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第77話 魔王教団の襲撃(想定済み)
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魔王教団なる一団が事態の裏にいた事。
それを知った俺は、新たな準備を行うことにした。
幸い、マールイ王国は実に見晴らしが良くなっている。
暴徒となった民衆が暴れたり火を付けたりしたのだそうで、高い建物がほとんど無くなっているのだ。
さらに、落ちぶれすぎた王国から、多くの人間が逃げ出していた。
スラムすら無い。
つまり、焼け跡と点々と残る家々だけの城下町になっている。
誰かが隠れようにも、隠れる場所が無いのだ。
「なあなあ。オーギュスト。まつろわぬ民ってなんやねん? 自分ら、ずっとそいつらと戦ってるんやろ?」
自分の受け持ちの準備が終わったらしきフリッカ。
俺について回って尋ねてくる。
俺より頭一つ分小柄な彼女が、周囲をちょろちょろしているのはなかなか可愛らしくて微笑みが漏れる。
「何笑っとるねん」
脇腹を小突かれた。
「いやね。小動物が周囲を遊び回っているみたいだと……おっと、失礼」
「小動物ちゃうわ! で、まつろわぬ民ってのはなんなん?」
「言うなれば、人と人の争いに敗れ、自分たちの部族や集団を維持できなくなった者たちの生き残りだよ。彼らは徐々にその文化を失い、勝者側に取り込まれ、同化していく。それに対して抗っているのさ」
「なんや……。話を聞いてると、気の毒にも思えるけどな」
「そうだね、同情できる部分はある。だが、人と人の争いは世の常だ。敗れた側が上手く立ち回れなければ、自らのアイデンティティを失ってしまうことも当然だろう。それとも、誰かによって手厚く保護されて残っているべきなのか? 今の世界に、そんな庇護をできるような余裕がある者はいないさ。だから、彼らは復讐をする。放って置いても消えていく自分たちを、世界に傷跡として刻みつけるために、勝者に対して復讐をするのさ」
「はあ。それはあれなん? 負けて何年かだから、勝った側に嫌がらせして溜飲を下げよう、みたいな?」
「何百年前の話だろうねえ。もう、当事者なんかどこにもいないさ」
「はあ!? それ、そんなん、ただの逆恨みやん!?」
「逆恨みだねえ。だが、逆恨みだって代々語り継いでいけば信仰になるもんだよ。だから、彼らは俺たちの敵になったんだ」
「同情はせんわけ?」
「向こうが求めていないだろう。同情なら彼らを滅ぼした後にやるさ。さあ、準備だ準備」
「徹底してるやっちゃなあ……。うち、オーギュストだけは絶対敵に回したないわ」
それは評価されているのだろうか?
準備を再開することとする。
しかし、準備と言っても簡単なものだ。
人気の少なくなった城下町のあちこちに、音のするものを置くだけ。
それらには糸がくくりつけられ、地面まで伸びている。
この数日間は、住民に仕掛けの辺りを歩かないように触れを出してある。
城に俺が戻ってきたという話を聞いて、残った国民たちはすっかり素直に言うことを聞くようになった。
「君、これはネレウス用の準備か?」
イングリドが聞いてくるので、教えてあげることにする。
「ネレウスは堂々と正面から来るだろう。彼は強者だから、逃げ隠れする必要がないからね。この仕掛けに引っかかるとしたら、こっそりとやってくる、こちらに害意のある者だよ」
「なるほど……。以前までは、彼らが仕掛けた場所に私たちが飛び込む形だったが、今回は誘い込むことになるのだな。君の性格の悪さが光りそうだな」
「なんて人聞きの悪い事を」
いや、俺の性格はあまりよろしくはないか。
さて、仕掛けを終えた夜のことになる。
最速で最小限だけ用意したのだが、どうやら間に合ったようだ。
深夜になってから、町のあちこちでカラコロと仕掛けの音が鳴る。
夜になれば誰もが寝静まる町だからこそ、この音は否応なく響く。
起き出した俺が城の外へ急ぐと、すぐさまジェダが横に並んだ。
「お前の見立てはバッチリだな。奴ら、見事に引っかかったぜ。だがよ、あまり期待するなよ」
「何をだね?」
「あいつら、歯ごたえがねえ」
吐き捨てるように言うと、ジェダが外に駆け出していく。
そしてすぐさま、驚きや怒りを孕んだ叫び声が響いた。
侵入者のものだ。
彼らは、俺たちがあちこちに流布したネレウスへの挑発を辿ってやって来たのである。
彼ら魔王教団にとって、ネレウスは最強の切り札であろう。
いまいち、そのネレウスを扱いきれている気がしないのが難点だが。
マールイ王国や、盗賊団に彼を貸し出して何をさせようとしていたのか。
どう考えても、行き当りばったりの思いつきで行動しているような気しかしない。
だからこそ、その行き当りばったりがマールイ王国やガットルテ王国の国民に向けられると危険なのだが。
外に飛び出した俺の目の前で、ジェダが暴れている。
赤い服を来た連中は、ナイフや槍を持って、ジェダを攻撃する。
だが、この戦闘中毒な魔族は生半可な武器ではひるまない。
繰り出されたナイフを蹴り落とし、槍を脇で挟み込んで相手を持ち上げる。
掴んだ赤服を振り回し、喉を掴んで地面に叩きつける。
壁を蹴って飛び上がり、頭上から蹴りを叩き込む。
縦横無尽だ。
赤い服の男たちは相手にならない。
所詮、並の人間と戦闘に特化した魔族では、こんなものだろう。
俺も戦いに加わりながら、情報を集めることにした。
ナイフを抜いて、同じナイフ使いを相手取る。
「やあはじめまして。魔王教団の方だね? 魔王ターコワサは本当に復活すると思うかい? ネレウスを祭り上げるつもりかね? 彼は実力こそ本物だが、ただの守銭奴かもしれないぞ」
「こ、こいつ! 何を言う……! 我々はネレウスに罪を重ねさせることで魔族の血を呼び覚まし、魔王ターコワサの魂を召喚するのだ……!」
「荒唐無稽過ぎない? 無理だろう? 何を根拠にそんなことができるんだい? ムリムリ、やめたほうがいい」
「できるっ!! 我々には古の魔本がある! これに全てが書き記されて……」
「そんなものあるわけないだろう。君の妄想だ」
「あるっ!! 我らの本部にあるっ!!」
「なるほど、君たちの本部に、魔王を蘇らせるかも知れない危険極まりない魔本があり、ネレウスはそれを使うための道具と成っているわけだ」
「あっ!! お、お前、たばかったな!?」
ペラペラとよく喋ってくれた。
俺は彼の足を払うと転倒させ、そのまま頭を蹴って沈黙させた。
「ジェダ、情報収集は終わったよ。ざっと片付けてしまってくれ」
「おう! 今終わるところ……だっと!」
抱え上げた男を、地面に投げ捨てたジェダ。
パンパンと手を払う。
既に、俺とジェダ以外に立っている者はいなかった。
「な? 弱いだろ? こいつら、ネレウス以外に戦力がねえんだ」
呆れたようにジェダは言うのだった。
それを知った俺は、新たな準備を行うことにした。
幸い、マールイ王国は実に見晴らしが良くなっている。
暴徒となった民衆が暴れたり火を付けたりしたのだそうで、高い建物がほとんど無くなっているのだ。
さらに、落ちぶれすぎた王国から、多くの人間が逃げ出していた。
スラムすら無い。
つまり、焼け跡と点々と残る家々だけの城下町になっている。
誰かが隠れようにも、隠れる場所が無いのだ。
「なあなあ。オーギュスト。まつろわぬ民ってなんやねん? 自分ら、ずっとそいつらと戦ってるんやろ?」
自分の受け持ちの準備が終わったらしきフリッカ。
俺について回って尋ねてくる。
俺より頭一つ分小柄な彼女が、周囲をちょろちょろしているのはなかなか可愛らしくて微笑みが漏れる。
「何笑っとるねん」
脇腹を小突かれた。
「いやね。小動物が周囲を遊び回っているみたいだと……おっと、失礼」
「小動物ちゃうわ! で、まつろわぬ民ってのはなんなん?」
「言うなれば、人と人の争いに敗れ、自分たちの部族や集団を維持できなくなった者たちの生き残りだよ。彼らは徐々にその文化を失い、勝者側に取り込まれ、同化していく。それに対して抗っているのさ」
「なんや……。話を聞いてると、気の毒にも思えるけどな」
「そうだね、同情できる部分はある。だが、人と人の争いは世の常だ。敗れた側が上手く立ち回れなければ、自らのアイデンティティを失ってしまうことも当然だろう。それとも、誰かによって手厚く保護されて残っているべきなのか? 今の世界に、そんな庇護をできるような余裕がある者はいないさ。だから、彼らは復讐をする。放って置いても消えていく自分たちを、世界に傷跡として刻みつけるために、勝者に対して復讐をするのさ」
「はあ。それはあれなん? 負けて何年かだから、勝った側に嫌がらせして溜飲を下げよう、みたいな?」
「何百年前の話だろうねえ。もう、当事者なんかどこにもいないさ」
「はあ!? それ、そんなん、ただの逆恨みやん!?」
「逆恨みだねえ。だが、逆恨みだって代々語り継いでいけば信仰になるもんだよ。だから、彼らは俺たちの敵になったんだ」
「同情はせんわけ?」
「向こうが求めていないだろう。同情なら彼らを滅ぼした後にやるさ。さあ、準備だ準備」
「徹底してるやっちゃなあ……。うち、オーギュストだけは絶対敵に回したないわ」
それは評価されているのだろうか?
準備を再開することとする。
しかし、準備と言っても簡単なものだ。
人気の少なくなった城下町のあちこちに、音のするものを置くだけ。
それらには糸がくくりつけられ、地面まで伸びている。
この数日間は、住民に仕掛けの辺りを歩かないように触れを出してある。
城に俺が戻ってきたという話を聞いて、残った国民たちはすっかり素直に言うことを聞くようになった。
「君、これはネレウス用の準備か?」
イングリドが聞いてくるので、教えてあげることにする。
「ネレウスは堂々と正面から来るだろう。彼は強者だから、逃げ隠れする必要がないからね。この仕掛けに引っかかるとしたら、こっそりとやってくる、こちらに害意のある者だよ」
「なるほど……。以前までは、彼らが仕掛けた場所に私たちが飛び込む形だったが、今回は誘い込むことになるのだな。君の性格の悪さが光りそうだな」
「なんて人聞きの悪い事を」
いや、俺の性格はあまりよろしくはないか。
さて、仕掛けを終えた夜のことになる。
最速で最小限だけ用意したのだが、どうやら間に合ったようだ。
深夜になってから、町のあちこちでカラコロと仕掛けの音が鳴る。
夜になれば誰もが寝静まる町だからこそ、この音は否応なく響く。
起き出した俺が城の外へ急ぐと、すぐさまジェダが横に並んだ。
「お前の見立てはバッチリだな。奴ら、見事に引っかかったぜ。だがよ、あまり期待するなよ」
「何をだね?」
「あいつら、歯ごたえがねえ」
吐き捨てるように言うと、ジェダが外に駆け出していく。
そしてすぐさま、驚きや怒りを孕んだ叫び声が響いた。
侵入者のものだ。
彼らは、俺たちがあちこちに流布したネレウスへの挑発を辿ってやって来たのである。
彼ら魔王教団にとって、ネレウスは最強の切り札であろう。
いまいち、そのネレウスを扱いきれている気がしないのが難点だが。
マールイ王国や、盗賊団に彼を貸し出して何をさせようとしていたのか。
どう考えても、行き当りばったりの思いつきで行動しているような気しかしない。
だからこそ、その行き当りばったりがマールイ王国やガットルテ王国の国民に向けられると危険なのだが。
外に飛び出した俺の目の前で、ジェダが暴れている。
赤い服を来た連中は、ナイフや槍を持って、ジェダを攻撃する。
だが、この戦闘中毒な魔族は生半可な武器ではひるまない。
繰り出されたナイフを蹴り落とし、槍を脇で挟み込んで相手を持ち上げる。
掴んだ赤服を振り回し、喉を掴んで地面に叩きつける。
壁を蹴って飛び上がり、頭上から蹴りを叩き込む。
縦横無尽だ。
赤い服の男たちは相手にならない。
所詮、並の人間と戦闘に特化した魔族では、こんなものだろう。
俺も戦いに加わりながら、情報を集めることにした。
ナイフを抜いて、同じナイフ使いを相手取る。
「やあはじめまして。魔王教団の方だね? 魔王ターコワサは本当に復活すると思うかい? ネレウスを祭り上げるつもりかね? 彼は実力こそ本物だが、ただの守銭奴かもしれないぞ」
「こ、こいつ! 何を言う……! 我々はネレウスに罪を重ねさせることで魔族の血を呼び覚まし、魔王ターコワサの魂を召喚するのだ……!」
「荒唐無稽過ぎない? 無理だろう? 何を根拠にそんなことができるんだい? ムリムリ、やめたほうがいい」
「できるっ!! 我々には古の魔本がある! これに全てが書き記されて……」
「そんなものあるわけないだろう。君の妄想だ」
「あるっ!! 我らの本部にあるっ!!」
「なるほど、君たちの本部に、魔王を蘇らせるかも知れない危険極まりない魔本があり、ネレウスはそれを使うための道具と成っているわけだ」
「あっ!! お、お前、たばかったな!?」
ペラペラとよく喋ってくれた。
俺は彼の足を払うと転倒させ、そのまま頭を蹴って沈黙させた。
「ジェダ、情報収集は終わったよ。ざっと片付けてしまってくれ」
「おう! 今終わるところ……だっと!」
抱え上げた男を、地面に投げ捨てたジェダ。
パンパンと手を払う。
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