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76・冬の終わり
第228話 今年はちょっと早めにアレが出た
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「なんだって!? フリーダス信者が出た!? 今年は早かったなー」
冒険者ギルドに顔を出したら、そんな話を聞いて驚く僕なのだった。
フリーダスとは自由の神……と言っているが、つまりはあらゆる常識や良識や社会性に縛られず、好き勝手にやっちゃえよ!という無軌道の神だ。
その信者なんてろくでもないやつしかいないし、若者が流行り病みたいに掛かる。
で……どうやらその信者は捕らえられると更正施設に送られ、バリッバリの至高神バルガイヤー信者になって帰って来る……。
……マッチポンプなのではないか?
僕は訝しく思った。
「あまりそれを公言されると教会が敵に回りますので……」
のっぽでメガネの受付嬢が勘弁してください、って顔になった。
そうか……勘弁してあげよう。
「ナザルさんはもうすぐ船で旅立つと伺っていますが……」
「ああ。だけどフリーダス信者はあれだろ? 命を使い切る勢いで魔法を連発する難敵じゃないか。節制とか制御とか、フリーダス神は一切教えないでマックスパワーの加護をいきなり叩き込むそうだし」
「ええ。ですから信者一人に対しカッパー級なら四名で当たるように先日ルールが改定されまして」
「ようやく!」
まあちなみに、フリーダスの加護を受けるにも才能っていうのがあるらしくて。
僕が戦ったフリーダス信者は、才能が無い方ばっかりだった。
今回は才能があるのが来そうだ。
「ええ、危険度はとびきりと言われています。優秀な官僚だったのですがオーバーワークで神の声を聞いてしまいまして」
「あー。春になるときに書類仕事多いから!」
「他人を信用しなくて一人で抱え込むタイプだったらしく……」
「あー、あかんやつ。自業自得……人間関係なんて円滑に保てば保つほど仕事が楽になるんだぞ。まあ……僕はその人間関係のケアで過労で死んだ気がするが……」
「ナザルさん?」
「なんでもない。面倒な仕事だろ? 僕が引き受けるよ。まあ春の風物詩だし、いっちょこの仕事で春を感じてくる」
「ナザルさんなら安心ですねえ……。どうしてゴールド級にならないのですか? 試験なしでパスできるのに」
「これ以上義務を背負い込みたくないからです!!」
ということで、春恒例のイベントをちょっと早めに引き受けた。
官僚は貴族街にある役所に籠もり、サボタージュを行っているらしい。
まあ、サボタージュしてるだけなんだから無害と言えば無害。
ただし、鎮圧に向かった騎士が数名戦闘不能にさせられた。
これを聞いたフォーエイブル男爵パリスンは、「私が出よう!!」とか言ったらしいのだが、みんなで必死に止めたらしい。
アーラン最強戦力の男が動くと、事態は片付くが役所が瓦礫になること請け合いだからだろう。
春先の忙しさの中、仕事がさらに滞ってしまう!!
それは避けたい!
それにその官僚は150%死ぬ!
バルガイヤー神殿としてはそれは避けたいところだと見た。
なぜバルガイヤーなのかは公然の秘密だ。
ということで、冒険者ギルドの腕利きを募集していたわけだ。
「来ました」
「おお、ナザル」
「げえっ、パリスン閣下!!」
なんと、鋭い目の男パリスン閣下がその場に待機していたのである。
「君が来たなら安心だろう。私が行きたかったが……ぬぐぐぐぐ」
「堪えてください閣下。閣下が出たら被害が甚大になります。じゃあ、僕が行くので……」
「おお、ナザルではないかー! 頑張るのですわよー!」
あっ、久々のソフィエラお嬢様!
「どうしてドレスの上に武装を?」
「正装ですわよ!」
違うと思うなあ!
「ナザル殿、ファイトですぞー!!」
「師匠、がんばって! 僕の力も通じなかったんです!」
「ボータブルにビータ! ビータのチャームが通じないのは正気を失ってるからよ。世界の何もかもがどうでもよくなっていて、恐らく三大欲求もおかしくなってる」
「師匠、詳しいです! 流石です!」
「他人事ではないのでな……」
騎士団にも応援されつつ、僕はぶらぶらと役所に入っていくのだった。
「団長! な、なぜあの男は手ぶらなのですか!?」
「彼はギフト使いだ。今は美食の使徒、美食の伝道師として広く名を知られる男だが……」
「えっ!? で、ではあの男……いや、あの方がアーランの食文化を一変させた偉人、ナザルさん!?」
「あの男はそちらの二つ名に価値を感じると思うが、私が睨むところ、あの男の戦闘力はゴールド級の中でも群を抜いているぞ。ああ、やり合ってみたい……」
背中から殺気を感じる。
やめて欲しいなあ!
ちなみにこの仕事をやるに当たって、役所に保管された魔晶石……魔力を肩代わりしてくれるクリスタルを勝手に使ってもいいことになっている。
いやあ楽ちんな仕事だ。
僕が役所の扉を潜ったら、
「入ってくるなと言ったはずだ! 俺は! サボりたいんだ!! うおおおおおお!! 神よ!!」
僕は体の表面を油で覆った。
油に何か力みたいなもの当たった気がする。
「防がれた!? 負傷……ウーンズの奇跡が!!」
「ははは、魔法が来ると分かってたら油を張ればそこに魔法を当てるだけなので楽なのだ。ちょっと魔晶石回収してくるから待っててね」
足元に油を敷き、スルスルーっと滑っていく。
「ま、待て! くそっ、なんだあいつは!? 歩いていないのに猛烈な速度で遠ざかっていく! あっ、鍵の掛かった扉が勝手に開いた!?」
「油で鍵の仕掛けをスポーンとふっ飛ばしたんだ。えー、魔晶石魔晶石」
「せ、窃盗だー!! いや、俺は自由になったんだからそんなものどうでもいい、いやいや……」
こいつ、まだ良心が残ってるぞ!
冒険者ギルドに顔を出したら、そんな話を聞いて驚く僕なのだった。
フリーダスとは自由の神……と言っているが、つまりはあらゆる常識や良識や社会性に縛られず、好き勝手にやっちゃえよ!という無軌道の神だ。
その信者なんてろくでもないやつしかいないし、若者が流行り病みたいに掛かる。
で……どうやらその信者は捕らえられると更正施設に送られ、バリッバリの至高神バルガイヤー信者になって帰って来る……。
……マッチポンプなのではないか?
僕は訝しく思った。
「あまりそれを公言されると教会が敵に回りますので……」
のっぽでメガネの受付嬢が勘弁してください、って顔になった。
そうか……勘弁してあげよう。
「ナザルさんはもうすぐ船で旅立つと伺っていますが……」
「ああ。だけどフリーダス信者はあれだろ? 命を使い切る勢いで魔法を連発する難敵じゃないか。節制とか制御とか、フリーダス神は一切教えないでマックスパワーの加護をいきなり叩き込むそうだし」
「ええ。ですから信者一人に対しカッパー級なら四名で当たるように先日ルールが改定されまして」
「ようやく!」
まあちなみに、フリーダスの加護を受けるにも才能っていうのがあるらしくて。
僕が戦ったフリーダス信者は、才能が無い方ばっかりだった。
今回は才能があるのが来そうだ。
「ええ、危険度はとびきりと言われています。優秀な官僚だったのですがオーバーワークで神の声を聞いてしまいまして」
「あー。春になるときに書類仕事多いから!」
「他人を信用しなくて一人で抱え込むタイプだったらしく……」
「あー、あかんやつ。自業自得……人間関係なんて円滑に保てば保つほど仕事が楽になるんだぞ。まあ……僕はその人間関係のケアで過労で死んだ気がするが……」
「ナザルさん?」
「なんでもない。面倒な仕事だろ? 僕が引き受けるよ。まあ春の風物詩だし、いっちょこの仕事で春を感じてくる」
「ナザルさんなら安心ですねえ……。どうしてゴールド級にならないのですか? 試験なしでパスできるのに」
「これ以上義務を背負い込みたくないからです!!」
ということで、春恒例のイベントをちょっと早めに引き受けた。
官僚は貴族街にある役所に籠もり、サボタージュを行っているらしい。
まあ、サボタージュしてるだけなんだから無害と言えば無害。
ただし、鎮圧に向かった騎士が数名戦闘不能にさせられた。
これを聞いたフォーエイブル男爵パリスンは、「私が出よう!!」とか言ったらしいのだが、みんなで必死に止めたらしい。
アーラン最強戦力の男が動くと、事態は片付くが役所が瓦礫になること請け合いだからだろう。
春先の忙しさの中、仕事がさらに滞ってしまう!!
それは避けたい!
それにその官僚は150%死ぬ!
バルガイヤー神殿としてはそれは避けたいところだと見た。
なぜバルガイヤーなのかは公然の秘密だ。
ということで、冒険者ギルドの腕利きを募集していたわけだ。
「来ました」
「おお、ナザル」
「げえっ、パリスン閣下!!」
なんと、鋭い目の男パリスン閣下がその場に待機していたのである。
「君が来たなら安心だろう。私が行きたかったが……ぬぐぐぐぐ」
「堪えてください閣下。閣下が出たら被害が甚大になります。じゃあ、僕が行くので……」
「おお、ナザルではないかー! 頑張るのですわよー!」
あっ、久々のソフィエラお嬢様!
「どうしてドレスの上に武装を?」
「正装ですわよ!」
違うと思うなあ!
「ナザル殿、ファイトですぞー!!」
「師匠、がんばって! 僕の力も通じなかったんです!」
「ボータブルにビータ! ビータのチャームが通じないのは正気を失ってるからよ。世界の何もかもがどうでもよくなっていて、恐らく三大欲求もおかしくなってる」
「師匠、詳しいです! 流石です!」
「他人事ではないのでな……」
騎士団にも応援されつつ、僕はぶらぶらと役所に入っていくのだった。
「団長! な、なぜあの男は手ぶらなのですか!?」
「彼はギフト使いだ。今は美食の使徒、美食の伝道師として広く名を知られる男だが……」
「えっ!? で、ではあの男……いや、あの方がアーランの食文化を一変させた偉人、ナザルさん!?」
「あの男はそちらの二つ名に価値を感じると思うが、私が睨むところ、あの男の戦闘力はゴールド級の中でも群を抜いているぞ。ああ、やり合ってみたい……」
背中から殺気を感じる。
やめて欲しいなあ!
ちなみにこの仕事をやるに当たって、役所に保管された魔晶石……魔力を肩代わりしてくれるクリスタルを勝手に使ってもいいことになっている。
いやあ楽ちんな仕事だ。
僕が役所の扉を潜ったら、
「入ってくるなと言ったはずだ! 俺は! サボりたいんだ!! うおおおおおお!! 神よ!!」
僕は体の表面を油で覆った。
油に何か力みたいなもの当たった気がする。
「防がれた!? 負傷……ウーンズの奇跡が!!」
「ははは、魔法が来ると分かってたら油を張ればそこに魔法を当てるだけなので楽なのだ。ちょっと魔晶石回収してくるから待っててね」
足元に油を敷き、スルスルーっと滑っていく。
「ま、待て! くそっ、なんだあいつは!? 歩いていないのに猛烈な速度で遠ざかっていく! あっ、鍵の掛かった扉が勝手に開いた!?」
「油で鍵の仕掛けをスポーンとふっ飛ばしたんだ。えー、魔晶石魔晶石」
「せ、窃盗だー!! いや、俺は自由になったんだからそんなものどうでもいい、いやいや……」
こいつ、まだ良心が残ってるぞ!
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