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第24話 思いがけない訪問者
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野盗たちの襲撃から数日が経った穏やかな朝。悠真は早起きして牧場の点検を始めていた。太陽の光が柔らかく大地を照らし、牧場は平和な雰囲気に包まれている。
「よし、今日も問題なさそうだな」
悠真は満足げに頷き、次に餌場へと向かった。しかし、そこで彼は違和感を覚える。
「あれ?昨日用意したはずの餌が……減ってる?」
彼は眉をひそめ、続いて鶏舎へ向かう。
「卵も少ないな。それに……」
牛舎に向かうと、ミルクの量も若干少なかった。
「何だろう?野盗たちが戻ってきたのか?でも、そんな気配はなかったはずだが……」
悠真が頭を抱えていると、黒い影が空から舞い降りてきた。トレジャーだ。カラスは興奮したように鳴きながら、悠真の周りを飛び回っている。
「どうした、トレジャー?何か見つけたのか?」
トレジャーは悠真の袖を軽くつつき、森の方へと飛んでいく。一度飛び立っては戻ってくるその仕草に、悠真は意図を察した。
「何か見せたいのか?分かった、案内してくれ」
悠真はトレジャーに従い、牧場から少し離れた森の中へと足を踏み入れた。木々の間を縫うように進むと、小さな空き地に辿り着く。
そこにいたのは——
「え?ドラゴン!?」
悠真の目を疑った。空き地の中央には、子供と思われるドラゴンが餌を食べているところだった。青みがかった鱗が朝日に輝き、小さな翼がピクピクと動いている。
ドラゴンもまた悠真に気づき、驚いた表情で餌を落とした。
「キュ!?」
逃げようとする子ドラゴンだが、空中で何かに捕まったかのように動きが止まる。翼をバサバサと必死に動かし、もがいている。
「一体何が——」
その時、突然、悠真の頭上に巨大な影が落ちた。森の木々が一斉に揺れ、冷たい風が吹き抜ける。
「な、何だ!?」
恐る恐る上を見上げると——そこには巨大なドラゴンの顔があった。
「ひっ!」
悠真は思わず尻もちをついた。エメラルドグリーンの鱗に覆われた顔は、少なくとも家一軒分はあるだろう。黄金の瞳が悠真をじっと見下ろしている。
「あ、あの……」
言葉を失った悠真の頭の中に、突然声が響いた。
『うちの子が失礼をしました』
「え?」
悠真はキョロキョロと周りを見回したが、他に人の気配はない。
『人の言葉を話すのは難しいので、テレパシーを繋げさせてもらいました』
巨大なドラゴンが少し首を傾げ、興味深そうに悠真を観察している。
「テ、テレパシー?」
『はい。あなたの精神に直接に語りかけています。驚かせてしまい申し訳ありません』
悠真は震える手で額の汗を拭いながら、ようやく立ち上がった。
「い、いえ。こちらこそ突然大声を出してしまって……」
『ご心配なく。当然の反応です』
ドラゴンは穏やかな声で語りかけてくる。子ドラゴンは諦めたように空中に浮かんだまま、恥ずかしそうに悠真を見ている。
『息子がご迷惑をおかけしたようで。実は私どもは、この子の飛行練習がてらこの辺りを散歩していたのです』
「散歩、ですか?」
『はい。この地域は魔力の流れが穏やかで、子供の訓練には最適なのです。ところが、息子が牧場の畜産物の香りに釣られてしまったようで……止める間もなく行ってしまったのです』
悠真は頭をかきながら笑った。
「な、なるほど。それで餌や卵、ミルクが減っていたんですね」
『申し訳ありません。貴方が来る直前まで、その事情を息子から聞いていたところでした』
「そうだったんですか……」
悠真は少し考え込んだ。目の前の光景があまりにも現実離れしていて、どう対応すればいいのか迷っていた。
「被害も大したことではありませんし、ちゃんと謝ってくださったので、許しますよ」
『本当ですか?ありがとうございます』
ドラゴンは感謝の気持ちを伝えると、子ドラゴンをそっと地面に下ろした。子ドラゴンは少し震えながらも、悠真に向かって頭を下げる。
『ところで、一つお願いがあるのですが…』
「はい、何でしょう?」
『この辺りの環境は、私たちにとって非常に過ごしやすいものです。もし迷惑でなければ、近くの山に住んでもよろしいでしょうか?』
悠真は驚きの表情を浮かべた。まさかドラゴンから居住許可を求められるとは思っていなかった。
『重ねて図々しいお願いではあるのですが、息子がそちらの食材を気に入ってしまったようです。時々で構いませんので、分けていただけないでしょうか?代わりに、私たちにできることであればお手伝いさせていただきます』
悠真は頭を抱えた。これは予想外の展開だった。
「うーん、うちの食材をですか……実は、私たちは一部の食材を取引に使ったり、自分たちで食べたりするので、そこまで大量には提供できないのですが……」
『ご心配なく意外に思われるかもしれませんが、ドラゴンは大気の魔力を吸収しているので、そこまで食料は必要としないのです。特に大人になれば、食べずとも問題ありません。楽しみとして時々食べる程度です』
ドラゴンは穏やかに答えた。
「そうなんですか?」
悠真は少し安心した様子で、続けた。
「それなら、近くの山に住むことについても、先ほどのように普段、姿を消してくれるのであれば問題ないと思います」
『ありがとうございます。人間の集落に近づくことは通常避けていますが、この地域であれば他に人もさほど居ないようですし、大丈夫でしょう』
ドラゴンは感謝の意を込めて頭を下げた。
「では、そういうことで。食材は定期的に持ってくるようにしますね」
『はい。契約の証として、少しよろしいでしょうか?』
ドラゴンは巨大な頭を悠真に近づけ、彼の手の甲に軽く息を吹きかけた。一瞬、悠真の手に青い光が宿り、小さな龍の形の印が浮かび上がった。
『これで必要な時に念じれば、どこにいても会話ができます。また、私が別の場所にいても、すぐに戻ってくることができます』
「おぉ、なんかすごいな……」
悠真は手の甲の印を見つめ、驚きの表情を隠せなかった。
「これからもよろしくお願いします」
『こちらこそ、よろしくお願いします。では、また』
ドラゴンは子供を連れて、大きな翼を広げた。一瞬で空高く舞い上がり、あっという間に山の方へ消えていった。
悠真はその光景を呆然と空を見上げていた。非現実的な出来事に、まだ頭が追いついていない。
「まさかドラゴンと会話することがあるなんてな。それにしても戦うことになったりしなくて良かった。寿命が縮んだよ……あれ?そういえばトレジャーは?」
ふと気付いて辺りを見回すと、トレジャーが悠真のすぐ後ろで震えているのを見つけた。黒い羽を縮こまらせ、小さく身を隠すように地面にうずくまっている。
「そうか、お前も怖かったよな」
悠真は優しく微笑み、そっと手を伸ばした。普段は誇り高いカラスが、今は小さな雛のように震えている姿に、思わず胸が温かくなる。
「もう大丈夫だぞ。あのドラゴンたち、悪い奴じゃなかったみたいだし」
悠真の言葉に、トレジャーはゆっくりと顔を上げた。黒曜石のような瞳が、まだ少し恐怖の色を残している。悠真が優しく頭を撫でると、トレジャーは「カァ」と小さい声で鳴いた。その声には、ほっとした安堵の色が滲んでいる。
「家に帰ろうか」
悠真が立ち上がると、トレジャーも少しずつ元気を取り戻し、ゆっくりと空へ舞い上がった。いつもより低い高度で、まるで悠真を守るかのように頭上を飛んでいる。
そして牧場へ戻る道中、ふと気づいた。
「待てよ……よく考えたら、これって最強の防犯対策ができてしまったんじゃないか?」
そんな事を考えながら牧場に近づくにつれ、悠真の顔には笑みが広がっていた。今日の出来事を、リーフィアたちに何と説明すれば良いか考えながら。
朝日が輝く牧場では、いつもの平和な日常が続いていた。しかし、今日からこの牧場は、密かに空からの守護者を得たのである。
「よし、今日も問題なさそうだな」
悠真は満足げに頷き、次に餌場へと向かった。しかし、そこで彼は違和感を覚える。
「あれ?昨日用意したはずの餌が……減ってる?」
彼は眉をひそめ、続いて鶏舎へ向かう。
「卵も少ないな。それに……」
牛舎に向かうと、ミルクの量も若干少なかった。
「何だろう?野盗たちが戻ってきたのか?でも、そんな気配はなかったはずだが……」
悠真が頭を抱えていると、黒い影が空から舞い降りてきた。トレジャーだ。カラスは興奮したように鳴きながら、悠真の周りを飛び回っている。
「どうした、トレジャー?何か見つけたのか?」
トレジャーは悠真の袖を軽くつつき、森の方へと飛んでいく。一度飛び立っては戻ってくるその仕草に、悠真は意図を察した。
「何か見せたいのか?分かった、案内してくれ」
悠真はトレジャーに従い、牧場から少し離れた森の中へと足を踏み入れた。木々の間を縫うように進むと、小さな空き地に辿り着く。
そこにいたのは——
「え?ドラゴン!?」
悠真の目を疑った。空き地の中央には、子供と思われるドラゴンが餌を食べているところだった。青みがかった鱗が朝日に輝き、小さな翼がピクピクと動いている。
ドラゴンもまた悠真に気づき、驚いた表情で餌を落とした。
「キュ!?」
逃げようとする子ドラゴンだが、空中で何かに捕まったかのように動きが止まる。翼をバサバサと必死に動かし、もがいている。
「一体何が——」
その時、突然、悠真の頭上に巨大な影が落ちた。森の木々が一斉に揺れ、冷たい風が吹き抜ける。
「な、何だ!?」
恐る恐る上を見上げると——そこには巨大なドラゴンの顔があった。
「ひっ!」
悠真は思わず尻もちをついた。エメラルドグリーンの鱗に覆われた顔は、少なくとも家一軒分はあるだろう。黄金の瞳が悠真をじっと見下ろしている。
「あ、あの……」
言葉を失った悠真の頭の中に、突然声が響いた。
『うちの子が失礼をしました』
「え?」
悠真はキョロキョロと周りを見回したが、他に人の気配はない。
『人の言葉を話すのは難しいので、テレパシーを繋げさせてもらいました』
巨大なドラゴンが少し首を傾げ、興味深そうに悠真を観察している。
「テ、テレパシー?」
『はい。あなたの精神に直接に語りかけています。驚かせてしまい申し訳ありません』
悠真は震える手で額の汗を拭いながら、ようやく立ち上がった。
「い、いえ。こちらこそ突然大声を出してしまって……」
『ご心配なく。当然の反応です』
ドラゴンは穏やかな声で語りかけてくる。子ドラゴンは諦めたように空中に浮かんだまま、恥ずかしそうに悠真を見ている。
『息子がご迷惑をおかけしたようで。実は私どもは、この子の飛行練習がてらこの辺りを散歩していたのです』
「散歩、ですか?」
『はい。この地域は魔力の流れが穏やかで、子供の訓練には最適なのです。ところが、息子が牧場の畜産物の香りに釣られてしまったようで……止める間もなく行ってしまったのです』
悠真は頭をかきながら笑った。
「な、なるほど。それで餌や卵、ミルクが減っていたんですね」
『申し訳ありません。貴方が来る直前まで、その事情を息子から聞いていたところでした』
「そうだったんですか……」
悠真は少し考え込んだ。目の前の光景があまりにも現実離れしていて、どう対応すればいいのか迷っていた。
「被害も大したことではありませんし、ちゃんと謝ってくださったので、許しますよ」
『本当ですか?ありがとうございます』
ドラゴンは感謝の気持ちを伝えると、子ドラゴンをそっと地面に下ろした。子ドラゴンは少し震えながらも、悠真に向かって頭を下げる。
『ところで、一つお願いがあるのですが…』
「はい、何でしょう?」
『この辺りの環境は、私たちにとって非常に過ごしやすいものです。もし迷惑でなければ、近くの山に住んでもよろしいでしょうか?』
悠真は驚きの表情を浮かべた。まさかドラゴンから居住許可を求められるとは思っていなかった。
『重ねて図々しいお願いではあるのですが、息子がそちらの食材を気に入ってしまったようです。時々で構いませんので、分けていただけないでしょうか?代わりに、私たちにできることであればお手伝いさせていただきます』
悠真は頭を抱えた。これは予想外の展開だった。
「うーん、うちの食材をですか……実は、私たちは一部の食材を取引に使ったり、自分たちで食べたりするので、そこまで大量には提供できないのですが……」
『ご心配なく意外に思われるかもしれませんが、ドラゴンは大気の魔力を吸収しているので、そこまで食料は必要としないのです。特に大人になれば、食べずとも問題ありません。楽しみとして時々食べる程度です』
ドラゴンは穏やかに答えた。
「そうなんですか?」
悠真は少し安心した様子で、続けた。
「それなら、近くの山に住むことについても、先ほどのように普段、姿を消してくれるのであれば問題ないと思います」
『ありがとうございます。人間の集落に近づくことは通常避けていますが、この地域であれば他に人もさほど居ないようですし、大丈夫でしょう』
ドラゴンは感謝の意を込めて頭を下げた。
「では、そういうことで。食材は定期的に持ってくるようにしますね」
『はい。契約の証として、少しよろしいでしょうか?』
ドラゴンは巨大な頭を悠真に近づけ、彼の手の甲に軽く息を吹きかけた。一瞬、悠真の手に青い光が宿り、小さな龍の形の印が浮かび上がった。
『これで必要な時に念じれば、どこにいても会話ができます。また、私が別の場所にいても、すぐに戻ってくることができます』
「おぉ、なんかすごいな……」
悠真は手の甲の印を見つめ、驚きの表情を隠せなかった。
「これからもよろしくお願いします」
『こちらこそ、よろしくお願いします。では、また』
ドラゴンは子供を連れて、大きな翼を広げた。一瞬で空高く舞い上がり、あっという間に山の方へ消えていった。
悠真はその光景を呆然と空を見上げていた。非現実的な出来事に、まだ頭が追いついていない。
「まさかドラゴンと会話することがあるなんてな。それにしても戦うことになったりしなくて良かった。寿命が縮んだよ……あれ?そういえばトレジャーは?」
ふと気付いて辺りを見回すと、トレジャーが悠真のすぐ後ろで震えているのを見つけた。黒い羽を縮こまらせ、小さく身を隠すように地面にうずくまっている。
「そうか、お前も怖かったよな」
悠真は優しく微笑み、そっと手を伸ばした。普段は誇り高いカラスが、今は小さな雛のように震えている姿に、思わず胸が温かくなる。
「もう大丈夫だぞ。あのドラゴンたち、悪い奴じゃなかったみたいだし」
悠真の言葉に、トレジャーはゆっくりと顔を上げた。黒曜石のような瞳が、まだ少し恐怖の色を残している。悠真が優しく頭を撫でると、トレジャーは「カァ」と小さい声で鳴いた。その声には、ほっとした安堵の色が滲んでいる。
「家に帰ろうか」
悠真が立ち上がると、トレジャーも少しずつ元気を取り戻し、ゆっくりと空へ舞い上がった。いつもより低い高度で、まるで悠真を守るかのように頭上を飛んでいる。
そして牧場へ戻る道中、ふと気づいた。
「待てよ……よく考えたら、これって最強の防犯対策ができてしまったんじゃないか?」
そんな事を考えながら牧場に近づくにつれ、悠真の顔には笑みが広がっていた。今日の出来事を、リーフィアたちに何と説明すれば良いか考えながら。
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