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「僕とリーンが恋人かぁ」
「巻き込むつもりはなかったの。ごめんなさい」
「会う前は試しに付き合ってみるのもいいかも~なんて言ってなかった?」
「なんとなく…あるじゃない。会ってみたら何か違うかなって」
「聞いた限りだと君もいい印象を持っているように思うけどね」
「とりあえずこの話は断りたかったの」
幼馴染のフィリップは呆れた顔をしつつ、私の話に耳を傾けている。結婚を約束した相手がいると伝えれば終わると思った話は、そうはいかなかった。恋人の存在を告げた時の彼の反応を思い出す。
「誰だ」
「え?」
「君の恋人のことだ。ご両親が知らないということは正式な約束ではないだろう。俺は諦めない。君の婚約者は俺だ」
「正式でないのは私たちの関係も一緒です。そもそもあなたとは婚約していません」
相手の名前を告げるまで続きそうなやりとりに思わずフィリップの名前を出してしまった。だって他に関わりのある男の人なんていないのだから。思いつく人が幼馴染しかいなかったのだ。フィリップのあずかり知らぬところで巻き込んだ言い訳を脳内で繰り返す。
あれだけお断りの文言を並べたのに、諦めてくれなかった彼がいけないのだ。意外としつこい性格の持ち主なのだろうか。恋人がいると聞いても挫けず、一度会わせろとまで言われるだなんて思わないじゃないか。幼馴染の関係値を生かして、今日の為に必死で”結婚の約束をした恋人”の設定を作り上げた。
「君がリーンの恋人のロクシー君か」
「フィリップ・ロクシーと申します」
「ゾーエ・カネーシオと申します。王都で弁護士をしている」
ぎりぎりまで2人で打ち合わせをしていたところで、カネーシオが到着した。一体どんな話をするのか。想定問答集は作ったが、何を聞かれるかは分からない。
「少し前から2人の様子を見させてもらっていた」
「え」
「幼馴染というだけあって本当に仲が良さそうだ」
「もちろん、将来を誓った仲ですもの」
「…君たちの仲を裂こうという気はないが、結婚していない以上は俺にもアプローチする権利だけは欲しい。今日はその許可をもらいにきた」
「そう簡単に僕たちの絆は揺らぎませんよ」
「もちろん大事なのはリーンの気持ちだ。君が選んだ決定に俺は従うよ」
私とフィリップのことについて根掘り葉掘り聞かれるのかと思いきや、話はあっという間に終わった。本当にただ顔を見たかっただけのようだ。「次は王都で会おう。案内するよ」と言って去っていった。
「リーンってカネーシオさんのこと好きだよね」
「何言ってるの」
「表情とか態度がさ。今もだけど君、顔が真っ赤だよ」
「……」
強引なように見えて必ず私の考えを尊重してくれるところ、ぐいぐい来ているようで私の反応をうかがうように少し不安げな表情を浮かべているところ。彼は誠実で、少し不器用なのだ。前世であんなことがあっても私は今でも彼のことが好きだ。
だからこそ、私に囚われていてほしくない。
私と関わらずに幸せな一生を過ごしてほしい。前世で私が死んだ後はどうだったのだろう。復讐を果たして晴れ晴れとして気持ちで過ごすことができただろうか。確認する術がないのがもどかしい。
「フィリップ、今日はありがとう。恋人のふりといっても、別に何かする必要はないから。あなたにいい人ができたらすぐ言って。恋人のふりをやめるから」
「そしたらその…カネーシオさんがすぐ婚約しようって言ってくるんじゃない?」
「失恋したからしばらく考えられないって時間稼ぎするつもりよ。それに私たちもそろそろ働きに王都へ出るでしょ。そこでいい出会いがあるかもしれないし」
「そんな上手くいくかな」
「大丈夫。何とかしてみせるわ」
王都に出ていくということは、そこに暮らしているカネーシオとも会いやすくなることを私は失念していた。
「巻き込むつもりはなかったの。ごめんなさい」
「会う前は試しに付き合ってみるのもいいかも~なんて言ってなかった?」
「なんとなく…あるじゃない。会ってみたら何か違うかなって」
「聞いた限りだと君もいい印象を持っているように思うけどね」
「とりあえずこの話は断りたかったの」
幼馴染のフィリップは呆れた顔をしつつ、私の話に耳を傾けている。結婚を約束した相手がいると伝えれば終わると思った話は、そうはいかなかった。恋人の存在を告げた時の彼の反応を思い出す。
「誰だ」
「え?」
「君の恋人のことだ。ご両親が知らないということは正式な約束ではないだろう。俺は諦めない。君の婚約者は俺だ」
「正式でないのは私たちの関係も一緒です。そもそもあなたとは婚約していません」
相手の名前を告げるまで続きそうなやりとりに思わずフィリップの名前を出してしまった。だって他に関わりのある男の人なんていないのだから。思いつく人が幼馴染しかいなかったのだ。フィリップのあずかり知らぬところで巻き込んだ言い訳を脳内で繰り返す。
あれだけお断りの文言を並べたのに、諦めてくれなかった彼がいけないのだ。意外としつこい性格の持ち主なのだろうか。恋人がいると聞いても挫けず、一度会わせろとまで言われるだなんて思わないじゃないか。幼馴染の関係値を生かして、今日の為に必死で”結婚の約束をした恋人”の設定を作り上げた。
「君がリーンの恋人のロクシー君か」
「フィリップ・ロクシーと申します」
「ゾーエ・カネーシオと申します。王都で弁護士をしている」
ぎりぎりまで2人で打ち合わせをしていたところで、カネーシオが到着した。一体どんな話をするのか。想定問答集は作ったが、何を聞かれるかは分からない。
「少し前から2人の様子を見させてもらっていた」
「え」
「幼馴染というだけあって本当に仲が良さそうだ」
「もちろん、将来を誓った仲ですもの」
「…君たちの仲を裂こうという気はないが、結婚していない以上は俺にもアプローチする権利だけは欲しい。今日はその許可をもらいにきた」
「そう簡単に僕たちの絆は揺らぎませんよ」
「もちろん大事なのはリーンの気持ちだ。君が選んだ決定に俺は従うよ」
私とフィリップのことについて根掘り葉掘り聞かれるのかと思いきや、話はあっという間に終わった。本当にただ顔を見たかっただけのようだ。「次は王都で会おう。案内するよ」と言って去っていった。
「リーンってカネーシオさんのこと好きだよね」
「何言ってるの」
「表情とか態度がさ。今もだけど君、顔が真っ赤だよ」
「……」
強引なように見えて必ず私の考えを尊重してくれるところ、ぐいぐい来ているようで私の反応をうかがうように少し不安げな表情を浮かべているところ。彼は誠実で、少し不器用なのだ。前世であんなことがあっても私は今でも彼のことが好きだ。
だからこそ、私に囚われていてほしくない。
私と関わらずに幸せな一生を過ごしてほしい。前世で私が死んだ後はどうだったのだろう。復讐を果たして晴れ晴れとして気持ちで過ごすことができただろうか。確認する術がないのがもどかしい。
「フィリップ、今日はありがとう。恋人のふりといっても、別に何かする必要はないから。あなたにいい人ができたらすぐ言って。恋人のふりをやめるから」
「そしたらその…カネーシオさんがすぐ婚約しようって言ってくるんじゃない?」
「失恋したからしばらく考えられないって時間稼ぎするつもりよ。それに私たちもそろそろ働きに王都へ出るでしょ。そこでいい出会いがあるかもしれないし」
「そんな上手くいくかな」
「大丈夫。何とかしてみせるわ」
王都に出ていくということは、そこに暮らしているカネーシオとも会いやすくなることを私は失念していた。
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