召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき

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終章・始まりの王編

第195話 始まりの王

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 戴冠式だが、宗教的儀式なのだそうで、来賓なんかを招かずサッと行ってしまうそうだ。
 ゴテゴテ着飾らされた俺。
 これを、ルミイたちやバルク、果ては神であるバルガイヤーとリサルナまで見に来た。

 おい、儀式の主神がホイホイ歩き回るな!

 どうも、この夫婦神はフットワークが軽いところがあるな。
 もともと至高神アクシスであった頃は、どっしりと構えた重厚な神だったらしい。
 リサルナも落ち着いていたとか。

 だが、この辺境に追放され、バーバリアンたちの神となった時から神格が変質したのだそうだ。

『神は信者の影響を受けるものだ。信者の信仰心を糧にして存在しておるからな! つまり祈る者たちが皆、威勢のいいバーバリアンたちだとわしのようになる! がっはっはっはっは!』

 至高神アクシスにして、蛮神バルガイヤーであるこの神様は、そう言って豪快に笑った。

『それにしても、あなたが王を引き受けてくれるならしばらくは安泰です。世界に小さな戦乱を続発させようと陰謀を巡らせているようですが、それで森王国とセブンセンスが栄えるなら素晴らしいことです』

 俺の企み、神様公認ではないか。
 こうして神々と話し込んだりなどした。

 森王国の土地は、ほぼ全てのバーバリアンが移り住んだため、そのまま信仰の中心地となった。
 さらに、バーバリアンが取り込んだフィフスエレ住人たちも、バルガイヤーかリサルナを信仰するようになったそうである。

 何せ、神が直接現れてそれを拝める。
 神の存在のおかげで、太陽が畑を照らし、慈愛の雨が畑を濡らし、日々の作物が絶えぬ環境が生まれている。
 バーバリアンたちも、同じ神を信じる者には優しいのだ。

 それにフィフスエレの生き残った女性陣は、バーバリアン男子と結婚しているしな……!

 今までよりも多くの祈りを受けられるようになった夫婦神は、ツヤツヤしていた。
 ここに、魔導王退治の英雄である俺が王として君臨すれば、さらに人が増えると考えているに違いない。

 そうだよな、そうなるよなあ。

「マナビ様、出番です! ……あら? 今、誰かがいたような……」

 バーバリアンの娘が呼びに来て、キョロキョロした。

「誰もいないぞ」

 神々は下手な気を遣わせないよう、去り際が鮮やかなのだ。
 さて、儀式だ。

 いつも通り、王弟マスキュラーが儀式を進行していく。
 この男、こう見えて蛮神バルガイヤーの名誉司祭でもあるとか。
 この間、名実ともに最高司祭だった爺さんが森王国の豊かな土地を眺めながら満足して大往生したそうなんで、マスキュラーが信仰のトップでもあるのではないか。

 兄であるバルクを手伝うべく、便利な資格の一つとして司祭位についていたらしいが、それがまさか本業になるとはな。

「……であり、これを以って王の地位を、コトマエ・マナビへと移譲される~! 新たなる王の誕生である!」

 考え事をしてたら、メインの儀式が終わっていた。
 あまり長くないな。
 バーバリアンが長時間じっとしていられないからかも知れない。

 俺の頭の上には、木々の枝で編まれた冠が載っていた。

 うおーっと沸き立つバーバリアンたち。
 俺が初めて現れたときとは大違いだ。

 まあ、もはや俺を侮るものなどこの世界にはおるまい。
 有名になりすぎてしまったからな。

 表向きは、諸国遊行の旅も終わり。
 これからは森王国に腰を据えて政治を行っていくことになるのだ。

 儀式が終わると宴が始まる。
 こっちがメインだ。
 そして各国からは、この一週間くらい続く宴に合わせて来賓が訪れることになる。

 同窓会みたいだなあ。

 魔導王を倒したばかりだというのに、今度はその立役者である英雄が王になり、そのお祝いが行われる。
 ここしばらくは、世界的にハレの日ということであろう。
 俺は祭りに担がれる神輿として、役割を果たしてやろうではないか。

 まったりしていると、スリッピー帝国の使節団がやって来た。
 ベストールはおらず、彼らのリーダーはドンデーン教授だ。

「陛下、この度は御即位おめでとうございます」

「よしてくれ、むず痒い」

 というやり取りをした後、二人でゲラゲラ笑った。
 バーバリアンの王なんてのはラフな存在なので、謁見のスペースでそういうことをしてもいいのだ。

 その後、教授とバーバリアンの若者たちが殴り合うデモンストレーション。
 おうおう、血気盛んなバーバリアンボーイたちが教授に掛かっていく。
 そしてどんどん蹴散らされていく。

 相変わらず意味不明な強さだな。

「ほう、面白い。俺は王ではなくなり、一人の戦士に戻った。そうなれば、強い相手と戦う自由もあるだろう! おい、使節殿! 俺とやるぞ!」

 前王バルクが立ち上がった。

「これはこれは、先代の王バルク! あなたは新王の後に退き、院政を敷くなどとは考えないのですかな?」

「そんな面倒な事を誰がやるか! 俺はな、まだ体がこうやって動く内に、面倒な王の仕事をあいつに押し付けられてせいせいしてるんだ! さあ、自由を満喫してやるぞ。やろうか使節殿よ!」

「なるほど、あなたは一介の戦士、バルクというわけか! よろしい。では私もあなたの自由に付き合うとしよう!」

 おっ、教授がジャケットを脱ぎ捨て、メガネとネクタイを外し、ボタンを緩めて腕まくりした!
 本気モードだ。

 現地人最強クラスの二人が向かい合い、スタイルはステゴロ。
 あまりに面白そうだったので、俺は彼らのところへトコトコ歩いていき、二人の拳に触れた。

「両者、ぶっ倒れた方が負けだ。じゃあ、スタート!!」

 俺の手がクロスする。
 クロスした瞬間、バルクと教授の拳がクロスカウンターで、互いの顔面に突き刺さった。

 うおおおおおおーっ!!と沸き立つバーバリアンたち。
 最高の娯楽が始まってしまったな。

 大変面白い。

 俺は奥さんたちを呼び集め、焼肉や飲み物を用意してもらい、この余興を存分に楽しむことにするのだった。
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