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76・冬の終わり
第230話 ブレインウォッシュ後は実際安全
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知識神自らによる引き抜きが行われ、めでたく官僚氏は知識神の神官になった。
神の手でのブレインウォッシュこえー。
で、なんと知識神神殿は僕が根城にしている宿屋の一階に設けられることになった!
宿の主人もおかみさんも、「神殿ということは国から補助が出るんだろ? ということは、うちはずっと食いっぱぐれがないってことだよ! だって一部屋常に埋まるんだから!」と大歓迎。
かくして一階の部屋が改造され、知識神の神殿兼、神官の家になり……。
「ナザル殿! 神が! 我が神がお呼びです!」
「うわーっ、朝から訪ねてくるなよ!!」
二人目の隣人となった神官氏に、モーニングコールをされるようになってしまったのだった。
さらに、飼い主氏とは別の部屋に騎士団の出張所が設けられ……。
神官氏を24時間体制でで監視している!
つまり、宿の部屋は全部埋まってしまった。
常駐するやつしかいない。
主人もおかみさんもホクホク顔なのは当たり前だろう。
「なんだなんだ、朝っぱらからうるさいぞ! また良からぬことを企んでいるのではないだろうな!?」
顔を出したのは騎士ボータブルだ。
今日は君の担当だったか。
神官氏が肩を竦める。
「私は今や知識神の忠実なるしもべ……。一時の気の迷いでフリーダスに従っていたのが誤りだったのだ。それはそうとナザル殿、ナザル殿!」
「分かった分かった」
「ご主人おそといく? コゲタもいくー!」
「待て待て、俺も行こう。仕事だからな」
「おや、皆さん揃ってお出かけかな? 私もご一緒しても?」
「アララもいくー! コゲタおはよー!」
「アララおはよー!」
一気に六人になってしまった。
というか、宿の住人勢揃いだぞ。
どやどやと降りてくると、ちょうどおかみさんが食事を用意してくれているところだった。
「みんなで出てきたのかい? 面倒がないからここで朝飯にしちまいなよ! ほら、コゲちゃんとアララちゃんのご飯もあるよー」
僕ら六人はそのまま朝食を始めるのだった。
「サンドイッチは肉と漬物をいっぺんに食べられるからいいなあ。おお、日々のスパイシーや旨味爆弾と付き合ってきた舌に、素朴な味わいが嬉しい……」
シンプルな、塩とビネガーだけの味付け。
これが美味いんだ。
以前は雑味の多いパンで、パッサパサだったはずなのだが。
いつの間にかパンがやたら美味しくなってしまったアーランなのだ。
四人で今日は何をするだの、知識神のお告げだの、騎士団の任務は夕方までだからそこから実家に帰るだの、そんな話をした。
サンドイッチを食べ終わり、おかみさんの特製野菜スープを飲む。
アーランにお出汁という概念が誕生し、このスープも本当に美味しくなった。
満腹した僕らはのろのろと知識神の神殿に向かった。
『遅いぞ!!』
なんと知識神御本人が真ん中に鎮座されているではないか!!
「なんで神様がフランクに居着いているんですか」
僕が尋ねると、神はふふんと得意げになった。
『今や、ノーザンス大陸は空前の美食ブーム。誰もが美食を愛し、その知識を求めている。あるいは自らの手で美味しいものを作ろうと、試行錯誤をしたりそのための知識を欲する。神にとっては今がボーナスタイムであろう』
「な、なるほど……」
『今まではこの大陸に、それらしい依代が少なかった。魔法使いどもは私を信仰していたが、それもごく弱い信仰だ。私が降り立つには頼りないものだった。だが、この男を私の依代として改造したので、私の懸念は晴れた! 素晴らしき才能を持つ我が神官がいれば、私はいつでもここに降り立つことができる』
「まさか……供物なしで手弁当で降りてきてらっしゃる?」
『いかにも。今日はナザルよ。お前にお告げをもたらそうと思ってな』
「いつも通り夢枕に立ってくださいよ」
『こうやってフランクに降りてこられるようになったのだ。たまにはこうやって動いてもよかろう』
僕が知識神と親しげに会話しているので、騎士ボータブルと飼い主氏がポカーンとなった。
「ナザル殿」
飼い主氏が恐る恐る聞いてくる。
「あの、この光り輝くお方は?」
「知識神様です」
「我が神です」
「うへー」
飼い主氏が跪いた。
ボータブルも平伏する。
神様を前にしてるんだから、そうなるだろうなあ。
信じている神が違ったとしても、この世界は多神教なのだ。
そして全ての神にはつながりがあるので、悪の神とされている神々以外には、こうやって最大限の敬意を払うものなのだ。
僕みたいに棒立ちで神様と雑談している方がおかしい。
「で、お告げというのは」
『ああ、それである。船がじきに出港準備を終える。お前の旅立ちの時だぞ』
「おっ、ついに!!」
『お前がおらぬ間、美食を守る使徒とするべく、私はこの男を神官にした。お前のように発展させることはできずとも、維持することはできよう』
「あっ、そんなお気遣いを……。どうもどうも」
『ここにノーザンス大陸最大の神殿を設けたので、私はお前を支援してやれるようになった。具体的には一日一回くらい質問に答えてやれる』
「強力なような、ささやかなような……」
『ナザルよ。新しいものを見つけ、またこのノーザンス大陸に広めよ。期待している』
神様から直々の期待を得て、いよいよ僕の船旅が始まりそうなのである。
神の手でのブレインウォッシュこえー。
で、なんと知識神神殿は僕が根城にしている宿屋の一階に設けられることになった!
宿の主人もおかみさんも、「神殿ということは国から補助が出るんだろ? ということは、うちはずっと食いっぱぐれがないってことだよ! だって一部屋常に埋まるんだから!」と大歓迎。
かくして一階の部屋が改造され、知識神の神殿兼、神官の家になり……。
「ナザル殿! 神が! 我が神がお呼びです!」
「うわーっ、朝から訪ねてくるなよ!!」
二人目の隣人となった神官氏に、モーニングコールをされるようになってしまったのだった。
さらに、飼い主氏とは別の部屋に騎士団の出張所が設けられ……。
神官氏を24時間体制でで監視している!
つまり、宿の部屋は全部埋まってしまった。
常駐するやつしかいない。
主人もおかみさんもホクホク顔なのは当たり前だろう。
「なんだなんだ、朝っぱらからうるさいぞ! また良からぬことを企んでいるのではないだろうな!?」
顔を出したのは騎士ボータブルだ。
今日は君の担当だったか。
神官氏が肩を竦める。
「私は今や知識神の忠実なるしもべ……。一時の気の迷いでフリーダスに従っていたのが誤りだったのだ。それはそうとナザル殿、ナザル殿!」
「分かった分かった」
「ご主人おそといく? コゲタもいくー!」
「待て待て、俺も行こう。仕事だからな」
「おや、皆さん揃ってお出かけかな? 私もご一緒しても?」
「アララもいくー! コゲタおはよー!」
「アララおはよー!」
一気に六人になってしまった。
というか、宿の住人勢揃いだぞ。
どやどやと降りてくると、ちょうどおかみさんが食事を用意してくれているところだった。
「みんなで出てきたのかい? 面倒がないからここで朝飯にしちまいなよ! ほら、コゲちゃんとアララちゃんのご飯もあるよー」
僕ら六人はそのまま朝食を始めるのだった。
「サンドイッチは肉と漬物をいっぺんに食べられるからいいなあ。おお、日々のスパイシーや旨味爆弾と付き合ってきた舌に、素朴な味わいが嬉しい……」
シンプルな、塩とビネガーだけの味付け。
これが美味いんだ。
以前は雑味の多いパンで、パッサパサだったはずなのだが。
いつの間にかパンがやたら美味しくなってしまったアーランなのだ。
四人で今日は何をするだの、知識神のお告げだの、騎士団の任務は夕方までだからそこから実家に帰るだの、そんな話をした。
サンドイッチを食べ終わり、おかみさんの特製野菜スープを飲む。
アーランにお出汁という概念が誕生し、このスープも本当に美味しくなった。
満腹した僕らはのろのろと知識神の神殿に向かった。
『遅いぞ!!』
なんと知識神御本人が真ん中に鎮座されているではないか!!
「なんで神様がフランクに居着いているんですか」
僕が尋ねると、神はふふんと得意げになった。
『今や、ノーザンス大陸は空前の美食ブーム。誰もが美食を愛し、その知識を求めている。あるいは自らの手で美味しいものを作ろうと、試行錯誤をしたりそのための知識を欲する。神にとっては今がボーナスタイムであろう』
「な、なるほど……」
『今まではこの大陸に、それらしい依代が少なかった。魔法使いどもは私を信仰していたが、それもごく弱い信仰だ。私が降り立つには頼りないものだった。だが、この男を私の依代として改造したので、私の懸念は晴れた! 素晴らしき才能を持つ我が神官がいれば、私はいつでもここに降り立つことができる』
「まさか……供物なしで手弁当で降りてきてらっしゃる?」
『いかにも。今日はナザルよ。お前にお告げをもたらそうと思ってな』
「いつも通り夢枕に立ってくださいよ」
『こうやってフランクに降りてこられるようになったのだ。たまにはこうやって動いてもよかろう』
僕が知識神と親しげに会話しているので、騎士ボータブルと飼い主氏がポカーンとなった。
「ナザル殿」
飼い主氏が恐る恐る聞いてくる。
「あの、この光り輝くお方は?」
「知識神様です」
「我が神です」
「うへー」
飼い主氏が跪いた。
ボータブルも平伏する。
神様を前にしてるんだから、そうなるだろうなあ。
信じている神が違ったとしても、この世界は多神教なのだ。
そして全ての神にはつながりがあるので、悪の神とされている神々以外には、こうやって最大限の敬意を払うものなのだ。
僕みたいに棒立ちで神様と雑談している方がおかしい。
「で、お告げというのは」
『ああ、それである。船がじきに出港準備を終える。お前の旅立ちの時だぞ』
「おっ、ついに!!」
『お前がおらぬ間、美食を守る使徒とするべく、私はこの男を神官にした。お前のように発展させることはできずとも、維持することはできよう』
「あっ、そんなお気遣いを……。どうもどうも」
『ここにノーザンス大陸最大の神殿を設けたので、私はお前を支援してやれるようになった。具体的には一日一回くらい質問に答えてやれる』
「強力なような、ささやかなような……」
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神様から直々の期待を得て、いよいよ僕の船旅が始まりそうなのである。
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