俺は異世界の潤滑油!~油使いに転生した俺は、冒険者ギルドの人間関係だってヌルッヌルに改善しちゃいます~

あけちともあき

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78・波高き船の旅

第237話 ウナギ……? 穴子か……?

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 シーサーペントの尾びれをゲットしたぞ!
 尾びれとは言っても、いわゆる尻尾部分であるので、やたらと肉が大量にくっついている。

 シーサーペントは謎の再生力があり、ぶつ切りにしても頭が残っていれば全身が再生してしまうらしい。
 無限機関で食べ続けられるやつじゃん!

「あっ、ナザルさんまた新しい食材を! あー、シーサーペントですね。こいつ、スープにしても食べごたえが結構あっていいんですよねえ。まあ、スープフィッシュを知ってしまうとカッスカスに感じるかも……」

「こいつをな、ソテーする」

「そうこなくっちゃ!!」

 飛び上がって喜ぶ調理担当なのだった。

「それで、これはどうやって料理を?」

「いやあ、俺も料理は担当してるだけで、プロのシェフほどじゃないんですけど」

 調理担当の船員氏は、出刃包丁を取り出す。
 普段はこいつをしっかり研ぎ、鍋を洗ったりして管理するのが彼の役割なんだそうだ。
 なので、包丁はよく切れそうな輝きを放っている。

「ヌルヌルしてますけど、実は細かい鱗があってですね。皮のなかにあって、ジャリジャリするんで食べられません」

「ふむふむ」

「こうやって捌いて……。で、肉にもあるヌメリは熱して取った方が美味いんですが、水が貴重なんでヌメヌメのまま食べますね」

「へえー。じゃあヌメヌメが美味いの?」

「無味ですよ。でも、スープにとろみがついてなんか腹に溜まりますね」

 それは重要だ。
 じゃあヌメリをつけたままでスープにしてもらおう。

「では捌いてもらったので、僕は僕でこの皮を……」

「皮を!? じゃりじゃりしてとても食えたものじゃ……」

「揚げる!」

「あーっ! そ、その手がーっ!!」

 サラダ油を作り出し、熱したそこに細かく切った皮を投入!
 シュワーっと揚がる、シーサーペントの皮。

 ちょっと塩を振ったら……パリパリの煎餅状になったのだった。

「美味い!」

「あっ、凄い軽快な歯ざわり! 香ばしくて美味しい! これは酒が進むなあ……」

「素揚げなのに白い衣がついたみたいになってる。これ、ヌメリが油で変化したんだな……?」

 今この瞬間、この場でしか作れない料理ができてしまったな。
 シーサーペントの皮煎餅だ。

「肉も焼こう……。思ったよりも筋肉質だな。脂の部分と筋肉が分かれてる。これはなんというか……ウナギというよりは穴子……」

 じゅうじゅうと油で焼いたものを、ちょっと食べてみる。
 おっ、食べ応え!
 ウナギのように口の中でとろける味わいではない。

 もっと肉が自己主張してくる。
 むしゃむしゃと食べるタイプの魚。

「あー、油で焼くと美味いですねえ! ちょっとパサッとした肉に油が染み込んで美味い! 脂は脂で、別に食べられる感じですかね?」

「油で炒めたら溶け込んでしまったので……。ハーブと塩を加えてソースにしてみた」

「な、なんと!! どれどれ……!? あっ、美味い……。しみじみ美味い……」

 そうこうしている間にスープも煮えて参りました。
 いただいてみると……。

 ああ、塩味~。
 優しいお味という名の薄味だ。
 で、脂が溶け込んでいるからまあまあこってり。

 肉は……なるほどねえ、スープに出汁を吸われているのかちょっとボソボソしている。
 歯ごたえはそれなりにあるんだが、うーむ。

「もっと美味しくならないもんか。だが、出汁になってるわけだから出し殻になるのは仕方ないよなあ……」

 難しいところだ。
 捨てちゃうのがもったいないし、パサパサでもタンパク源だから食べなきゃだけど。

「このヌメヌメや脂と分離しちまうのがいけないのではないか。……そうだ」

 僕は肉の層と脂の層をまとめて串に刺し、焼いた。
 その後、これをスープに投入してみる。

 これなら……分離しない!
 一度焼くと結合し、同時に楽しめるようになるようだ。

「これだ! ひと手間だが、美味しくなるぞ……」

「あー、なるほどなあ! 焼いてから煮込むのか! 全然気付かなかった……。焼いたあとのシーサーペント、スープにしても美味いですねえ。香ばしい風味になってるし、こりゃあ飽きないなあ」

 ま、めったに穫れるものじゃないんですけどね!
 と笑う調理係氏なのだった。

 その後、船員たちがどやどやと食堂にやってきて、焼きシーサーペントのスープとシーサーペントのソテーは一瞬で食べ尽くされたのだった。
 いやあ素晴らしい食欲!
 リップルたちの分をちょっとだけ残しておいて正解だったな。

 なお、コゲタとマキシフにはシーサーペントの背びれを焼いたやつが大好評だった。
 パリパリサクサクで、しゃぶっていると美味しいらしい。

 犬の人たちの味覚だなあ。

「わしは実はシーサーペントは丸呑みしづらくて苦手なんですよ」

「へえー! ダイフク氏、やっぱりカエルの人だからヘビがダメなのか。ウナギか穴子ではあるけど」

「そう言うものかもしれませんなあ。とにかくヌメヌメが喉に絡んで……ということでわしは、いつもの魚を呑んでおきます」

 やっぱり丸呑みなんだな。

「そうそう、ナザル殿! もうすぐ島が見えてきますぞ! いい風に恵まれましてな。いつもよりも順調に航路を進んでおります」

「なんだって!」

 僕は思わず甲板に飛び出していた。
 時刻は夕方。
 太陽が水平線に沈んでいくところだ。

 まだ、どこにも島影はなかったが……。
 その遥か先に、目指す島があると考えると、ワクワクしてくるじゃないか。

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