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第一部:都市国家アドポリスの冒険 6
第28話 新しい同行者 その3
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ようやくアドポリスに帰還した。
二つの厄介な仕事を達成したものの、流石に残りの仕事を全部やるというわけにはいかなかった。
Bランクパーティ蘇生の件もあったし、司祭のアリサを仲間にしたことで、久々に欲が出てきたからだ。
知識欲である。
「ごめん、二つしか依頼を終わらせられなかった。あ、これ、カトブレパス。買取をお願いします」
俺が戻ってくるや否やそんな事を言ったので、受付嬢が目を白黒させた。
「カトブレパスをまるごと持ってきたんですか!? いや、少人数で倒してしまったというのが驚きですが……。実は冒険に失敗した冒険者達から猛烈な抗議が来てまして……」
「だろうね。よりによって、厄介なモンスターばかりが大発生してるんだ。きっちり対策をしていかないと詰むよ」
「それで、そのー。別に報酬を出しますので、ギルドからオースさんにお願いが」
「お願い?」
既に俺の心は、神殿に寄付をして本を読ませてもらうところにあった。
上の空で返事をした。
「冒険者達に、その厄介なモンスターへの対策を教えてもらえないですか……?」
「……俺が?」
「オースさん、話を伺うと実践されてるそうじゃないですか。コカトリスの依頼から戻ってきた冒険者や、鉱山都市のドワーフの方々から聞きましたよ」
ああ、なるほど。
確かに、今回出てきているモンスターは面倒な手順を踏まないと危険なものばかりだ。
だが、逆に手順さえ踏んでしまえば容易に倒せる。
これを冒険者達に教えるのは理に適っているな。
彼らの生存確率も上がる。
「分かったよ。引き受けよう。その間に、カトブレパスを換金してくれると嬉しい」
「ええ、もちろんです!」
ということで。
『オースのモンスター・ハント教室』が開催される運びとなったのだ。
若手の冒険者達が、俺を囲んで座っている。
最前列には、クルミとアリサ。
鑑定してもらったら、アリサは司祭としてはほぼSランク級だとか。
そんな彼女が俺の話を聞いて得るものがあるのかね?
「それでは、ギルドから頼まれたので、今回発生しているモンスターへの対策を講義するよ」
冒険者達に告げる俺。
用意したのは黒板。
普段なら、冒険者同士が連絡を取り合うために使っているものだ。
ここに白墨で書いたり、字が読めないものは絵を描いたり、あるいは紙に書いたものを貼り付けたり。
今回は、講義の道具として使う。
「それではまず、コカトリスから。彼らは地下迷宮に住んでいるモンスターなんだが、なぜか今回の依頼では地上に出ている。地上のコカトリスに対するデータは少ないから、俺なりの対策方法を教えておくね。彼らの一番重要な感覚器官は目で……」
周囲の冒険者諸君は、先輩冒険者達が今回の依頼で、めちゃめちゃひどい目に遭っている話を聞いていたようだ。
真剣な眼差しを俺に向けてくる。
「……というわけで、初期投資はかかるけれど、手順を踏めば君たちでも地上のコカトリスは確殺できる。次にバジリスク。こちらはタイミングが命だ。ただし、初期投資は手鏡だけでいい。要はモンスターの視線を誘導する必要があり……」
バジリスクまでの講義を終えたところで、お昼休憩になった。
外では、ギルドの職員が総出でカトブレパスの査定を行っている。
ソリがあったお陰で、ほぼまるごと一匹を持ってこれた。
こういう事はなかなか無いそうで、彼らも気合が入っている。
高く売れるといいな。
そうすれば教会への寄付も弾める。
俺がほくほくしていると、周囲の冒険者達の会話が聞こえてくる。
「コカトリスはいけそうだよな!」
「バジリスクも……ちょっとでかいけど、なんとか?」
「練習だなー。だけど、モンスターがそんなに簡単に倒せるとは思わなかった」
モンスター攻略の手順は、多くの先達が命を掛けて発見したものだ。
だからこそ、最短でモンスターを倒せるように仕上がっている。
これを更に磨き上げて、身も蓋もなく処理できるようにしたのが俺のやり方だ。
何せ、頼れる仲間がいなかったからね。
一人でできるだけ早くモンスターを倒すには工夫が必要だったのだ。
願わくば、若い冒険者達も新しいモンスター攻略を編み出して行って欲しい。
そして俺に教えて欲しい。
知的労働の後に食べる昼食は美味い。
クルミとアリサとブランとともに、もりもりとランチを食っている。
ブランは我がパーティのメンバーということで、この度正式にギルドに入っていい許可をもらった。
だが、まだ彼がマーナガルムという最強クラスの魔獣である事は誰にも言っていない。
世の中、言わなくていいことというのはあるのだ。
「あれ? オースさん、アリサさんは本格的にモフ・ライダーズのメンバーになるんですね。Sランクが二人にDランクが一人のCランクパーティー……!! おかしい」
受付嬢が大変難しい顔をする。
「システムのバグだね」
「しかもSランクがテイマーと司祭でしょう? テイムしたモンスターまで連れていてCランクは明らかにおかしいです。今度、ギルドマスターに疑義を提出します」
そうしてもらえるとありがたい。
クルミも、Cランク相当の実力まではすぐに上がるだろう。
何かあっても、蘇生ができる司祭のアリサがいるし、そもそもSSランクモンスターのブランがいるから、何かすら起きないんじゃないかと思っている。
『わふん』
「いやいやブラン、別に君を使わないのは自分にハンデを与えてるわけじゃなくてね。君の素性が知られたら色々大変な騒ぎになるから……」
「オースさんはブランちゃんと会話できるのですか? さすがはテイマーですねえ……。わたくしもモフモフわんことおしゃべりしたい……」
アリサが欲望をだだ漏れにしているのである。
二つの厄介な仕事を達成したものの、流石に残りの仕事を全部やるというわけにはいかなかった。
Bランクパーティ蘇生の件もあったし、司祭のアリサを仲間にしたことで、久々に欲が出てきたからだ。
知識欲である。
「ごめん、二つしか依頼を終わらせられなかった。あ、これ、カトブレパス。買取をお願いします」
俺が戻ってくるや否やそんな事を言ったので、受付嬢が目を白黒させた。
「カトブレパスをまるごと持ってきたんですか!? いや、少人数で倒してしまったというのが驚きですが……。実は冒険に失敗した冒険者達から猛烈な抗議が来てまして……」
「だろうね。よりによって、厄介なモンスターばかりが大発生してるんだ。きっちり対策をしていかないと詰むよ」
「それで、そのー。別に報酬を出しますので、ギルドからオースさんにお願いが」
「お願い?」
既に俺の心は、神殿に寄付をして本を読ませてもらうところにあった。
上の空で返事をした。
「冒険者達に、その厄介なモンスターへの対策を教えてもらえないですか……?」
「……俺が?」
「オースさん、話を伺うと実践されてるそうじゃないですか。コカトリスの依頼から戻ってきた冒険者や、鉱山都市のドワーフの方々から聞きましたよ」
ああ、なるほど。
確かに、今回出てきているモンスターは面倒な手順を踏まないと危険なものばかりだ。
だが、逆に手順さえ踏んでしまえば容易に倒せる。
これを冒険者達に教えるのは理に適っているな。
彼らの生存確率も上がる。
「分かったよ。引き受けよう。その間に、カトブレパスを換金してくれると嬉しい」
「ええ、もちろんです!」
ということで。
『オースのモンスター・ハント教室』が開催される運びとなったのだ。
若手の冒険者達が、俺を囲んで座っている。
最前列には、クルミとアリサ。
鑑定してもらったら、アリサは司祭としてはほぼSランク級だとか。
そんな彼女が俺の話を聞いて得るものがあるのかね?
「それでは、ギルドから頼まれたので、今回発生しているモンスターへの対策を講義するよ」
冒険者達に告げる俺。
用意したのは黒板。
普段なら、冒険者同士が連絡を取り合うために使っているものだ。
ここに白墨で書いたり、字が読めないものは絵を描いたり、あるいは紙に書いたものを貼り付けたり。
今回は、講義の道具として使う。
「それではまず、コカトリスから。彼らは地下迷宮に住んでいるモンスターなんだが、なぜか今回の依頼では地上に出ている。地上のコカトリスに対するデータは少ないから、俺なりの対策方法を教えておくね。彼らの一番重要な感覚器官は目で……」
周囲の冒険者諸君は、先輩冒険者達が今回の依頼で、めちゃめちゃひどい目に遭っている話を聞いていたようだ。
真剣な眼差しを俺に向けてくる。
「……というわけで、初期投資はかかるけれど、手順を踏めば君たちでも地上のコカトリスは確殺できる。次にバジリスク。こちらはタイミングが命だ。ただし、初期投資は手鏡だけでいい。要はモンスターの視線を誘導する必要があり……」
バジリスクまでの講義を終えたところで、お昼休憩になった。
外では、ギルドの職員が総出でカトブレパスの査定を行っている。
ソリがあったお陰で、ほぼまるごと一匹を持ってこれた。
こういう事はなかなか無いそうで、彼らも気合が入っている。
高く売れるといいな。
そうすれば教会への寄付も弾める。
俺がほくほくしていると、周囲の冒険者達の会話が聞こえてくる。
「コカトリスはいけそうだよな!」
「バジリスクも……ちょっとでかいけど、なんとか?」
「練習だなー。だけど、モンスターがそんなに簡単に倒せるとは思わなかった」
モンスター攻略の手順は、多くの先達が命を掛けて発見したものだ。
だからこそ、最短でモンスターを倒せるように仕上がっている。
これを更に磨き上げて、身も蓋もなく処理できるようにしたのが俺のやり方だ。
何せ、頼れる仲間がいなかったからね。
一人でできるだけ早くモンスターを倒すには工夫が必要だったのだ。
願わくば、若い冒険者達も新しいモンスター攻略を編み出して行って欲しい。
そして俺に教えて欲しい。
知的労働の後に食べる昼食は美味い。
クルミとアリサとブランとともに、もりもりとランチを食っている。
ブランは我がパーティのメンバーということで、この度正式にギルドに入っていい許可をもらった。
だが、まだ彼がマーナガルムという最強クラスの魔獣である事は誰にも言っていない。
世の中、言わなくていいことというのはあるのだ。
「あれ? オースさん、アリサさんは本格的にモフ・ライダーズのメンバーになるんですね。Sランクが二人にDランクが一人のCランクパーティー……!! おかしい」
受付嬢が大変難しい顔をする。
「システムのバグだね」
「しかもSランクがテイマーと司祭でしょう? テイムしたモンスターまで連れていてCランクは明らかにおかしいです。今度、ギルドマスターに疑義を提出します」
そうしてもらえるとありがたい。
クルミも、Cランク相当の実力まではすぐに上がるだろう。
何かあっても、蘇生ができる司祭のアリサがいるし、そもそもSSランクモンスターのブランがいるから、何かすら起きないんじゃないかと思っている。
『わふん』
「いやいやブラン、別に君を使わないのは自分にハンデを与えてるわけじゃなくてね。君の素性が知られたら色々大変な騒ぎになるから……」
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アリサが欲望をだだ漏れにしているのである。
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