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101・コゲタ周りのドタバタ
第310話 彼の名はアゲパン
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「き、君は一体なんだーっ」
僕がビシッと指さしたので、柴犬コボルドはハッとしたようだ。
くそーっ、ハッとした顔がかわいい。
彼はサッと、呆然とするコゲタから離れた。
豆柴ではなく、柴犬のコボルドだからコゲタより一回り背が高い。
110センチちょっとあるだろうか。
彼はペコっと僕に向けて一礼した。
「もうしおくれました! わがなはアゲパン! ちしきしんさまのおこえをきき、しんかんとなったものです!」
「な、なにーっ!! アゲパン!?」
正直な話、キュンと来た。
なんてかわいい名前なんだ。
僕が柴犬を飼っていたら、黒豆柴ならコゲタ、柴犬ならアゲパンと名付けるだろう。
くそーっ、悔しいが、この男……かなり僕に対して好感触だぞ。
だが、僕は心を鬼にして憤怒の形相を作る……。
いや、ちょっと緩みかけているかもしれない。
「だが……いきなり僕の娘であるコゲタにプロポーズとは感心しないな……。結婚とは家と家の繋がり……。コボルドだとどうだっけ?」
「われらはむれをつくるので、ほんらいはむれのなかでのけっこんです。しかしわれのように、ぶんめいにてきおうしたコボルドはこじんになるので」
「なるほど、それは難しいな」
「はい。しょぞくしたそしきがわれわれのむれとなります。つまり、われにとってのむれは、このしんでん」
「おーっ!!」
思わず僕は感心してしまった。
僕の馴染み深い知識神の神殿に所属する、新たな神官がこのアゲパンなのだ。
だとすると、ぽっと出でありながら僕と馴染が深い関係のコボルドということになる……。
「神官氏、アゲパンはいつの間に」
「実は彼、アーランの外で行き倒れていましてね。ハムソンが発見したので私が抱えて来たのです。この国、人間の入国はそれなりに厳しいですが、コボルドの入国はゆるゆるですので」
「そうだったの!?」
コボルドオールスルーだったか。
どうりであちこちでコボルドを見かけるようになっているはずだ。
「神殿に寝かせていたら、まあこの神殿は大変神に近い場所にあるので、神の声を聞いたようで。突然起き上がり、知識神に帰依しました」
「なるほどー……。一応、神の声を聞くには才能が必要なんだが、彼には才能があったというわけか」
「そのようです。われはかみによばれ、なんだかすごくおおきなきのまえで、しんかんとしてのちからをやる、といわれたのです」
「選ばれし者じゃん!!」
いきなりフリーダスから力を与えられた、神官氏と近い存在だぞ。
つまり神官としての天才みたいなものであろう。
「だが!! 僕は! いきなりプロポーズしてきた君を! 認める気はない!!」
「なるほどつまりこれは……あいのしれん!!」
「ほえー」
コゲタがポカーンとしている。
「ご主人、このひとはなにをゆってるの?」
「あっ、理解してない!」
「あっ、おわかりいただけてない!!」
安心する僕と、ショックを受けるアゲパンなのだった。
「まだコゲタは、恋愛を理解するには早いようだ……」
「ひとにかわれたこぼるどは、ちょっとおさないかんじになるといいますからね。われはひとのじゅうしゃをしておりましたが、つかえていちねんでしゅじんがなくなりまして」
「ははあ、苦労したんだな。それでアーランに流れ着いたと」
「おまつりのあとということで、なにかしごとでもあるかとおもい……」
遠い目をするアゲパン。
彼は世間の波に揉まれ、老成したということらしい。
「そこで知識神に見出されたならそれも運命なんだろう。だが! コゲタはやらん! いや、コゲタの幸福を願っているのでいい人がいれば結婚させてもいいが……。まだ君の人柄というか犬柄が分からんからな。いや、なんかいいやつっぽいなということは分かるが、分かってはいるのだが分かるわけにはいかん!!」
「うおーっ」
おののくアゲパン。
苦笑する神官氏。
「まあ親心というやつです。これは仕方ない。アゲパン、あなたがコゲタ嬢を見初めたのなら、まずは友達から始め、少しずつナザルさんの信頼を勝ち取りましょう」
「なるほど、わかりました! ボルドスキー美食伯ナザル様!!」
「うおっ、知的な喋り方になった!」
「凄く疲れますが気合を入れると短時間だけとても賢くなれます! 我はあなたに認められ、コゲタさんに好きになってもらうため、これから努力していこうと思います! よろしくお願いします!!」
カーっと気合の入った声をあげるアゲパンなのだった。
「ほう……!! その意気やよし!! では君が本当にコゲタに相応しいかどうかを見極めさせてもらうとしよう! あと、コゲタはまだ恋愛とか分からないから、そこから教えていこうな」
「あっはい」
僕もアゲパンも、コゲタがその辺を全然分かってないことを知らなかった。
これは問題である。
いきなりコゲタにプロポーズしてきた彼と共闘するのは業腹ではあるが……。
いい人オーラと苦労人オーラを発する、もこもこフワフワでまさにアゲパン様のカラーをしたこの男……。
じっくりと時間を掛けて見極めてやろう。
「んー? ご主人、なんかうなってる。おなかいたい?」
コゲタが僕をわしわしと肉球で撫でてくるのだった。
あー、いい子だねえー。
「やさしみ……」
アゲパン、惚れ直したみたいな顔で見るんじゃありません!
僕がビシッと指さしたので、柴犬コボルドはハッとしたようだ。
くそーっ、ハッとした顔がかわいい。
彼はサッと、呆然とするコゲタから離れた。
豆柴ではなく、柴犬のコボルドだからコゲタより一回り背が高い。
110センチちょっとあるだろうか。
彼はペコっと僕に向けて一礼した。
「もうしおくれました! わがなはアゲパン! ちしきしんさまのおこえをきき、しんかんとなったものです!」
「な、なにーっ!! アゲパン!?」
正直な話、キュンと来た。
なんてかわいい名前なんだ。
僕が柴犬を飼っていたら、黒豆柴ならコゲタ、柴犬ならアゲパンと名付けるだろう。
くそーっ、悔しいが、この男……かなり僕に対して好感触だぞ。
だが、僕は心を鬼にして憤怒の形相を作る……。
いや、ちょっと緩みかけているかもしれない。
「だが……いきなり僕の娘であるコゲタにプロポーズとは感心しないな……。結婚とは家と家の繋がり……。コボルドだとどうだっけ?」
「われらはむれをつくるので、ほんらいはむれのなかでのけっこんです。しかしわれのように、ぶんめいにてきおうしたコボルドはこじんになるので」
「なるほど、それは難しいな」
「はい。しょぞくしたそしきがわれわれのむれとなります。つまり、われにとってのむれは、このしんでん」
「おーっ!!」
思わず僕は感心してしまった。
僕の馴染み深い知識神の神殿に所属する、新たな神官がこのアゲパンなのだ。
だとすると、ぽっと出でありながら僕と馴染が深い関係のコボルドということになる……。
「神官氏、アゲパンはいつの間に」
「実は彼、アーランの外で行き倒れていましてね。ハムソンが発見したので私が抱えて来たのです。この国、人間の入国はそれなりに厳しいですが、コボルドの入国はゆるゆるですので」
「そうだったの!?」
コボルドオールスルーだったか。
どうりであちこちでコボルドを見かけるようになっているはずだ。
「神殿に寝かせていたら、まあこの神殿は大変神に近い場所にあるので、神の声を聞いたようで。突然起き上がり、知識神に帰依しました」
「なるほどー……。一応、神の声を聞くには才能が必要なんだが、彼には才能があったというわけか」
「そのようです。われはかみによばれ、なんだかすごくおおきなきのまえで、しんかんとしてのちからをやる、といわれたのです」
「選ばれし者じゃん!!」
いきなりフリーダスから力を与えられた、神官氏と近い存在だぞ。
つまり神官としての天才みたいなものであろう。
「だが!! 僕は! いきなりプロポーズしてきた君を! 認める気はない!!」
「なるほどつまりこれは……あいのしれん!!」
「ほえー」
コゲタがポカーンとしている。
「ご主人、このひとはなにをゆってるの?」
「あっ、理解してない!」
「あっ、おわかりいただけてない!!」
安心する僕と、ショックを受けるアゲパンなのだった。
「まだコゲタは、恋愛を理解するには早いようだ……」
「ひとにかわれたこぼるどは、ちょっとおさないかんじになるといいますからね。われはひとのじゅうしゃをしておりましたが、つかえていちねんでしゅじんがなくなりまして」
「ははあ、苦労したんだな。それでアーランに流れ着いたと」
「おまつりのあとということで、なにかしごとでもあるかとおもい……」
遠い目をするアゲパン。
彼は世間の波に揉まれ、老成したということらしい。
「そこで知識神に見出されたならそれも運命なんだろう。だが! コゲタはやらん! いや、コゲタの幸福を願っているのでいい人がいれば結婚させてもいいが……。まだ君の人柄というか犬柄が分からんからな。いや、なんかいいやつっぽいなということは分かるが、分かってはいるのだが分かるわけにはいかん!!」
「うおーっ」
おののくアゲパン。
苦笑する神官氏。
「まあ親心というやつです。これは仕方ない。アゲパン、あなたがコゲタ嬢を見初めたのなら、まずは友達から始め、少しずつナザルさんの信頼を勝ち取りましょう」
「なるほど、わかりました! ボルドスキー美食伯ナザル様!!」
「うおっ、知的な喋り方になった!」
「凄く疲れますが気合を入れると短時間だけとても賢くなれます! 我はあなたに認められ、コゲタさんに好きになってもらうため、これから努力していこうと思います! よろしくお願いします!!」
カーっと気合の入った声をあげるアゲパンなのだった。
「ほう……!! その意気やよし!! では君が本当にコゲタに相応しいかどうかを見極めさせてもらうとしよう! あと、コゲタはまだ恋愛とか分からないから、そこから教えていこうな」
「あっはい」
僕もアゲパンも、コゲタがその辺を全然分かってないことを知らなかった。
これは問題である。
いきなりコゲタにプロポーズしてきた彼と共闘するのは業腹ではあるが……。
いい人オーラと苦労人オーラを発する、もこもこフワフワでまさにアゲパン様のカラーをしたこの男……。
じっくりと時間を掛けて見極めてやろう。
「んー? ご主人、なんかうなってる。おなかいたい?」
コゲタが僕をわしわしと肉球で撫でてくるのだった。
あー、いい子だねえー。
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