モフモフテイマーの、知識チート冒険記 高難易度依頼だって、知識とモフモフモンスターでクリアします!

あけちともあき

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第四部:オケアノス海の冒険 7

第150話 ソラフネ山遺跡 その2

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 これはゴーレムの一種だろうか。
 チェスの駒に似たその姿は、ふわふわと地面から浮いている。
 そして、その周囲を何本もの腕が取り巻いていた。

 腕が輝く。
 そこから放たれるのは、光の弾丸だ。
 視認するのがやっとの速度のはずだが……。

「おっと」

 アルディがこれを事も無げに弾く。
 次々に飛んでくる弾丸を、弾き、弾き、弾く。

「段々止まって見えてきたぜ。こいつの攻撃は任せろ」

 敵の前で仁王立ちになり、アルディがあらゆる攻撃を弾き飛ばす。

「な……なんなんですね、この男」

「元辺境伯ですわよ」

「あんな異常に強い辺境伯ってあるんですねー!?」

「ほらほら、休んでる暇ないですよー!!」

 クルミが積極的に動く。
 彼女がチョイスしたのは、炎晶石だ。
 ポコンと投げたら、ゴーレムの一部が赤熱化した。

 すぐに元の色に戻る。

「む? クルミ、もう一発炎晶石」

「はいです! てやー!」

 炎晶石炸裂と、ほんの少しだけずれるようにして、全く同じ場所に俺が氷晶石を投げる。
 赤熱が戻るよりも早く、超高速で青くなった。

 そして、ピシッとそこにヒビが入る。

「ほいっ!」

 俺が連続投擲、徹甲弾を放つ。
 これは、ミスリル鉱石製の超硬質弾だ。

 それがヒビの入った場所に当たると、その部位を粉々に砕いた。
 ゴーレムが傾いていく。

 こいつ、一箇所が壊れると一気に動けなくなっていくタイプのようだ。

「カレン!」

「分かってますね!」

 彼女の射撃が、ゴーレムに炸裂する。

「命中精度甘くありません? オースさんなら百発百中なのに」

「あの冒険者のスリングがおかしいんですね!! スリング、普通はあんなに当たりませんねー!!」

「仕方ありませんわねえ。神の奇跡をコールコマンド! 標的の所在を確認てきはめのまえ第一艦より第三艦へおしえのかべをこえ演算能力を補助しますいまかみのいちげきを

 アリサの首から下がった聖印が輝く。
 それに共鳴するように、カレンの武器も光り輝いた。

 放たれる弾丸。
 それは、まるで意思を持っているかのようにぐねぐねと空中を進み、ゴーレムの傷ついた部位を正確無比に貫いた。

 ゴーレムが完全に機能停止し、床に落ちる。

「な、なんですかね今のーっ!!」

 カレンが慌てている。
 アリサが実力を発揮すれば、こんなものだろう。

 カレン、冒険者として見た場合、大体Bランクくらいだろうか。
 クルミの実力もBランクの上位くらいになっているはずなので、まあいい勝負だろうか。

「やったですー!」

 クルミがぴょーんと飛び跳ねた。
 働かなかったドレは、倒れたゴーレムの横にトコトコ歩くと、

『邪魔にゃ』

 触手でゴーレムを弾いた。
 一見して重そうなその胴体が、ごろごろと転がっていく。
 ドレの正体も、ブランと並び立つようなモンスターだからなあ。

「ドレも戦えばいいのに」

『はあー!? めんどくさいにゃああああ! 己は最近働かされまくってて、不満が溜まってるにゃああああ! ミルクも摂取できなくてストレスマックスにゃあ!』

 何だ、ミルクが飲めなくてすねてたのか。

 だが、ここで遺跡特有のゴーレムの性質を掴んだぞ。

「アルディ。ここからは、攻撃を弾くことに専念してくれ。クルミはどこでもいいから、炎晶石を当てて」

 俺はスリング二刀流で進むことにする。
 袖口に、弾をセットする。

 実は俺の服は、袖に弾を何発かストックしておけるように作ってあるのだ。
 このまま進めば、これから何体かのゴーレムが出てくるはず……。

「出ましたわ!!」

「カレン、俺が合図したら破損した部位を撃ってくれ。アリサ、彼女の射撃を補正」

「えっ、わ、分かりましたね」

「仕方ありませんわねえ。なんだか楽しそうですわね、オースさん?」

「実に不謹慎ながらも、戦闘が楽しいね。敵の性質を戦いながら理解して、対策を実行していく……っと、クルミ!」

「はいですー!!」

 炎晶石が飛ぶ。
 おっと、今回は外れか。

「ご、ごめんなさーい!」

「なあに、問題ねえぞクルミ! 俺なら幾らでもこいつの攻撃を弾き続けられる!」

「アルディが守ってくれている間に、もう一度チャレンジだ、クルミ!」

「はいです!! とりゃー!!」

 今度は命中。
 炎晶石が炸裂した。
 それを視認するよりも早く、俺はスリングを両手で回転させている。

 右から撃ち放つ氷晶石。
 そして左から時間差で放つのは徹甲弾。

 ゴーレムの一部が粉砕される。

「カレン!」

「は、はいですねーっ!!」

「詠唱簡略化。先程のをもう一つお願いしますわ!」

 あ、ラグナの神聖魔法詠唱、省略できるんだ。
 放たれた弾丸は、俺がこじ開けた穴に炸裂する。

『ピガー!!』

「よし、倒した。次、次!」

『前と後ろから来るにゃ!』

「後ろはちょっとドレが食い止めてくれ」

『な、なんでにゃーっ!?』

 なんでもヘチマもない。
 外の世界から来た最強のモンスターの一角を遊ばせておくほど、うちは余裕があるわけじゃない。

「頼むですよー、ドレー!!」

『うぬあああーっ! 働きたくないにゃーっ!!』

 背後で、ドレが大きく膨れ上がる。
 ブランにも匹敵するような体格だ。

「なっ、なんですねこれーっ!?」

「おっ、猫め、本気を出したか! わはは! 凄いなその姿!」

 狼狽するカレンに、大喜びのアルディ。
 ドレは、光の弾丸を放つゴーレムを真っ向から抑え込む。

『マインドブラスト! 精神がなかろうと、内部に直接物理的威力を持つまでに濃度を高めた精神波を叩き込めば、問題なかろうっ!! そして! 触手でダメ押し! さらにパンチ! クァールパンチ、パンチパンチ!!』

 おお、ゴーレムを圧倒している!
 本当に強いな、本気になったドレは。
 その間に、俺達もゴーレムの一体を倒している。

『ふう……疲れたにゃ。宇宙を旅していた己は、カリウムさえ摂取すればどこまでも戦い続けられたにゃ。しかし、己はこいつらと旅をするうちに……ミルクを摂取しないとやる気がでなくなってしまったにゃ!! 己は堕落したにゃああああ』

「何か呻いていますねえ……」

「おほほほほ、傷ついたドレちゃんはわたくしが慰めますわあー!」

『うわわーっ! な、何をするにゃーっ!』

 だが、これでどうやらゴーレムは打ち止めだ。
 俺達の目の前には、集落の人々から聞いていた、遺跡の中心が存在している。

 それは、光り輝き、何者にも支えられずに宙に浮かんだ玉だった。

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