召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

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終章・始まりの王編

第194話 まるでクライマックスみたいだな

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 バルガイヤー森王国へ到着した。
 すぐさま、わーっと詰めかけてくるバーバリアンたち。

「新たな王の到着だ!」

「王!」「王!」「王!」「王!」「王!」

 既成事実化されている!!
 俺に逃げ場なし!

「やはりか」

「仕方ないですよねー。大成果を上げたマナビさんが王様の補佐なんか許されませんもん。誰もマナビさんの上になんか立ちたがらないですよー」

 ルミイがニコニコした。

「言われてみればそう。俺も俺みたいなことやらかした奴、下に置いておきたくないもん。寝首かかれそうだし、民の心は絶対部下に向かうから、王が国を統制できなくなるし」

 それに俺、よく考えたらバルクをぶっ倒してたんだった。
 オクタゴンの手を借りて、不正な手段でやったよとアピールしていたのだが……。

 魔導王を倒し、世界を救った今となっては、あれもまた救世主である俺が持つ力、という扱いになっているらしい。
 手段が正当化されている……!!

「来たか、マナビよ! こっちに来い! 明日は即座に戴冠式をするからな!」

 バルク王が現れて、手招きする。
 隣ではエルフママのルリファレラもニコニコしており、

「聞いたわよ。ルミイのお腹の中にあなたとの赤ちゃんがいるんでしょう? 思ったよりも早かったわね。だけどこんなに嬉しいことはないわ! 私、おばあちゃんになるのね!」

「俺もおじいちゃんか! 王から降りるから、孫を甘やかしすことに集中できるな!」

 おお……。
 バーバリアンの王とエルフの長の二人がすっかり丸くなってしまっている。
 国を守る責任とか何もかも、俺にぶん投げられる事が決まり、肩の荷が下りたのだな。

 まだ荷を下ろすな。

 結局俺は、到着後のんびりする暇などなく、翌日の準備のために木造の宮殿に連れて行かれてしまった。
 他の人は出入り厳禁とか言うので、アカネルだけは俺の頭脳役なので同行させてくれと無理を言ったのである。

「言ってみるもんだな」

「当機能としては、特別扱いされるのはかなり気分がいいですが」

「実際特別扱いだろ。アカネルの中の半分は俺の能力の出張版なんだし」

「そうでした」

 彼女を連絡役とし、明日の戴冠の儀の段取りなどを聞きながら過ごすことになるのである。
 帰ってきても一休みもできない。

 ちなみに、段取りを作るのは王弟のマスキュラー。
 でっぷりしたおっさんで、バルクの弟で、なんかあらゆる儀式で司会進行も務めている人だ。

 何気にバーバリアンたちの中では重要人物であろう。

「これでわしも最後の仕事になる」

「そうなのか」

「兄を倒した男が、新たな王となる。王の代替わりを見届けることが出来て、わしは役割を果たすことができたと思っているよ」

 マスキュラーはにっこり微笑み、俺の肩をポンポンした。

「次の時代を頼むぞ、姪の婿殿」

「おう、嫌だけど任された」

 そういう、柔らかくてなんかしみじみした言い方されると断れないよな。
 こいつのために、ちょっと頑張るかという気持ちになった。

 ちなみにマスキュラー、王弟ながら太りやすくて運動はからっきし。
 バーバリアンでは見下されていたらしいのだが、頭脳を磨いてあらゆる儀式を体系化し、今は口伝として保存できるようにしているらしい。
 その上で司会進行も務め、これのルールと決まり文句も設けた。

 おかげで、今ではバーバリアンたちのお祭りに欠かせぬ重要人物として、誰もが一目置いているらしい。
 腕っぷしだけではない。
 自分の居場所は、どういう作り方だってあるのだな。

 なお、マスキュラーの後任は見つかっていないので、こいつは引退する気でいるがまだまだ現役でいてもらうことになる……!

 俺はその夜、英気を養う意味で女子たちと離れて眠ることになった。
 ……のだがちっちゃくなったアカネルが寝室に侵入してきてくれたので、ちゃんとすることはした。

 スッキリしたので明日の緊張もなく、爆睡だぞ。
 朝になったら、俺とアカネルがぐうぐう寝ているので、起こしに来たマスキュラーが呆れていた。

「まさにバーバリアンの王となるために生まれてきたような男だな! 兄もルリファレラを寝室に連れ込み、戴冠前でも励んでいたわい」

「しまった、歴史を繰り返してしまった……」

「その兄は凍土の地より民を連れ出し、この肥沃な森へと世界を切り開いた! 戴冠前に同じことをしたお主は、きっと我らを素晴らしい世界へと導いてくれることだろう! うむうむ、そんな歴史ならまた繰り返して欲しいものだ!」

 うわーっ、ポジティブシンキング!
 このおっさんは嫌いになれないなあ。

 こうして、朝に儀式を一通りおさらい。
 まあ、何十年に一度のお祭りなのだ。
 これは従っておき、大いに盛り上げるがいいだろう。

 朝飯の席には奥さんたちが全員集合していたので、わいわいお喋りしながら飯を食った。
 アカネルがずるいという話になり、たいへん盛り上がった。
 アカネルはとてもご満悦であった。

「新たなる王、ご機嫌はどうだい」

「僕らはこれから君の臣下となるからね」

 双子の王子が挨拶にやって来た。

「そっか、タメ口もこれで最後になるかも知れないのか。いいんだぞ、不遜な口を聞いても。俺は侮られ慣れているからそういうの気にしないぞ。ムカついたら万倍返しするだけで」

「やめておくよ」

 双子の片割れが笑った。

「とは言っても、僕らはプライベートではこの口の聞き方をするけどね。王ではあるけど、君は僕らの義理の弟でもある」

「それはそうだ。で、あんたらはどうするんだ? 国に残るのか?」

 俺の質問に、双子は揃って肩をすくめた。

「君は分かってるみたいだね。そう、僕らは国を発つ」

「旅に出るんだよ。君とルミイたちが世界を巡ったみたいにね。僕らは世界の広さを知らないんだ」

「自分探しか。いいんじゃない。気にいる奥さんとか見つかるかもしれないし」

 その後は双子と、これからの話で盛り上がった。
 うーむ、みんないきなり将来の話をしてくるじゃないか。

 まるで物語のクライマックスだな、などと思いながら、戴冠式の時はやって来るのだった。

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