2 / 7
2
しおりを挟む
前世に関しては断片的な記憶しかないが、私は貴族だった。貴族令嬢として何不自由なく生きていたある日、父が騙されて投資に失敗し没落することになった。そんな時、手を差し伸べてくれたのが彼だった。これからどうやって生きていけばいいのか不安な日々の中、私を支えてくれた彼を好きになるのに時間は掛からなかった。
「この丘で愛を誓い合った恋人は来世でもまた巡り合えるんだって」
かつての私が暮らしていた土地には、恋愛に関する言い伝えで有名な丘があった。そこに彼と訪れて想いを伝えあった。自分の状況など何1つ知らなかった私は、彼の気持ちを疑いなんてしなかった。来世もまた彼と出会いたいと願った上に、まさかそれが叶ってしまうとは。
今世で彼と会うのは初めてだ。結婚の口約束をするくらいだから両家の関係が悪いことはない。命の危険はないだろう。だがそんな因縁の相手とは関わらない方がいいに決まっている。そもそもこれは正式なお見合いでも何でもない。話してみて合わなかったと言えば、この話はなかったことにできるはずだ。
今まで異性と上手く交流を持てなかった私が、初対面の男性相手に上手くふるまえるとも思えない。きっと話も盛り上がらずに終わるだろう。今日偶然再会してしまったが、それは言い伝えの効果でしかない。それぞれ別の人生を歩んでいこう。
「また俺と会ってもらえますか」
「はい?」
「君と結婚を前提に付き合いたい」
別れ際に告げられた言葉は予想外のものだった。一体私の何を気に入ったというのだろう。…もしかすると両家の長年放置された話題を終わらせるために?前世の彼も自分の幸せを捨ててでも復讐に生きようとしていた。生まれ変わっても根っこの性格は変わらないのかもしれない。
「家同士のただの口約束ですから、律儀に守ろうとしなくても大丈夫ですよ」
「家は関係ない。これは俺の意思です」
「私たち今日初めて会ったんですよ?」
「君のことをもっと知りたくなった」
「…大したものじゃないですよ」
「それを判断するのは俺です」
何故こんなに食いついてくるの。前世の復讐心が、生まれ変わったことで私への執着へと変貌してしまったのだろうか。あの丘での誓いが変な作用をしている?今も昔も魔法なんてものは存在しないはずだ。ただの観光名所としての謳い文句ではなかったのか。愛を誓った恋人同士の来世なんて当時の私に知りようがない。
「王都にはもっと素敵な人がたくさんいるんじゃないですか。実はもうお付き合いしている人がいたり…」
「お互い恋人がいないから今日会うことになったはずだ。すぐに結論を出す必要はない。どうせ振るならもう少し俺のことを知ってからにしてくれ」
あなたのことなんて知りたくないです。そう伝えたらこれで終わりにできるだろう。だが初対面の人間に、今日限りで会わなくなる人に酷いことは言いたくない。私のことはさっさと忘れてほしい。諦めてもらうには何と言えばいいだろう。素敵な人、恋人―――そうだ。いることにしてしまえばいい。
「私、結婚を約束した相手がいるんです」
「この丘で愛を誓い合った恋人は来世でもまた巡り合えるんだって」
かつての私が暮らしていた土地には、恋愛に関する言い伝えで有名な丘があった。そこに彼と訪れて想いを伝えあった。自分の状況など何1つ知らなかった私は、彼の気持ちを疑いなんてしなかった。来世もまた彼と出会いたいと願った上に、まさかそれが叶ってしまうとは。
今世で彼と会うのは初めてだ。結婚の口約束をするくらいだから両家の関係が悪いことはない。命の危険はないだろう。だがそんな因縁の相手とは関わらない方がいいに決まっている。そもそもこれは正式なお見合いでも何でもない。話してみて合わなかったと言えば、この話はなかったことにできるはずだ。
今まで異性と上手く交流を持てなかった私が、初対面の男性相手に上手くふるまえるとも思えない。きっと話も盛り上がらずに終わるだろう。今日偶然再会してしまったが、それは言い伝えの効果でしかない。それぞれ別の人生を歩んでいこう。
「また俺と会ってもらえますか」
「はい?」
「君と結婚を前提に付き合いたい」
別れ際に告げられた言葉は予想外のものだった。一体私の何を気に入ったというのだろう。…もしかすると両家の長年放置された話題を終わらせるために?前世の彼も自分の幸せを捨ててでも復讐に生きようとしていた。生まれ変わっても根っこの性格は変わらないのかもしれない。
「家同士のただの口約束ですから、律儀に守ろうとしなくても大丈夫ですよ」
「家は関係ない。これは俺の意思です」
「私たち今日初めて会ったんですよ?」
「君のことをもっと知りたくなった」
「…大したものじゃないですよ」
「それを判断するのは俺です」
何故こんなに食いついてくるの。前世の復讐心が、生まれ変わったことで私への執着へと変貌してしまったのだろうか。あの丘での誓いが変な作用をしている?今も昔も魔法なんてものは存在しないはずだ。ただの観光名所としての謳い文句ではなかったのか。愛を誓った恋人同士の来世なんて当時の私に知りようがない。
「王都にはもっと素敵な人がたくさんいるんじゃないですか。実はもうお付き合いしている人がいたり…」
「お互い恋人がいないから今日会うことになったはずだ。すぐに結論を出す必要はない。どうせ振るならもう少し俺のことを知ってからにしてくれ」
あなたのことなんて知りたくないです。そう伝えたらこれで終わりにできるだろう。だが初対面の人間に、今日限りで会わなくなる人に酷いことは言いたくない。私のことはさっさと忘れてほしい。諦めてもらうには何と言えばいいだろう。素敵な人、恋人―――そうだ。いることにしてしまえばいい。
「私、結婚を約束した相手がいるんです」
13
あなたにおすすめの小説
凍雪の約束
苺迷音
恋愛
政略として嫁ぐことが決まっている令嬢・キャローナと、従者として主を守り抜くことが全てだった青年・クリフォード。
降りしきる雪の中、彼女が差し出した右手。彼はその手を取り、守り続けてきた忠誠と義務の境界を自ら踏み越える。
そして、雪は命の音を奪っていった。
※ご覧いただけましたらとても嬉しいです。よろしくお願いいたします。
collage
優未
恋愛
好きになった人は、父の罪を暴くために近付いてきただけだった。
国家反逆罪を犯した父と共に処刑された主人公だが、気が付くと彼と出会う前に戻っていた。
1度目となるべく違う行動を取ろうと動き出す主人公の前に現れたのは…?
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
記憶を無くした、悪役令嬢マリーの奇跡の愛
三色団子
恋愛
豪奢な天蓋付きベッドの中だった。薬品の匂いと、微かに薔薇の香りが混ざり合う、慣れない空間。
「……ここは?」
か細く漏れた声は、まるで他人のもののようだった。喉が渇いてたまらない。
顔を上げようとすると、ずきりとした痛みが後頭部を襲い、思わず呻く。その拍子に、自分の指先に視線が落ちた。驚くほどきめ細やかで、手入れの行き届いた指。まるで象牙細工のように完璧だが、酷く見覚えがない。
私は一体、誰なのだろう?
王子様の花嫁選抜
ひづき
恋愛
王妃の意向で花嫁の選抜会を開くことになった。
花嫁候補の一人に選ばれた他国の王女フェリシアは、王太子を見て一年前の邂逅を思い出す。
花嫁に選ばれたくないな、と、フェリシアは思った。
能ある妃は身分を隠す
赤羽夕夜
恋愛
セラス・フィーは異国で勉学に励む為に、学園に通っていた。――がその卒業パーティーの日のことだった。
言われもない罪でコンペーニュ王国第三王子、アレッシオから婚約破棄を大体的に告げられる。
全てにおいて「身に覚えのない」セラスは、反論をするが、大衆を前に恥を掻かせ、利益を得ようとしか思っていないアレッシオにどうするべきかと、考えているとセラスの前に現れたのは――。
『恋心を凍らせる薬を飲みました』 - 残りの学園生活、どうぞご自由にお遊びください、婚約者様
恋せよ恋
恋愛
愛されることを諦めた。だから、私は心を凍らせた。
不誠実な婚約者・ユリアンの冷遇に耐えかねたヤスミンは、
伝説の魔女の元を訪れ、恋心を消し去る「氷の薬」を飲む。
感情を捨て、完璧な「人形」となった彼女を前に、
ユリアンは初めて己の罪と執着に狂い始める。
「お願いだ、前のように僕を愛して泣いてくれ!」
足元に跪き、涙を流して乞う男に、ヤスミンは冷酷に微笑む。
「愛?……あいにく、そのような無駄な感情は捨てましたわ」
一度凍りついた心は、二度と溶けない。
後悔にのたうち回る男と、心を凍らせた冷徹な公爵夫人の、
終わりのない贖罪の記録。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!
手作りお菓子をゴミ箱に捨てられた私は、自棄を起こしてとんでもない相手と婚約したのですが、私も含めたみんな変になっていたようです
珠宮さくら
恋愛
アンゼリカ・クリットの生まれた国には、不思議な習慣があった。だから、アンゼリカは必死になって頑張って馴染もうとした。
でも、アンゼリカではそれが難しすぎた。それでも、頑張り続けた結果、みんなに喜ばれる才能を開花させたはずなのにどうにもおかしな方向に突き進むことになった。
加えて好きになった人が最低野郎だとわかり、自棄を起こして婚約した子息も最低だったりとアンゼリカの周りは、最悪が溢れていたようだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる