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第二部:神都ラグナスの冒険 1
第52話 ラグナスへの旅路 その2
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神都ラグナスへは、イリアノス王国そのものである、このイリアノス半島をぐるりと巡っていくことになる。
長靴の形をした巨大な半島は、周囲を巡るだけでいろいろな景色を見せてくれた。
砂浜があったかと思うと、ギザギザになった岸壁に変わる。
頂上に雪をたたえた大きな山が出てきたり、あるいはこの辺りの温暖で乾燥した気候にマッチした低木の林が見えてくる。
「これは仕事でもあるけど、ほぼ観光だね」
「クルミ、森から出たことなかったからすごくたのしいです!」
船べりで並んで、クルミと二人で一日景色を眺めている。
全然飽きないな、これは。
夕方から夜にかけては、俺の話を聞きに客や水夫達が集まってくる。
先日体験した、モフライダーズの冒険はなかなかエキサイティングな物語らしい。
中に一人、詩人らしき人がいた。
彼はファルクスという名のハーフエルフで、真剣な顔で俺の話を書き留めていた。
思い出していたら、当のファルクスがやってくるではないか。
「ああ、これはこれは! オース殿!」
「やあファルクス。君も景色を眺めに?」
「ええ。なかなか絵になりますからな。あとは、オース殿に出会えたらいいと思ってここに来たのですよ」
「俺に?」
「むむっ、ライバルしゅつげんですか」
クルミが尻尾を逆立てた。
ファルクスはそんな気はないと思うけどなあ。
「自分はですな、オース殿の語る物語を戯曲にしたいと思っておるのです。まずは、歌にして自分がイリアノスで歌い広めようかと。これは受けますぞーっ」
「受けますか」
「受けますぞ」
断言するなあ。
それほどのものだろうか。
確かに、連日聴衆は満員御礼。
二等客室の人達も一斉に上に上がってくるものだから、船のバランス取りが大変だと船長がぼやいていた。
その船長も、ドレを抱っこさせるとすぐにご機嫌になってしまうんだが。
そうそう。
ドレは最近、船長からチーズの賄賂がもらえるらしく、足繁く船長室に通っている。
お陰で船員達が、「船長が最近すげえ優しい」と評判なのだ。
おっと、話を元に戻そう。
「つまり、詩人のファルクスは俺の話を物語仕立てにして、売り出したいと」
「そういうことになりますな。ご許可をいただけますかな?」
「構わないよ」
「ありがたい! ちなみに今は船代で手持ちがほとんどありませんでな。出世払いで使用料はお払いしようかと!」
「調子のいい男だなあ君は」
俺は笑った。
ファルクスの話では、しばらく俺達に同行して、新しい話の種を探すのだという。
その上で、いろいろな手伝いなどができれば物語の使用料代わりになるのではと言う。
それはそうかも。
ラグナスに入ると、しばらくアリサは大教会に行って仕事をしなければならない。
彼女が抜けた穴を、ファルクスで埋めるというのも一つの手だ。
彼は詩人……つまり、楽器を使って歌を歌う仕事だ。
そしてこの歌には、呪歌と呼ばれる魔法が含まれている。
「ああ、挨拶が遅れましたな。わたくしめは詩人ファルクス。そして相棒のロッキーです」
『ピョイー』
ファルクスの襟元から、青い丸いものが顔を出した。
もこもこの羽毛を纏った小鳥だな。
詩人が連れている動物は、詩人の歌を繰り返すことができるそうだ。
「よろしく、ファルクス。こっちはクルミ。俺の相棒だよ」
「よろしくですよ! なんだかロッキーは他人とはおもえないです!」
小動物仲間みたいな感じかな?
ロッキーが小さい前足を伸ばしてきたので、クルミがそれを指先で摘んで可愛らしい握手をした。
『わふん』
いつの間にか近くにブランがいて、ロッキーに挨拶をした。
おや?
いつもよりブランの毛並みがスッキリしてるような。アリサが向こうで、ブラシを携えて得意げだ。
『ピョピョ』
ロッキーから見れば、ブランは小山のような大きさだろう。
だが、二匹とも友好的な雰囲気だ。
問題はドレかな?
でも、彼はミルクとチーズに夢中だし、小鳥には興味を示さないかも。
ブランとロッキーの会話を楽しく眺めていたら、船員達がバタバタと走り回りだした。
「どうしたんだい?」
俺が声を掛けると、一人の水夫が立ち止まる。
「あ、ちょうどいい! オースさん、実は大変なんです。たまにここいらで、スカイキラーって魚の群れが出てくるんですわ」
「スカイキラー? 魚なのにスカイってことは……」
「ええ、空飛ぶ肉食魚の群れでさあ。奴ら、水面から一斉に飛び上がって、渡り鳥の群れに襲いかかったりするんですよ。そいつらが近くにいるらしくて」
「なるほど、なるほど」
海には未知のモンスターがいるなあ。
「そこで、オースさんになんとかしてもらえねえかなーと……!」
俺への信頼が厚いなあ。
英雄譚みたいなのを聞かせてたせいだろうか。
「普段はどうするんだい?」
「いつもはですね、船底に一旦みんな隠れてやり過ごすんですよ。そういう風にしてりゃ、被害は少なくて済むんですがね。奴らが食いついた荷物やら、甲板に残ったスカイキラーの始末やらが大変で」
「ははあ、なるほど」
そいつらへの対策をお願いしたいと。
そうだな。
せっかく暇なんだし……。
「分かった。引き受けたよ」
「ありがてえ! 船長には後で言っとくんで!」
「ほう!! 目の前でオース殿の活躍が拝めるのですな!」
「見ているだけじゃ済まないぞファルクス。君にも手伝ってほしい。水夫さん、予備の帆か、大きな布はないかな? できれば、マストから下にぶら下げられるような……」
「でかい布、ですか?」
水夫がきょとんとするのだった。
長靴の形をした巨大な半島は、周囲を巡るだけでいろいろな景色を見せてくれた。
砂浜があったかと思うと、ギザギザになった岸壁に変わる。
頂上に雪をたたえた大きな山が出てきたり、あるいはこの辺りの温暖で乾燥した気候にマッチした低木の林が見えてくる。
「これは仕事でもあるけど、ほぼ観光だね」
「クルミ、森から出たことなかったからすごくたのしいです!」
船べりで並んで、クルミと二人で一日景色を眺めている。
全然飽きないな、これは。
夕方から夜にかけては、俺の話を聞きに客や水夫達が集まってくる。
先日体験した、モフライダーズの冒険はなかなかエキサイティングな物語らしい。
中に一人、詩人らしき人がいた。
彼はファルクスという名のハーフエルフで、真剣な顔で俺の話を書き留めていた。
思い出していたら、当のファルクスがやってくるではないか。
「ああ、これはこれは! オース殿!」
「やあファルクス。君も景色を眺めに?」
「ええ。なかなか絵になりますからな。あとは、オース殿に出会えたらいいと思ってここに来たのですよ」
「俺に?」
「むむっ、ライバルしゅつげんですか」
クルミが尻尾を逆立てた。
ファルクスはそんな気はないと思うけどなあ。
「自分はですな、オース殿の語る物語を戯曲にしたいと思っておるのです。まずは、歌にして自分がイリアノスで歌い広めようかと。これは受けますぞーっ」
「受けますか」
「受けますぞ」
断言するなあ。
それほどのものだろうか。
確かに、連日聴衆は満員御礼。
二等客室の人達も一斉に上に上がってくるものだから、船のバランス取りが大変だと船長がぼやいていた。
その船長も、ドレを抱っこさせるとすぐにご機嫌になってしまうんだが。
そうそう。
ドレは最近、船長からチーズの賄賂がもらえるらしく、足繁く船長室に通っている。
お陰で船員達が、「船長が最近すげえ優しい」と評判なのだ。
おっと、話を元に戻そう。
「つまり、詩人のファルクスは俺の話を物語仕立てにして、売り出したいと」
「そういうことになりますな。ご許可をいただけますかな?」
「構わないよ」
「ありがたい! ちなみに今は船代で手持ちがほとんどありませんでな。出世払いで使用料はお払いしようかと!」
「調子のいい男だなあ君は」
俺は笑った。
ファルクスの話では、しばらく俺達に同行して、新しい話の種を探すのだという。
その上で、いろいろな手伝いなどができれば物語の使用料代わりになるのではと言う。
それはそうかも。
ラグナスに入ると、しばらくアリサは大教会に行って仕事をしなければならない。
彼女が抜けた穴を、ファルクスで埋めるというのも一つの手だ。
彼は詩人……つまり、楽器を使って歌を歌う仕事だ。
そしてこの歌には、呪歌と呼ばれる魔法が含まれている。
「ああ、挨拶が遅れましたな。わたくしめは詩人ファルクス。そして相棒のロッキーです」
『ピョイー』
ファルクスの襟元から、青い丸いものが顔を出した。
もこもこの羽毛を纏った小鳥だな。
詩人が連れている動物は、詩人の歌を繰り返すことができるそうだ。
「よろしく、ファルクス。こっちはクルミ。俺の相棒だよ」
「よろしくですよ! なんだかロッキーは他人とはおもえないです!」
小動物仲間みたいな感じかな?
ロッキーが小さい前足を伸ばしてきたので、クルミがそれを指先で摘んで可愛らしい握手をした。
『わふん』
いつの間にか近くにブランがいて、ロッキーに挨拶をした。
おや?
いつもよりブランの毛並みがスッキリしてるような。アリサが向こうで、ブラシを携えて得意げだ。
『ピョピョ』
ロッキーから見れば、ブランは小山のような大きさだろう。
だが、二匹とも友好的な雰囲気だ。
問題はドレかな?
でも、彼はミルクとチーズに夢中だし、小鳥には興味を示さないかも。
ブランとロッキーの会話を楽しく眺めていたら、船員達がバタバタと走り回りだした。
「どうしたんだい?」
俺が声を掛けると、一人の水夫が立ち止まる。
「あ、ちょうどいい! オースさん、実は大変なんです。たまにここいらで、スカイキラーって魚の群れが出てくるんですわ」
「スカイキラー? 魚なのにスカイってことは……」
「ええ、空飛ぶ肉食魚の群れでさあ。奴ら、水面から一斉に飛び上がって、渡り鳥の群れに襲いかかったりするんですよ。そいつらが近くにいるらしくて」
「なるほど、なるほど」
海には未知のモンスターがいるなあ。
「そこで、オースさんになんとかしてもらえねえかなーと……!」
俺への信頼が厚いなあ。
英雄譚みたいなのを聞かせてたせいだろうか。
「普段はどうするんだい?」
「いつもはですね、船底に一旦みんな隠れてやり過ごすんですよ。そういう風にしてりゃ、被害は少なくて済むんですがね。奴らが食いついた荷物やら、甲板に残ったスカイキラーの始末やらが大変で」
「ははあ、なるほど」
そいつらへの対策をお願いしたいと。
そうだな。
せっかく暇なんだし……。
「分かった。引き受けたよ」
「ありがてえ! 船長には後で言っとくんで!」
「ほう!! 目の前でオース殿の活躍が拝めるのですな!」
「見ているだけじゃ済まないぞファルクス。君にも手伝ってほしい。水夫さん、予備の帆か、大きな布はないかな? できれば、マストから下にぶら下げられるような……」
「でかい布、ですか?」
水夫がきょとんとするのだった。
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