コストカットだ!と追放された王宮道化師は、無数のスキルで冒険者として成り上がる。

あけちともあき

文字の大きさ
94 / 107

第94話 バルログ山車!

しおりを挟む
「はあ!?」

 ドワーフの若者たちが驚愕する。

「バルログの山車だしを作る!?」

「うむ、その通り」

 山車とは、祭りに使う飾り立てられた車の事。
 高さがあり、遠目にも目立つ派手な見た目であることが多い。

 これをバルログに見立てて飾り付け、イフリート教の魔法で燃え上がらせてしまおうと言うのである。
 なぜそんな事をするのか?
 信心深いドワーフのお歴々に、腰を抜かしてもらうためである。

 俺は鉱山都市で革命を起こすと告げたが、無血革命を目指すつもりなのだ。
 それで、ちょっとだけ若者の声が通りやすくなり、鉱山都市は温泉地帯……じゃない、イフリート教の聖地への侵攻を諦めると。

 俺の筋書きはそういうものだった。

「本当に上手く行くもんかねえ。道化師、今までの興行はさ。あたいら少ない人数でやれてたからいけたんだ。だけど、今度はたくさんいるよ。こいつら統制も取れてないし、そういうのが嫌いだからここに集まって飲んだくれているような連中だよ?」

「ああ、知っているさ」

 ギスカのあんまりな物言いに、ドワーフの若者たちは抗議の声を上げる。
 だが、一睨みされて黙ってしまった。
 鉱石魔法使いの凄腕ギスカは、正に次元が違う存在なのだ。

「それに、こいつらに都市の支配権を渡したら、それこそこの世の終わりだと思うけどねえ……」

「なんでそんな事言うんだよギスカ!」

「昔は一緒に面白おかしくやってたじゃねえか!」

 あちこちから悲鳴みたいな声が聞こえるな。
 言葉の内容はとてもしょうもないものだ。

「お前らね! あたいは外の世界で旅をしてみて、色々分かったのさ! 自分で金を稼がなきゃ、飯も食えないし宿にも泊まれない! さらにあたいの魔法は金食い虫の鉱石魔法と来たもんだ! いいかい? 世の中、クソみたいな苦労しなくちゃてめえ一人食わせていくことはできないよ!?」

 ギスカが凄むと、ドワーフの若者たちが「うう……」とか呻いて引き下がった。
 弱腰だ。
 というか、ギスカの迫力が凄いだけかも知れない。

 冒険者として様々な冒険をしてきた彼女にとって、何もせずに文句を言っているだけの彼らがどうしようもない存在に見えているのだろう。
 よくあることだ。

 ギスカは彼らより、一足早く大人になったということである。
 だが、若者たちの不興を買ってしまっては作戦は決行出来ない。
 俺はギスカにウィンクして、後は任せてくれと合図した。

 彼女は不思議そうな顔をして頷く。

「諸君! 大丈夫。諸君の有能さは俺がよく知っている。優秀な冒険者であるギスカがともに暮らしていた諸君は、上から抑えつけられているからこそ、本当の力を発揮できないだけだろう?」

「そ、そうだぜ!」

「あたしたちはやればできるー!」

「そうだそうだ! 上がいつもうるせえからやる気にならないだけだー!」

 乗ってきた。

「では諸君、仕事に取り掛かってくれたまえ! 決行は……明後日! ああ、鉱山都市は時間の経過が分かりづらいと聞いているが、安心して欲しい。俺の体内時計は極めて正確でね。明後日には、有能なる諸君が鉱山都市の支配権を得ているだろう! そう、これは正義のための革命だ!」

「うおおおー!!」

 吠える若者たち。
 なんだかよく分からないなりに、凄いことになりそうだと盛り上がっている者がほとんどだ。
 ギスカは呆れた顔で彼らを見回していた。

「どうするんだい、道化師。こいつらで都市をやっていけると思うのかい?」

「無論、無理だろうね。だからこそ、作戦は二重、三重で行くよ」

「性格が悪いねえ!」

 それは褒め言葉だね。
 シャイクは状況を冷静に見極めつつ、ドワーフの酒を飲んでいるのだった。

 かくして、いろいろな下準備を任せてから酒場を発つ。
 ここから温泉へ逆戻りである。

「どうするんだい? あいつらを焚き付けて」

「明後日まで何も完成していない可能性もあるね。だが、それは君に監視をお願いしたい」

「あたいに!? なんかこう、あいつらが子どもっぽくて付き合いたくないんだけど!」

「彼らだって色々経験して大人になるのさ。君も最初から、達観している今のギスカじゃなかっただろう?」

「そりゃあそうだけど……」

「先を歩む者は、後進に道を指し示してやってもいいものだよ。これまでの冒険で培ってきたスキルと言うか、ギスカのキャラクターを、ここで活かしてみてはどうかな?」

「むう……。気乗りしないねえ」

「では、樽いっぱいの酒を奢ることを約束しよう」

 すると彼女はニヤリと笑った。

「報酬が出るなら、こいつは仕事だねえ。任せときな!」

「我はどうすればいいのだ?」

 シャイクが質問してくる。

「山車の中に入って、これを燃やしてくれればいい。後は炎が平気な信者の人がいれば、車を後ろから押してくれるよう頼みたい」

「分かりやすいことこの上ないな……!」

「これでもかというくらい分かりやすいものの方が通用しやすいものさ。後は演出とタイミング。何事もそうだ」

「ふうん……。なんか、あんたにしては随分世話焼きなんだねえ? 道化師、あんたの狙いは一体なんなんだい?」

 ギスカの鋭い質問。
 俺はこれに、素直に答えることにした。

「いいかい。あの素晴らしい温泉が、ドワーフの鉱山都市に飲み込まれてしまうなんて、これは大きな損失だ! むしろ俺は、イフリート教の教えを世界に広めて、多くの人々があの温泉を知って遊びに来てもらうべきだと思っている。全ては温泉を守るための戦いなのさ」

「それが、世話焼きの理由かい!」

 ギスカが心底呆れたようだ。
 だが、くすっと笑う。

「まあ、でも、いいかも知れないねえ。傍から見ればバカらしい、道楽みたいな理由のために大騒ぎを起こそうって言うんだろう? こういうの、あんたなら何て言うのか見当がつくよ」

「ああ、ご理解いただけて幸いだ」

 この騒ぎは、笑える大騒ぎになることだろう。
しおりを挟む
感想 115

あなたにおすすめの小説

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

聖女の孫だけど冒険者になるよ!

春野こもも
ファンタジー
森の奥で元聖女の祖母と暮らすセシルは幼い頃から剣と魔法を教え込まれる。それに加えて彼女は精霊の力を使いこなすことができた。 12才にった彼女は生き別れた祖父を探すために旅立つ。そして冒険者となりその能力を生かしてギルドの依頼を難なくこなしていく。 ある依頼でセシルの前に現れた黒髪の青年は非常に高い戦闘力を持っていた。なんと彼は勇者とともに召喚された異世界人だった。そして2人はチームを組むことになる。 基本冒険ファンタジーですが終盤恋愛要素が入ってきます。

不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ
ファンタジー
異世界に召喚され、魔王を倒して世界を救った少年、夏瀬彼方(なつせ・かなた)。 強大な力を持つ彼方を恐れた異世界の人々は、彼を追い立てる。彼方は不遇のうちに数十年を過ごし、老人となって死のうとしていた。 死の直前、現れた女神によって、彼方は二度目の人生を与えられる。異世界で得たチートはそのままに、現実世界の高校生として人生をやり直す彼方。 再び魔王に襲われる異世界を見捨て、彼方は勇者としてのチート能力を存分に使い、快適な生活を始める──。 ※小説家になろうからの転載です。なろう版の方が先行しています。 ※HOTランキング最高4位まで上がりました。ありがとうございます!

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。 しかし―― 彼が切り捨てた仲間こそが、 実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。 事実に気づいた時にはもう遅い。 道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。 “荷物持ちがいなくなった瞬間”から、 アレクスの日常は静かに崩壊していく。 短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。 そんな彼と再び肩を並べることになったのは―― 美しいのに中二が暴走する魔法使い ノー天気で鈍感な僧侶 そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。 自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。 これは、 “間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる” 再生の物語である。 《小説家になろうにも投稿しています》

処理中です...