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第三部:セントロー王国の冒険 2
第94話 地底を抜けてその先へ その1
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「センセエ、なにをしてるです?」
「これはね、苔と土を合わせてスリングで投げられる弾にしてるんだ」
「ほえー。なんだかあんまり硬そうじゃないですね?」
「そりゃそうさ。こいつは、当たって砕けてからが本番なんだよ。なにせ、この苔は地下世界の猛獣、暴れる牙が大嫌いなにおいを出すからね」
「あっ、分かっちゃったですよ! それで暴れる牙をおいはらうですね!」
「そういうこと」
「じゃあ、クルミもお手伝いするですー!」
二人でせっせと、泥団子を作る。
数は両手の指で数えられる程度もあれば十分だろう。
俺はスリングを滅多に外さないし、クルミの命中率だってなかなかだ。
二人揃って投げれば、まず百発百中と言っていい。
「暴れる牙かあ。俺、そいつがどんだけでけえのか見たことないっすからねえ。一度やりあってみたいっすね」
「モフモフしてれば最高なのですけれど……」
俺達の仕事を眺めながら、カイルとアリサが個人的な思いを口にしている。
カイルは最近、また自信がついてきたようだ。
デュラハン戦で過去のパーティが全滅してから、すっかり自信喪失していたからね。
我がパーティの前衛がやる気になっているのはいいことだ。
アリサはいつも通り、っと。
確か俺の監視が主な仕事だったはずだが、全く監視してる素振りがない。
常にニコニコしながら、うちのモフモフにブラッシングしているぞ。
あまりにも毎日念入りにブラッシングするので、アリサはブラッシング担当としてモフモフ達から認められ始めている。
「旅立ちですかナ」
村の代表であるリザードマンがやって来た。
「向かう方角はあちらだヨ。大きな柱が何本も立っているだろウ。これには規則があって、この方向の柱をに十本辿ると、ビブリオス男爵領向かう道があル。ま、道と言ってもそこのドワーフに道を作ってもらうんだがネ」
「ありがとう。なるほど、では直接繋がっている道ではないんだね?」
「そういうことになル。だからこそ、人間達が自力でレイアスに道を通した事は偉大な業績だと思っていル」
イリアノスの人達はかなり凄いんだな。
見直してしまった。
こうして準備が終わり、村人からお弁当ももらった。
保存食も物々交換でもらうことができた。
こちらから供出したのは、炎晶石とか雷晶石とか、使わずに余っていた消費型マジックアイテムである。
地下世界では大変めずらしいものらしくて、喜ばれた。
「また珍しいものを見つけたら持ってきてくれい!」
村に招いてくれたドワーフが、手を振って見送ってくれる。
村人達も総出だ。
娯楽が少ない村なので、旅人がやって来て、そして去っていくというのはちょっとしたイベントなんだな。
ファルクスがいれば、ここで一曲奏でたんだろう。
うん、また恥ずかしい戯曲を作られるところだった。
さあ、柱を目指して旅することにしよう。
地下世界レイアスの道のりは、それなりに凸凹している。
基本的に、下へ下へと降りていく下り坂。
天井もそれに合わせて下がって来るので、空の高さは変わらない。
「多分この辺りで、海の下を歩いてることになるんだろうな」
俺のつぶやきを聞いて、カイルがギョッとした。
「マジっすか。じゃあ天井が破れたら、海が落ちてくるじゃないっすか……! やべえ、こええ……」
「そんな心配は無用だと思うけどなあ。多分ここ、魔法的な手段で作られた地下の世界だろう? 精霊女王レイアが作ったって言ってたから……伝承で言う、精霊界というものの一つなんだと思う」
「まあ。ここ、精霊界でしたの!?」
知っているのかアリサ!
いや、教会で次期枢機卿に推挙されるほどの女性だから、高い教養を持っているのは当たり前だった。
あまりに普段の言動がモフモフに偏りすぎてて失念するな。
「せいれいかいってなんですか?」
ここでクルミが質問をしてきてくれる。
話すきっかけになってちょうどいい。
「うん。精霊界っていうのはね。精霊王が作り出す、それぞれの精霊が住む世界のことなんだ。昔は人間の世界とは離れたところにあったそうなんだけど、いつの間にか人間界と精霊界はくっついてしまった。その時から、みんな魔法を使えるようになったんだよ」
「ほえー! 魔法ってせいれいのちからだったですか!」
「うん、そうだよ。ラグナ新教の神聖魔法以外は、どれも精霊の力を使って魔法を行使してる。俺のバフだってそうだ。もともとはそれぞれの精霊界に属する種族の能力だったけれど、これを人間が真似して魔法という体系を作り上げた。誰でも使える技術にしたわけだね。本人の持ってる魔力の量とか、魔法との親和性とかは違うけど、簡単な魔法なら誰だって使える」
「えっ、じゃあ俺も使えるっすか!?」
「もちろん。簡単な魔法なら、そよ風を吹かせるものなんかは三日もあれば覚えられるよ」
「あ、でも三日かかるっすか……。俺、頭使う仕事を三日やるのは無理だなあ」
そういうことだ。
なんだかんだで、魔法を覚えるのは面倒くさい。
面倒なのが苦手な人は使えないし、使えたとしても才能がなければ大したことができない。
逆に言うと、才能さえあれば物凄い力を持つ魔法だって使えてしまうわけだ。
「センセエ! クルミ、魔法つかいたいです!!」
「よーし、じゃあクルミには俺の強化魔法を教えてあげよう。カイルも面倒だろうけど、使えて損はないから」
「へーい……。このモフモフ司祭はいいんすか?」
カイルがアリサをちらっと見た。
彼女は得意げに微笑みながら、
「わたくし、こう見えてラグナの神聖魔法以外に、一般神聖魔法を一通り使えるので」
「そりゃあすごい!」
「マジかよー」
「アリサすごいですー!」
全く違う二つの系統の魔法を使いこなすのは本当に凄い。
俺もちょっと勉強し直して、もう一系統の魔法を覚えてみるかなあ。
「これはね、苔と土を合わせてスリングで投げられる弾にしてるんだ」
「ほえー。なんだかあんまり硬そうじゃないですね?」
「そりゃそうさ。こいつは、当たって砕けてからが本番なんだよ。なにせ、この苔は地下世界の猛獣、暴れる牙が大嫌いなにおいを出すからね」
「あっ、分かっちゃったですよ! それで暴れる牙をおいはらうですね!」
「そういうこと」
「じゃあ、クルミもお手伝いするですー!」
二人でせっせと、泥団子を作る。
数は両手の指で数えられる程度もあれば十分だろう。
俺はスリングを滅多に外さないし、クルミの命中率だってなかなかだ。
二人揃って投げれば、まず百発百中と言っていい。
「暴れる牙かあ。俺、そいつがどんだけでけえのか見たことないっすからねえ。一度やりあってみたいっすね」
「モフモフしてれば最高なのですけれど……」
俺達の仕事を眺めながら、カイルとアリサが個人的な思いを口にしている。
カイルは最近、また自信がついてきたようだ。
デュラハン戦で過去のパーティが全滅してから、すっかり自信喪失していたからね。
我がパーティの前衛がやる気になっているのはいいことだ。
アリサはいつも通り、っと。
確か俺の監視が主な仕事だったはずだが、全く監視してる素振りがない。
常にニコニコしながら、うちのモフモフにブラッシングしているぞ。
あまりにも毎日念入りにブラッシングするので、アリサはブラッシング担当としてモフモフ達から認められ始めている。
「旅立ちですかナ」
村の代表であるリザードマンがやって来た。
「向かう方角はあちらだヨ。大きな柱が何本も立っているだろウ。これには規則があって、この方向の柱をに十本辿ると、ビブリオス男爵領向かう道があル。ま、道と言ってもそこのドワーフに道を作ってもらうんだがネ」
「ありがとう。なるほど、では直接繋がっている道ではないんだね?」
「そういうことになル。だからこそ、人間達が自力でレイアスに道を通した事は偉大な業績だと思っていル」
イリアノスの人達はかなり凄いんだな。
見直してしまった。
こうして準備が終わり、村人からお弁当ももらった。
保存食も物々交換でもらうことができた。
こちらから供出したのは、炎晶石とか雷晶石とか、使わずに余っていた消費型マジックアイテムである。
地下世界では大変めずらしいものらしくて、喜ばれた。
「また珍しいものを見つけたら持ってきてくれい!」
村に招いてくれたドワーフが、手を振って見送ってくれる。
村人達も総出だ。
娯楽が少ない村なので、旅人がやって来て、そして去っていくというのはちょっとしたイベントなんだな。
ファルクスがいれば、ここで一曲奏でたんだろう。
うん、また恥ずかしい戯曲を作られるところだった。
さあ、柱を目指して旅することにしよう。
地下世界レイアスの道のりは、それなりに凸凹している。
基本的に、下へ下へと降りていく下り坂。
天井もそれに合わせて下がって来るので、空の高さは変わらない。
「多分この辺りで、海の下を歩いてることになるんだろうな」
俺のつぶやきを聞いて、カイルがギョッとした。
「マジっすか。じゃあ天井が破れたら、海が落ちてくるじゃないっすか……! やべえ、こええ……」
「そんな心配は無用だと思うけどなあ。多分ここ、魔法的な手段で作られた地下の世界だろう? 精霊女王レイアが作ったって言ってたから……伝承で言う、精霊界というものの一つなんだと思う」
「まあ。ここ、精霊界でしたの!?」
知っているのかアリサ!
いや、教会で次期枢機卿に推挙されるほどの女性だから、高い教養を持っているのは当たり前だった。
あまりに普段の言動がモフモフに偏りすぎてて失念するな。
「せいれいかいってなんですか?」
ここでクルミが質問をしてきてくれる。
話すきっかけになってちょうどいい。
「うん。精霊界っていうのはね。精霊王が作り出す、それぞれの精霊が住む世界のことなんだ。昔は人間の世界とは離れたところにあったそうなんだけど、いつの間にか人間界と精霊界はくっついてしまった。その時から、みんな魔法を使えるようになったんだよ」
「ほえー! 魔法ってせいれいのちからだったですか!」
「うん、そうだよ。ラグナ新教の神聖魔法以外は、どれも精霊の力を使って魔法を行使してる。俺のバフだってそうだ。もともとはそれぞれの精霊界に属する種族の能力だったけれど、これを人間が真似して魔法という体系を作り上げた。誰でも使える技術にしたわけだね。本人の持ってる魔力の量とか、魔法との親和性とかは違うけど、簡単な魔法なら誰だって使える」
「えっ、じゃあ俺も使えるっすか!?」
「もちろん。簡単な魔法なら、そよ風を吹かせるものなんかは三日もあれば覚えられるよ」
「あ、でも三日かかるっすか……。俺、頭使う仕事を三日やるのは無理だなあ」
そういうことだ。
なんだかんだで、魔法を覚えるのは面倒くさい。
面倒なのが苦手な人は使えないし、使えたとしても才能がなければ大したことができない。
逆に言うと、才能さえあれば物凄い力を持つ魔法だって使えてしまうわけだ。
「センセエ! クルミ、魔法つかいたいです!!」
「よーし、じゃあクルミには俺の強化魔法を教えてあげよう。カイルも面倒だろうけど、使えて損はないから」
「へーい……。このモフモフ司祭はいいんすか?」
カイルがアリサをちらっと見た。
彼女は得意げに微笑みながら、
「わたくし、こう見えてラグナの神聖魔法以外に、一般神聖魔法を一通り使えるので」
「そりゃあすごい!」
「マジかよー」
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全く違う二つの系統の魔法を使いこなすのは本当に凄い。
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