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72・見せてもらおうか、伝説のハーブの力
第215話 パワーを見せつけられた
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タイカレーと一緒に、パンが出てきた。
こいつ……!
わざとパサッとしたパンを出して、これでタイカレーを吸い込ませて食えというのか!!
絶対美味いに決まってるだろこんなもん!
いい加減にしろ!!
「おいしそー! いっただきまーす!」
シズマと付き合って、完全にいただきますを己のものとしたアーシェが、真っ先に行った!
パサパサパンがいい感じでスープカレーを吸い込んでふやけている。
これをスプーンで掬って食べる……。
「んほーっ!! ほ、ほれおいひいーっ!!」
「アーシェ、口に含んだまま喋るもんじゃないぞ。よし俺の番だ。んほおおおおうまひいいいい」
「このカップル同じ様な反応しやがって」
仲良きことは美しき哉。
他のメンバーに、店に残ったお客たちももりもりとタイカレーを食べている。
「か、か、辛い! でも美味い!」
「と、とっても香りが強くって~」
「くそっ、こんなもん食ったら鼻がバカになっちまう! だが止まらねえ!」
「うめー」「しあわせー」「酒で鈍った頭がパッと冴えるわ!」
めちゃくちゃ好評だな!
どれどれ、僕も食べてみよう。
一匙口に運ぶと、物凄いスパイシーさが脳天を突き抜けた。
うおおおおお!
これはっ!!
パルメディアでは味わうことなどできなかった、ハチャメチャなスパイシー!!
複雑に絡み合ったスパイスの風味で、意識が一気に東南アジアまで持っていかれた。
この世界に東南アジアは無いけどな……。
ここにパサパサパンをつけてふやかすと、スープだけだったタイカレーが実体を持つ。
おおー、スープをいっぱいに吸い込んだパンが堪らん……。
鳥肉と野菜が入っているのだが、食べ慣れているはずの食材が、全く別の風味で楽しめる。
斬新……圧倒的に斬新……!
これがマサラガラムの力だというのか!!
カレーの複雑さを担保するハーブ。
流石過ぎる。
冬だと言うのに、汗だくになって俺たちは食べ続けた。
気付いたらギルボウも食べていた。
で、食べ終わったあと、みんな放心状態になったのである。
いやあ、これはなるよなあ。
体はぽかぽか。
口の中まだ辛くて、鼻の中がスーッと通っている。
薬膳としても強い効果があるのではないだろうか。
様々な可能性を感じるハーブだった。
これは殿下に提出せねばなあ……。
ここで、アーラン最強のドリームパーティは解散となった。
みんなタイカレーの余韻でまだ夢心地。
ふらふらと去っていく。
アーガイルさんまであんなにぽわぽわになるとはな……。
「あー、このハーブ、恐らくリラックス効果もあるみたいだな。ようやく抜けてきたぜ。こりゃあ……食事に混ぜて戦争中の兵士に食わせたら、一瞬で戦争が終わるぞ」
「そんなにすごいものだったのか!」
ギルボウの言葉に驚く僕。
そう言えば、僕もすっかりハーブが抜けているな。
「ナザルの場合は体を油が流れてるだろうが。そんなもん、どれだけ強力な毒や薬を流し込まれても簡単に包みこんで無効化しちまうだろうさ」
「いや、普通に血が流れてるんだが……?」
失礼な。
……いや、でも油を吸収して怪我を直したりできるもんな……。
血を失っても油で補給できる気がする。
体は油でできているのか……?
自分のことが全く分からなくなってきた。
だが、これでマサラガラムが片付き、ついに残るはカレーコだけとなった。
砂漠の王国へ向かい、黄金のハーブ、カレーコを手にする時が来たのだ。
おともはどうしよう。
コゲタと二人でいいか。
そんな事を考えながら帰宅したら、コゲタが僕を見つけるなり、ぴょーんと飛び上がった。
「ご主人ー! ふしぎなによいがする!」
「分かる? マサラガラムの匂いなんだぞ。このままだとコゲタにはちょっと強すぎるから、今度薄めて作ってあげようね」
「ほんと!? たのしみー!」
ぴょんぴょん跳ねて喜ぶコゲタ。
手に石鹸がついているではないか。
「何をしてたの?」
「おせんたくのおてつだい!」
どうやら、おかみさんと一緒に、井戸水でシーツのもみ洗いをしていたようだ。
井戸水は冬でも一定の水温だから、暖かく作業ができるのだ。
僕は宿の主人とおかみさんにも普段の礼をすべく、このマサラガラムを使って料理をしてあげたのだった。
昨夜の残り物のスープが、寒いところに置いてあった。
この季節は一番寒いところに放置しておけば、冷蔵庫と同じ効果がある。
多少悪くなっていようと、それをどうにかするのがマサラガラム!
「ヤーッ!!」
鍋に一掴み投下!
ぐつぐつと煮込みながら、かき混ぜる。
そうすると、漂ってくるだろう、独特の香りが……。
「ナザル! あんた一体何を作ってるんだい!? 薬膳鍋かい!?」
薬膳というのはアーランでは一般的で、美味いものじゃない薬草をどうにか食えるようにしよう、という料理である。
当然美味しくない。
だが、マサラガラムをそこらの薬膳と同じにしてもらいたくはない。
「フフフ、味見をどうぞ」
「ええ……? 苦かったりしないのかい?」
「玄妙複雑な味です」
「難しい事を言うねえ……どれどれ……? おほー」
おかみさんが目を丸くした。
偏見は吹き飛んだことであろう。
その後、スープカレーとなったマサラガラム入りスープを、宿の主人とおかみさんがガツガツ食べていたのだった。
喜んでもらえて何よりだ。
なお、コゲタ用はマサラガラム少なめ。
「ぴりぴりほっほってする!」
それでも刺激的だったようで、一口食べるごとにコゲタは目をパチパチさせるのだった。
こいつ……!
わざとパサッとしたパンを出して、これでタイカレーを吸い込ませて食えというのか!!
絶対美味いに決まってるだろこんなもん!
いい加減にしろ!!
「おいしそー! いっただきまーす!」
シズマと付き合って、完全にいただきますを己のものとしたアーシェが、真っ先に行った!
パサパサパンがいい感じでスープカレーを吸い込んでふやけている。
これをスプーンで掬って食べる……。
「んほーっ!! ほ、ほれおいひいーっ!!」
「アーシェ、口に含んだまま喋るもんじゃないぞ。よし俺の番だ。んほおおおおうまひいいいい」
「このカップル同じ様な反応しやがって」
仲良きことは美しき哉。
他のメンバーに、店に残ったお客たちももりもりとタイカレーを食べている。
「か、か、辛い! でも美味い!」
「と、とっても香りが強くって~」
「くそっ、こんなもん食ったら鼻がバカになっちまう! だが止まらねえ!」
「うめー」「しあわせー」「酒で鈍った頭がパッと冴えるわ!」
めちゃくちゃ好評だな!
どれどれ、僕も食べてみよう。
一匙口に運ぶと、物凄いスパイシーさが脳天を突き抜けた。
うおおおおお!
これはっ!!
パルメディアでは味わうことなどできなかった、ハチャメチャなスパイシー!!
複雑に絡み合ったスパイスの風味で、意識が一気に東南アジアまで持っていかれた。
この世界に東南アジアは無いけどな……。
ここにパサパサパンをつけてふやかすと、スープだけだったタイカレーが実体を持つ。
おおー、スープをいっぱいに吸い込んだパンが堪らん……。
鳥肉と野菜が入っているのだが、食べ慣れているはずの食材が、全く別の風味で楽しめる。
斬新……圧倒的に斬新……!
これがマサラガラムの力だというのか!!
カレーの複雑さを担保するハーブ。
流石過ぎる。
冬だと言うのに、汗だくになって俺たちは食べ続けた。
気付いたらギルボウも食べていた。
で、食べ終わったあと、みんな放心状態になったのである。
いやあ、これはなるよなあ。
体はぽかぽか。
口の中まだ辛くて、鼻の中がスーッと通っている。
薬膳としても強い効果があるのではないだろうか。
様々な可能性を感じるハーブだった。
これは殿下に提出せねばなあ……。
ここで、アーラン最強のドリームパーティは解散となった。
みんなタイカレーの余韻でまだ夢心地。
ふらふらと去っていく。
アーガイルさんまであんなにぽわぽわになるとはな……。
「あー、このハーブ、恐らくリラックス効果もあるみたいだな。ようやく抜けてきたぜ。こりゃあ……食事に混ぜて戦争中の兵士に食わせたら、一瞬で戦争が終わるぞ」
「そんなにすごいものだったのか!」
ギルボウの言葉に驚く僕。
そう言えば、僕もすっかりハーブが抜けているな。
「ナザルの場合は体を油が流れてるだろうが。そんなもん、どれだけ強力な毒や薬を流し込まれても簡単に包みこんで無効化しちまうだろうさ」
「いや、普通に血が流れてるんだが……?」
失礼な。
……いや、でも油を吸収して怪我を直したりできるもんな……。
血を失っても油で補給できる気がする。
体は油でできているのか……?
自分のことが全く分からなくなってきた。
だが、これでマサラガラムが片付き、ついに残るはカレーコだけとなった。
砂漠の王国へ向かい、黄金のハーブ、カレーコを手にする時が来たのだ。
おともはどうしよう。
コゲタと二人でいいか。
そんな事を考えながら帰宅したら、コゲタが僕を見つけるなり、ぴょーんと飛び上がった。
「ご主人ー! ふしぎなによいがする!」
「分かる? マサラガラムの匂いなんだぞ。このままだとコゲタにはちょっと強すぎるから、今度薄めて作ってあげようね」
「ほんと!? たのしみー!」
ぴょんぴょん跳ねて喜ぶコゲタ。
手に石鹸がついているではないか。
「何をしてたの?」
「おせんたくのおてつだい!」
どうやら、おかみさんと一緒に、井戸水でシーツのもみ洗いをしていたようだ。
井戸水は冬でも一定の水温だから、暖かく作業ができるのだ。
僕は宿の主人とおかみさんにも普段の礼をすべく、このマサラガラムを使って料理をしてあげたのだった。
昨夜の残り物のスープが、寒いところに置いてあった。
この季節は一番寒いところに放置しておけば、冷蔵庫と同じ効果がある。
多少悪くなっていようと、それをどうにかするのがマサラガラム!
「ヤーッ!!」
鍋に一掴み投下!
ぐつぐつと煮込みながら、かき混ぜる。
そうすると、漂ってくるだろう、独特の香りが……。
「ナザル! あんた一体何を作ってるんだい!? 薬膳鍋かい!?」
薬膳というのはアーランでは一般的で、美味いものじゃない薬草をどうにか食えるようにしよう、という料理である。
当然美味しくない。
だが、マサラガラムをそこらの薬膳と同じにしてもらいたくはない。
「フフフ、味見をどうぞ」
「ええ……? 苦かったりしないのかい?」
「玄妙複雑な味です」
「難しい事を言うねえ……どれどれ……? おほー」
おかみさんが目を丸くした。
偏見は吹き飛んだことであろう。
その後、スープカレーとなったマサラガラム入りスープを、宿の主人とおかみさんがガツガツ食べていたのだった。
喜んでもらえて何よりだ。
なお、コゲタ用はマサラガラム少なめ。
「ぴりぴりほっほってする!」
それでも刺激的だったようで、一口食べるごとにコゲタは目をパチパチさせるのだった。
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