記憶と魔力を婚約者に奪われた「ないない尽くしの聖女」は、ワケあり王子様のお気に入り~王族とは知らずにそばにいた彼から なぜか溺愛されています
瑞貴◆後悔してる/手違いの妻2巻発売!
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第3章 わたしを捨てたのはあなた⁉
あなたは……わたしを捨てた人①
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今朝の食堂は、随分と騒がしかった。
兵士のみんなが、ジュディ特製スープを気に入り褒めそやすものだから、休まる暇がなかったのだ。
大半の兵士たちが食事を終え静かになった頃に、ナグワ隊長が食堂に顔を出した。
昨日は昼も夜も食堂に現れなかったのだ。やっと来たわねと思うわたしは、自分から元気に声をかけるつもりでいる。
昨日逃げたことを、一言物申さなければ気持ちが晴れないもの。
「おはようございます。今日は随分と遅かったですね」
「はは。昨日の夜はあまり眠れなかったもので、寝坊をしてしまいました」
「ふふっ。昨日はあの後、どんな楽しいことをしてきたんですか?」
「いや……あっ。そ、それはですね――。立ち直れなくて、部屋で寝込んでおりました」
嘘をつけ。さっきは「眠れなかった」と言っただろうに。ナグワ隊長のあまりにも酷い動揺っぷりを目の当たりにし、これは触れたらまずいやつだと察する。
おそらくだが、隊長は隣の領地まで行き、娼館にでも行ってきたのだろう。
娼館宿は、このカステン辺境伯領にはないと、エレーナから聞いた。
非番申請までしたナグワ隊長の予定がそれでも、止めはしない。ただ、わたしのパジャマ代を置いていけばよいだけ。
そうしてくれたら服屋で情けない声を出さなくて済んだのにと、むすっとする。
すると、ナグワ隊長が肩をすくめ、恐縮しきりに頭を下げた。
「昨日は途中で帰ってしまって、申し訳ありませんでした。昨日の埋め合わせと言ってはなんですが、ジュディちゃんの靴でも買いに行きませんか? 相当痛んでいるので、新しいものがあった方がいいと思いまして」
「本当ですか! 行きます! 今日こそは絶対に買ってくださいね」
魔猪狩りに同行する条件が、わたしの必需品を買ってもらうことだから権利はある。
ナグワ隊長の財布を頼りにしていたのに、結局、アンドレに買ってもらったのだから。
そのうえ、アンドレが抱く必要のない責任を感じ、魔力なし、記憶なし、お金なしの、ないない尽くしを、このまま引き受けてくれようとしている。
「では、昨日と同じ時間に出発しましょう」
「分かったわ。そうそう、今日の夜は魔猪の肉でバーベキューをするから、遊びに行っちゃ駄目ですよ」
「ああ、先日の魔猪ですね。ジュディちゃんのおかげで、我々第一部隊は回収だけで終わりましたから。今日は準備から手伝わせてください」
「まあ、頼もしいわね。そういえば、あれから魔物の侵入はないんですか?」
「幸い、あの日だけでした。魔虫の目撃情報もパッタリとなくなって、以前同様の結界に戻っているようですよ」
「よかったわ。それなら安心して、夜は外で食べられるわね」
な~んだと、ほっとする。
カステン辺境伯領で暮らし始めて早々。魔猪が侵入してきたのが気がかりだったのだ。
もしものために、ガラス玉を布団の中に持ち込んでいたのだが、朝になると、決まって割れてしまうのだ。悲しいことに。
決して、わたしの寝相が悪いから割れた訳じゃないと信じたい。脆い素材がいけないのだ。
今は売るほどあるからいいけど、すぐに割れるなら、枕元にも置いておけないじゃない。ちょうどそう考えていた。
この先。絶対に会う機会はないと承知だが、魔力の結晶を作っているドゥメリー公爵家のご令嬢に会う機会があれば、その辺りを改善してもらうように願い出たいところである。
まあ、そんな高貴なお方へ、まかり間違っても声をかける機会はないけどね。不毛な想像は止めておこう。
まあ、結界が安定しているなら、眠る時はガラス玉を机に置いもいいかもしれない。うん、今晩からはそうしようと思う。
タダで貰えるとはいえ、割れてばかりでは、流石にもったいないし。
◇◇◇
食堂に来る兵士たちも、すっかりいなくなり、厨房の中の皿洗いも綺麗に終わった。
待ち人は来ないし、そろそろ、わたしも朝食にしようと思ったその時だ。物腰の柔らかい声が響いた。
「あっ、いたいた。兵士たちは、みんな食事が終わったみたいですね。ジュディはまだ食べてないでしょう。ご一緒してもいいですか?」
優しい笑顔を見せるアンドレが、厨房と食堂を繋ぐカウンターから覗き込む。
「うん、そうしましょう。アンドレが来るのを待っていたのよ」
形よく焼けたオムレツに、濃い色の緑のサラダ、オニオンスープと小さなパン。それが今朝のメニューだ。
彼が来る前にあらかじめトレーに並べていたのに、来ないから片付けるところだった。最後に駆け込んで来てくれてよかった。
そのトレーをカウンターに二つ乗せると、何も言わずにアンドレがテーブルに運んでくれる。
わたしも、急いで厨房を抜け彼を追いかけた。
既に貸し切りとなった食堂である。適当に目に付いた位置に彼が腰掛け、向かいの席に遠慮なく座る。
そうすれば彼が「いただきますね」と発し、わたしを見つめて微笑んだ。
それに合わせるように、「いただきましょう」と伝えると、二人同時に食事を始めた。
すると、スープを一口食べたアンドレから、とても怪訝な顔で質問された。
「ねぇ。兵士たちはこの朝食を口にして、何か言ってこなかったですか?」
兵士のみんなが、ジュディ特製スープを気に入り褒めそやすものだから、休まる暇がなかったのだ。
大半の兵士たちが食事を終え静かになった頃に、ナグワ隊長が食堂に顔を出した。
昨日は昼も夜も食堂に現れなかったのだ。やっと来たわねと思うわたしは、自分から元気に声をかけるつもりでいる。
昨日逃げたことを、一言物申さなければ気持ちが晴れないもの。
「おはようございます。今日は随分と遅かったですね」
「はは。昨日の夜はあまり眠れなかったもので、寝坊をしてしまいました」
「ふふっ。昨日はあの後、どんな楽しいことをしてきたんですか?」
「いや……あっ。そ、それはですね――。立ち直れなくて、部屋で寝込んでおりました」
嘘をつけ。さっきは「眠れなかった」と言っただろうに。ナグワ隊長のあまりにも酷い動揺っぷりを目の当たりにし、これは触れたらまずいやつだと察する。
おそらくだが、隊長は隣の領地まで行き、娼館にでも行ってきたのだろう。
娼館宿は、このカステン辺境伯領にはないと、エレーナから聞いた。
非番申請までしたナグワ隊長の予定がそれでも、止めはしない。ただ、わたしのパジャマ代を置いていけばよいだけ。
そうしてくれたら服屋で情けない声を出さなくて済んだのにと、むすっとする。
すると、ナグワ隊長が肩をすくめ、恐縮しきりに頭を下げた。
「昨日は途中で帰ってしまって、申し訳ありませんでした。昨日の埋め合わせと言ってはなんですが、ジュディちゃんの靴でも買いに行きませんか? 相当痛んでいるので、新しいものがあった方がいいと思いまして」
「本当ですか! 行きます! 今日こそは絶対に買ってくださいね」
魔猪狩りに同行する条件が、わたしの必需品を買ってもらうことだから権利はある。
ナグワ隊長の財布を頼りにしていたのに、結局、アンドレに買ってもらったのだから。
そのうえ、アンドレが抱く必要のない責任を感じ、魔力なし、記憶なし、お金なしの、ないない尽くしを、このまま引き受けてくれようとしている。
「では、昨日と同じ時間に出発しましょう」
「分かったわ。そうそう、今日の夜は魔猪の肉でバーベキューをするから、遊びに行っちゃ駄目ですよ」
「ああ、先日の魔猪ですね。ジュディちゃんのおかげで、我々第一部隊は回収だけで終わりましたから。今日は準備から手伝わせてください」
「まあ、頼もしいわね。そういえば、あれから魔物の侵入はないんですか?」
「幸い、あの日だけでした。魔虫の目撃情報もパッタリとなくなって、以前同様の結界に戻っているようですよ」
「よかったわ。それなら安心して、夜は外で食べられるわね」
な~んだと、ほっとする。
カステン辺境伯領で暮らし始めて早々。魔猪が侵入してきたのが気がかりだったのだ。
もしものために、ガラス玉を布団の中に持ち込んでいたのだが、朝になると、決まって割れてしまうのだ。悲しいことに。
決して、わたしの寝相が悪いから割れた訳じゃないと信じたい。脆い素材がいけないのだ。
今は売るほどあるからいいけど、すぐに割れるなら、枕元にも置いておけないじゃない。ちょうどそう考えていた。
この先。絶対に会う機会はないと承知だが、魔力の結晶を作っているドゥメリー公爵家のご令嬢に会う機会があれば、その辺りを改善してもらうように願い出たいところである。
まあ、そんな高貴なお方へ、まかり間違っても声をかける機会はないけどね。不毛な想像は止めておこう。
まあ、結界が安定しているなら、眠る時はガラス玉を机に置いもいいかもしれない。うん、今晩からはそうしようと思う。
タダで貰えるとはいえ、割れてばかりでは、流石にもったいないし。
◇◇◇
食堂に来る兵士たちも、すっかりいなくなり、厨房の中の皿洗いも綺麗に終わった。
待ち人は来ないし、そろそろ、わたしも朝食にしようと思ったその時だ。物腰の柔らかい声が響いた。
「あっ、いたいた。兵士たちは、みんな食事が終わったみたいですね。ジュディはまだ食べてないでしょう。ご一緒してもいいですか?」
優しい笑顔を見せるアンドレが、厨房と食堂を繋ぐカウンターから覗き込む。
「うん、そうしましょう。アンドレが来るのを待っていたのよ」
形よく焼けたオムレツに、濃い色の緑のサラダ、オニオンスープと小さなパン。それが今朝のメニューだ。
彼が来る前にあらかじめトレーに並べていたのに、来ないから片付けるところだった。最後に駆け込んで来てくれてよかった。
そのトレーをカウンターに二つ乗せると、何も言わずにアンドレがテーブルに運んでくれる。
わたしも、急いで厨房を抜け彼を追いかけた。
既に貸し切りとなった食堂である。適当に目に付いた位置に彼が腰掛け、向かいの席に遠慮なく座る。
そうすれば彼が「いただきますね」と発し、わたしを見つめて微笑んだ。
それに合わせるように、「いただきましょう」と伝えると、二人同時に食事を始めた。
すると、スープを一口食べたアンドレから、とても怪訝な顔で質問された。
「ねぇ。兵士たちはこの朝食を口にして、何か言ってこなかったですか?」
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