放感に、心が弾んだ。
三人は午後の一時を、氷の上で遊んで過ごした。アズールの特技は他にもあり、氷で小さな彫像を作ったり、氷の粉を散らして虹色の光を作り出したりと、様々な技を披露してくれた。
――――――
夕暮れ時、アズールは帰る時間になったようだ。悠真とリーフィアは牧場の入り口まで見送った。
「また遊びに来てね、アズール」
悠真が笑顔で言うと、アズールは嬉しそうに「キュイ!」と鳴いた。空高く舞い上がり、小さな青い影が山の方へと消えていく。
「素敵な一日でしたね」
リーフィアが夕焼けに染まる空を見上げながら言った。
「ああ。まさか本物のドラゴンと友達になれるなんて、考えてもみなかったよ」
悠真は手の甲の青い印を優しく撫でた。印はかすかに温かく、鼓動のように脈打っている。
「シギュラさん、ありがとうございました」
悠真が心の中で呟くと、かすかに返事が聞こえた気がした。
夕暮れの牧場に戻りながら、悠真はこの不思議な縁を大切にしようと心に決めた。日常は少しずつ変わっていく。しかし、その変化がもたらす新たな出会いと発見が、彼の牧場生活をより豊かなものにしていくのだろう。
空には最初の星が瞬き始め、平和な夜の訪れを告げていた。
「まさかドラゴンと契約を結ぶことになるなんて、この世界に来てからも驚くことばかりだな」
悠真は手の甲に浮かぶ青い龍の印を見つめながら呟いた。あの印は消えることなく、かすかに光を放っている。
納屋の掃除を終え、悠真が道具を片付けていると、突然、背後から大きな風が吹き抜けた。
「なんだ?」
振り返ると、そこには小さな青いドラゴンが、はためく翼を懸命に動かしながら降り立とうとしていた。昨日見かけた子ドラゴンだ。
「おはよう」
悠真が挨拶すると、子ドラゴンは興奮したように「キュイ!」と鳴いた。青みがかった鱗が朝日に輝き、キラキラと虹色の光を反射している。
「もしかして、遊びに来たのか?」
子ドラゴンは嬉しそうに首を縦に振り、悠真の周りをクルクルと飛び回り始めた。その姿はまるで空中で踊っているようで、悠真は思わず微笑んだ。
「そういえば、名前を聞いていなかったな」
悠真が困った表情を浮かべていると、ふと手の甲の印が光った。昨日の巨大なドラゴンの声が頭の中に響く。
『おはようございます。息子が早速お邪魔しているようですね』
「あ、はい。おはようございます」
悠真は慌てて空を見上げたが、大人のドラゴンの姿はどこにも見えない。
『安心してください。私はまだ山におります。その契約の印があれば、こちらからでも会話ができますから』
「なるほど、便利ですね。それで、あの、まだお名前をまだ伺っていなかったことに今、気づきまして。あ、俺は白石悠真です」
『そういえばそうでしたね。私はシギュラと申します。そして息子はアズールです』
「シギュラさんとアズール、ですね。改めて、よろしくお願いします」
『こちらこそ。すみませんがアズールのこと、お願いします。もしいたずらなどをしたら、すぐにお知らせください』
「はい、わかりました」
テレパシーが途切れ、悠真はアズールに向き直った。
「アズールっていうんだな。よろしく」
アズールは嬉しそうに「キュイッ!」と鳴き、悠真の肩に軽く止まった。意外と軽い体重に、悠真は驚く。
「そうだ、リーフィアに紹介しよう。彼女もきっと喜ぶよ」
悠真はアズールを肩に乗せたまま、牧場の家へと向かった。
――――――
「リーフィア、ちょっといいかな?特別なお客さんがいるんだ」
悠真が居間に入ると、朝食の準備をしていたリーフィアが振り向いた。銀色の髪が朝日に輝き、碧眼が優しく微笑んでいる。
「お客さんですか?どなた――」
リーフィアの言葉は途中で止まった。悠真の肩に乗るアズールを見て、彼女の目が驚きで見開かれる。
「ドラゴン……?」
「うん。昨日、森で出会ったんだ。実は――」
悠真は昨日の出来事をリーフィアに説明した。予想外の訪問者、テレパシーによる会話、そして結んだ契約について。リーフィアは静かに、しかし目を輝かせながら聞いていた。
「信じられないですね。以前に読んだ本では高貴な存在とされているが、実際に目にする人はほとんどいないと書いてあった気がします……」
リーフィアの言葉に、アズールは威厳たっぷりに胸を張った。あまりに得意げな仕草に、悠真とリーフィアは思わず笑ってしまう。
「彼の名前はアズール。まだ子供なんだ。仲良くしてやってくれ」
リーフィアは丁寧に頭を下げた。
「はじめまして、アズール。私はリーフィアです。この牧場で働いています」
アズールも小さな頭を下げ、「キュイ」と返事をした。
「さて、アズール。大事な話がある」
悠真はアズールと目線を合わせ、真剣な顔をした。
「この牧場の食べ物を勝手に食べるのはダメだ。欲しい時は必ず許可を取ってくれ。約束できるか?」
アズールは少し恥ずかしそうに頭を下げ、小さく「キュ……」と鳴いた。
「よし、大丈夫だな。なら、他の仲間たちにも紹介しよう」
――――――
牧場の動物たちは朝の食事中だった。悠真とリーフィア、そしてアズールが近づくと、彼らは好奇心いっぱいの目で振り返る。
「みんな、新しい友達を紹介するよ。彼の名前はアズール。近くの山に住むドラゴンの子だ」
ヘラクレスは角を低く下げ、興味深そうにアズールを観察した。フレアは尻尾を振りながら近づき、アズールの周りをくるくると回る。サクラは少し離れた場所から、穏やかに見守っている。
「大丈夫だよ、みんな。アズールは友達だ」
悠真の言葉に、動物たちは少しずつリラックスしていった。唯一、トレジャーだけが高い木の枝に止まったまま、警戒した目でアズールを見つめている。
「トレジャーはまだ昨日のことを覚えているみたいだな」
悠真が笑いながら言うと、アズールは木の方へゆっくりと近づいた。トレジャーは更に枝の奥へと後ずさりする。アズールはその場に止まると、丁寧に頭を下げた。
「ほら、謝っているみたいだぞ?トレジャー」
カラスは首を傾げ、慎重にアズールを観察した。数秒の間があり、やがてトレジャーはゆっくりと枝を降り、アズールの前に着地した。二匹は互いに見つめ合い、何かの意思疎通をしているようだ。
「良かった、仲良くなれそうですね」
リーフィアの言葉通り、トレジャーは小さく「カァ」と鳴き、アズールも「キュイ」と返した。緊張は解け、それぞれが元の活動に戻り始めた。
「さて、朝ご飯の準備ができていますよ。アズールも何か食べていきますか?」
リーフィアの問いかけに、アズールは目を輝かせて頷いた。
――――――
朝食後、悠真とリーフィアは日常の作業に戻った。アズールは好奇心旺盛に牧場の隅々まで探検している。時折、空に舞い上がっては、牧場全体を見渡している様子だ。
昼頃、悠真が水やりを終えると、アズールが興奮した様子で近づいてきた。
「どうした、アズール?何か見つけたのか?」
アズールは「キュイキュイ」と鳴き、悠真の腕を引っ張るように促した。
「何か見せたいのかな?」
アズールは頷き、少し離れた場所へと飛んでいった。悠真はリーフィアに声をかけ、二人でアズールを追いかけた。
牧場の端にある池の前で、アズールは立ち止まった。
「ここで何を……」
悠真の言葉が途中で止まる。アズールが深呼吸をして、小さな口を開けると、薄い青い光が放たれた。光は池の表面に当たり、瞬時に水面が凍り始める。みるみるうちに、池全体が透明な氷で覆われた。
「すごい!氷の魔法が使えるのか!」
悠真は感嘆の声を上げた。リーフィアも目を輝かせている。
「氷のドラゴンなのですね」
アズールは得意げに胸を張り、次に氷の表面に向かって再び息を吹きかけた。すると、氷の表面が少しずつ変形し、美しい模様が浮かび上がる。まるで職人が彫刻を作るかのような精密さで、アズールは花のような模様を氷の上に描いていった。
「まるで芸術作品のようですね……」
リーフィアの言葉に、アズールは喜んで空中でクルクルと回った。
次に、アズールは悠真とリーフィアを促すように、氷の上を滑り始めた。その姿はまるでダンスのように優雅だ。
「あ、スケートをしろってことか?でもこの靴じゃなぁ……」
悠真が躊躇していると、アズールは再び息を吹きかけ、二人の靴の裏に薄い氷の膜のようなものを作り出した。
「お?もしかしてこれなら氷の上でも大丈夫なのか?」
悠真は恐る恐る氷の上に足を踏み出した。少しフラついたが、すぐにバランスを取れるようになる。リーフィアも慎重に歩み出し、やがて二人は氷の上を滑り始めた。
「おぉ、これは便利だな。ありがとう、アズール」
「楽しいですね!」
リーフィアの笑顔が眩しい。悠真も久しぶりの開放感に、心が弾んだ。
三人は午後の一時を、氷の上で遊んで過ごした。アズールの特技は他にもあり、氷で小さな彫像を作ったり、氷の粉を散らして虹色の光を作り出したりと、様々な技を披露してくれた。
――――――
夕暮れ時、アズールは帰る時間になったようだ。悠真とリーフィアは牧場の入り口まで見送った。
「また遊びに来てね、アズール」
悠真が笑顔で言うと、アズールは嬉しそうに「キュイ!」と鳴いた。空高く舞い上がり、小さな青い影が山の方へと消えていく。
「素敵な一日でしたね」
リーフィアが夕焼けに染まる空を見上げながら言った。
「ああ。まさか本物のドラゴンと友達になれるなんて、考えてもみなかったよ」
悠真は手の甲の青い印を優しく撫でた。印はかすかに温かく、鼓動のように脈打っている。
「シギュラさん、ありがとうございました」
悠真が心の中で呟くと、かすかに返事が聞こえた気がした。
夕暮れの牧場に戻りながら、悠真はこの不思議な縁を大切にしようと心に決めた。日常は少しずつ変わっていく。しかし、その変化がもたらす新たな出会いと発見が、彼の牧場生活をより豊かなものにしていくのだろう。
空には最初の星が瞬き始め、平和な夜の訪れを告げていた。
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