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98・吟遊詩人、遺跡へ行く
第297話 なんでも僕の歌にするのか
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ドロテアさんが目覚めた場所までやって来た。
ここは第一層にある研究区画。
古代魔法王国時代の技術で作られた、カプセルやら機材やらが眠っている場所で、遺跡入口にもほど近い。
ということで、王国に所属する魔法使いたちが研究所を作って、日夜魔法王国時代の技術を蘇らせるべく励んでいるのだ。
「どうです。何か発展しましたか」
「あっ、こりゃあ美食伯。お仕事ご苦労さまです。ええとですね、こんな物を作れるようになりました」
「おおーっ! ペットボトル!! 凄い」
魔法使いたちの日々の研鑽が、この1年半くらいの歳月をかけてペットボトルの生産を可能にしたのである。
材料は遺跡で採取できる謎の草。
なんと100%植物性の土に還るペットボトルなのだ。
ちょっと半透明で緑色してるけどな……。
手触りもザラザラしてるが、中に液体が入っているのが分かる。
ブレッドはこの話を聞きながら、きょろきょろ、そわそわ。
「どうした?」
「歌うぞ!」
「あっ、ちょっとま」
「おお~! 神秘の園よー! 古代の王国、古きロマンに満ちた場所で人は過去を探し続ける~!! そこに降り立った美食伯ナザル一人~! 恋しき女の生まれたカプセルを求めさまよう~」
「なんでも僕に繋げるんじゃない。というか恋しきってドロテアさんのことか!? お前、その言い方だと僕がギルマスに命を狙われるだろ!!」
洒落にならないやつだ。
油を使って彼がリュートを奏でる指をすべらせ、演奏をストップさせた。
よしよし。
研究していた魔法使いたちがぞろぞろ集まってきた。
「歌が聞こえた」「慰問かな?」「ばっかここがまるで監獄だって言ってるようなもんだろ」「でも研究ノルマこなさないと地上に戻れねえ」
魔法使いたちにも事情がありそうだな。
話を聞いてみたら、彼らが魔法を教わるためには莫大なお金が掛かるらしい。
だが、それを払えるような金持ちだけが魔法使いを目指すのではない。
才能はあるが金がない。
そんな魔法使いたちは、この地の底で数年間研究に勤しみ借金を返すのだそうだ。
そんな悲しい努力から生まれたのがこのペットボトルだったのか!
「ちなみに手間が掛るので、一日に一本しか作れないんだ」
「大変だなあ……」
「ナザル! ナザル! カプセル見せて! ドロテアさんの出てきたカプセル! 美女の生まれ故郷!」
「食欲の他は性欲で動いてるようなやつだな! 仕方ない、行くか」
ついでに歩きながら、ブレッドには歌ってもらう。
これが魔法使いたちには好評で、みんなやんややんなと盛り上がる。
あまりに娯楽に飢えすぎている。
第一層がこんなことになっていたとはな。
さて、ドロテアさんが出てきたというカプセルだ。
カプセルとは言うが、僕が見たところ冬眠装置みたいだと思う。
太いチューブが何本も遺跡の床に繋がっており、その床板は乱暴に剥がされている。
魔法使いたちが研究したのだ。
「これは結局、遺跡の魔力を変換してこの中に入っている命を仮死状態にし、長くもたせる効果があると分かっています」
「ははあ、やっぱり冬眠装置だったんだ。じゃあドロテアさんは古代魔法王国の頃に生きていた人なんだなあ」
「そうなりますね。恐らく人間ですらない可能性が高いのですが」
「それは分かってる」
寿命がない不老の人だからね。
ハーフエルフでもセイレーンでもない。
魔法生物?
「魔法生物というものは一般的には寿命が短いんです。数年で死にます。それを遺跡が回収し、再び新たな魔法生物に再構成する。だから、彼女がもし魔法生物だとすると……。あの不老というのは本来とは真逆の特性なんですよ」
「ほえー、そこまで分かってたんだ!」
「実は、下町のギルドマスターの依頼でそちらの調査も行われておりまして。彼女だけが不老で、何もかもにおいていかれて独りになるのが忍びないと。人間に戻してやりたいということで」
「はー、切ない愛の話だった」
「みどもが思うに、そのまま待っていればナザルはドロテアさんをゲットできるのでは? 第二夫人」
「おいやめろ」
「ウグワーッ!! アイアンクローは勘弁~!!」
言っていいことと悪いことがあるぞ。
詳しい話はあえて語るまい。
今は、ギルマスの愛にじーんとしているのが良い。
「おおー! 愛を狙う男ナザル~! 永遠の貴婦人は時の流れの中独り~! だが油使いはぬるりと彼女の心に入り込む~!」
「うおおおブレッドやめろーっ! 変な噂が広がるだろうがーっ!!」
「はっはっはっはっは! みどもはどんどんインスピレーションが湧いてくるぞーっ!! 本当にナザルの取材をしてて良かったー!!」
とりあえずブレッドを追いかけて研究所を飛び出すので、魔法使いたちに挨拶をしておく。
「では、僕はこれで! みんな頑張ってくれ! ペットボトルが量産できるようになったら、これはちょっとした革命が起きるぞ。具体的には誰もが飲み物を軽い容器で携帯できる時代がやってくる!」
魔法使いたちの代表の肩をバンバン叩き、サムズ・アップする。
「なんと!? それは楽しみです! がんばりますよ! そうしたら美食伯がこのペットボトルとやらを広めてくださるんでしょう?」
「任せてくれ! 活用方法は幾らでもあるから。じゃ!」
僕は足元に油を張ると、超高速でブレッドを追いかけるのだった。
あいつめ、畑に飛び込んでいったぞ!
待て、待つのだ吟遊詩人~!!
ここは第一層にある研究区画。
古代魔法王国時代の技術で作られた、カプセルやら機材やらが眠っている場所で、遺跡入口にもほど近い。
ということで、王国に所属する魔法使いたちが研究所を作って、日夜魔法王国時代の技術を蘇らせるべく励んでいるのだ。
「どうです。何か発展しましたか」
「あっ、こりゃあ美食伯。お仕事ご苦労さまです。ええとですね、こんな物を作れるようになりました」
「おおーっ! ペットボトル!! 凄い」
魔法使いたちの日々の研鑽が、この1年半くらいの歳月をかけてペットボトルの生産を可能にしたのである。
材料は遺跡で採取できる謎の草。
なんと100%植物性の土に還るペットボトルなのだ。
ちょっと半透明で緑色してるけどな……。
手触りもザラザラしてるが、中に液体が入っているのが分かる。
ブレッドはこの話を聞きながら、きょろきょろ、そわそわ。
「どうした?」
「歌うぞ!」
「あっ、ちょっとま」
「おお~! 神秘の園よー! 古代の王国、古きロマンに満ちた場所で人は過去を探し続ける~!! そこに降り立った美食伯ナザル一人~! 恋しき女の生まれたカプセルを求めさまよう~」
「なんでも僕に繋げるんじゃない。というか恋しきってドロテアさんのことか!? お前、その言い方だと僕がギルマスに命を狙われるだろ!!」
洒落にならないやつだ。
油を使って彼がリュートを奏でる指をすべらせ、演奏をストップさせた。
よしよし。
研究していた魔法使いたちがぞろぞろ集まってきた。
「歌が聞こえた」「慰問かな?」「ばっかここがまるで監獄だって言ってるようなもんだろ」「でも研究ノルマこなさないと地上に戻れねえ」
魔法使いたちにも事情がありそうだな。
話を聞いてみたら、彼らが魔法を教わるためには莫大なお金が掛かるらしい。
だが、それを払えるような金持ちだけが魔法使いを目指すのではない。
才能はあるが金がない。
そんな魔法使いたちは、この地の底で数年間研究に勤しみ借金を返すのだそうだ。
そんな悲しい努力から生まれたのがこのペットボトルだったのか!
「ちなみに手間が掛るので、一日に一本しか作れないんだ」
「大変だなあ……」
「ナザル! ナザル! カプセル見せて! ドロテアさんの出てきたカプセル! 美女の生まれ故郷!」
「食欲の他は性欲で動いてるようなやつだな! 仕方ない、行くか」
ついでに歩きながら、ブレッドには歌ってもらう。
これが魔法使いたちには好評で、みんなやんややんなと盛り上がる。
あまりに娯楽に飢えすぎている。
第一層がこんなことになっていたとはな。
さて、ドロテアさんが出てきたというカプセルだ。
カプセルとは言うが、僕が見たところ冬眠装置みたいだと思う。
太いチューブが何本も遺跡の床に繋がっており、その床板は乱暴に剥がされている。
魔法使いたちが研究したのだ。
「これは結局、遺跡の魔力を変換してこの中に入っている命を仮死状態にし、長くもたせる効果があると分かっています」
「ははあ、やっぱり冬眠装置だったんだ。じゃあドロテアさんは古代魔法王国の頃に生きていた人なんだなあ」
「そうなりますね。恐らく人間ですらない可能性が高いのですが」
「それは分かってる」
寿命がない不老の人だからね。
ハーフエルフでもセイレーンでもない。
魔法生物?
「魔法生物というものは一般的には寿命が短いんです。数年で死にます。それを遺跡が回収し、再び新たな魔法生物に再構成する。だから、彼女がもし魔法生物だとすると……。あの不老というのは本来とは真逆の特性なんですよ」
「ほえー、そこまで分かってたんだ!」
「実は、下町のギルドマスターの依頼でそちらの調査も行われておりまして。彼女だけが不老で、何もかもにおいていかれて独りになるのが忍びないと。人間に戻してやりたいということで」
「はー、切ない愛の話だった」
「みどもが思うに、そのまま待っていればナザルはドロテアさんをゲットできるのでは? 第二夫人」
「おいやめろ」
「ウグワーッ!! アイアンクローは勘弁~!!」
言っていいことと悪いことがあるぞ。
詳しい話はあえて語るまい。
今は、ギルマスの愛にじーんとしているのが良い。
「おおー! 愛を狙う男ナザル~! 永遠の貴婦人は時の流れの中独り~! だが油使いはぬるりと彼女の心に入り込む~!」
「うおおおブレッドやめろーっ! 変な噂が広がるだろうがーっ!!」
「はっはっはっはっは! みどもはどんどんインスピレーションが湧いてくるぞーっ!! 本当にナザルの取材をしてて良かったー!!」
とりあえずブレッドを追いかけて研究所を飛び出すので、魔法使いたちに挨拶をしておく。
「では、僕はこれで! みんな頑張ってくれ! ペットボトルが量産できるようになったら、これはちょっとした革命が起きるぞ。具体的には誰もが飲み物を軽い容器で携帯できる時代がやってくる!」
魔法使いたちの代表の肩をバンバン叩き、サムズ・アップする。
「なんと!? それは楽しみです! がんばりますよ! そうしたら美食伯がこのペットボトルとやらを広めてくださるんでしょう?」
「任せてくれ! 活用方法は幾らでもあるから。じゃ!」
僕は足元に油を張ると、超高速でブレッドを追いかけるのだった。
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待て、待つのだ吟遊詩人~!!
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