俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき

文字の大きさ
215 / 337
72・見せてもらおうか、伝説のハーブの力

第215話 パワーを見せつけられた

しおりを挟む
 タイカレーと一緒に、パンが出てきた。
 こいつ……!
 わざとパサッとしたパンを出して、これでタイカレーを吸い込ませて食えというのか!!

 絶対美味いに決まってるだろこんなもん!
 いい加減にしろ!!

「おいしそー! いっただきまーす!」

 シズマと付き合って、完全にいただきますを己のものとしたアーシェが、真っ先に行った!
 パサパサパンがいい感じでスープカレーを吸い込んでふやけている。
 これをスプーンで掬って食べる……。

「んほーっ!! ほ、ほれおいひいーっ!!」

「アーシェ、口に含んだまま喋るもんじゃないぞ。よし俺の番だ。んほおおおおうまひいいいい」

「このカップル同じ様な反応しやがって」

 仲良きことは美しき哉。
 他のメンバーに、店に残ったお客たちももりもりとタイカレーを食べている。

「か、か、辛い! でも美味い!」

「と、とっても香りが強くって~」

「くそっ、こんなもん食ったら鼻がバカになっちまう! だが止まらねえ!」

「うめー」「しあわせー」「酒で鈍った頭がパッと冴えるわ!」

 めちゃくちゃ好評だな!
 どれどれ、僕も食べてみよう。

 一匙口に運ぶと、物凄いスパイシーさが脳天を突き抜けた。
 うおおおおお!
 これはっ!!

 パルメディアでは味わうことなどできなかった、ハチャメチャなスパイシー!!
 複雑に絡み合ったスパイスの風味で、意識が一気に東南アジアまで持っていかれた。

 この世界に東南アジアは無いけどな……。
 ここにパサパサパンをつけてふやかすと、スープだけだったタイカレーが実体を持つ。
 おおー、スープをいっぱいに吸い込んだパンが堪らん……。

 鳥肉と野菜が入っているのだが、食べ慣れているはずの食材が、全く別の風味で楽しめる。
 斬新……圧倒的に斬新……!

 これがマサラガラムの力だというのか!!
 カレーの複雑さを担保するハーブ。
 流石過ぎる。

 冬だと言うのに、汗だくになって俺たちは食べ続けた。
 気付いたらギルボウも食べていた。
 で、食べ終わったあと、みんな放心状態になったのである。

 いやあ、これはなるよなあ。
 体はぽかぽか。
 口の中まだ辛くて、鼻の中がスーッと通っている。

 薬膳としても強い効果があるのではないだろうか。
 様々な可能性を感じるハーブだった。

 これは殿下に提出せねばなあ……。
 ここで、アーラン最強のドリームパーティは解散となった。

 みんなタイカレーの余韻でまだ夢心地。
 ふらふらと去っていく。
 アーガイルさんまであんなにぽわぽわになるとはな……。

「あー、このハーブ、恐らくリラックス効果もあるみたいだな。ようやく抜けてきたぜ。こりゃあ……食事に混ぜて戦争中の兵士に食わせたら、一瞬で戦争が終わるぞ」

「そんなにすごいものだったのか!」

 ギルボウの言葉に驚く僕。
 そう言えば、僕もすっかりハーブが抜けているな。

「ナザルの場合は体を油が流れてるだろうが。そんなもん、どれだけ強力な毒や薬を流し込まれても簡単に包みこんで無効化しちまうだろうさ」

「いや、普通に血が流れてるんだが……?」

 失礼な。
 ……いや、でも油を吸収して怪我を直したりできるもんな……。
 血を失っても油で補給できる気がする。

 体は油でできているのか……?
 自分のことが全く分からなくなってきた。

 だが、これでマサラガラムが片付き、ついに残るはカレーコだけとなった。

 砂漠の王国へ向かい、黄金のハーブ、カレーコを手にする時が来たのだ。
 おともはどうしよう。
 コゲタと二人でいいか。

 そんな事を考えながら帰宅したら、コゲタが僕を見つけるなり、ぴょーんと飛び上がった。

「ご主人ー! ふしぎなによいがする!」

「分かる? マサラガラムの匂いなんだぞ。このままだとコゲタにはちょっと強すぎるから、今度薄めて作ってあげようね」

「ほんと!? たのしみー!」

 ぴょんぴょん跳ねて喜ぶコゲタ。
 手に石鹸がついているではないか。

「何をしてたの?」

「おせんたくのおてつだい!」

 どうやら、おかみさんと一緒に、井戸水でシーツのもみ洗いをしていたようだ。
 井戸水は冬でも一定の水温だから、暖かく作業ができるのだ。

 僕は宿の主人とおかみさんにも普段の礼をすべく、このマサラガラムを使って料理をしてあげたのだった。
 昨夜の残り物のスープが、寒いところに置いてあった。
 この季節は一番寒いところに放置しておけば、冷蔵庫と同じ効果がある。

 多少悪くなっていようと、それをどうにかするのがマサラガラム!

「ヤーッ!!」

 鍋に一掴み投下!
 ぐつぐつと煮込みながら、かき混ぜる。
 そうすると、漂ってくるだろう、独特の香りが……。

「ナザル! あんた一体何を作ってるんだい!? 薬膳鍋かい!?」

 薬膳というのはアーランでは一般的で、美味いものじゃない薬草をどうにか食えるようにしよう、という料理である。
 当然美味しくない。

 だが、マサラガラムをそこらの薬膳と同じにしてもらいたくはない。

「フフフ、味見をどうぞ」

「ええ……? 苦かったりしないのかい?」

「玄妙複雑な味です」

「難しい事を言うねえ……どれどれ……? おほー」

 おかみさんが目を丸くした。
 偏見は吹き飛んだことであろう。

 その後、スープカレーとなったマサラガラム入りスープを、宿の主人とおかみさんがガツガツ食べていたのだった。
 喜んでもらえて何よりだ。

 なお、コゲタ用はマサラガラム少なめ。

「ぴりぴりほっほってする!」

 それでも刺激的だったようで、一口食べるごとにコゲタは目をパチパチさせるのだった。

しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

【完結】テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット
ファンタジー
「君に今の時代に生まれ変わって欲しいんだ」 魔物の王を討伐した古き英雄グレリア・ファルトは死後、突然白い世界に呼び出され、神にそう言われてしまった。 彼は生まれ変わるという言葉に孫の言葉を思い出し、新しい人生を生きることを決意した。 遥か昔に生きていた世界がどう変わっているか、発展しているか期待をしながら700年後の時代に転生した彼を待ち受けていたのは……『英雄召喚』と呼ばれる魔法でやってきた異世界人の手によって破壊され発展した――変貌した世界だった。 歴史すら捻じ曲げられた世界で、グレリアは何を求め、知り……世界を生きるのだろうか? 己の心のままに生き、今を知るために、彼は再び歴史を紡ぐ。 そして……主人公はもう一人――『勇者』、『英雄』の定義すら薄くなった世界でそれらに憧れ、近づきたいと願う少年、セイル・シルドニアは学園での入学試験で一人の男と出会う。 そのことをきっかけにしてセイルは本当の意味で『勇者』というものを考え、『英雄』と呼ばれる存在になるためにもがき、苦しむことになるだろう。 例えどんな困難な道であっても、光が照らす道へと……己の力で進むと誓った、その限りを尽くして。 過去の英雄と現代の英雄(の卵)が交差し、歴史を作る! 異世界転生型アンチ異世界転生ファンタジー、ここに開幕! ――なろう・カクヨムでも連載中――

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

処理中です...