俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき

文字の大きさ
229 / 337
76・冬の終わり

第229話 僕は楽がしたいだけなんだ

しおりを挟む
 後ろから衝撃波やら、召喚されたアザービーストやらがどんどん出てくる。
 これを油で滑らせたり、油で滑らせたり、油で滑らせたりしてあしらいつつ、僕は役所の奥を目指した。

「あいつ!! くそっ! 良くわからない油みたいなの一辺倒でフリーダスの奇跡を次々にいなしやがって! だがあいつが向かう先には倉庫しかないはず……ま、まさか!! 泥棒か!?」

 発想が真面目だなー!!
 君、フリーダスと縁を切ってやり直したほうがいいんじゃないか!?
 いや、でも神の奇跡とここまで相性がいい逸材はなかなかいないよな……。

「どうして倉庫に向かう! 盗むつもりか! 命がけで役所の資産を!?」

「なんでフリーダスを信仰してるのにそういうの気にするの」

「フリーダス様はどういう思想を持っていても自由だし、並行して別の神を信仰してもいいのだ」

「自由すぎでしょ」

 僕は会話しつつ、油を伸ばして魔晶石の在処を探っていた。
 あったあった!
 厳重に金庫みたいなところに保管されて……はいなくて、その前に敷かれたゴザの上に、山になって積み上がっていた。

 なんというずさんな管理か!
 なお、魔晶石は魔法を使う際の魔力ともなるのだが、同時にお高い宝石の代わりとして取引に用いられたりもするのだ。
 当人の魔力を魔晶石にすれば、無から資産を作れて便利だね。

 まあ、込められた魔力の量が金額になるから、才能がない人は大した資産を得られなくなるのだが。
 そして魔晶石化の技術は、魔導書庫を有している王国直属の魔導士連盟とか言うのが独占している。
 ということで、魔晶石はなかなか出回らず、その価値を維持しているわけだ。

 今日はですね、これを全部油にします。

「はあ、はあ、はあ、見つけたぞ泥棒め!! 魔晶石から離れろ! それは税金を滞納した魔導士連盟の長から徴収した延滞税なんだ!!」

「なるほどー。僕は君を鎮圧に来たんだが、これを使おうと思う」

「なに? 何を言って……。まさかお前、魔法使い……!? クソっ! フリーダスの奇跡よ! こいつを粉々に吹き飛ばす衝撃の奇跡を我に!! フォースイクスプロージョン!!」

「はははははははは遅い遅い遅い! 既に魔晶石は! 油になった!!」

 強烈な衝撃波が官僚から巻き起こり、倉庫ごと吹き飛ばす……はずだった。
 それは僕が生み出した油の津波に飲まれ、一瞬で掻き消える。
 そして官僚は油に押し流されていった。

「ウグワーッ!! な、なんだこれは! 立てない! モノにも掴まれない! ぬるぬるして……ウグワーッ!」

 体勢が安定せず、口を開けば油が入ってこようとする。
 奇跡を祈ることもできない。
 官僚氏は押し流されて、見事役所の外に放り出されてしまったのだった。

 ついでに外で待っていた騎士も油に巻き込まれた。

「ウグワーッ」

「あっ、いかんいかん! 魔力に戻れ!」

 僕が油の力を解くと、それは全て魔力になり、周囲に飛び散っていった。
 これが魔晶石を油に変えることの弱点だな。
 魔力に戻したら、大気に溶けていってしまう。

 さらば魔晶石。
 油津波、楽しかったよ。

 僕の油津波は大変平和的な技であり、うつ伏せになって油で溺死しない限りは、何にぶつかってもぬるりと滑るし、摩擦ゼロだからあらゆるものが滑るだけで全くぶつからないし、絶対に怪我をするということがない。
 脱力していれば、油に浮いてプカプカいどうするだけで済むのだ。

「お前がフリーダス信者か」

 パリスン閣下が官僚氏を尋問している。
 切っ先がピタッと口元に当たっているので、何か喋ったら頭をまっぷたつであろう。
 怖い怖い。

「至高神神殿からお前を捕らえておくように依頼されているが……我々の顔に泥を塗った者を活かしておく理由もない」

「ひっ、ひぃー」

 危うし、官僚氏!
 いやあ、あれほど奇跡を使いこなしながら理性を持っている人物、惜しいなあ。
 道を違えなければ今頃、それなりの地位にいただろうに。

 いやいや、あれほどの実力者を活かせずにいた役所も悪い。
 これは不幸な行き違いだったのだ。
 社会にはよくある。

 僕が無情なる社会に嘆きを感じていると……。

『ナザル、ナザルよ』

「あっ、もう昼間っから出てくるようになりましたね知識神様」

 僕が突然神と交信を始めたので、騎士たちがぎょっとした。
 で、この知識神の声はビータにも聞こえたらしく、

「師匠に神様が話しかけています!!」と援護してくれる。

『ナザルよ。あの男を我が神官にしよう。私がブレインウォッシュする』

「ええ……。本当にやるんですか知識神様」

『やる。そこの騎士よ、どくのだ。ツアーッ!!』

 知識神の腕が虚空から生じて、パリスン閣下をデコピンで弾いた。

「ウグワーッ!? な、なんだこれは! 私が反応することもできぬ……!!」

『イッツ・ソー・イージー。知識神たるもの、君のあらゆる意味での死角も熟知しているのだよ……。どれどれ。彼からフリーダスとのつながりをぽいっと外して……』

 今、眼の前で奇跡が起こっている!
 春が見せた幻かも知れない。

 フリーダス信者だった才能ある官僚が、あっという間にブレインウォッシュされ……知識神の敬虔なる神官になったのである!
 まあ、知識神と相性はいいと思うな。

 それに、僕がこの国に知識神の教えを広めたところで、確かに神官は足りなかったわけだし。

「犯罪をやっちゃった感じですけど、そこはどうします、知識神様」

『司法取引と行こう。至高神はああ見えて大雑把だ。私から神殿に直接供物を送り込めば天啓を下し、この男を許すだろう』

「面子を潰された形の騎士団はどうします?」

『知識神神殿が生み出す利益を優先的に流すことにしよう。任せておけ、私は政治でも一流の神なんだ』

「師匠が神様とフランクな会話をしてます……!!」

「恐るべき人物だなナザル殿」

 いや、この状況は流石に僕も予想外だったんだが!
 かくして、春のイベントみたいなものはもうちょっと続くのである。

しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット
ファンタジー
「君に今の時代に生まれ変わって欲しいんだ」 魔物の王を討伐した古き英雄グレリア・ファルトは死後、突然白い世界に呼び出され、神にそう言われてしまった。 彼は生まれ変わるという言葉に孫の言葉を思い出し、新しい人生を生きることを決意した。 遥か昔に生きていた世界がどう変わっているか、発展しているか期待をしながら700年後の時代に転生した彼を待ち受けていたのは……『英雄召喚』と呼ばれる魔法でやってきた異世界人の手によって破壊され発展した――変貌した世界だった。 歴史すら捻じ曲げられた世界で、グレリアは何を求め、知り……世界を生きるのだろうか? 己の心のままに生き、今を知るために、彼は再び歴史を紡ぐ。 そして……主人公はもう一人――『勇者』、『英雄』の定義すら薄くなった世界でそれらに憧れ、近づきたいと願う少年、セイル・シルドニアは学園での入学試験で一人の男と出会う。 そのことをきっかけにしてセイルは本当の意味で『勇者』というものを考え、『英雄』と呼ばれる存在になるためにもがき、苦しむことになるだろう。 例えどんな困難な道であっても、光が照らす道へと……己の力で進むと誓った、その限りを尽くして。 過去の英雄と現代の英雄(の卵)が交差し、歴史を作る! 異世界転生型アンチ異世界転生ファンタジー、ここに開幕! ――なろう・カクヨムでも連載中――

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

おっさんが雑魚キャラに転生するも、いっぱしを目指す。

お茶飲み人の愛自好吾(あいじこうご)
ファンタジー
どこにでも居るような冴えないおっさん、山田 太郎(独身)は、かつてやり込んでいたファンタジーシミュレーションRPGの世界に転生する運びとなった。しかし、ゲーム序盤で倒される山賊の下っ端キャラだった。女神様から貰ったスキルと、かつてやり込んでいたゲーム知識を使って、生き延びようと決心するおっさん。はたして、モンスター蔓延る異世界で生き延びられるだろうか?ザコキャラ奮闘ファンタジーここに開幕。

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ
ファンタジー
衝撃を受けた途端、俺は美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生していた!? これは、自分が制作にかかわっていた美少女ゲームの中ボス悪役令息に転生した主人公が、報われないサブヒロインを救うために人生を賭ける話。 日常あり、恋愛あり、ダンジョンあり、戦闘あり、料理ありの何でもありの話となっています。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

処理中です...